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第7-1話 王様、何をしたのっ!?
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ネムちゃんは私に背中を向け、王様と対峙するような格好のまま言い放った。
もともと口の悪いネムちゃんだけど……今の言葉にはいつにも増して攻撃的な意思が含まれているのを感じる。
「ふん……『幻獣』だ何だとうそぶいていたが、所詮やはり我らに害をなす『魔物』であったな」
「よく言うぜ、王様よぅ。そう言うあんたこそ、ずいぶん人でなしな事をしてるみたいじゃねぇか。テメーは魔物よりサイテーな野郎だぜ」
ちょ、ちょちょちょぉぉ!?
ネムちゃんが王様に向かってめちゃめちゃ暴言吐いてるー!
一体何がどうなって、ネムちゃんはこんなに怒ってるの!?
王様も眉あたりをピクピクさせてるし!
「ね、ねぇネムちゃん!? 一体どうしたの!? さっきのクエリちゃんの夢は、何だったの!?」
少しずつ近付いてくる王様とその近衛兵に警戒しながら、私はネムちゃんの背中に問いかけた。
「よく聞け、ピルタ。俺は今さっき、お姫様の夢を具現化する中でお姫様の過去をすべて見てきた。そこで眠ってるお姫様が、どんな気持ちで今の夢を見ていたのかもな」
「えっ…………?」
向こう側を向いたまま、ネムちゃんが答える。
やっぱり、さっきの夢の映像はクエリちゃんが実際に体験した過去の映像なんだ。
ネムちゃんは夢を具現化する時、映像より少し先のところまで覗き見していることがあるらしい。
そして更に、夢を見ている人間がどんな感情で夢を見ているのかも感じ取るコトができるのだ。
私は横目でベッドに眠るクエリちゃんを見る。
夢を具現化させる前は穏やかな表情をしていたはずのクエリちゃんだったが……今は眠りながらも、どこか苦しげな表情をしている。
そしてその目尻から、再びじわりと涙が滲み出ているのが見えてしまい、私は思わず息を呑む。
その瞬間、寝所に王様の怒号が響いた。
「……王の名において命ずる。そこの聖女を騙る女と、その使い魔である魔物をひっ捕らえよ!」
「うげっ!?」
驚く私に向かって、王様の両脇にいた二人の近衛兵が接近してくる。
えぇぇーーーーっ!?
ちょ、ちょっと待ってよっ!?
なんで私たちを捕まえようとするの!?
思わず汚い悲鳴が出ちゃったじゃないっ!?
「ピルタっ!! 昏睡魔法を撃て!」
「えぇっ!? で、でも……」
「いいから、早く! 自分の身を守れ!」
「う、うんっ!」
そうだ。
ネムちゃんの言う通り、ひとまず身を守らなきゃ。
私はメイスを持ったまま両手を前に突き出す。
「えいっ! とりゃーっ!!」
魔力を込めた両手が紫色に光り始めると、間髪いれずに昏睡魔法が発動した。
間髪いれず、立て続けに2発放つ。
加減を調整している余裕なんて無いので、いちばん強力なやつだよ!
「ぬ、がっ……!?」
「んぶぶ…………」
抜き身の剣を握ったまま近付こうとしていた二人の近衛兵は、私の昏睡魔法の直撃を受けて短い断末魔を上げながら倒れ込んだ。
甲冑を来たままの人間が勢いよく床に転がったことで、大きな金属音が響く。
たぶん、解呪の魔法を施さないと5日くらい起きないかも。
「よぉし、いいぞピルタ」
「くっ…………! 兵をも一瞬で眠らせるとは、おぞましい奴めっ……!!」
「い、いやいやいや! 王様っ! あなたがこの人たちに、私を捕まえるように命令したからでしょっ!? なんでそんなコトするんですかぁっ!?」
自衛のためとはいえ、近衛兵に昏睡魔法をかけちゃった以上はもう後戻りはできない。
というより、私はまだ状況が飲み込めてないんだけどっ!?
