19 / 57
第一章 力の覚醒
19話 それぞれの想い
しおりを挟む(オレはルリ姉の事が好きだ。恋愛的な意味じゃなくて、家族のような感じだけどな)
マーベルは成長して年を重ねるうちにルリに対して不満を覚えるようになった。
(なんだろうな。ルリ姉のふとした態度にイライラするんだよな。特に今日みたいな態度は本当にムカついた)
あんな形でお別れをするのは嫌だなとマーベルは思っていたが、あまりにも怒りを抑えれなかった彼は椅子を蹴り飛ばしてしまったのだ。
村長の家から飛び出したマーベルは目的もなく外を歩いている。
(ルリ姉とオレは血は繋がってないかもしれねぇけど…。
オレはともかく、じいを頼ってもよくねぇか)
気を遣ってくれて有難いときも沢山あるけれど。
一緒の家族なんだから肝心な時は、もう少しルリは甘えるべきだとマーベルは思っていた。
焚き火を遠く眺めながら、マーベルはイラついた心を落ち着かせようとする。
(あの燃えている火のように、水をかけてすぐ消せたらいいのにな… )
ルリが全部悪いとは思わない。
マーベルは一応、父親が居るから全部は理解することはできない。
マーベルの父親は冒険者で色んな所に旅に出ていた。
母親とは離婚したらしい。
父親の都合で村長に預けられてる立場だから、少しマーベルもルリの寂しさも分かる気がした。
(親が近くにいないのは一緒だからな)
「クソったれが」
自分に対しても、マーベルはムカついていた。
(ルリ姉もあんな性格だから、オレやじいのことを考えた上で決断したんだろうな)
急すぎるだろ!
とマーベルは思ってはいたけれど、
軽い気持ちであんなこと言った訳じゃねぇってのは分かっていた。
ルリはいつかはこの村から離れるかもしれないってマーベルは予感はしていた。
だから、離れること事態はそんなに問題視していなかった。
寂しくないと言えば嘘になるのだが、それよりも今このタイミングで離れるのがどうにも腑に落ちないのであった。
(口に出していないだけでルリ姉は多分、オレたちに言ってないことがあるだろうな。だからこそ、今、強引にこの村から離れるんだろうな)
直感がその通りだとして…。
(今のオレに何が出来るんだ)
何も力になってやれなくて、近くで傍観することしか出来ない。
そんな情けない自分の姿がより彼の苛立ちを募らせていた。
(遠回りしてでもいいから、いつかルリ姉をそばで守れる、いや家族として認めてもらえるような存在になろう)
固い決意をしたマーベルは、星一つない真っ暗な夜空を仰いだのであった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
村を離れると打ち明けた翌日は簡単な荷造りをして旅の支度をした。
いよいよ明日、この村ともお別れだな…。
窓際にあった写真たてを手に取る。
私、マーベル、村長。
三人が写った写真たてをリュックにそっと仕舞う。
元々、荷物が少ない私はスムーズに旅支度は終わり、マーベルや村長とも言葉を交わす事なくその日は過ぎ去った。
「今日は雨なのか」
朝食の後片付けをしながら窓の外に視線を移すと、外はパラパラと雨が降ってる。
荷物が少ないとはいえ、雨だと手荷物が濡れるから大変だな…。
食器を水で洗い流していると、玄関から声が聞こえてきた。
「おはようじゃ。渡したいものがあったからお邪魔するのぉ」
この声は村長かな?
洗った食器を水切りカゴに置いて、玄関に向かう。
「少し時間はあるかのう」
「うん。お迎えが来るまでの間であれば大丈夫かな!とりあえずソファーにでも掛けて」
「うむ」
村長は濡れた傘を畳んで、色褪せた茶色のソファーに腰を下ろす。
「何か飲む?」
「いんや、構わんよ」
村長は座ったまま、大きな手提げ袋をまさぐる。
「ね、渡したい物って?」
私も空いたスペースのソファーに座る。
「二つあるんじゃが、まずこれじゃな」
テーブルの上にガシャンと音を立ててパンパンに膨らんだ麻袋が三つ置かれる。
何だろう。
麻袋は私の手より少し大きかった。
「開けて中を見てもいい?」
「ワシじゃなくてルリのものだからのぉ。遠慮は要らんぞい」
「私のもの……?」
置いたときの音からして何となく察しがついているけど…。
一応中身を確認する。
袋の中には少し輝きが失われていたが、立派な金貨が大量に詰まっていた。
これだけあれば。
十年くらいは生活に困らないじゃないかな?
