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第12-1話 寒月の戦いっ!
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王様の号令により、騎士さんたちは王様の様子に戸惑いながらも次々と前進を開始した。
動揺する様子を見せてはいるものの、じりじりと私たちへと迫り来る。
しかし、その歩みは全力疾走とは程遠い。
多分だけど……騎士さんたちも迷ってるんだろうね。
夢の中でのできごとを神からの啓示だ、なんて言っちゃってる王様の命令を聞くべきかどうか。
「仕方ねぇ……ピルタ、まずは周りの連中からやっちまえ!」
「うんっ!!」
私はメイスを持ったままの両手を前に突き出すと、その指先に魔力を込めた。
「えーーーーいっ!!」
遠距離から、狙い済まして昏睡魔法を放つ。
自分自身、どれくらいの距離まで魔法が届くのか実験したことはないけれど、これくらいの距離なら簡単に届くよ!
「んげ、っ……!?」
空中を飛んでいった魔力の直撃を受け、先頭を走っていた騎士さんがその場にごろりと倒れた。
「怯むな! クエリを拐ったあの者たちを、一刻も早く捕らえよ!!」
「まだまだ、いくよっ!!」
王様の命令によってどんどん前に出てくる騎士さんたちに向け、私は次々と魔法を放った。
「ほげっ……!」
「んごごご…………」
「ぷすぅぅぅ……」
迫り来る騎士さんに対し、手当たり次第に昏睡魔法を撃つ。
けど……ちょ、ちょっと数が多すぎるかもっ!?
私の昏睡魔法は当たれば一撃で行動不能にできるけど、そのかわり1人ずつにしか魔法がかけられない!
王様が連れてきた騎士さんたちがあまりに多すぎて、私が魔法をかけるスピードが追いついてないよー!?
や、やばいっ。こ、このままじゃ接近されちゃうかも!?
「テメェら、ピルタに近付くんじゃねぇっ!!」
唐突にネムちゃんが吠えたかと思うと、立髪が激しく燃え盛り始めた。
炎を纏った獅子のようになったネムちゃんの体から分離した紫色の炎が、前進してくる騎士さんたちの足元に着弾する。
地面の上に落ちた炎は、瞬く間に人間よりも大きな火柱となった。
「う、うわああぁぁっ!?」
「魔法の炎だっ!」
「気をつけろっ! 燃え移ったら、消せないぞぉっ!」
それを見た騎士たちは、大慌てで炎から距離をとっていく。
こ、これなら何とか凌げるかも知れないっ!
「ふぇぇ……ありがとうネムちゃん! 助かったよおぉぉ!」
「ピルタ、油断するな! どんどん昏睡魔法を打てっ!」
「う、うんっ! わかったっ!!」
炎から逃げる騎士さんの背中に向けて、容赦なく昏睡魔法を放つ。
できれば王様に魔法をかけて眠らせちゃいたいところだけど、手前にいる大勢の騎士さんたちが邪魔で魔法が届かない。
そうこうしているうちに、王様の怒号が響いた。
「ええい、怯むな! 近付けないのなら、弓を射かけよ!」
「げっっ!?」
ゆ、弓ーーーー!?
ちょ、ちょっと王様!? ゆ、弓で射るって……ほ、本気で言ってるんですかぁ!?
こっちには私たちだけじゃなく、マドラさんやクエリちゃんがいるんだぞー!?
騎士たちからも、どよめきが聞こえる。
「こ、国王陛下! お言葉ですが、クエリ姫は恐らくあの家の中にいると思われます! ほ、本当に弓など放ってよろしいのですか!?」
さすがに心配になったのか、騎士さんのうちの一人が王様に大声で聞き返す。
よく見ると……あれは、騎士団長さんだ!
一人だけ周囲の騎士さんたちと違う、豪華な装飾のついた甲冑を着込んでいるのですぐ解る。
たしか王城から逃げてくる時に昏睡魔法を食らわせたはずだけど、お城の魔法使いさんに解呪してもらったのかな?
