推しグッズ男子たちは、恋の勝負で大人気アイドルに勝ちたい

89桃(はくとう)

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第11章 はちゃめちゃ展開

11-1

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 ドレスを踏まないようにスカートをにぎり、真っ暗なステージを進む。
 中央に立った瞬間、スポットライトが天井から降ってきた。
 ヒロイン・メアリーが、舞踏会の大広間に着いたシーンからお芝居再開です。

「こんな豪華なパーティーに、わたしなんかが参加していいのかしら」

 初めて舞踏会に来た貧乏な女の子になりきり、あたりを見回す。
 ここらでお客さんの涙を誘いたいな。
 継母にいじめられてきた日々を語ろうと、おなかに力を込めたのに

「ぎゃぁぁぁぁぁ!」

 客席のいたるところから沸く女子たちの悲鳴。
 なにごと?と、わたしはうろたえてしまった。

「やばいやばい!」

「カッコ良すぎ!」

「心臓止まりそう、キュン死しちゃいそう!」

 黄色いはしゃぎ声の大合唱は、静まりそうにない。
 お客さん全員の視線の先を追う。

 ステージ袖から登場したのは、なななななっなんと、わたしの推しと推しグッズたちではありませんか!

 エレガント王子・キュート王子・ワイルド王子がステージに勢ぞろい。
 白いタキシード姿の美男子3人が、わたしの前で歩みを止めた。

 わわっ、確かにカッコ良すぎ。
 女子たちが悲鳴を上げるのも納得だよ。
 本番のステージに現れたってことは、この3人も演技をするってことだよね?

 パーティーなれしていないメアリーは、イケメンたちから距離を置くはず。
 とりあえずステージの隅で様子を見ようと、歩き出したのに――

「ったく、俺から離れるな。幼なじみだろーが」

 後ろからバクくんの腕が首に絡みついてきて、
『幼なじみ設定ですか! 距離感バクってないですか!』
 と突っ込みそうになってしまった。

 とりあえずお芝居をしなきゃ。

「あなたはパーティーがお嫌いでしょ」

「別に、おまえと二人きりになれないのが嫌なだけ」

 設定がおかしすぎない? 
 ただの幼なじみなのに、二人きりになりたいなんて。

 バックハグ状態で視線を上げてみた。
 バクくんも照れたように顔を赤らめていてドキリ。
 ワイルド体温に包まれ中だし、やややっ、こっちまでほっぺが火照ってきちゃう。

 駆けだした心臓を鎮めたくて、バクくんの腕の中から逃亡する。
 今度はぬいくんと正面衝突しそうになって、急ブレーキをかけた。
 セーフ、ギリギリでぶつからなくてよかった。

 あれ、ぬい君が怒ってる?

「お嬢様、婚約者でもない男性と見つめあうのはいかがなものかと」

 うわぁすごい、ぬいくんが執事になりきってる! 
 凛としていて大人っぽい! 拍手、拍手。

「わたしは執事として、ひまりんを屋敷に連れ帰ります」

 ただですね、今のわたしは陽葵ではなく、メアリーなのですが。

「執事のぶんざいで出しゃばりすぎ」と、バクくん。

「幼なじみなんて、しょせんただの友ではありませんか」と、ぬい君。

「なんだと!」

「喧嘩なら受けて立ちますよ」

 本番中にも関わらず、バクくんとぬいくんがイライラまじりの不穏な空気を作り出してます。
 止めるべきか、お芝居のワンシーンとして放っておくべきか悩むな。

 困惑するわたしの前に来たのは、白いタキシードが似合いすぎるノエルくんだ。
 しゃがんで片ひざをついたからビックリ。
 わたしの手の甲に唇を押し当てたから、さらにビックリ。
 
 どこからどう見ても、本物の王子様にしか見えないんですが。

 「愛しのメアリー」

 「……っ、愛しの?」

 「フフフ、愛の言葉をささやくとあなたはいつも照れてしまいますね。僕の婚約者は本当にかわいいから困ります」

 ひゃぁぁぁ、わたしたちは婚約者設定ですか?!
 ファンの心臓の強さを過信していませんか?
 大人気アイドルの微笑みは、ファンをキュン死させる危険があることを自覚しておいた方がいいと思いますよ。

 この舞台は、わたしだけの一人芝居だったはず。
 聞いてない、聞いてない、バクくんたちがステージに現れるなんて。

 ステージ袖に視線を移す。
 クラスメイト達がニヤニヤしている。
 どうやら3人の乱入は計画通りだったみたい。

 このまま乱入者に、舞台の主導権を握られちゃダメだ。
 この舞台の主役は、わたし沼瀬陽葵なんだから。

 ドレスの上から太ももを叩き、痛みで気合を入れなおす。

「わたしはダンスなどできません。ほかの相手をお探しになって」

「他の女なんか興味ねーよ」

 バクくん、ワイルドな悪っぽさ全開すぎ。

「僕はひまりんと踊りたくて舞踏会に来たんだよ」

 ぬい君は執事を演じてるはずでしょ。
 敬語はどこに行ったの?
 だからわたしの役名はメアリーだってば!

「二人とも、メアリーは僕だけのものだよ。来週には結婚式をあげて、メアリーはこの国のプリンセスになるんだからね」

 ノエルくんは王子様設定だったのね。
 似合うけど、本物の王子様にしか見えないけど。
 
 今度はイケメン3人での言い合いが始まってしまいました。

「幼なじみの俺が、メアリーのことを一番よく知ってる」

「僕に決まってるでしょ。だって執事だもん。お世話係だもん」

「時間なんて関係ないよ。大事なのはお互いの愛の深さだからね」



 言い合いはさらにエスカレート。
 収拾がつかない状態に。

 だから、この舞台の主役はわたしなんだってば。
 お客さんの視線を自分にひきつけなくちゃ。

 覚悟を決めステージの真ん中を陣取ったのに、えっ、こんな時に照明トラブル? 
 舞台の上も客席も、いきなり真っ暗に。
 講堂内が闇に包まれてしまいました。

 ううん、違う。
 一か所だけ輝いている場所がある。
 客席の一番後ろの壁ぎわ。

 真っ赤なあのサイリウムは、まさか――
 光くんのペンライト?!

 懐かしい輝きに、胸がギューッとしめつけられる。

 でもそんなはずは。
 暗くて確認はできないけれど、わたしの宝物のペンライトはステージ袖の椅子に立てかけてあるはず。

 ということは勘違いか。
 お客さんが持ち込んだペンライトが光っているのね。

 バカみたいに期待しちゃった、光くんに会えるかもって。
 そんなはずないのにね。
 あのお札を破いたら二度と人間には戻れないって、物人間のお父さんも泣きながら教えてくれたんだから。
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