金貨に触れることがないから憶測だけど…。
とはいえ、いきなりこんな大金を貰うわけにはいかないだろう。
「村長これは受け取れません。お気持ちだけ受け取って置きますので…」
「そぉ言われてものぉ…」
まだ開けていない麻袋たちも同様に金貨が詰まっているのだろう。
何処からそんな大金を用意したのだろうか…。
「私にこのような大金受け取れません」
いつもは砕けた言葉で会話のやり取りをするのだが、大金が絡んだ現場に遭遇して無意識のうちに敬語になってしまう。
「ワシとしてもそれは受け取って貰わんと、困んるじゃがのぅ」
普段であれば意見が割れた時、折れてくれることが多い。
だけど、今回は渋る態度で拒む姿勢を取ってくる。
「理由を伺ってもいいですか?」
「もう一つ渡すものにも言えたことなんじゃがの…」
村長は遠い昔を思い出すかのような、憂いを含んだ眼差しで一本の剣をテーブルにそっと置いた。
「この金貨と剣は……、亡くなったご両親のものなのじゃ…」
胸がキュッとなった私は返事が出来ず、剣をまじまじと見つめる。
「父と…母の遺品…」
小さく震えた声が部屋に響いた。
「そうじゃ。いや、父親はもしかしたら生きておるのかもしれぬから、遺品とは言わぬ方がよいかもな。可能性は限りになく低いのじゃがな」
え…。
父が生きてるかもしれない!?
「ワシはこの村でお主の母親の亡骸は発見したんじゃが、父親の亡骸は見つからなかったからのぉ…。もしかしたら生きておるのかもしれぬ」
でも、どうしてこのタイミングで打ち明けたのだろう…。
ネックレスを握り締めていた私は、恐る恐る尋ねた。
「もし、私がずっと村にいたとしたらこの遺品は受けとっていましたか?そもそも、このお話はされていましたか?」
険しい表情を浮かべた村長は、すっと肩の力を抜いて私を見やる。
「いずれ話すつもりではあったのぉ。ただ、ワシとしてはまだ先のつもりじゃったがな」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
村長のコルットはルリが帰った後、散らかった部屋でぼーっと佇んでいた。
サラの遺品を見たからなのか、ふと昔のことが蘇ってきた。
「私が亡くなってルリが一人になったら、コルットさんにお願いしてもよろしいでしょうか?」
「いや、それは厳しいと思うのぉ。理由をお聞きしてもよいだろうか?」
コルットは赤ん坊のマーベルを抱き抱えたまま、サラに尋ねる。
(サラはこの村に来て2年くらい経つのかのう。娘のルリは4才になったんじゃっけな)
「私は病により、長くは生きられません。夫も教会の関係者なので面倒を見ることも、かなり厳しいと思います…。無理を承知で申し上げているのですが、もし何か私に何かあれば、その時はどうか助けて下さいませんか?」
(教会の関係者じゃと…旦那さんはほとんど見なかったのはそういう理由じゃったのか…)
「しっかり約束は出来ぬが、出来る限りワシも面倒をみよう。じゃが、本当のを理由を教えてくれぬか?」
「…他言無用でお願いします。…もしお話を聞いたら協力すると約束して下さりますか?」
「…うむ」
(悩むところじゃが、ワシもそろそろ歳だ。次の世代の架け橋になるべきかのぉ)
「ルリに眠っている魔法はとんでもない力を秘めています。ですので、私はこの残りの命を引き換えに、ルリに封印を施します」
「ふむ」
(もしかして、ルリは神聖魔法が扱えるかもしれぬな…父親が教会の関係者なら)
「肉眼や単なる魔法では分からない特別な封印なので、ルリには決して伝えないで下さい。いずれ、時がくれば娘は思い出すはずので…」
「なるほどのぉ。それだけかの?」
「あと、お願いしている立場なのは重々承知おりますが、コルットさんに約束して頂きたいことがあります…。こちらにある金貨の半分は、コルットさんに差し上げますので…」
サラは麻袋に入った金貨をこちらに少し覗かせる。
(これだけの大金、よほどのことじゃろうな)
「私が亡くなったら、ルリはコルットさんの孫として育ててくれませんか?ルリの親が誰かと問われても、絶対に明かさないで下さい。どうかよろしくお願い致します」
その顔つきはとても真剣で、有無を言わせないくらいの迫力があった。
「お金は別に良いのじゃが、ワシが他にバラすかもしれぬぞ。それにおぬしがここに来て二年経つから、周りに住んでる人も信じない者もいるかもしれぬ」
「はい…。かもしれませんが、コルットさんの他に私は頼れる人もおりません。残された道はこれだけなのです…」
(昔からこっそり、一目に関わらないように暮らしていたのは、これが理由だったのかもしれぬな…)
「出来る限り協力はするつもりじゃが、あんまり期待はするんじゃないぞい」
「ありがとうございます!」
30
あなたにおすすめの小説
「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します
スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」
眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。
隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。
エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。
しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。
彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。
「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」
裏切りへのカウントダウンが今、始まる。
スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!
