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第二章 学園編
39話 チームメンバー
しおりを挟む自室に入った私はカバンを机に置いた。
間取りはワンルーム八畳で、部屋の中央に小さな木製の机と壁すれすれにシングルベッドが一つ。
窓際には木棚に透明な瓶が三十個ほど並べてある。
この瓶の中には、ポッチ村で採取した薬草達が敷き詰められているのだ。
学園に来てからは使用する機会はほとんど無くなったけど、今度の野外実習では役に立つかもしれないから持っていくつもりである。
まあ、持参できるかわからないから演習の内容を把握するのが先かもしれないけどね…。
今朝、リリー先生から野外演習があると教えてもらったが詳細は知らない。
とりあえず、ネムの部屋に行って訊くとしよう。
自室を出た私は隣の部屋に向かった。
ネムの部屋の前に立つと軽くノックをすると、中から返事がした。
良かった。
ネムは部屋にいるみたいだ。
少しすると、扉がわずかに開く。
隙間から、顔を覗かせたネムと視線が合う。
「ルリどうしたの?」
少し焦った様子でネムが話しかけてきた。
「ネムに訊きたいことがあってね」
「あー。うん…」
ネムは部屋の中が見えなように最低限しか扉を開けていない。
それにいつもより余所余所しい気がする。
タイミングが悪かったのかな?
「もし、忙しいなら出直すから!ごめんね」
「あー。別に何かしていた訳じゃないんだけど…」
歯切れの悪いネムは気まずそうに苦笑いをした。
「あのさ、ちょっとだけ部屋汚いけど…それで構わないなら上がっていいよ?」
いつもポッチ村でじいじの部屋を掃除していたから多少の汚さは平気である。
「全然大丈夫だよ」
「ルリが良いなら私としては助かるけどさ…どうぞ、中へお入り下さい」
ネムはゆっくり扉を開けて促してくれた。
うん。
じいじの家といい勝負をしそうだ。
女の子の部屋にしては珍しいと思えるくらいに本が散乱している。
ぬいぐるみが所々転がっているのは女の子っぽいけれど。
それに下着が転がっていないのはいいことだ。
じいじの家ではたまにマーベルの下着が落ちてることもあるからね…。
「好きなところ座っていいから。あんまりスペースはないけど!」
ぬいぐるみの上に座るのは気が引けたため、少し本をずらした。
すると、無造作に積み上げられた本の山が崩れた。
「あ…。ごめん…」
本がぬいぐるみの上に落下したのだが、落ちた場所が悪かったのだろう。
ぬいぐるみの取れかかった目玉も一緒に地面に転がった。
「あ…。気にしないで…。私が部屋を片付けていないからこうなるんだよね」
ネムは目に涙を浮かべて、必死に自分で言い聞かせていた。
「ごめんね。ネム。今度新しいこれ買いにいくから…」
「ううん。気にしないで」
少し気まずくなったけど、ネムは気持ちを切り替えたようで私に質問をしてくる。
「ね、急にルリが部屋に来るの珍しいね。何かあったの?」
「実はね、今朝リリー先生かからBクラスと合同で野外演習があるって教えてもらったんだけどさ」
「あー。なるほど!どんな内容か知りたいってことだよね」
「そうそう。教えてほしいなと」
察してくれて有難い。
まあ、私よりネムの方がリリー先生と関わった時間が長いからすぐ気付いたのだろう。
「んー、それなんだけど今回は大変な課題かもしれないね」
ネムは眉間にしわを寄せ、呟いた。
簡単な課題とは思っていないけれど、少し不安だな。
「どんなことをするの?」
「今回は二泊三日のサバイバル演習が行われるみたい。チームは最低四人以上でメンバーが揃い次第リリー先生かルッソ先生に報告するんだって。期限は野外演習の一週間前かな」
そっか…。
確かにそれは大変かもしれない。
「それに今回は食料の持ち込みは一切禁止らしいし、全て現地調達なんだって」
思ったよりハードな内容かもしれない。
保存食とか持ち込めたら食事の心配は無かったけど、持参できないなら自分達で確保しないといけなのか。
この感じだと、薬草も持ち込むのは厳しそうだな…。
「ネムは野営とかの経験はあるの?」
