恋の音色を聞かせておくれ。

いち

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第二楽章 憧れは。

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部活見学が終わった。

100%希望楽器になれる保証はないけれど、俺は部活に入ろうと決めた。
中学からやってる人にはどうしても負けてしまうが、トランペットに対する熱意は負けていない。
どれだけ遅れていようが必ず、自分はトランペット奏者になる。



数日後、本入部が決まって最初の部活動の日。
今日は練習はほぼなく、1年生の担当楽器の決定と自己紹介をした。

「えー、まず。入部届けと一緒に出してくれた楽器の希望用紙があったと思います。そこや、体格などを考慮して、私たち教師や先輩たちと担当楽器を決めました。
思った通りの楽器になれなかった人もいるかと思いますが、その楽器でこれから頑張っていきましょう。
それでは、木管から発表していきます。」

順番に楽器の発表がされる。

「やっぱ、女子は木管多いなぁ、」
「せやなぁー。」
「え、お前、誰?」
「ちょ、酷くねぇ?同じクラスなんやけど!!」

話しかけてきたのは、いかにもチャラそうな見た目をしている、関西弁の俺と同じ1年生だった。

「いや、まだ入学して1週間くらいで覚えれてねぇよ、」
「まぁ、ええわ。俺は木崎 桜都きざき おと。」
「桜都、な。覚えた。」
「おー、あんがと。えーと、奏楽くんやったよな?」
「うん、あってる。」
「なーなぁ、希望楽器なんよ?」
「トランペットだけど?」
「えー、奇遇やなぁ。俺もトランペットやで。」
「そーなん。一緒だといいな。」
「せやなぁ、俺、奏楽くんとなかよおしたいし。」

「はい、次トランペット担当の人を発表します。」

「ぉ、次や、次や!」

「トランペット2人。木崎 桜都、青木 奏楽。」

「おー、やったぁ。」
「よっしゃ、!!」

「奏楽くん、これからよろしくな?」
「あぁ、よろしく!」

そうして会った桜都と小声で雑談しつつ、担当楽器の発表は終わった。

「んー、次、なんやったっけ?」
「次は、パート毎に自己紹介。」
「あー!せやったなぁ。」
「先輩の名前、わかるー?」
「部活見学の時に聞きはしたけど、」
「へー、そうなんや。」

パートごとに指定された教室へと移動する。
健吾先輩は黄歌先輩と仲良さそうだったけど、やっぱ黄歌先輩ちょっと怖いんだよな、何も無ければいいけれど。
そんなことを考えながら教室へと入る。
見学の時にいた先輩以外にも数人の先輩がいた。

「トランペット担当になりました。青木 奏楽です。」
「同じく、トランペット担当の木崎 桜都ですー。」

「2人ともよろしくなー。
 俺は、3年のトランペット担当の櫻井 健吾。
 一応、パートリーダーでもあるから。
 ほら、黄歌も自己紹介。」
「はぁ、来節 黄歌。2年生。」
「お前なぁ、」
「なんすか、自己紹介しましたけど。」
「はぁ、だめだわ、
 ごめんな、こんな無愛想なやつで。
 他の奴らも自己紹介してけー!」

トランペット担当の先輩の自己紹介を一通り聞き終えたあと、仲を深める、という意図で少しの質問などをする時間が与えられた。
健吾先輩が俺ら1年生にこう聞いた。
「なんで、トランペットやりたいと思ってくれたんだ?2人とも第一希望だっただろ?」
「んー、そうですねぇ、俺は中学でやってた楽器そのままって感じですわ。何だかんだ楽しいんで。」
「いいじゃないかぁ。俺も中学からトランペットだぞ~。」
「まじっすか?おそろっすね」
「奏楽はどんな理由だ?未経験だろ?」
「俺は、その、トランペットが憧れで。中学の時、誰かはわかんないんですけど、とある先輩のトランペットを聞いて。すごく綺麗。あんな音、出せるようになりたいって、そう、思ったんです。」
「おーっ、いいじゃんっ!その気持ち、大事だぞ~?」
「ありがとうございます、!」

健吾先輩や他の先輩と話していると、突然ガンッ、と大きな音が響いた。
音の方をみると、黄歌先輩が机を叩いた様だった。

「どいつもこいつも、薄っぺらいんだよ!適当なやつもいれば、憧れだのなんだの、音楽を舐めてんじゃねぇよ!!!」

その場にいた1人を除いて、皆、固まってしまった。
しかし、健吾先輩だけは違った。

「黄歌、どういうつもりだ、?」
「あ゛?んだよ、」
「後輩達は音楽を舐めてなんかいない。きっかけがなんであろうと、音楽に興味を持って実際にやろうと思い、頑張ろうとしている。その事実が黄歌には見えてないのか?」

優しく、明るい先輩の雰囲気からは一転して厳しい口調だった。

「うるせぇんだよ、!俺は、特に、あいつ!奏楽とかいうやつが気に入らねぇ!
 憧れってなんだよ!おめぇが憧れてんのは音楽でもトランペットでもなんでもねぇんだよ!!」
「っ…、!」
「黄歌、やめろ。」

チッ、と舌打ちをして黄歌先輩は教室を後にした。

「ごめんな、君の憧れの気持ちは何も間違っていないよ。」
「いえ、大丈夫です、
 今日は、帰ってもいいですか、?」
「あぁ、大丈夫だ。また、部活でよろしくな、」
「はい、」

なんとなく、上の空でその日は帰ろうと思った。
「憧れているのは、音楽でもトランペットでもない。」
妙に自分の確信を着いているようで、頭からその言葉が離れない。

校庭にでると、遠くからトランペットの音が聞こえてきた。
中学の頃から憧れていた、まっすぐさを感じる音色だった。
よく分からないが、なんとなく、音の方向に向かった。
ただ、なんとなく。足が勝手にそちらへと、向かっていた。


音は中庭からしていた。
こっそりと覗く。
その姿は、先程、机を叩き怒鳴っていた、来節 黄歌先輩だった。

「え…。」
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