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第一章 力の覚醒
15話 学園のお誘い
しおりを挟む「キーシャ学園に編入するのはどうかな?」
「学園に通いたいのは山々なのですが、私は金銭的に厳しいので…。すみません」
私はアレク様から受けた提案を断る。
キーシャ学園には推薦制度や奨学金など設けられているらしい。
貴族の場合、裏口入学を使うこともできると小耳に挟んだことがあるけれど。
私の場合、前者の推薦入学はまず通らないだろう。
平民でも剣や魔法に優れている者はおり、そのように才能を持った人ならば推薦入学はお薦めだ。
だけど、私は剣も魔法も扱えない。
剣は握ったことがないから実際は分からないけど、魔法はそもそも使えないし。
ちなみに推薦入学の場合、学力はほとんど問われないらしい。
後者の奨学金の制度に関しては腕に自信が無かったり、金銭的に厳しい人たちが選ぶ手段だ。
奨学金制度は推薦入学よりハードルがだいぶ低くなる。
親が保証人になり、担保金を幾分か払えば基本的にOKなのだ。
あ、そういえばもう一つ条件があった。
こちらの場合、学力を測る筆記試験が課されており、無事突破したら晴れて入学できるらしい。
とはいえ、私に血の繋がった両親は居ない。
育ての親である村長を頼れば受験できるかもしれない。
ただ、あまり迷惑は掛けたくないのも本音だ。
後、一年もしないうちにギルドには登録できるし、無理をしてまで入学する必要はないだろう…。
「多分、ルリは金銭的な理由が一番大きいんだよね?」
「はい…」
仰る通りです…。
私もお金に余裕があれば、学舎で勉強をしてみたい気持ちはあります…。
いきなり冒険者になる道もあるけれど、下積み時代がある方が心強いのは確かなのだから。
「ルリ自身が納得してくれるなら、出来ればこちらで編入の手続きを取り計らうけど、どうかな?」
「すごく有難いお話しですが…。何故そこまでしてくれるのでしょうか?」
とても気持ちは嬉しいけど…。
そこまでして貰ってもいいのだろうか?
「怪我を負わせてしまったお詫びじゃダメかな…」
何か他に目的があるのかも知れないけど、間違ってはいないか。
釈然としない気持ちもあるが、私の知らない編入方法があるのかもしれない。
聞いて損することは無いのだから、一応訊いてみよう。
「ちなみにどのような形で編入するのでしょうか?」
「そうだね。今、ぱっと思い浮かぶ方法としては大きく三つかな。その中からルリがいいなと思ったら決めて欲しい」
なるほど。
「まず一つ目。貴族のコネを使った裏口入学かな…。あまりお勧めはしないけどね…」
やっぱりあったんだ…。
一個目に出てくるとは思わなかった…。
その選択肢は入学した後を考えると、使いたくないなぁ。
変に噂が立って、虐めの標的にされると困るからね。
「二つ目は学園に掛かる費用をこっちで負担して入学してもらう方法だね。返済は別にしなくて構わないかな。私としてはこれが一番お勧めしたい」
自分にとっては棚から牡丹餅な話だけれど、それはそれで心苦しいというか、申し訳ないなって思っちゃうんだろうな…。
負い目を感じながら、学園生活を送るのもちょっと違う気がする。
「最後は足りないお金は一旦こちらで補って、借りた分だけ後で返済してもらう方法かな。返済のタイミングはルリに任せる。卒業してからゆっくり返すので構わないから」
この中だったら最後の選択肢が私にとっては一番いいかもしれない。
これだったら冒険者になって、それから返済してもいいってことだよね。
まあ、アレク様が気長に待ってくれるのが前提だけどさ。
んー…。
私としてはこれが最善かなぁ。
どの選択肢を選んでもアレク様頼りだけど、せっかくなら一度くらい学園に通ってみたい。
ここで即決したい気持ちはあったが、村長やマーベルのことも少しだけ気になった。
焦る必要はないか。
「少し考えてから、決めてもいいですか?」
「それは勿論。手続きの兼ね合いとかあるから一週間くらいで決めてくれたら助かるかな」
「だよね?マリア?」
「左様で御座います。よろしくお願いしますね!」
後半のよろしくお願いします!
