夢見るピルタの昏睡魔法っ!

来我 春天(らいが しゅんてん)

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第5-2話 お姫様、かわいいっ!

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 いや、まぁ、もしかしたら居るかもーくらいは覚悟してたんだけどさぁ。
 これから眠るであろう娘のお部屋に、謁見フル装備のまま入ってる王様って、どうなのよぅ……。
 クエリちゃんだって、自分の親がガン見してたら落ち着いて寝られないでしょうに。
 そんな失礼極まりないコトを考えている私をよそに、王様はずかずかとクエリちゃんの寝所を歩き回っている。
 部屋にいるほぼ全員が王様の行動を目で追っているような、そんな状況。
 王様はそんなコトを気にする様子もなく、部屋の片隅にある小さな机の前に立って口を開いた。

「ん? おい侍従長じじゅうちょう。これは何だ?」

 どことなく不機嫌そうな声を上げた王様は、クエリちゃんのお世話係を呼びつけた。
 王様の見ている机の上には、画用紙とクレヨンのようなものが置かれている。
 クレヨンは出しっぱなしにされている訳でもなくきちんと片付けられていて、置かれている画用紙も1枚だけ。
 遠目で覗き込むと、その画用紙には恐らくクエリちゃんのものであろう絵が描かれているのが見えた。

「は、はい陛下。なんでございましょう」

 クエリちゃんの近くにいた侍従長さんと思われるご年配のメイドさんは、王様の声を聞いて慌てて駆け寄った。

「これは何だと聞いている」
「あ……これは、姫様のお描きになられました絵でございます」
「そんな事は解っている」

 侍従長さんの言葉をぴしゃりと遮るように、王様は語気を強める。
 な、何だか王様、怒ってる?

「えっ……? あ、あの……」
「クエリには一日も早く、王家の娘としての素養を身につけさせねばならん。その為には時間の限り勉学に励ませよと命じたはず。このような絵など描かせて、どうするつもりだ」
「い、いえ、そんな……」

 ひ、ひぇ~~っ……。
 なんだよぅ、この王様。
 クエリちゃんの描いた絵をみつけたら、怒り出しちゃった。
 ちょっと冷たすぎるというか、厳しすぎるんじゃないの?
 自分の娘が描いた絵が置いてあったら、フツーなら褒めてあげるもんじゃない?
 それなのにこの王様ときたら、絵なんか描いてる暇があったら勉強させろって言ってるんでしょ!?

「あの、陛下……お言葉ではございますが、姫様をご立派な方へ育てるには勉学のほかにも一般的な教養も必要でございましょう。合間に息抜きとして描かれた絵さえもお叱りになられては、あまりにも……」

 厳しい口調で迫られた侍従長さんだったが、丁寧な言葉遣いで王様を諭すように反論した。
 そりゃそうよね、侍従長さんの言ってるコトはド正論だと私だって思う。
 クエリちゃんが描いたであろう絵には、何人かの人物がカラフルに描かれていた。
 鎧を着た騎士さんに、ピンク色のクマさん……あ、これはもしかして、クエリちゃんが今まさに抱っこしてるクマのぬいぐるみを描いたのかな?
 どれも子供らしいタッチでのびのびと描かれていて、すごく上手だと思う。
 けど、王様は更に強い口調で返した。

「ならぬ。もし次もこのようなものを見かけたならば、お前にはひまを出す。今のクエリに必要なのは勉学ただひとつ。よいな?」

 …………聞いてた私は、絶句しちゃった。
 思わず横にいたネムちゃんと目を合わせたけど、ネムちゃんも呆れたような顔で首を小さく横に振っていた。
 これはひどい。
 王様なんだから当然偉いんでしょうけど、これはダメだ。
 この人が部屋にいると、昏睡魔法も何だかうまく使えない気がする。
 私は意を決して王様の背中に話しかけた。

「あの、王様」
「ん? 何だ、聖女殿」
「言い忘れてたんですけど、『悪夢祓い』の最中は、危険な夢を見ていた場合にたまーに周囲にいる人も危ないコトがあるので、できれば王様は外に居ていただいた方が……」

 王様を部屋から追い出す目的で提案してみた私だったが、無駄だった。

「ほう、そうなのか。だが心配には及ばぬ。私のすぐ横には近衛隊長を付けるし、何よりも余はクエリの『悪夢』が消え去ってくれたことをこの目で見届ける義務がある」
「へっ!? や、その、でも」
「私はそなたに大いに期待している。どうか確実に、クエリから悪夢を消し去ってくれ、頼んだぞ」
「は、はい、あの……努力しますぅ」

 部屋にいるメイドさんや騎士さんたちは、おねむな姫を気遣ってか可能な限り静かにしてるというのに、この王様ったらすっごくデッカい声で話すなぁ。
 謁見の間で喋ってた時と、ほとんど変わらないボリュームだったんじゃないの。
 うぅ、こんなコト言っちゃダメなんだろうけどさ……この王様、まるでお金と権力でゴリ押しするダメなお父さんみたいだよね。
 私ちょっと、いやだいぶニガテ。
 ネムちゃんも同じような印象を抱いたようで、王様の声に対して返事もしない。

「ではクエリ、準備は良いか? この者がそなたにぐっすりと眠るための魔法をかけてくれる。ベッドに入りなさい」
「あっ……は、はい、おとうさま…………」

 空気が読めてなさそうな王様は、ベッドにいるクエリちゃんにベッドに入るよう促した。
 小さな声で返事をしたクエリちゃんは、まわりにいるメイドさんたちにぺこりと頭を下げると、もそもそとベッドに入っていった。
 お世話をしていたメイドさんたちも、静かに一例をしてから部屋の隅へと下がっていく。
 そしてついに、部屋にいるほぼ全員の視線が私たちに向いた。
 うっひょ~! や、やりづらいなぁぁ~っ!?
 私は頭をぼりぼりと掻きながら、ベッドの上に座るクエリちゃんの元へと近付いた。
 お人形みたいに佇むクエリちゃんは、やっぱり相変わらず浮かない表情をしてる。
 魔法をかけられるのが不安なのか、それとも何か他に気になるコトでも……
 
「あ、あの……聖女さま……」
「ん? なぁに、クエリちゃん?」
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