「馬車に乗って一夜過ごしたことは数回あるけど、その時は護衛の人たちが全部準備してくれたから、これをカウントするのはちょっと違う気がするかも」
なるほど。
そうなると、ツバキもサバイバル経験はない可能性が高いな。
かくゆう私も本格的な野営はしたことない。
多少、薬草に関しては人より知識がある自信はあるけれど、どこまで役に立つかはわからないし…。
「ルリ、良かったら一緒にチーム組まない?」
「勿論!私なんかでよければ、ぜひ!」
それは嬉しい提案だ。
断る理由もないから、私はすぐに了承した。
「んー。もう一人はツバキを誘うとして、後一人。誰か候補はいそうかな?できれば魔法が使えるAクラスの生徒だと嬉しいけどね」
「…」
ラスト誰にしよう。
誰かいるのかな?同じAクラスに…。
友達の少ない私はパッと名前が浮かぶわけもなく、無言の時間が生まれる。
「とりあえず私の方からも探してみるね。ルリも誰か誘えそうな子がいたら教えてほしいな」
ネムも大人しい性格だから、Bクラスで誘えるかどうか怪しいみたいだ…。
「うん!私も誰かいたら声かけてみるね」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「誰か誘える人いないかな?」
ちょうど昼休みで、Aクラスの教室にいる私はツバキに尋ねた。
「昨日ネムが言っていたことが本当なら、あと一人チームに加わらないといけないんだよねー」
「そうだね」
うーんと悩ましげな表情を浮かべるツバキを横目に私はイチゴパンを手に取った。
「できる事なら同じクラスメイトがいいんだけどさ」
ツバキの意見には同感だ。
魔法が使えるメンバーがいるとサバイバル生活が楽になる。
火があれば調理の幅が広がるし、水が生成できるなら川を探す手間が省けるから。
仮に魔物と遭遇しても、魔法が扱えるなら戦闘の選択肢が広がるのは間違いないし。
ツバキと二人で会話していると、茶髪の女子生徒が私に話しかけてきた。
「二人にお願いがあるんだけどいいかな?」
この子は同じクラスメイトで、名前は確かー。
ナタリーだったかな。
「どうしたの?」
「もし、野外演習のメンバーに空きがあるのなら一緒のチームに入っちゃダメかな?」
私はチラッと視線を横に向けると、ツバキは小さく首を縦に振った。
どうやらツバキも私と一緒と同じ考えのようだ。
クラスメイトなら是非ともチームに誘いたい。
「ナタリーは他に誰かと組んでいるの?」
「誰とも組んでないよ!」
まだ一人だったみたいだ。
昨日の今日の話だしね…。
そもそも、四人以上のチームでサバイバルをする事自体、Aクラスの大半知らないじゃないだろうか。
リリー先生はほとんど説明できる状態じゃなかったしね…。
ナタリーもBクラスにも友達か知り合いがいないと、この話は知らないはずだけど。
まあ、いいか。
「そうなんだ!私の他にメンバーが二人いるけど、それでも良かったらチームを組んで欲しいかな!」
その条件で良ければこちらとしては一つ悩み事が減るからとても助かる。
「大丈夫だよ!よろしくね!」
ナタリーから手を差し出されたので、私もそれに応えて握手を交わした。
「ルリちゃんの他にメンバーは、ツバキちゃんで合ってる?」
ナタリーがツバキに質問を投げるかける。
「そうだよ!最後の一人はBクラスにいる妹のネムがメンバーかな!」
「ネムちゃんとはまだ面識が無いから、また近いうちに紹介してくれたら嬉しいな!」
「おっけー!」
「楽しそうに話している最中にお邪魔してごめんね。二人ともまたね!」
ナタリーはそう言って踵を返すと、教室を出て行った。
「ツバキはナタリーと仲良いの?」
「いやーどうだろ?今まで関わったことはあんまりなかったかなぁ?いつも私は委員長のことしか意識してなかったから、そこまで接点はなったと思う」
「そっか」
これを機会に交友関係を広めるのはいいかもしれない。
編入してからネムとツバキしか、深く関りがなかったからだ。
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