15 / 21
第15話 きっと大丈夫
しおりを挟む
リーサの手記を読み終えたルクレツィアは、しばらく悲しみから抜け出せずにいたが、次第に落ち着きを取り戻していった。
そしてラウナスとカークに、手記に書かれていた内容を全て話した。
時折、言葉に詰まらせながらも、ルクレツィアは彼女の想いを伝えなければならないと強く思い、内容を正しく伝えようと努めた。
語り終えた後、しばらく沈黙が続いた。
神殿が重大な事実を隠蔽した内容である為、2人が言葉を失うのも無理はなかった。
国王に知らせていないと書かれていた。
聖女の妊娠を隠蔽した事が事実なら大問題だ。
この真実をどの様に扱えばいいのか、その答えは直ぐに出せないに違いない。
そうして、ようやくラウナスが重い口を開いた。
「……500年前にそんな事があったとは、恥ずかしながら全く知らなかった。神殿はこの出来事を記録に残さなかったのだろうか。今までそんな話は聞いた事がない……」
ラウナスが顔を顰めた。
そしてカークも考え込む様に腕を組むと、ふと呟いた。
「オルグ……」
「あの、ユリゲル様?」
ルクレツィアがカークの様子がおかしい事に気が付き、声を掛けた。
カークが我に返ると言った。
「すみません。オルグという名前……なぜか引っ掛かるのです。どこかで聞いた事がある様な……」
カークは再び考え込んだが、やがて首を横に振って言った。
「思い出せませんね。またそれは後ほど調べる事とします。今は、500年前の聖女の手記についてどうするかを話し合いましょう。」
その言葉にラウナスも同意した。
「そうだな。この真実は予想外だった……。これを素直に神皇聖下にお伝えしていいものか……」
そう言ったラウナスの表情に影が落とされた。
ルクレツィアは訝し気に尋ねた。
「何故です?お知らせするべき重要な内容だと思われますが……」
そう言われたラウナスは、ルクレツィアを神妙に見詰めた。
そして、しばらく何かを推し量る様に黙って見詰めていたが、やがて重い口を開くと言った。
「いいかい?これを知らせるという事は、神殿の過去の大罪を申告するという事だ。神殿に挑戦状を叩き付けたと言っても過言ではない。」
「あっ」
その言葉にルクレツィアは思わず声を上げた。
なるほど。
そう言う事か!
ルクレツィアはラウナスが言っている意味が理解できた。
要するにこれが真実だと証明できなければ、神殿を貶め様とした者として名誉棄損で訴えられるかもしれない。
下手すれば、国王陛下を謀った罪にも問われる可能性がある。
よって、真実だと証明できなければ下手すれば投獄され、貴族の身分を剥奪されかねないという事だ。
ルクレツィアはその考えに至って、顔を青ざめた。
その様子を見たラウナスはルクレツィアが自分が言った意図を理解したと感じ、2人に尋ねた。
「君達は本当にこの内容を申告するつもりかい?」
その問いに2人は直ぐに返事を返せなかった。
ルクレツィアは迷っていた。
これはモンタール家にも関わってくる問題だ。
カークも同様だ。
証明出来なければ、一族が汚名を被る事となる。
それを今、この場で、直ぐに決める事なんて出来ない……。
だけど……。
この真実を知らせないままでいいはずがない。
このままだとメルファも過去の聖女と同じ道を歩む事になる。
そんなの……嫌だ。
ルクレツィアは両手を強く握り締めた。
「だからって……このまま知った事を隠したままでいられません。」
ルクレツィアが口を開いた。
すると、黙っていたカークも口を開いた。
「……私も、知った以上はこの事実は国王陛下にお知らせするべきだと考えます。」
その2人の真剣な眼差しを見て、ラウナスは頷いた。
「そうだな。私も同感だ。知った以上、このまま何もしないでいる訳にはいかない。だから、まずはこの事を神皇聖下にお知らせしようと思う。もちろん、内々にだ。」
その言葉にルクレツィアが希望を込めた眼差しを向けた。
続けてラウナスが言った。
「内々なのだから、これによって君達に迷惑が掛かる事はないと約束しよう。私の名に誓って。」
「ありがとうございます。」