悪霊令嬢~死した聖女憎悪に染まりて呪いを成す~
女譜香あいす
ファンタジー
数え切れない人々をその身に宿す奇跡の力で救ってきた少女、サヤ・パメラ・カグラバ。
聖女と称えられた彼女であったが陰謀の末に愛した者から婚約破棄を言い渡され、友人達からも裏切られ、最後には命を奪われてしまう。
だがそのとき感じた怒りと悲しみ、そして絶望によって彼女の心は黒く歪み、果てにサヤは悪霊として蘇った。
そして、そんな彼女と世を憎みながらもただ生きる事しかできていなかった一人の少女が巡り合う事で、世界に呪いが拡がり始める事となる。
これは誰よりも清らかだった乙女が、憎悪の化身となりすべての人間に復讐を果たす物語。
※この作品は小説家になろうにも掲載しています。
「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。
しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。
「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」
まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。
目が覚めたら、婚約破棄されていた。
理由は「地味で面白みがない」から。
泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。
最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。
でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。
厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。
そして就任スピーチで宣言した。
「500人全員の名前を、覚えます」
冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。
悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。
元婚約者は——後悔し始めていた。
婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。
なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。
1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について
水定ゆう
ファンタジー
【火曜、木曜、土曜、に投稿中!】
千年前に起こった大戦を鎮めたのは、最強と恐れられ畏怖された「魔女」を冠する魔法使いだった。
月日は流れ千年後。「永久の魔女」の二つ名を持つ最強の魔法使いトキワ・ルカはふとしたことで眠ってしまいようやく目が覚める。
気がつくとそこは魔力の濃度が下がり魔法がおとぎ話と呼ばれるまでに落ちた世界だった。
代わりに魔術が存在している中、ルカは魔術師になるためアルカード魔術学校に転入する。
けれど最強の魔女は、有り余る力を隠しながらも周囲に存在をアピールしてしまい……
最強の魔法使い「魔女」の名を冠するトキワ・ルカは、現代の魔術師たちを軽く凌駕し、さまざまな問題に現代の魔術師たちと巻き込まれていくのだった。
※こちらの作品は小説家になろうやカクヨムでも投稿しています。
時が巻き戻った悪役令嬢は、追放先で今度こそ幸せに暮らしたい
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【その断罪、待っていました!】
私は侯爵令嬢オフィーリア・ドヌーブ。王太子アシル・バスチエの婚約者だった。良い国母になる為、日々努力を怠らなかった。そんなある日、聖女を名乗る女性ソネットが現れ、あっという間にアシルは彼女に夢中になってしまう。妃の座を奪われることに危機感を抱いた私は、ありとあらゆる手段でソネットを陥れようとして失敗。逆に罰として侯爵家から除籍され、辺境の地へ幾人かの使用人達と共に追放されてしまう。追放先の村での暮らしは不便だったが、人々は皆親切だった。けれど元侯爵令嬢というプライドから最後まで私は素直になれなかった。そんな自分に後悔しながら長い時を孤独に過ごしていたある日。不思議な懐中時計の力によって、何故か断罪の真っ最中に時が巻き戻っていた。聖女への嫌がらせは無かったことに出来ない。それなら今世はおとなしく追放されて和やかに過ごそう。今度こそ幸せに暮らす為に——
※他サイトでも投稿中
聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います
登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」
「え? いいんですか?」
聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。
聖女となった者が皇太子の妻となる。
そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。
皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。
私の一番嫌いなタイプだった。
ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。
そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。
やった!
これで最悪な責務から解放された!
隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。
そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。
2025/9/29
追記開始しました。毎日更新は難しいですが気長にお待ちください。
取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので
モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。
貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。
──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。
……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!?
公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。
(『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる