甘酸っぱい恋の味

第八章 甘酸っぱい恋の味、永遠に

これからは、ずっと一緒

「よし、あとこれで最後かな」

ダンボールをひとつ抱えて、和真が玄関に現れる。
引っ越し作業もようやく終盤。
二人が選んだのは、駅から少し離れた静かな住宅街にある新築のマンション。
まだ家具も揃っていない新居は、どこか新しい生活の匂いがしていた。

「ふぅ……やっと落ち着いたね」
憧子が、ダンボールを開けながら言う。
お気に入りのマグカップ、写真立て、ブックエンド――
どれも、ふたりのこれからを彩ってくれるものばかり。

カーテンの隙間から、冬の日差しが部屋に差し込む。
何気ない日常の始まりに、憧子の胸はふわりと温かくなっていた。

（あー、やっと和真と一緒に住める……）

ふと心の中に浮かんだその言葉が、自然と声に出てしまう。

「……やっとだね」

その瞬間、後ろからふわりと温かい腕が回り込んでくる。
和真のバックハグ。
憧子の背中に、優しく胸板を押し当てながら、囁くように言った。

「これからは、ずっと一緒だよ」

ふいに、首筋に感じたぬくもりに、憧子の体が小さく震える。

「……ん」

振り返る暇もなく、唇が重なる。
強く、深く、確かめ合うように。
キスだけじゃ足りない、そんな熱が二人を包み込んでいく。

カーテンの閉じられた午後の光の中。
ベッドに倒れ込んだ二人は、ゆっくりとお互いの服を脱がせながら、静かに名前を呼び合った。

「憧子……」
「和真……大好き……」

肌を重ね、心を重ね、何度も何度も愛を囁きながら、
ふたりはこれから始まる「夫婦」としての時間を、ひとつずつ噛みしめていく。

ようやくたどり着いた、ふたりの場所。
ここが、ふたりの“帰る場所”になる。

その夜、マンションの窓から見える星の下、
ふたりは眠るまで、何度も何度も愛を確かめ合った。