「けれど、神皇聖下がどの様に判断なさるかは分からない。」
「はい。」
ルクレツィアが返事を返す。
「なので、モンタール嬢には申し訳ないが、できるだけ早く解読して書面に記してもらえないだろうか。」
「そして国王陛下にも速やかに申し伝えなければならないだろう。ただ、神皇聖下が真偽の証明なしにそれを許可するかどうかは分からないが……」
そこでラウナスの瞳に強い光が宿った。
「けれど、私としては知らせるべきと進言するつもりだ。例え、神殿がどの様な責めを受ける事となったとしても。」
ルクレツィアはラウナスがそう言ってくれた事が素直に嬉しかった。
神殿はこれを隠蔽し続けるかもしれないと少し不安だったからだ。
ラウナス大神官様を信じて良かった……。
ルクレツィアがそう思っていると、更にラウナスが言った。
「だから非公式にはなるかもしれないが、この内容の真偽について話し合う場が設けられる事になるだろう。極限られた者達だけで秘密裏に。まずは、それが神殿側にとっても、君達にとっても最善だと思う。」
ルクレツィアは大きく頷いた。
「ええ。それは私達にとって、とても有難い提案です。私は……リーサ様の想いを無下にしたくないです。私が解読できたのも、きっと偶然じゃない。」
ルクレツィアの手に力が込められた。
「だって、今度こそ聖女であるメルファには幸せになって欲しいから……。私にできる事があればどんな事でもお手伝いします。ですから、今日は夜通しこの手記を書き写す作業をさせて下さい。お願いしますっ」
そう言い、ルクレツィアは深々と頭を下げた。
ラウナスはルクレツィアの側に歩み寄ると、顔を上げさせた。
「それはこちらも願ってもない申し出だよ。ありがとう。モンタール公爵閣下に許可を貰えたら、ぜひお願いしたい。私からも口添えをさせて貰おう。」
「はい。よろしくお願い致します。」
ルクレツィアは明るい声で言った。
そしてラウナスがカークを振り返ると言った。
「カーク君はどうするつもりだろうか?」
カークは少し考え込む様な遠い目をした。
「そうですね……」
カークが重苦しい声で言った。
「……真実だと証明してもいいのですか?」
その問いにラウナスがフッと笑みを漏らした。
「君が心配する必要はないよ。これは神殿が過去に起こした過ちなのだから。なら、証明しないで欲しいと頼んだらやめてくれるのかな?」
面白そうな顔をしてラウナスがカークを見詰めた。
戸惑ったカークが何も言えないでいると、ラウナスが笑って言った。
「冗談だ。過去の過ちは正さなくてはならない。私も知ってしまった以上、無視する事はできない。」
カークは黙って頷いた。
そして、カークは覚悟を決めて、瞳に強い光を宿すと言った。
「……そうですね。私の願いは聖女の待遇改善です。一番重要なのは、この話が真実だと認められる事です。必ず証明してみせます。だから、モンタール嬢が解読した内容を真実と証明するためにも、オルグという人物を調べる必要があります。なので、私はオルグという人物を調査する事にします。」
ラウナスも頷くと言った。
「ああ。私も神殿にある資料をもう一度調べ直してみよう。そして神皇聖下には資料ができ次第、直ぐにお伝えするつもりだ。あの方なら私達が知らない何かをご存じかもしれない。だから……、モンタール嬢がなぜ解読できるのか理由を説明してもいいだろうか?もちろん、内々なので家に迷惑が掛かる事はないと約束する。」
ラウナスがルクレツィアを伺い見た。
ルクレツィアはゆっくりと頷いて答えた。
「はい。もちろん問題ありません。」
「ありがとう。では、至急手紙を送れるように神官に手配をお願いしてくるので、少し失礼する。」
そう言い、ラウナスが立ち去っていった。
2人はその様子を黙って見送ると、やがてカークが口を開いた。
「では、私も失礼します。内容について審議が行われる前に、何としても真実の裏付けを、できるだけ沢山見つけなければ……」
「はい。よろしくお願いします。私は写生を終えて城に戻ったら、メルファにこの内容を全てお話します。きっと喜んでくれると思います。」
ルクレツィアが笑顔で言った。
それに対してカークも笑顔を返す。
「よろしくお願いします。そして……解読、本当にありがとうございました。」
カークが急に真剣な顔をして、ルクレツィアに深く頭を下げた。
そして顔を上げると、芯の通ったハッキリとした声で言った。
「500年前の聖女の想いを、絶対に……無駄に終わらせはしません。」
そこで一度言葉を切ると、口を強く引き結んだ。
そして強い瞳で真っ直ぐにルクレツィアを見詰めた。
「メルファを、絶対に不幸にしません。彼女を幸せにしてみせます。」
その言葉を聞いて、ルクレツィアの瞳に涙が溢れた。
「はいっ……はい、メ、メルファをどうか……どうか、幸せにしてあげて、く、くだ、くださいっ……」
ルクレツィアは声を詰まらせながらも何とか言い切ると、頭を下げた。
嬉しかった。
そんな風にメルファを想ってくれて。
乙女ゲームをやっていた頃から主人公であるメルファが好きだった。
この世界に生まれて、彼女に出会って、もっと彼女の事が好きになった。
私がこうしていられるのも彼女のお陰で、彼女との関係はただの親友という枠では収まらない。
メルファとの不思議な繋がりが、私達を互いにとても大切な存在へと導いてくれた。
その彼女が不幸になるなんて許せない。
そんな事考えられなかった。
前世の乙女ゲームは両想いとなってゲーム終了だった。
その後は、当たり前に幸せが待っていると思っていた。
けれど、現実は……もっと複雑で残酷で苦しい事がたくさんある。
前世では綺麗な世界しか見えてなかった。
いや、攻略対象者達の過去は決して綺麗ではなかった。
けれど、その事を本当の意味では理解できていなかったんだ。
これからも楽しい事だけじゃない。
つらい事がたくさん待っているに違いない。
けれど……きっと大丈夫。
みんな真っ直ぐに前を向いているから。
思い描いた未来に向かって、進もうと必死で。
時に負けそうになるかもしれない。
挫けて放棄する時があるかもしれない。
それでも、みんながいれば……きっと大丈夫。
そしてラウナスとカークに、手記に書かれていた内容を全て話した。
時折、言葉に詰まらせながらも、ルクレツィアは彼女の想いを伝えなければならないと強く思い、内容を正しく伝えようと努めた。
語り終えた後、しばらく沈黙が続いた。
神殿が重大な事実を隠蔽した内容である為、2人が言葉を失うのも無理はなかった。
国王に知らせていないと書かれていた。
聖女の妊娠を隠蔽した事が事実なら大問題だ。
この真実をどの様に扱えばいいのか、その答えは直ぐに出せないに違いない。
そうして、ようやくラウナスが重い口を開いた。
「……500年前にそんな事があったとは、恥ずかしながら全く知らなかった。神殿はこの出来事を記録に残さなかったのだろうか。今までそんな話は聞いた事がない……」
ラウナスが顔を顰めた。
そしてカークも考え込む様に腕を組むと、ふと呟いた。
「オルグ……」
「あの、ユリゲル様?」
ルクレツィアがカークの様子がおかしい事に気が付き、声を掛けた。
カークが我に返ると言った。
「すみません。オルグという名前……なぜか引っ掛かるのです。どこかで聞いた事がある様な……」
カークは再び考え込んだが、やがて首を横に振って言った。
「思い出せませんね。またそれは後ほど調べる事とします。今は、500年前の聖女の手記についてどうするかを話し合いましょう。」
その言葉にラウナスも同意した。
「そうだな。この真実は予想外だった……。これを素直に神皇聖下にお伝えしていいものか……」
そう言ったラウナスの表情に影が落とされた。
ルクレツィアは訝し気に尋ねた。
「何故です?お知らせするべき重要な内容だと思われますが……」
そう言われたラウナスは、ルクレツィアを神妙に見詰めた。
そして、しばらく何かを推し量る様に黙って見詰めていたが、やがて重い口を開くと言った。
「いいかい?これを知らせるという事は、神殿の過去の大罪を申告するという事だ。神殿に挑戦状を叩き付けたと言っても過言ではない。」
「あっ」
その言葉にルクレツィアは思わず声を上げた。
なるほど。
そう言う事か!
