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第10章 文化祭での無茶ぶり
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しおりを挟むおっとりとした湖羽ちゃんの場内アナウンスが流れ、ゆっくりとステージの幕が開いていく。
今回のお芝居は、継母にいじめられる貧乏な女の子のお話。
舞台の真ん中に立ったわたしが、家じゅうの掃除をさせられているメアリーを演じている時だった。
ステージ袖に隠れているクラスメイト達に、「こっちに来て」と手招きをされたのは。
いま?
お芝居の途中だよ。
わけがわからず戸惑うわたし。
「そしてメアリーは、舞踏会に行くことになったのでした」
客席に流れたナレーションに驚き、体と一緒に長い髪が外がわに跳ねる。
舞踏会?
男の子と手を繋ぎあってダンスを踊る、あの舞踏会?
シンデレラ設定なんて、用意していないんですが!
「客席の皆様は、しばらくお待ちください」
ステージの照明が落ちた。
暗い中、慌ててステージの奥に逃げ込む。
「どういうこと?」と、拳を上に下にふりながらクラスメイトを問い詰めた。
「えへへ、みんなでね、陽葵のお姫様姿が見たいよねってなって」
ひぃあい? 急すぎませんか? 無茶ぶりすぎませんか?
「陽葵なら演じられるでしょ」とニマニマされ、「自信ないよ」と首を横に振る。
「こんなお芝居が観たいなって言うと、いつもアドリブで演じてくれてたじゃん」
「あれはお客さんがちょっとしかいない場所だからであって。この客席はいま満員御礼で……」
「はい陽葵、これを着て」
「ドレス? この豪華なドレスは、さっきまで……」
「気づいちゃったか。そうそう、なりきりカフェでぬい君が着てたドレスだよ」
「まさか、わたしに着せるつもり? ムリムリ、美少女顔のぬいくんだから似合うのであって」
「お客さんを待たせない。みんな、陽葵の着替えを手伝って」
「了解!」
「わたしがメイクするね」
「陽葵じっとしてて、髪が巻けないから」
問答無用とはこのことだな。
「待って待って」と言っても、クラスメイトたちの手で、お姫様に仕上げられていく。
「はい完成」
「キャー、陽葵が可愛すぎる!」
わたしを見て飛び跳ねる友達に、「お世辞はいらないよ」とわたしは唇を突き出した。
鏡がないからどんなかんじに仕上がってるかわからないけど、平凡女子中学生のわたしが似合うはずないもん。
わたしの手を握ってくれたのは湖羽ちゃん……って。
もしや泣いてる?
「湖羽ちゃん、どうしたの」
心配で湖羽ちゃんの顔を覗きこむ。
「ううっ、あのねっ、わたしね……陽葵ちゃんの友達失格だなって……」
「なんでそう思うの?」
「最近、陽葵ちゃんがお芝居の壁にぶつかってることに気がついてたの。毎日辛そうだなって。でもわたしは何もできなくて……なにも力になれなくて……」
「湖羽ちゃんが謝ることじゃないよ。メンタルが弱すぎるわたしのせいなんだから」
「わたしは今でも思ってるよ、確信してるよ」
涙で潤んだ湖羽ちゃんの目が、力強く輝きだした。
わたしの手を両手で包んで、じっと見つめてくる。
「陽葵ちゃんは、キラキラなスポットライトが誰よりも似合うよ。大人気アイドルのノエル君よりもだよ」
「もう湖羽ちゃんたら、親友びいきが過ぎるってば」
悲しそうに目を伏せた湖羽ちゃんが、言いにくそうに三つ編みをさすりだした。
「わたしね、小さいころから学校に行くのが怖かった。友達に嫌われたくないと思うと話しかけられなくて。いつも一人ぼっちで、さみしくて、友達が欲しくて。でもさみしい子って思われたくないから、自分の席で本を読んだりして一人でも平気なふりをしてたの」
「そうだったんだ」
「中学に入っても友達はできないだろうなって諦めていたわたしに、陽葵ちゃんが話しかけてくれた。わたしのことが好きって微笑んでくれた。本当に嬉しかった」
「湖羽ちゃん」
「学校が怖いっていうわたしのマイナスな感情を、キラキラな笑顔で消し去ってくれたひまりちゃんだもん。わたしだけじゃない、世界中に人を笑顔にできる舞台女優になれるよ」
笑顔で涙をぬぐう湖羽ちゃんの肩を、美奈ちゃんが優しく抱きしめた。
「陽葵応援団のうちらも、湖羽ちゃんに同意だよ」
他の友達もうなづいている。
「陽葵と同じクラスになれてよかったよね」
「くだらないことでお腹をかかえて笑いあえるから、ほんと楽しいしさ」
「わたしたちは陽葵のことが大好きだけど、陽葵もわたしたちのことが大好きでしょ?」
二カッっと笑った沙理ちゃんに「どうなの、どうなの?」とひじでお腹をつつかれ、
「みんながいなかったら、学校でこんなに笑ってないよ」と、嬉し笑いがこぼれる。
由衣ちゃんがわたしの肩に手を乗せた。
「お芝居中に困った、どうしようってなったら、うちらにウインクを飛ばして。助っ人で乱入してあげる」
「わたしたちも演劇科の生徒だし、どんとこいだよ」
「だからひまりちゃん、自分を信じて思いきりお芝居を楽しんできてね!」
みんなの笑顔を見て、自分のまちがいに気がついた。
誰にも頼らず、なんでも自分の力で解決しないとダメだと思っていた。
でも違うんだ。
困ったときは友達に助けてもらえばいい。
悲しいときはなぐさめてもらえばいい。
チャレンジが怖くなったら、背中を押してもらえばいい。
だってわたしには、心を許せる大事な友達がこんなにいるんだから。
「湖羽ちゃん、みんな、ありがとう」
椅子に立てかけてあるペンライトを、やる気の炎みなぎる瞳で見つめる。
光くんも見ていてね。
「よし」と頬を両手で叩き、拳を握りしめ、覚悟を決めたわたしは凛と背筋を伸ばした。
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