甘酸っぱい恋の味

第八章 甘酸っぱい恋の味、永遠に

永遠を誓う日

春の光がやさしく差し込む、小さなチャペル。
今日は、憧子と和真の結婚式。

純白のドレスに身を包んだ憧子は、緊張と幸せで胸がいっぱいだった。
控室の鏡の前で深呼吸をしていると、扉がノックされる。

「失礼しまーす！」
入ってきたのは、陽菜。
淡いピンクのドレス姿で、杏を抱っこしていた。

「うわぁ……憧子、めっちゃ綺麗」
「陽菜もすっごく可愛いよ。杏ちゃんも、今日はおめかしだね」

杏はふにゃっと笑いながら、憧子の手をつかんだ。

「なんか……泣いちゃいそう」
「だめだよ、陽菜が泣いたら私も泣いちゃう！」

ふたりは顔を見合わせて笑った。

そのころ、チャペルの外では、和真がスーツ姿で深呼吸を繰り返していた。
そばには、航太。

「なに緊張してんだよ。いつも通りでいけよ」
「……うるさい。これはさすがに緊張するわ」
「でもさ、お前らが夫婦になるなんてな。ほんと、すげぇよな」

「……俺、思ってたんだ。あのとき手を離して、もうダメかもって思った。
でも――
こうしてまた手を繋げて、今日、ちゃんと結婚できる。
……本当に、夢みたいだ」

「夢じゃないさ。現実だよ。行ってこい、旦那さん」

和真はうなずいて、チャペルの中へと向かった。

バージンロードを歩く憧子の手を、父がしっかりと握っていた。
チャペルの椅子には、家族、友人、教え子たちがずらりと並び、あたたかな空気が包んでいた。

祭壇の前、和真が待っていた。
目が合うと、憧子は自然と笑った。

誓いの言葉、指輪の交換、そして――

「それでは、誓いのキスを」

和真が、そっと憧子にキスをした。
その瞬間、拍手が沸き起こり、陽菜も、航太も、みんなが涙をぬぐっていた。

ガーデンウエディングの会場では、子どもたちが走り回り、笑い声が空に響いていた。

和真は憧子の手を握ったまま、そっと言う。

「これからも、毎日、“好き”って伝えるよ」
「うん。私も、“好き”ってちゃんと言うね」
「じゃあ、言おっか。せーの――」
「「大好き」」

空は、どこまでも晴れていた。
この日からふたりは、夫婦として歩き出す。

涙も笑顔も詰まった「甘酸っぱい恋の味」は、
今日ここから――
「幸せの味」に変わった。