ルクレツィアはラウナスが言っている意味が理解できた。
要するにこれが真実だと証明できなければ、神殿を貶め様とした者として名誉棄損で訴えられるかもしれない。
下手すれば、国王陛下を謀った罪にも問われる可能性がある。
よって、真実だと証明できなければ下手すれば投獄され、貴族の身分を剥奪されかねないという事だ。
ルクレツィアはその考えに至って、顔を青ざめた。
その様子を見たラウナスはルクレツィアが自分が言った意図を理解したと感じ、2人に尋ねた。
「君達は本当にこの内容を申告するつもりかい?」
その問いに2人は直ぐに返事を返せなかった。
ルクレツィアは迷っていた。
これはモンタール家にも関わってくる問題だ。
カークも同様だ。
証明出来なければ、一族が汚名を被る事となる。
それを今、この場で、直ぐに決める事なんて出来ない……。
だけど……。
この真実を知らせないままでいいはずがない。
このままだとメルファも過去の聖女と同じ道を歩む事になる。
そんなの……嫌だ。
ルクレツィアは両手を強く握り締めた。
「だからって……このまま知った事を隠したままでいられません。」
ルクレツィアが口を開いた。
すると、黙っていたカークも口を開いた。
「……私も、知った以上はこの事実は国王陛下にお知らせするべきだと考えます。」
その2人の真剣な眼差しを見て、ラウナスは頷いた。
「そうだな。私も同感だ。知った以上、このまま何もしないでいる訳にはいかない。だから、まずはこの事を神皇聖下にお知らせしようと思う。もちろん、内々にだ。」
その言葉にルクレツィアが希望を込めた眼差しを向けた。
続けてラウナスが言った。
「内々なのだから、これによって君達に迷惑が掛かる事はないと約束しよう。私の名に誓って。」
「ありがとうございます。」
「けれど、神皇聖下がどの様に判断なさるかは分からない。」
「はい。」
ルクレツィアが返事を返す。
「なので、モンタール嬢には申し訳ないが、できるだけ早く解読して書面に記してもらえないだろうか。」
「そして国王陛下にも速やかに申し伝えなければならないだろう。ただ、神皇聖下が真偽の証明なしにそれを許可するかどうかは分からないが……」
そこでラウナスの瞳に強い光が宿った。
「けれど、私としては知らせるべきと進言するつもりだ。例え、神殿がどの様な責めを受ける事となったとしても。」
ルクレツィアはラウナスがそう言ってくれた事が素直に嬉しかった。
神殿はこれを隠蔽し続けるかもしれないと少し不安だったからだ。
ラウナス大神官様を信じて良かった……。
ルクレツィアがそう思っていると、更にラウナスが言った。
「だから非公式にはなるかもしれないが、この内容の真偽について話し合う場が設けられる事になるだろう。極限られた者達だけで秘密裏に。まずは、それが神殿側にとっても、君達にとっても最善だと思う。」
ルクレツィアは大きく頷いた。
「ええ。それは私達にとって、とても有難い提案です。私は……リーサ様の想いを無下にしたくないです。私が解読できたのも、きっと偶然じゃない。」
ルクレツィアの手に力が込められた。
「だって、今度こそ聖女であるメルファには幸せになって欲しいから……。私にできる事があればどんな事でもお手伝いします。ですから、今日は夜通しこの手記を書き写す作業をさせて下さい。お願いしますっ」
そう言い、ルクレツィアは深々と頭を下げた。
ラウナスはルクレツィアの側に歩み寄ると、顔を上げさせた。
「それはこちらも願ってもない申し出だよ。ありがとう。モンタール公爵閣下に許可を貰えたら、ぜひお願いしたい。私からも口添えをさせて貰おう。」
「はい。よろしくお願い致します。」
ルクレツィアは明るい声で言った。
そしてラウナスがカークを振り返ると言った。
「カーク君はどうするつもりだろうか?」
カークは少し考え込む様な遠い目をした。
「そうですね……」
カークが重苦しい声で言った。
「……真実だと証明してもいいのですか?」
その問いにラウナスがフッと笑みを漏らした。
「君が心配する必要はないよ。これは神殿が過去に起こした過ちなのだから。なら、証明しないで欲しいと頼んだらやめてくれるのかな?」
面白そうな顔をしてラウナスがカークを見詰めた。
