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第6-1話 夢見るクエリちゃんっ!
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「んんっ…………!?」
最初に異変に気付いたのは、ネムちゃんだった。
「ふぇっ? どうしたの、ネムちゃんっ?」
「これは…………」
いつもの調子とは違う、歯切れの悪い返事。
ネムちゃんは、『もや』を発生させている熟睡中のクエリちゃんの方を見ている。
釣られて私も凝視すると────────
「え、えぇっ? あれっ!?」
驚いて、思わず声が出ちゃった。
そこには確かにクエリちゃんが眠っていて、頭の周囲からは『もや』が出始めていた。
しかし、いつもと違う。
『もや』の色がすごく薄い……? と言うより、真っ白い!?
なになに? 何なのこれっ!?
いつもの泥水みたいにネバっこい黒い『もや』じゃない!?
「ど、どういうコトっ!? ネムちゃんっ!?」
「待てピルタ、見ろ」
「ふぇっ!?」
もこもこと大きくなる白い『もや』は、いつもの黒いものと同じように部屋の天井に集まっていく。
そして塊になった次の瞬間、その中央に何かが見え始めた。
それはいつも通り、『悪夢』が具現化する前の映像、のはずだったのだが……
私は、言葉を失った。
「な、何だっ!? 聖女殿っ!?」
部屋の隅で見ていた王様は、私たちの様子がおかしかったのを察したのか、大声で叫んだ。
両脇を守っている騎士たちも、腰に下げた剣の柄に手を添えている。
そんな中、私は真っ白い『もや』の中で具現化する夢を覗き込んでいた。
「こ、これって……………………?」
それは、夢を映し出した映像。
『もや』の中にあるというコトは、間違いなく眠っているクエリちゃんの夢だ。
具現化した夢の中に映し出されていたのは、金髪の女性。
そして、そのすぐそばで楽しそうに笑っている、金髪の小さな少女。
二人のいる白い『もや』の中は、まるで楽園のようだったのだ。
白い小さな花が一面に咲き乱れる花畑で、楽しそうに笑う女性と少女。
しばらくして、ぐるりと場面が変わったかと思うと、今度は夜の小さな家の中で絵本を読む2人。
女性は慈愛に満ちた笑みを浮かべ、少女は可愛らしい声を上げて笑ってるんだ。
金色に輝く髪を持つ、その少女は────────
間違いなく、小さい頃のクエリちゃんだ。
「ど、どうなってるの……? これが、クエリちゃんの見ている『悪夢』……?」
具現化された夢の映像は、わずかな時間でダイジェストのように次々と切り替わっていく。
ある時は、小さな釜戸で一緒にお料理をしている場面。
またある時は、暖炉の前で暖かそうな飲み物を二人で飲んでいる場面。
まるで幸せを絵に描いたような光景ばかりの、具現化された夢の映像が続いた。
「こ、これのどこが『悪夢』なの? す、すっごく良い夢じゃない……!?」
思わず発した言葉に、そばにいたネムちゃんはひどく低い声で呟いた。
「あの国王…………まさか…………」
ぼそりとつぶやいたネムちゃんは、何故かひどく不機嫌そうな顔をしていた。
それにしても、クエリちゃんが見ているこの夢は一体何なのだろう?
具現化されつつある夢の映像から、声が聞こえてくる。
『──────── えへへっ! お母さんっ、次はこの本を読んでっ!」
『あら、クエリ。まだ眠くないの? 今日はお昼寝だってしていないのに』
『お母さんに本を読んでもらいたいのっ! この本が読み終わったら寝るからぁ』
『ふふふ、わかったわ。じゃあこっちにおいで ────────』
一見して、小さい頃にクエリちゃんが……恐らくクエリちゃんのお母さんと暮らしているであろう夢。
金髪のクエリちゃんよりも、さらに長い金髪を揺らしながら笑っているクエリちゃんのお母さんは、とても幸せそうだ。
お母さんに抱かれて満面の笑みを浮かべている小さなクエリちゃんは、私が今日謁見の間で見たクエリちゃんとはだいぶ印象が違う。
心の底から笑っているような、見ているこっちまで嬉しくなっちゃうような笑顔だ。
さっきまで見ていた、今にも泣き出してしまいそうな顔などではない。
クエリちゃんのお母さんと言うコトは、この人が王妃様なのかな?
王妃様って確か……謁見の間で暗幕をかけられていた肖像画の人物だよね。
暗幕をかけられた肖像画、既にこの世を去ってしまったであろう人物。
ははあ、もしかしてクエリちゃんは王妃様と一緒だった頃を懐かしんで、夜な夜な泣いていたのかなぁ?
