悪役令嬢ではありません。肩書きはただの村人ですが、いつの日か名だたる冒険者になっていた。

小田

文字の大きさ
40 / 57
第二章 学園編

39話 チームメンバー

しおりを挟む

 自室に入った私はカバンを机に置いた。
 間取りはワンルーム八畳で、部屋の中央に小さな木製の机と壁すれすれにシングルベッドが一つ。
 
 窓際には木棚に透明な瓶が三十個ほど並べてある。
 この瓶の中には、ポッチ村で採取した薬草達が敷き詰められているのだ。

 学園に来てからは使用する機会はほとんど無くなったけど、今度の野外実習では役に立つかもしれないから持っていくつもりである。
 まあ、持参できるかわからないから演習の内容を把握するのが先かもしれないけどね…。

 今朝、リリー先生から野外演習があると教えてもらったが詳細は知らない。
 とりあえず、ネムの部屋に行って訊くとしよう。

 自室を出た私は隣の部屋に向かった。
 ネムの部屋の前に立つと軽くノックをすると、中から返事がした。

 良かった。
 ネムは部屋にいるみたいだ。
 少しすると、扉がわずかに開く。
 
 隙間から、顔を覗かせたネムと視線が合う。

「ルリどうしたの?」

 少し焦った様子でネムが話しかけてきた。

「ネムに訊きたいことがあってね」

「あー。うん…」

 ネムは部屋の中が見えなように最低限しか扉を開けていない。
 それにいつもより余所余所しい気がする。
 
 タイミングが悪かったのかな?
 
「もし、忙しいなら出直すから!ごめんね」

「あー。別に何かしていた訳じゃないんだけど…」

 歯切れの悪いネムは気まずそうに苦笑いをした。

「あのさ、ちょっとだけ部屋汚いけど…それで構わないなら上がっていいよ?」

 いつもポッチ村でじいじの部屋を掃除していたから多少の汚さは平気である。

「全然大丈夫だよ」

「ルリが良いなら私としては助かるけどさ…どうぞ、中へお入り下さい」

 ネムはゆっくり扉を開けて促してくれた。

 うん。
 じいじの家といい勝負をしそうだ。
 女の子の部屋にしては珍しいと思えるくらいに本が散乱している。
 ぬいぐるみが所々転がっているのは女の子っぽいけれど。
 それに下着が転がっていないのはいいことだ。
 じいじの家ではたまにマーベルの下着が落ちてることもあるからね…。

「好きなところ座っていいから。あんまりスペースはないけど!」

 ぬいぐるみの上に座るのは気が引けたため、少し本をずらした。
 すると、無造作に積み上げられた本の山が崩れた。

「あ…。ごめん…」

 本がぬいぐるみの上に落下したのだが、落ちた場所が悪かったのだろう。
 ぬいぐるみの取れかかった目玉も一緒に地面に転がった。

「あ…。気にしないで…。私が部屋を片付けていないからこうなるんだよね」
 
 ネムは目に涙を浮かべて、必死に自分で言い聞かせていた。

「ごめんね。ネム。今度新しいこれ買いにいくから…」

「ううん。気にしないで」

 少し気まずくなったけど、ネムは気持ちを切り替えたようで私に質問をしてくる。

「ね、急にルリが部屋に来るの珍しいね。何かあったの?」

「実はね、今朝リリー先生かからBクラスと合同で野外演習があるって教えてもらったんだけどさ」

「あー。なるほど!どんな内容か知りたいってことだよね」

「そうそう。教えてほしいなと」

 察してくれて有難い。
 まあ、私よりネムの方がリリー先生と関わった時間が長いからすぐ気付いたのだろう。

「んー、それなんだけど今回は大変な課題かもしれないね」

 ネムは眉間にしわを寄せ、呟いた。
 簡単な課題とは思っていないけれど、少し不安だな。

「どんなことをするの?」

「今回は二泊三日のサバイバル演習が行われるみたい。チームは最低四人以上でメンバーが揃い次第リリー先生かルッソ先生に報告するんだって。期限は野外演習の一週間前かな」

 そっか…。
 確かにそれは大変かもしれない。
 

「それに今回は食料の持ち込みは一切禁止らしいし、全て現地調達なんだって」

 思ったよりハードな内容かもしれない。
 保存食とか持ち込めたら食事の心配は無かったけど、持参できないなら自分達で確保しないといけなのか。
 この感じだと、薬草も持ち込むのは厳しそうだな…。
 
「ネムは野営とかの経験はあるの?」

「馬車に乗って一夜過ごしたことは数回あるけど、その時は護衛の人たちが全部準備してくれたから、これをカウントするのはちょっと違う気がするかも」

 なるほど。
 そうなると、ツバキもサバイバル経験はない可能性が高いな。
 かくゆう私も本格的な野営はしたことない。

 多少、薬草に関しては人より知識がある自信はあるけれど、どこまで役に立つかはわからないし…。

「ルリ、良かったら一緒にチーム組まない?」

「勿論!私なんかでよければ、ぜひ!」

 それは嬉しい提案だ。
 断る理由もないから、私はすぐに了承した。

「んー。もう一人はツバキを誘うとして、後一人。誰か候補はいそうかな?できれば魔法が使えるAクラスの生徒だと嬉しいけどね」

「…」

 ラスト誰にしよう。
 誰かいるのかな?同じAクラスに…。

 友達の少ない私はパッと名前が浮かぶわけもなく、無言の時間が生まれる。

「とりあえず私の方からも探してみるね。ルリも誰か誘えそうな子がいたら教えてほしいな」

 ネムも大人しい性格だから、Bクラスで誘えるかどうか怪しいみたいだ…。

「うん!私も誰かいたら声かけてみるね」


  ◇    ◇    ◇         ◇   ◇   ◇         ◇   ◇   ◇


「誰か誘える人いないかな?」
 
 ちょうど昼休みで、Aクラスの教室にいる私はツバキに尋ねた。
 
「昨日ネムが言っていたことが本当なら、あと一人チームに加わらないといけないんだよねー」

「そうだね」

 うーんと悩ましげな表情を浮かべるツバキを横目に私はイチゴパンを手に取った。

「できる事なら同じクラスメイトがいいんだけどさ」

 ツバキの意見には同感だ。
 魔法が使えるメンバーがいるとサバイバル生活が楽になる。
 火があれば調理の幅が広がるし、水が生成できるなら川を探す手間が省けるから。
 仮に魔物と遭遇しても、魔法が扱えるなら戦闘の選択肢が広がるのは間違いないし。

 ツバキと二人で会話していると、茶髪の女子生徒が私に話しかけてきた。

「二人にお願いがあるんだけどいいかな?」

 この子は同じクラスメイトで、名前は確かー。
 ナタリーだったかな。

「どうしたの?」

「もし、野外演習のメンバーに空きがあるのなら一緒のチームに入っちゃダメかな?」

 私はチラッと視線を横に向けると、ツバキは小さく首を縦に振った。
 どうやらツバキも私と一緒と同じ考えのようだ。
 クラスメイトなら是非ともチームに誘いたい。

「ナタリーは他に誰かと組んでいるの?」

「誰とも組んでないよ!」

 まだ一人だったみたいだ。
 昨日の今日の話だしね…。
 そもそも、四人以上のチームでサバイバルをする事自体、Aクラスの大半知らないじゃないだろうか。
 リリー先生はほとんど説明できる状態じゃなかったしね…。
 
 ナタリーもBクラスにも友達か知り合いがいないと、この話は知らないはずだけど。
 まあ、いいか。

「そうなんだ!私の他にメンバーが二人いるけど、それでも良かったらチームを組んで欲しいかな!」

 その条件で良ければこちらとしては一つ悩み事が減るからとても助かる。

「大丈夫だよ!よろしくね!」

 ナタリーから手を差し出されたので、私もそれに応えて握手を交わした。

「ルリちゃんの他にメンバーは、ツバキちゃんで合ってる?」
 
 ナタリーがツバキに質問を投げるかける。

「そうだよ!最後の一人はBクラスにいる妹のネムがメンバーかな!」

「ネムちゃんとはまだ面識が無いから、また近いうちに紹介してくれたら嬉しいな!」

「おっけー!」

「楽しそうに話している最中にお邪魔してごめんね。二人ともまたね!」

 ナタリーはそう言って踵を返すと、教室を出て行った。

「ツバキはナタリーと仲良いの?」

「いやーどうだろ?今まで関わったことはあんまりなかったかなぁ?いつも私は委員長のことしか意識してなかったから、そこまで接点はなったと思う」

「そっか」

 これを機会に交友関係を広めるのはいいかもしれない。
 編入してからネムとツバキしか、深く関りがなかったからだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」

まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。 目が覚めたら、婚約破棄されていた。 理由は「地味で面白みがない」から。 泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。 最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。 でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。 厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。 そして就任スピーチで宣言した。 「500人全員の名前を、覚えます」 冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。 悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。 元婚約者は——後悔し始めていた。 婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。 なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。

1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう
ファンタジー
【火曜、木曜、土曜、に投稿中!】 千年前に起こった大戦を鎮めたのは、最強と恐れられ畏怖された「魔女」を冠する魔法使いだった。 月日は流れ千年後。「永久の魔女」の二つ名を持つ最強の魔法使いトキワ・ルカはふとしたことで眠ってしまいようやく目が覚める。 気がつくとそこは魔力の濃度が下がり魔法がおとぎ話と呼ばれるまでに落ちた世界だった。 代わりに魔術が存在している中、ルカは魔術師になるためアルカード魔術学校に転入する。 けれど最強の魔女は、有り余る力を隠しながらも周囲に存在をアピールしてしまい…… 最強の魔法使い「魔女」の名を冠するトキワ・ルカは、現代の魔術師たちを軽く凌駕し、さまざまな問題に現代の魔術師たちと巻き込まれていくのだった。 ※こちらの作品は小説家になろうやカクヨムでも投稿しています。

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので

モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。 貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。 ──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。 ……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!? 公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。 (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

姉の忘れ形見を育てたいだけなのに、公爵閣下の執着が重いんですが!?~まっすぐ突き進み系令嬢の公爵家再建計画

及川えり
ファンタジー
突然届いた双子の姉からの手紙。 【これをあなたが読んでいるころにはわたしはもう死んでいることでしょう。わたしのことは探さないでね。双子を引き取ってもらえないかしら?】 姉の遺言通り双子を育てようと姉の嫁ぎ先へと突入する。 双子を顧みなかったという元夫のウィルバート公爵に何とか双子を引き取れるよう掛け合うが、話の流れからそのまま公爵家に滞在して双子を育てる羽目に。 だが、この公爵家、何かおかしい? 異常に気付いたハンナは公爵家に巣くう膿をとりのぞくべく、奮闘しはじめる。 一方ハンナを最初は適当にあしらっていたウィルバートだったが、ハンナの魅力に気付き始め……。 ハンナ・キャロライン・バーディナ 22歳      バーディナ伯爵家令嬢         ✖️ ウィルバート・アドルファス・キングスフォード 26歳      キングスフォード公爵 ブックマーク登録、いいね❤️、エール📣たくさんいただきありがとうございます。 とても励みになります。 感想もいただけたら嬉しいです。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。 2025/9/29 追記開始しました。毎日更新は難しいですが気長にお待ちください。

時が巻き戻った悪役令嬢は、追放先で今度こそ幸せに暮らしたい

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【その断罪、待っていました!】 私は侯爵令嬢オフィーリア・ドヌーブ。王太子アシル・バスチエの婚約者だった。良い国母になる為、日々努力を怠らなかった。そんなある日、聖女を名乗る女性ソネットが現れ、あっという間にアシルは彼女に夢中になってしまう。妃の座を奪われることに危機感を抱いた私は、ありとあらゆる手段でソネットを陥れようとして失敗。逆に罰として侯爵家から除籍され、辺境の地へ幾人かの使用人達と共に追放されてしまう。追放先の村での暮らしは不便だったが、人々は皆親切だった。けれど元侯爵令嬢というプライドから最後まで私は素直になれなかった。そんな自分に後悔しながら長い時を孤独に過ごしていたある日。不思議な懐中時計の力によって、何故か断罪の真っ最中に時が巻き戻っていた。聖女への嫌がらせは無かったことに出来ない。それなら今世はおとなしく追放されて和やかに過ごそう。今度こそ幸せに暮らす為に—— ※他サイトでも投稿中

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

処理中です...