戸惑ったカークが何も言えないでいると、ラウナスが笑って言った。
「冗談だ。過去の過ちは正さなくてはならない。私も知ってしまった以上、無視する事はできない。」
カークは黙って頷いた。
そして、カークは覚悟を決めて、瞳に強い光を宿すと言った。
「……そうですね。私の願いは聖女の待遇改善です。一番重要なのは、この話が真実だと認められる事です。必ず証明してみせます。だから、モンタール嬢が解読した内容を真実と証明するためにも、オルグという人物を調べる必要があります。なので、私はオルグという人物を調査する事にします。」
ラウナスも頷くと言った。
「ああ。私も神殿にある資料をもう一度調べ直してみよう。そして神皇聖下には資料ができ次第、直ぐにお伝えするつもりだ。あの方なら私達が知らない何かをご存じかもしれない。だから……、モンタール嬢がなぜ解読できるのか理由を説明してもいいだろうか?もちろん、内々なので家に迷惑が掛かる事はないと約束する。」
ラウナスがルクレツィアを伺い見た。
ルクレツィアはゆっくりと頷いて答えた。
「はい。もちろん問題ありません。」
「ありがとう。では、至急手紙を送れるように神官に手配をお願いしてくるので、少し失礼する。」
そう言い、ラウナスが立ち去っていった。
2人はその様子を黙って見送ると、やがてカークが口を開いた。
「では、私も失礼します。内容について審議が行われる前に、何としても真実の裏付けを、できるだけ沢山見つけなければ……」
「はい。よろしくお願いします。私は写生を終えて城に戻ったら、メルファにこの内容を全てお話します。きっと喜んでくれると思います。」
ルクレツィアが笑顔で言った。
それに対してカークも笑顔を返す。
「よろしくお願いします。そして……解読、本当にありがとうございました。」
カークが急に真剣な顔をして、ルクレツィアに深く頭を下げた。
そして顔を上げると、芯の通ったハッキリとした声で言った。
「500年前の聖女の想いを、絶対に……無駄に終わらせはしません。」
そこで一度言葉を切ると、口を強く引き結んだ。
そして強い瞳で真っ直ぐにルクレツィアを見詰めた。
「メルファを、絶対に不幸にしません。彼女を幸せにしてみせます。」
その言葉を聞いて、ルクレツィアの瞳に涙が溢れた。
「はいっ……はい、メ、メルファをどうか……どうか、幸せにしてあげて、く、くだ、くださいっ……」
ルクレツィアは声を詰まらせながらも何とか言い切ると、頭を下げた。
嬉しかった。
そんな風にメルファを想ってくれて。
乙女ゲームをやっていた頃から主人公であるメルファが好きだった。
この世界に生まれて、彼女に出会って、もっと彼女の事が好きになった。
私がこうしていられるのも彼女のお陰で、彼女との関係はただの親友という枠では収まらない。
メルファとの不思議な繋がりが、私達を互いにとても大切な存在へと導いてくれた。
その彼女が不幸になるなんて許せない。
そんな事考えられなかった。
前世の乙女ゲームは両想いとなってゲーム終了だった。
その後は、当たり前に幸せが待っていると思っていた。
けれど、現実は……もっと複雑で残酷で苦しい事がたくさんある。
前世では綺麗な世界しか見えてなかった。
いや、攻略対象者達の過去は決して綺麗ではなかった。
けれど、その事を本当の意味では理解できていなかったんだ。
これからも楽しい事だけじゃない。
つらい事がたくさん待っているに違いない。
けれど……きっと大丈夫。
みんな真っ直ぐに前を向いているから。
思い描いた未来に向かって、進もうと必死で。
時に負けそうになるかもしれない。
挫けて放棄する時があるかもしれない。
それでも、みんながいれば……きっと大丈夫。
0
あなたにおすすめの小説
転生悪役令嬢は冒険者になればいいと気が付いた
よーこ
恋愛
物心ついた頃から前世の記憶持ちの悪役令嬢ベルティーア。
国の第一王子との婚約式の時、ここが乙女ゲームの世界だと気が付いた。
自分はメイン攻略対象にくっつく悪役令嬢キャラだった。
はい、詰んだ。
将来は貴族籍を剥奪されて国外追放決定です。
よし、だったら魔法があるこのファンタジーな世界を満喫しよう。
国外に追放されたら冒険者になって生きるぞヒャッホー!