「ピルタ、王様は俺たちに、クエリ姫が見ていた夢を暴露された事に大層お怒りみたいだぜ」
「えっ!? な、なんで!? なにかマズいコトでもあったの!?」
「俺が説明してやる。この王様がやらかした、ひでえ過去をな」
「ひ、ひどい過去……?」
「ああ、ついでに後ろで聞いてるメイドさんらにも聞かせてやろう。この王様のことだ、どうせ大勢の家臣たちにも秘密にしてるんだろう」
「ぬぐっ……! だ、だまれ魔物めがっ! その口を噤むがいいっ!!」
ネムちゃんはふわりと高めに浮かび上がると、王様を睨みつけながら言い放った。
まるで、今この寝所にいるメイドさんや執事さんたちにも聞かせるかのように。
な、なに? ネムちゃんは何に気付いたの?
王様の狼狽っぷりは、明らかに異常だ。
天蓋の上部付近まで浮かび上がったネムちゃんは、部屋にいる全員に聴こえるように口を開いた。
「そこで寝ているお姫様……クエリ姫は、王と王妃の間にできた子供じゃない。他の誰か別の母親のもとにいた娘を、騎士団に命令して連れ去ってきたみたいだぜ」
寝所にいる全員の耳に届く、はっきりとしたネムちゃんの声。
しかし私は、すぐに意味を理解できなかった。
えっ? な、なんて言ったの?
クエリちゃんは、王様と王妃様の間にできた、子じゃ、ない……?
そ、それに……騎士団に命令して、連れ去ってきた、って…………!?
「え、えぇぇぇぇぇーーーーっ!? そ、それって誘拐じゃない!?」
内容を反芻してようやく理解できた時、私は思わず大声で叫んでしまった。
あまりに大きな声だったせいで、ベッドの上で寝ているクエリちゃんの身体がびくっと揺れるのが見えた。
あ、やばっ。ちょっとでっかい声を出しすぎたかも。
周囲を見渡すと、壁際にいたメイドさんや執事さんたちも驚愕の表情を浮かべている。
私と同じように、意味をうまく理解できずに困惑している人もいれば、ショックを隠せず口元に手を当てながら絶句してしまっている人もいるだ。
いや……よく見ると、数人はどこか苦虫を噛み潰したような表情をしている。
こんな衝撃的なコトを聞いてそんな表情をしているなんて、きっとこの人たちはクエリちゃんが王妃様の子供じゃないって解ってた人なのかな!?
そんな中、暴露された王様本人は身体全体をわなわなと震わせて、最上の怒りをこめた視線をネムちゃんに向けていた。
こ、こわっ!
人間って、あんな怖い表情ができるもんなの!?
もともと口の悪いネムちゃんだけど……今の言葉にはいつにも増して攻撃的な意思が含まれているのを感じる。
「ふん……『幻獣』だ何だとうそぶいていたが、所詮やはり我らに害をなす『魔物』であったな」
「よく言うぜ、王様よぅ。そう言うあんたこそ、ずいぶん人でなしな事をしてるみたいじゃねぇか。テメーは魔物よりサイテーな野郎だぜ」
ちょ、ちょちょちょぉぉ!?
ネムちゃんが王様に向かってめちゃめちゃ暴言吐いてるー!
一体何がどうなって、ネムちゃんはこんなに怒ってるの!?
王様も眉あたりをピクピクさせてるし!
「ね、ねぇネムちゃん!? 一体どうしたの!? さっきのクエリちゃんの夢は、何だったの!?」
少しずつ近付いてくる王様とその近衛兵に警戒しながら、私はネムちゃんの背中に問いかけた。
「よく聞け、ピルタ。俺は今さっき、お姫様の夢を具現化する中でお姫様の過去をすべて見てきた。そこで眠ってるお姫様が、どんな気持ちで今の夢を見ていたのかもな」
「えっ…………?」
向こう側を向いたまま、ネムちゃんが答える。
やっぱり、さっきの夢の映像はクエリちゃんが実際に体験した過去の映像なんだ。
ネムちゃんは夢を具現化する時、映像より少し先のところまで覗き見していることがあるらしい。
そして更に、夢を見ている人間がどんな感情で夢を見ているのかも感じ取るコトができるのだ。
私は横目でベッドに眠るクエリちゃんを見る。
夢を具現化させる前は穏やかな表情をしていたはずのクエリちゃんだったが……今は眠りながらも、どこか苦しげな表情をしている。
そしてその目尻から、再びじわりと涙が滲み出ているのが見えてしまい、私は思わず息を呑む。
その瞬間、寝所に王様の怒号が響いた。
「……王の名において命ずる。そこの聖女を騙る女と、その使い魔である魔物をひっ捕らえよ!」
「うげっ!?」
驚く私に向かって、王様の両脇にいた二人の近衛兵が接近してくる。
えぇぇーーーーっ!?
ちょ、ちょっと待ってよっ!?
なんで私たちを捕まえようとするの!?
思わず汚い悲鳴が出ちゃったじゃないっ!?
「ピルタっ!! 昏睡魔法を撃て!」
「えぇっ!? で、でも……」
「いいから、早く! 自分の身を守れ!」
「う、うんっ!」
そうだ。
ネムちゃんの言う通り、ひとまず身を守らなきゃ。
私はメイスを持ったまま両手を前に突き出す。
「えいっ! とりゃーっ!!」
魔力を込めた両手が紫色に光り始めると、間髪いれずに昏睡魔法が発動した。
間髪いれず、立て続けに2発放つ。
加減を調整している余裕なんて無いので、いちばん強力なやつだよ!
「ぬ、がっ……!?」
「んぶぶ…………」
抜き身の剣を握ったまま近付こうとしていた二人の近衛兵は、私の昏睡魔法の直撃を受けて短い断末魔を上げながら倒れ込んだ。
甲冑を来たままの人間が勢いよく床に転がったことで、大きな金属音が響く。
たぶん、解呪の魔法を施さないと5日くらい起きないかも。
「よぉし、いいぞピルタ」
「くっ…………! 兵をも一瞬で眠らせるとは、おぞましい奴めっ……!!」
「い、いやいやいや! 王様っ! あなたがこの人たちに、私を捕まえるように命令したからでしょっ!? なんでそんなコトするんですかぁっ!?」
自衛のためとはいえ、近衛兵に昏睡魔法をかけちゃった以上はもう後戻りはできない。
というより、私はまだ状況が飲み込めてないんだけどっ!?
「ピルタ、王様は俺たちに、クエリ姫が見ていた夢を暴露された事に大層お怒りみたいだぜ」
「えっ!? な、なんで!? なにかマズいコトでもあったの!?」
「俺が説明してやる。この王様がやらかした、ひでえ過去をな」
「ひ、ひどい過去……?」
「ああ、ついでに後ろで聞いてるメイドさんらにも聞かせてやろう。この王様のことだ、どうせ大勢の家臣たちにも秘密にしてるんだろう」
「ぬぐっ……! だ、だまれ魔物めがっ! その口を噤むがいいっ!!」
ネムちゃんはふわりと高めに浮かび上がると、王様を睨みつけながら言い放った。
まるで、今この寝所にいるメイドさんや執事さんたちにも聞かせるかのように。
な、なに? ネムちゃんは何に気付いたの?
王様の狼狽っぷりは、明らかに異常だ。
天蓋の上部付近まで浮かび上がったネムちゃんは、部屋にいる全員に聴こえるように口を開いた。
「そこで寝ているお姫様……クエリ姫は、王と王妃の間にできた子供じゃない。他の誰か別の母親のもとにいた娘を、騎士団に命令して連れ去ってきたみたいだぜ」
寝所にいる全員の耳に届く、はっきりとしたネムちゃんの声。
しかし私は、すぐに意味を理解できなかった。
えっ? な、なんて言ったの?
クエリちゃんは、王様と王妃様の間にできた、子じゃ、ない……?
そ、それに……騎士団に命令して、連れ去ってきた、って…………!?
「え、えぇぇぇぇぇーーーーっ!? そ、それって誘拐じゃない!?」
内容を反芻してようやく理解できた時、私は思わず大声で叫んでしまった。
あまりに大きな声だったせいで、ベッドの上で寝ているクエリちゃんの身体がびくっと揺れるのが見えた。
あ、やばっ。ちょっとでっかい声を出しすぎたかも。
周囲を見渡すと、壁際にいたメイドさんや執事さんたちも驚愕の表情を浮かべている。
私と同じように、意味をうまく理解できずに困惑している人もいれば、ショックを隠せず口元に手を当てながら絶句してしまっている人もいるだ。
いや……よく見ると、数人はどこか苦虫を噛み潰したような表情をしている。
こんな衝撃的なコトを聞いてそんな表情をしているなんて、きっとこの人たちはクエリちゃんが王妃様の子供じゃないって解ってた人なのかな!?
そんな中、暴露された王様本人は身体全体をわなわなと震わせて、最上の怒りをこめた視線をネムちゃんに向けていた。
こ、こわっ!
人間って、あんな怖い表情ができるもんなの!?
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