それは私に向けられた言葉だろうな…。
一週間か。
期限が設けられてるのは分かるけど、マリアさんの様子からしてなんかある気もする…。
まあ、でも…。
それくらい猶予があって考えが纏まらないなら、それまでのお話だったと割り切って断れば良いか。
「分かりました!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ただいま」
家には誰も居ないけれど、玄関でポツリと呟いた。
久々の自宅はやっぱり落ち着くな…。
薬草の香りが部屋の中に充満しており、懐かしい気持ちになる。
騒動に巻き込まれた事もあり、予想以上に長く向こうに滞在してしまった。
とは言っても、予定より二日ほど帰るのが遅くなったくらいだけど。
さっき村に戻ってきたけど、村長やマーベルには屋敷で襲われたことは話さなかった。
仮に伝えるにしても、ありのまま説明したら絶対に心配するのは目に見えているし。
それに今は夜遅い。
説明するにしても明日がいいだろう。
マーベルも村長もあまり詮索してこなかったのも大きい。
カバンを木製のテーブルに置き、ソファーに深く腰をかける。
あぁ。
今回の旅は楽しかったけど、疲れることの方が多かったなあ…。
アレク様の生誕祭に行けたのは良かったなと思う。
美味しい料理が沢山食べれたし、綺麗な庭園も見れたし。
会場でアレク様と踊れたのも嬉しいかな。
記憶が曖昧なのは残念だけど、踊れたから良しとしよう。
それに貴族様のパーティーなんて滅多にいけないからね。
ただ、一番疲れた要因は自分が襲われたことだろう。
モローネに毒を飲まされたのはカウントしていない。
本当はマリアさんに告げ口しても良かったのだが、モローネが助けを呼んでくれたおかげで命拾いしたし…。
少し優しすぎるかもしれないけど、毒と言っても山に普通に生えてるカラマイタケだったからね。
もしも次に同じような目に遭ったら、その時は報告してマリアさんにお灸を据えてもらえばいい。
マーベルと歳が近いから大目にみてしまうのかな。
それより黒ずくめの襲撃の方が大変だった。
この前は騎士に襲われて、ちょっと表現が違うか…。
騎士に捕まって、一時的に檻に収監されただけだった。
だが、今回は違った。
敵意のある侵入者と対峙して初めて剣を握った。
いつ斬り合ってもおかしくないような場面だったし。
すごく重かったな…。
剣の重量もそうだけど、相手を斬らないといけない覚悟もそれと同じ、いやそれ以上に重くのし掛かっていた。
まあ、実際はすぐに剣を手放してその場から逃げる選択肢を選んだけど。
これから先、またあのような事態になったとき私は人を斬れるのだろうか。
今回は幸い、一人だけだったから逃走を図ることで何とかなったよね…。
もしも、あの時後ろに大切な誰かがいたとしら…。
その人を守る為には、斬らないといけない場面に遭遇してしまったら…。
私はどうだっただろうか。
そもそも大切な人を守る以前に、己の身を守るためには相手の命を絶つ覚悟がいるのかもしれない。
これから冒険者の道を進んで生き残っていくには…。
深い溜息を吐いて、ソファーに寄り掛かる。
それに学園のこともある…。
私は向こうから、こっちに帰るまでに編入試験を受けることを決断した。
村に帰って決めようかと思ったけれど、それは辞めた…。
二人に相談した方が良かったのか、悪かったのかは明日わかるだろう。
明日、マーベルと村長には自分の気持ちを伝えなければ。
私は気持ちを切り替えるように立ち上がり、キッチンに向かった。
台所の窓のサッシには、小さな観葉植物を置いてある。
一週間近く家を留守にしていたから、水やりをしないとな…。
蛇口を軽く捻り、霧吹きに水を注ぎ込む。
土の乾燥具合を確認する為、空いた左手で土を触る。
室内に置いてあるため土が濡れることはないのだが、土が湿っていた。
村長かマーベルのどちらが夕方、水やりをしてくれたのだろう。
私は軽く微笑んで、霧吹きをキッチンの隅にあるスペースに優しく置いたのであった。
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