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
噂の聖女と国王陛下 ―婚約破棄を願った令嬢は、溺愛される
柴田はつみ
恋愛
幼い頃から共に育った国王アランは、私にとって憧れであり、唯一の婚約者だった。
だが、最近になって「陛下は聖女殿と親しいらしい」という噂が宮廷中に広まる。
聖女は誰もが認める美しい女性で、陛下の隣に立つ姿は絵のようにお似合い――私など必要ないのではないか。
胸を締め付ける不安に耐えかねた私は、ついにアランへ婚約破棄を申し出る。
「……私では、陛下の隣に立つ資格がありません」
けれど、返ってきたのは予想外の言葉だった。
「お前は俺の妻になる。誰が何と言おうと、それは変わらない」
噂の裏に隠された真実、幼馴染が密かに抱き続けていた深い愛情――
一度手放そうとした運命の絆は、より強く絡み合い、私を逃がさなくなる。
逃げたい悪役令嬢と、逃がさない王子
ねむたん
恋愛
セレスティーナ・エヴァンジェリンは今日も王宮の廊下を静かに歩きながら、ちらりと視線を横に流した。白いドレスを揺らし、愛らしく微笑むアリシア・ローゼンベルクの姿を目にするたび、彼女の胸はわずかに弾む。
(その調子よ、アリシア。もっと頑張って! あなたがしっかり王子を誘惑してくれれば、私は自由になれるのだから!)
期待に満ちた瞳で、影からこっそり彼女の奮闘を見守る。今日こそレオナルトがアリシアの魅力に落ちるかもしれない——いや、落ちてほしい。
捨てられた悪役はきっと幸せになる
ariya
恋愛
ヴィヴィア・ゴーヴァン公爵夫人は少女小説に登場する悪役だった。
強欲で傲慢で嫌われ者、夫に捨てられて惨めな最期を迎えた悪役。
その悪役に転生していたことに気づいたヴィヴィアは、夫がヒロインと結ばれたら潔く退場することを考えていた。
それまでお世話になった為、貴族夫人としての仕事の一部だけでもがんばろう。
「ヴィヴィア、あなたを愛してます」
ヒロインに惹かれつつあるはずの夫・クリスは愛をヴィヴィアに捧げると言ってきて。
そもそもクリスがヴィヴィアを娶ったのは、王位継承を狙っている疑惑から逃れる為の契約結婚だったはずでは?
愛などなかったと思っていた夫婦生活に変化が訪れる。
※この作品は、人によっては元鞘話にみえて地雷の方がいるかもしれません。また、ヒーローがヤンデレ寄りですので苦手な方はご注意ください。
※表紙はAIです。
運命に勝てない当て馬令嬢の幕引き。
ぽんぽこ狸
恋愛
気高き公爵家令嬢オリヴィアの護衛騎士であるテオは、ある日、主に天啓を受けたと打ち明けられた。
その内容は運命の女神の聖女として召喚されたマイという少女と、オリヴィアの婚約者であるカルステンをめぐって死闘を繰り広げ命を失うというものだったらしい。
だからこそ、オリヴィアはもう何も望まない。テオは立場を失うオリヴィアの事は忘れて、自らの道を歩むようにと言われてしまう。
しかし、そんなことは出来るはずもなく、テオも将来の王妃をめぐる運命の争いの中に巻き込まれていくのだった。
五万文字いかない程度のお話です。さくっと終わりますので読者様の暇つぶしになればと思います。
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
転生したら、乙女ゲームの悪役令嬢だったので現実逃避を始めます
山見月あいまゆ
恋愛
私が前世を思い出したのは前世のことに興味を持った時だった
「えっ!前世って前の人生のことなの。私の前の人生はなんだろう?早く思い出したい」
そう思った時すべてを思い出した。
ここは乙女ゲームの世界
そして私は悪役令嬢セリーナ・グランチェスタ
私の人生の結末はハーッピーエンドなんて喜ばしいものじゃない
バットエンド処刑されて終わりなのだ
こんなことを思い出すなら前世を思い出したくなかった
さっき言ったこととは真逆のことを思うのだった…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる