15 / 42
第6-2話 夢見るクエリちゃんっ!
しおりを挟む
『もや』の中に浮かび上がってくる映像は、もちろん現実にあったコトとは限らない場合もある。
『悪夢』に悩む本人が思い描いている想像の世界が映し出されることだってあるのは確かだ。
そういった夢はほとんどの場合、人物の周囲がぼやけていたり、背景が無かったりと、曖昧な映像になるコトが殆ど。
しかし今、目の前に映し出されているクエリちゃんの夢は、登場人物の表情までわかるほどにくっきりと描かれていて、背後の景色も細部まで鮮明に確認できるほどだ。
これがクエリちゃんのような小さな女の子が、想像だけで作り上げた世界だとは到底思えない。
つまりこれは、過去に実際にあった一場面なのだろう。
……と言うことは、この夢に出ている『お母さん』のお顔は、本物のクエリちゃんのお母さんなんだろうな。
そうなると、クエリちゃんのお母さんって綺麗な人なんだなぁ~。
やや痩せていて栄養状態は良くないように見えるけど、お肌なんかは真っ白で透き通るよう。
クエリちゃんとお揃いの金髪がすごく綺麗で ────────…………
あれっ……?
私は、思わずまた声を上げそうになった。
謁見の間で見た、巨大な肖像画。
不気味な感じで暗幕を半分かけられていた、銀色の額縁に入った王妃様の肖像画を思い出す。
灰色の布で覆われた肖像画の下半分に見えていた王妃様の髪は
たしか
金髪ではなかったはず…………!?
次の瞬間、またしても夢の映像が切り替わる。
穏やかだった雰囲気から一転、突如として現れたのは、まるでホラー映画のような白黒の擦り切れた景色。
まさに『悪夢』と言っても差し支えないほど冷たい雰囲気に満ちている。
小さな家の中、抱き合うクエリちゃんとお母さんが見えており────────何かを叫んでいるようだった。
二人の金髪も白黒になってしまった世界で燻んでしまったかのよう。
そして、二人の前には大勢の騎士。
二人が暮らしていた家の中に何人もの騎士が入り込み、先頭にいる甲冑の人物は何やら書面のようなものを掲げている。
その口から、おぞましい金属音のような声が響いてきた。
『──────── 王命により、命は奪わん。だがこの事を口外すれば、王権に関わる事態を引き起こし、ひいては娘の命も保証できなくなる。娘の無事を祈るならば、母であったことを忘れ、他言するな ────────』
耳をつん裂くような、不快な声。
あまりの迫力に、思わずごくりと唾を飲み込んだ時
「ピルタっっ!!」
大声で名前を呼ばれた私は、夢に見入ってしまっていた時間から急に引き戻された。
「ひゃああぁっ!? え、な、なにっ? ネムちゃんっ!?」
「良く聞け。この夢を食うのは中止だ。具現化もここで止める、いいな?」
「えぇっ!? そうなの!? どしたの!?」
「……この後、すぐ説明してやる。皆の前でなっ」
ネムちゃんのその言葉の直後、ネムちゃんの身体から発せられていた紫色の光が消えた。
直後に、寝室に広がっていた真っ白い『もや』が眩く光る。
音もなく光を発した『もや』は、次に目を開けた時にはすでに消えかけていた。
どうやらネムちゃんが、夢を具現化させるための魔法を打ち切ったみたい。
周囲に広がっているのは、元通りの静かな寝室。
天蓋付きの大きなベッドの中央では、夢が具現化する時のまま、クエリちゃんがすやすやと寝息を立てていた。
しかしそのきめ細かな頬の上を、一筋の涙が伝って落ちていくのが見えた。
夜光石の穏やかな光に照らされて、部屋の中にいる人たちの姿も見える。
壁際に下がっていたメイドさんたちは、明らかに動揺している。
口元を手で抑えながら絶句している人も居れば、どこか辛そうな表情で目を背けている人もいる。
王様の近くにいた騎士さんたちは、具現化の現象が消えたことで安心しているかのようだった。
だが、次にどうすればいいのか判断しかねている様子で、そばにいる王様の顔をじっと見つめている。
そして…………
「まさか、こんな事になろうとはな」
ぼそりと発せられた言葉。
部屋にいた皆が狼狽えている中、ひとり動じることなく背筋を伸ばして佇む。
それは紛れもない、王様の声だった。
その顔は、なぜか怒りに満ちている。
「あ、あの……王様っ、今見えていたのは、クエリちゃんの夢の ────────」
説明のために口を開いた私だったが、すぐさま王様の声にかき消される。
「迂闊であったわ」
「えっ?」
思いもよらぬ言葉に、ぎょっとした。
う、迂闊って、何っ?
考えがまとまらないうちに、王様は寝室に敷かれた絨毯の上を一歩踏み出した。
思わず、私は一歩下がる。
その様子を見ていたネムちゃんが、横目で私に合図を送ってきた。
目の合図なんて、普段からやってる訳ではない。
でも、この時はネムちゃんが何て言ってるのか解っちゃった。
『メイスを構えたままでいろ』だってさ。
「……そなた等の『悪夢祓い』とやらに、まさか夢の中の出来事を全員に見られるような仕掛けがあろうとは……。このような手法を取ることを知ってさえいれば、余は貴様等にクエリの悪夢を消せなどと頼みすらしなかったであろうに……」
そう話す王様の両脇から、ジャリンという金属音が響く。
やばい。
それは両隣にいた近衛兵が、腰に下げていた剣を抜いた音だった。
鍔口に刃が擦れる音が、静かな寝所にこだまする。
ど、どうして?
なんで王様はこんなカンカンに怒ってるの??
いまひとつ状況が飲み込めない私の目の前に、にゅっと黒い影が入り込む。
ネムちゃんが、私を守るようなかたちで王様との間に入り込んでくれたのだった。
「……胡散臭い依頼だとは思っていたが、まさかこんな腐れ外道な理由だったとはな」
『悪夢』に悩む本人が思い描いている想像の世界が映し出されることだってあるのは確かだ。
そういった夢はほとんどの場合、人物の周囲がぼやけていたり、背景が無かったりと、曖昧な映像になるコトが殆ど。
しかし今、目の前に映し出されているクエリちゃんの夢は、登場人物の表情までわかるほどにくっきりと描かれていて、背後の景色も細部まで鮮明に確認できるほどだ。
これがクエリちゃんのような小さな女の子が、想像だけで作り上げた世界だとは到底思えない。
つまりこれは、過去に実際にあった一場面なのだろう。
……と言うことは、この夢に出ている『お母さん』のお顔は、本物のクエリちゃんのお母さんなんだろうな。
そうなると、クエリちゃんのお母さんって綺麗な人なんだなぁ~。
やや痩せていて栄養状態は良くないように見えるけど、お肌なんかは真っ白で透き通るよう。
クエリちゃんとお揃いの金髪がすごく綺麗で ────────…………
あれっ……?
私は、思わずまた声を上げそうになった。
謁見の間で見た、巨大な肖像画。
不気味な感じで暗幕を半分かけられていた、銀色の額縁に入った王妃様の肖像画を思い出す。
灰色の布で覆われた肖像画の下半分に見えていた王妃様の髪は
たしか
金髪ではなかったはず…………!?
次の瞬間、またしても夢の映像が切り替わる。
穏やかだった雰囲気から一転、突如として現れたのは、まるでホラー映画のような白黒の擦り切れた景色。
まさに『悪夢』と言っても差し支えないほど冷たい雰囲気に満ちている。
小さな家の中、抱き合うクエリちゃんとお母さんが見えており────────何かを叫んでいるようだった。
二人の金髪も白黒になってしまった世界で燻んでしまったかのよう。
そして、二人の前には大勢の騎士。
二人が暮らしていた家の中に何人もの騎士が入り込み、先頭にいる甲冑の人物は何やら書面のようなものを掲げている。
その口から、おぞましい金属音のような声が響いてきた。
『──────── 王命により、命は奪わん。だがこの事を口外すれば、王権に関わる事態を引き起こし、ひいては娘の命も保証できなくなる。娘の無事を祈るならば、母であったことを忘れ、他言するな ────────』
耳をつん裂くような、不快な声。
あまりの迫力に、思わずごくりと唾を飲み込んだ時
「ピルタっっ!!」
大声で名前を呼ばれた私は、夢に見入ってしまっていた時間から急に引き戻された。
「ひゃああぁっ!? え、な、なにっ? ネムちゃんっ!?」
「良く聞け。この夢を食うのは中止だ。具現化もここで止める、いいな?」
「えぇっ!? そうなの!? どしたの!?」
「……この後、すぐ説明してやる。皆の前でなっ」
ネムちゃんのその言葉の直後、ネムちゃんの身体から発せられていた紫色の光が消えた。
直後に、寝室に広がっていた真っ白い『もや』が眩く光る。
音もなく光を発した『もや』は、次に目を開けた時にはすでに消えかけていた。
どうやらネムちゃんが、夢を具現化させるための魔法を打ち切ったみたい。
周囲に広がっているのは、元通りの静かな寝室。
天蓋付きの大きなベッドの中央では、夢が具現化する時のまま、クエリちゃんがすやすやと寝息を立てていた。
しかしそのきめ細かな頬の上を、一筋の涙が伝って落ちていくのが見えた。
夜光石の穏やかな光に照らされて、部屋の中にいる人たちの姿も見える。
壁際に下がっていたメイドさんたちは、明らかに動揺している。
口元を手で抑えながら絶句している人も居れば、どこか辛そうな表情で目を背けている人もいる。
王様の近くにいた騎士さんたちは、具現化の現象が消えたことで安心しているかのようだった。
だが、次にどうすればいいのか判断しかねている様子で、そばにいる王様の顔をじっと見つめている。
そして…………
「まさか、こんな事になろうとはな」
ぼそりと発せられた言葉。
部屋にいた皆が狼狽えている中、ひとり動じることなく背筋を伸ばして佇む。
それは紛れもない、王様の声だった。
その顔は、なぜか怒りに満ちている。
「あ、あの……王様っ、今見えていたのは、クエリちゃんの夢の ────────」
説明のために口を開いた私だったが、すぐさま王様の声にかき消される。
「迂闊であったわ」
「えっ?」
思いもよらぬ言葉に、ぎょっとした。
う、迂闊って、何っ?
考えがまとまらないうちに、王様は寝室に敷かれた絨毯の上を一歩踏み出した。
思わず、私は一歩下がる。
その様子を見ていたネムちゃんが、横目で私に合図を送ってきた。
目の合図なんて、普段からやってる訳ではない。
でも、この時はネムちゃんが何て言ってるのか解っちゃった。
『メイスを構えたままでいろ』だってさ。
「……そなた等の『悪夢祓い』とやらに、まさか夢の中の出来事を全員に見られるような仕掛けがあろうとは……。このような手法を取ることを知ってさえいれば、余は貴様等にクエリの悪夢を消せなどと頼みすらしなかったであろうに……」
そう話す王様の両脇から、ジャリンという金属音が響く。
やばい。
それは両隣にいた近衛兵が、腰に下げていた剣を抜いた音だった。
鍔口に刃が擦れる音が、静かな寝所にこだまする。
ど、どうして?
なんで王様はこんなカンカンに怒ってるの??
いまひとつ状況が飲み込めない私の目の前に、にゅっと黒い影が入り込む。
ネムちゃんが、私を守るようなかたちで王様との間に入り込んでくれたのだった。
「……胡散臭い依頼だとは思っていたが、まさかこんな腐れ外道な理由だったとはな」
0
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる