夢見るピルタの昏睡魔法っ!

来我 春天(らいが しゅんてん)

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第13-2話 夢はどこまでも自由っ!

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「クエリちゃん…………」
「ど、どっちかとだけしか居られないなんてイヤ……! わたしっ……おかあさんも、おとうさまも一緒がいいの……っ!」

 私は今すぐクエリちゃんのもとに駆け寄って抱きしめてあげたい衝動に駆られていた。
 ……そうだよね。
 クエリちゃんはすごく立派な子だけど、それでもまだ7歳の女の子なんだ。
 お父さんとお母さんと一緒に居たいに決まってるよ。
 そんなの、子供として当然の願望じゃん。

「それなのに……おかあさんを一人にしちゃうおとうさまなんて、キライっ! おとうさまがおかあさんに酷いことをするなら、私……おとうさまと戦うからっ!」

 頬に涙の筋をつくりながら叫ぶクエリちゃんの声が、戦場になってしまった月夜の丘に響く。

「た、戦う? 私とか……? フ、フハハハハハハハ!! 何を言い出すのかと思えば……クエリ! わ、私と戦うなどと……フッハハハ! たかが7歳の子供に過ぎないお前に、何ができるというのだっ!!」

 狂気の笑みを浮かべて笑う国王は、クエリちゃんの涙声を聞いてもまったく心を動かさない様子だ。
 もはや父親としての面影さえもほとんど失われてしまっているかのように見える。
 国王の魔力に縛られた騎士さんたちが、おぼつかない足取りで迫り来る。

「……できるもんっ!!」
「…………何?」

 大きな瞳から、今も涙をぽろぽろと流し続けるクエリちゃんは、不敵な笑みを浮かべた王様に向かって叫んだ。

「わたしは……ずっと、ずぅっとおかあさんに会いたいって夢を見てた……そうしたら、今日っ! おねえちゃんとネムちゃんのおかげで、おかあさんに会えたんだもんっ!!」
「ク、クエリちゃん…………」

 ふわふわの生地で作られた、ちょっと丈の長いパジャマの裾を握り締めながら……クエリちゃんは声を張る。
 頬を伝って落ちていく涙の粒に、天上に浮かぶ紫色の満月の光が煌めく。

「わたしが……わたしが見た夢は、おねえちゃんとネムちゃんが、叶えてくれるんだからっ……! ひどいコトを言うおとうさまなんて、やっつけてくれるんだからぁぁっ!!」

 声を震わせ、涙を散らしながらクエリちゃんは叫ぶ。
 この子は、信じてくれてるんだ。
 私たちがクエリちゃんと、クエリちゃんのお母さんを守ってくれるって。
 そうだよ、守らなきゃ。
 頑張れ私、頑張れピルタっ!
 ここで頑張れなかったら、私はこの異世界に来たコトを一生後悔するぞっ!
 考えなきゃ。多勢に無勢なこの状況を打破する方法を。
 私は魔力が尽き、昏睡魔法を撃てるのは良くてあと1、2回。
 ネムちゃんも頑張ってるけど、この開けた場所の全方位を守り切るのは無理がある。
 マドラさんも騎士さんを風で押し返す魔法を使ってるようだけど、元々攻撃的な魔法が使える訳じゃなさそうだし……。
 あと私たちに残された戦力は、まだちょっと眠そうにしているクエリちゃんだけしか ────────────────

 んっ?
 眠そうにしている、クエリちゃん??
 ──────────────── あっ!

「そ、そうだ……! ピルタっ!」
「ネムちゃんっ!」

 突然名前を呼ばれた私は、身を起こそうとしているネムちゃんに向き直った。

「お、俺に考えがある! ピルタっ! お姫様に、お前の昏睡魔法をかけろっ!!」
「うんっ!! たぶん私も、ネムちゃんと同じコトかんがえてたーーーーっ!!」

 ネムちゃんは迫り来る騎士さんたちを、前脚や長い鼻で放り投げるように戦っている。
 そんな大変な状況なのに、私の声を耳にしてニヤリと笑みを浮かべたのが見えた。

「へへっ……! そうだ、そうだよなぁっ! 何でもっと早く気が付かなかったんだろうな、俺たちよぉ!」
「んっふっふ……! 私の魔法と、ネムちゃんの魔法があれば……きっとできるよね!」
「ああっ!! ピルタ、やっぱり俺とお前は最高の相棒だぜっ!!」

 私とネムちゃんはくるりと後ろを向き、クエリちゃんに向かって走り出した。
 一面に白い花の咲く丘の上を駆け抜け、クエリちゃんの元へと全力疾走していく。
 その行動に気付いた王様とマドラさんは、驚きの声を上げた。

「えっ!? 聖女様っ!?」
「ぬぅっ!? 『悪夢の魔女』め、何をするつもりだ……!?」

 二人の声を聞きながら、私はネムちゃんと共にクエリちゃんの目の前にたどり着いた。
 同時に、再び王様へ向き直るネムちゃん。
 頭を低くし、防御の体制をとっている。
 私は手に持っていたメイスを投げ捨て、クエリちゃんを抱きしめた。
 ふかふかのパジャマの中にある、細く華奢なクエリちゃんの身体を優しく抱っこする。
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