甘酸っぱい恋の味

第八章 甘酸っぱい恋の味、永遠に

ふたりで選ぶ、未来のかたち

新居での生活がスタートして数日。
仕事に行って、帰ってきたら「おかえり」がある。
料理を一緒に作って、洗濯物を畳んで、テレビを観ながらくっつく夜。
そんな何気ない日々が、憧子にとってはまるで夢のようだった。

ある休日の朝、和真がふと尋ねた。
「そろそろ、結婚式の準備…ちゃんと考えようか」

「うん、でも、どうしよう。式場とか、ドレスとか、あんまりイメージなくて」

「じゃあさ、今日見に行ってみない？資料だけでももらってこよう」

そんな流れで、ふたりは式場巡りをすることに。
チャペルに入ると、憧子はふと、背筋を伸ばした。
バージンロードを見つめながら、胸がじんと熱くなる。

「ここで、和真と……」
「うん、俺も想像してた。憧子がウェディングドレス着てるとこ」

照れながらも、幸せな想像が広がっていく。

ドレスのカタログをめくる憧子を、和真は愛おしそうに見つめた。
そして、ふと真面目な表情で言った。

「式を挙げるってさ、ただのイベントじゃないと思う。
　これまでの全部に、ありがとうって言う日でもあるんだと思う。
　家族にも、友達にも、そして憧子にも」

「……うん、わたしも、そう思うよ」

ふたりは顔を見合わせ、自然に手を繋いだ。

いくつかの式場をまわった帰り道、
「ちょっと疲れたね」と笑いながら、和真は憧子の髪をそっとなでた。
「でも……こうやって一緒に選んでいけるのが、嬉しい」

「うん、わたしも」

夕暮れの街を、寄り添うように歩いていくふたりの背中に、
新しい人生の輪郭が、静かに浮かび上がっていた。