しかし……それにしては、2人がいる夢の中の光景には違和感がある。
どう見ても、王妃様とお姫様が暮らしているような光景に見えないのだ。
木でできた家はとても小さく、置いてある家具はどれもボロボロで、王族の人間が住む家にしては質素過ぎる。
それに、二人が着ている服装もとても王家の人たちが着るとは思えない地味なものだ。
そして一面に広がる白い花畑。
今日この王城に入ったときに見かけた前庭の花壇は立派なものだったが、それでもこの映像のような広大なものではない。
この夢の映像が、王城での暮らしぶりを映したものではないのは一目瞭然だ。
最初に異変に気付いたのは、ネムちゃんだった。
「ふぇっ? どうしたの、ネムちゃんっ?」
「これは…………」
いつもの調子とは違う、歯切れの悪い返事。
ネムちゃんは、『もや』を発生させている熟睡中のクエリちゃんの方を見ている。
釣られて私も凝視すると────────
「え、えぇっ? あれっ!?」
驚いて、思わず声が出ちゃった。
そこには確かにクエリちゃんが眠っていて、頭の周囲からは『もや』が出始めていた。
しかし、いつもと違う。
『もや』の色がすごく薄い……? と言うより、真っ白い!?
なになに? 何なのこれっ!?
いつもの泥水みたいにネバっこい黒い『もや』じゃない!?
「ど、どういうコトっ!? ネムちゃんっ!?」
「待てピルタ、見ろ」
「ふぇっ!?」
もこもこと大きくなる白い『もや』は、いつもの黒いものと同じように部屋の天井に集まっていく。
そして塊になった次の瞬間、その中央に何かが見え始めた。
それはいつも通り、『悪夢』が具現化する前の映像、のはずだったのだが……
私は、言葉を失った。
「な、何だっ!? 聖女殿っ!?」
部屋の隅で見ていた王様は、私たちの様子がおかしかったのを察したのか、大声で叫んだ。
両脇を守っている騎士たちも、腰に下げた剣の柄に手を添えている。
そんな中、私は真っ白い『もや』の中で具現化する夢を覗き込んでいた。
「こ、これって……………………?」
それは、夢を映し出した映像。
『もや』の中にあるというコトは、間違いなく眠っているクエリちゃんの夢だ。
具現化した夢の中に映し出されていたのは、金髪の女性。
そして、そのすぐそばで楽しそうに笑っている、金髪の小さな少女。
二人のいる白い『もや』の中は、まるで楽園のようだったのだ。
白い小さな花が一面に咲き乱れる花畑で、楽しそうに笑う女性と少女。
しばらくして、ぐるりと場面が変わったかと思うと、今度は夜の小さな家の中で絵本を読む2人。
女性は慈愛に満ちた笑みを浮かべ、少女は可愛らしい声を上げて笑ってるんだ。
金色に輝く髪を持つ、その少女は────────
間違いなく、小さい頃のクエリちゃんだ。
「ど、どうなってるの……? これが、クエリちゃんの見ている『悪夢』……?」
具現化された夢の映像は、わずかな時間でダイジェストのように次々と切り替わっていく。
ある時は、小さな釜戸で一緒にお料理をしている場面。
またある時は、暖炉の前で暖かそうな飲み物を二人で飲んでいる場面。
まるで幸せを絵に描いたような光景ばかりの、具現化された夢の映像が続いた。
「こ、これのどこが『悪夢』なの? す、すっごく良い夢じゃない……!?」
思わず発した言葉に、そばにいたネムちゃんはひどく低い声で呟いた。
「あの国王…………まさか…………」
ぼそりとつぶやいたネムちゃんは、何故かひどく不機嫌そうな顔をしていた。
それにしても、クエリちゃんが見ているこの夢は一体何なのだろう?
具現化されつつある夢の映像から、声が聞こえてくる。
『──────── えへへっ! お母さんっ、次はこの本を読んでっ!」
『あら、クエリ。まだ眠くないの? 今日はお昼寝だってしていないのに』
『お母さんに本を読んでもらいたいのっ! この本が読み終わったら寝るからぁ』
『ふふふ、わかったわ。じゃあこっちにおいで ────────』
一見して、小さい頃にクエリちゃんが……恐らくクエリちゃんのお母さんと暮らしているであろう夢。
金髪のクエリちゃんよりも、さらに長い金髪を揺らしながら笑っているクエリちゃんのお母さんは、とても幸せそうだ。
お母さんに抱かれて満面の笑みを浮かべている小さなクエリちゃんは、私が今日謁見の間で見たクエリちゃんとはだいぶ印象が違う。
心の底から笑っているような、見ているこっちまで嬉しくなっちゃうような笑顔だ。
さっきまで見ていた、今にも泣き出してしまいそうな顔などではない。
クエリちゃんのお母さんと言うコトは、この人が王妃様なのかな?
王妃様って確か……謁見の間で暗幕をかけられていた肖像画の人物だよね。
暗幕をかけられた肖像画、既にこの世を去ってしまったであろう人物。
ははあ、もしかしてクエリちゃんは王妃様と一緒だった頃を懐かしんで、夜な夜な泣いていたのかなぁ?
しかし……それにしては、2人がいる夢の中の光景には違和感がある。
どう見ても、王妃様とお姫様が暮らしているような光景に見えないのだ。
木でできた家はとても小さく、置いてある家具はどれもボロボロで、王族の人間が住む家にしては質素過ぎる。
それに、二人が着ている服装もとても王家の人たちが着るとは思えない地味なものだ。
そして一面に広がる白い花畑。
今日この王城に入ったときに見かけた前庭の花壇は立派なものだったが、それでもこの映像のような広大なものではない。
この夢の映像が、王城での暮らしぶりを映したものではないのは一目瞭然だ。
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