相変わらず頭をすっぽり覆うタイプの兜をしているので顔は見えないけどとても慌てている様子だ。
お姫様であるクエリちゃんが居るであろう家に向けて矢を放つなんて、王様の命令と言えども受け入れ難いんだろうな。
しかし、王様の返答は予想をはるかに通り越して異常なものだった。
「構わぬ。我がレアリーダの騎士の中に、クエリに怪我を負わせるような不出来な腕前の弓兵などいないはずだ」
「そ、それは……! 陛下っ!?」
「……何だ、騎士団長。まさかとは思うが、貴様の預かる騎士団はそんな事もできないほどの無能揃いなのか?」
「い、いえ……しかしッッ!?」
「矢を番えよ!!!!」
有無を言わさない王様の声のあと、炎により一時後退した騎士さんたちの代わりに後ろから大きな弓を持った弓兵さんが出てきた。
でも、弓兵さんたちはみんな左右にいる同じ弓兵さんたちと顔を見合わせるようにしている。
どう見ても、『本当に撃っていいのか!?』って迷っているようにしか見えない。
それでも、彼らにとって王命は絶対なのか……ぎりぎりと弦を引き絞る音が聞こえてきた。
や、やばい、ホントに撃つ気だ!?
こんな丘の上の開けた場所では、矢なんて防げないよぉ!?
「あなたたち、やめなさいっ!!」
すると、私のすぐ後ろにいたマドラさんが叫んだ。
目の前で両手の指を交差させたあと、勢いよく両腕を開くような動作をしてみせる。
よく見ると、マドラさんの両手が赤い光を放っている!?
何をしたんだろう、と考えるまもなく、騎士たちの周囲から『バチン』という何かが弾け飛ぶような音が響いた。
「ひぇっ!?」
矢を打たれたと思った私は、思わず悲鳴をあげながら身をかがめる。
けど……あ、あれ?
矢が、飛んでこない?
動揺する様子を見せてはいるものの、じりじりと私たちへと迫り来る。
しかし、その歩みは全力疾走とは程遠い。
多分だけど……騎士さんたちも迷ってるんだろうね。
夢の中でのできごとを神からの啓示だ、なんて言っちゃってる王様の命令を聞くべきかどうか。
「仕方ねぇ……ピルタ、まずは周りの連中からやっちまえ!」
「うんっ!!」
私はメイスを持ったままの両手を前に突き出すと、その指先に魔力を込めた。
「えーーーーいっ!!」
遠距離から、狙い済まして昏睡魔法を放つ。
自分自身、どれくらいの距離まで魔法が届くのか実験したことはないけれど、これくらいの距離なら簡単に届くよ!
「んげ、っ……!?」
空中を飛んでいった魔力の直撃を受け、先頭を走っていた騎士さんがその場にごろりと倒れた。
「怯むな! クエリを拐ったあの者たちを、一刻も早く捕らえよ!!」
「まだまだ、いくよっ!!」
王様の命令によってどんどん前に出てくる騎士さんたちに向け、私は次々と魔法を放った。
「ほげっ……!」
「んごごご…………」
「ぷすぅぅぅ……」
迫り来る騎士さんに対し、手当たり次第に昏睡魔法を撃つ。
けど……ちょ、ちょっと数が多すぎるかもっ!?
私の昏睡魔法は当たれば一撃で行動不能にできるけど、そのかわり1人ずつにしか魔法がかけられない!
王様が連れてきた騎士さんたちがあまりに多すぎて、私が魔法をかけるスピードが追いついてないよー!?
や、やばいっ。こ、このままじゃ接近されちゃうかも!?
「テメェら、ピルタに近付くんじゃねぇっ!!」
唐突にネムちゃんが吠えたかと思うと、立髪が激しく燃え盛り始めた。
炎を纏った獅子のようになったネムちゃんの体から分離した紫色の炎が、前進してくる騎士さんたちの足元に着弾する。
地面の上に落ちた炎は、瞬く間に人間よりも大きな火柱となった。
「う、うわああぁぁっ!?」
「魔法の炎だっ!」
「気をつけろっ! 燃え移ったら、消せないぞぉっ!」
それを見た騎士たちは、大慌てで炎から距離をとっていく。
こ、これなら何とか凌げるかも知れないっ!
「ふぇぇ……ありがとうネムちゃん! 助かったよおぉぉ!」
「ピルタ、油断するな! どんどん昏睡魔法を打てっ!」
「う、うんっ! わかったっ!!」
炎から逃げる騎士さんの背中に向けて、容赦なく昏睡魔法を放つ。
できれば王様に魔法をかけて眠らせちゃいたいところだけど、手前にいる大勢の騎士さんたちが邪魔で魔法が届かない。
そうこうしているうちに、王様の怒号が響いた。
「ええい、怯むな! 近付けないのなら、弓を射かけよ!」
「げっっ!?」
ゆ、弓ーーーー!?
ちょ、ちょっと王様!? ゆ、弓で射るって……ほ、本気で言ってるんですかぁ!?
こっちには私たちだけじゃなく、マドラさんやクエリちゃんがいるんだぞー!?
騎士たちからも、どよめきが聞こえる。
「こ、国王陛下! お言葉ですが、クエリ姫は恐らくあの家の中にいると思われます! ほ、本当に弓など放ってよろしいのですか!?」
さすがに心配になったのか、騎士さんのうちの一人が王様に大声で聞き返す。
よく見ると……あれは、騎士団長さんだ!
一人だけ周囲の騎士さんたちと違う、豪華な装飾のついた甲冑を着込んでいるのですぐ解る。
たしか王城から逃げてくる時に昏睡魔法を食らわせたはずだけど、お城の魔法使いさんに解呪してもらったのかな?
相変わらず頭をすっぽり覆うタイプの兜をしているので顔は見えないけどとても慌てている様子だ。
お姫様であるクエリちゃんが居るであろう家に向けて矢を放つなんて、王様の命令と言えども受け入れ難いんだろうな。
しかし、王様の返答は予想をはるかに通り越して異常なものだった。
「構わぬ。我がレアリーダの騎士の中に、クエリに怪我を負わせるような不出来な腕前の弓兵などいないはずだ」
「そ、それは……! 陛下っ!?」
「……何だ、騎士団長。まさかとは思うが、貴様の預かる騎士団はそんな事もできないほどの無能揃いなのか?」
「い、いえ……しかしッッ!?」
「矢を番えよ!!!!」
有無を言わさない王様の声のあと、炎により一時後退した騎士さんたちの代わりに後ろから大きな弓を持った弓兵さんが出てきた。
でも、弓兵さんたちはみんな左右にいる同じ弓兵さんたちと顔を見合わせるようにしている。
どう見ても、『本当に撃っていいのか!?』って迷っているようにしか見えない。
それでも、彼らにとって王命は絶対なのか……ぎりぎりと弦を引き絞る音が聞こえてきた。
や、やばい、ホントに撃つ気だ!?
こんな丘の上の開けた場所では、矢なんて防げないよぉ!?
「あなたたち、やめなさいっ!!」
すると、私のすぐ後ろにいたマドラさんが叫んだ。
目の前で両手の指を交差させたあと、勢いよく両腕を開くような動作をしてみせる。
よく見ると、マドラさんの両手が赤い光を放っている!?
何をしたんだろう、と考えるまもなく、騎士たちの周囲から『バチン』という何かが弾け飛ぶような音が響いた。
「ひぇっ!?」
矢を打たれたと思った私は、思わず悲鳴をあげながら身をかがめる。
けど……あ、あれ?
矢が、飛んでこない?
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