アルトリアの花

マリネ

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カルテットはレティを抱え込んでいた手をぱっと放すと、ペロッと舌を出す。
「やりすぎちゃった。」
「カルテット、俺が死んだぞ。」
アルベルトは吹き飛ばされた地面に伏せたまま叫んでいる。
近くには折れた剣が転がっていた。
模擬剣とはいえ真っ二つに折り、人も風圧だけで吹き飛ばす。
それがソウンディックの実力だと、カルテットはいうのだろうか。
「レティ嬢。僕殺されちゃいそうなので、助けてくださいね。」
冷たい表情のまま、こちらへ歩んでくるソウンディックの足元には、まだ黒い靄がまとわりついている。
レティに向かってきた剣を一瞬で消した靄と、この靄は同じなのだろうか。
靄が触れた所、鍛練場に生えていた雑草がない。
触れたら消えてしまうのだろうか。
「カルテット。」
冷ややかな青い瞳が、自分の後ろに向くのがわかる。
手に持つ剣がゆっくりと持ち上がった。
「ソウ様。」
レティはソウンディックに近寄ると、手に纏っている靄を払ってみた。
ぺしぺしとソウンディックを叩いている気分になるが、靄が消えてきているので良しとしよう。
思い切って払ってみたが、人が消えることはないらしい。
「ソウ様、危ないですよ。剣を下してください。カルテット様は私にソウンディック様のお力を見せて下さっただけです。」
はっとしたように剣を落とし、レティの指先を手に取る。
「レティ。何ともない?」
「はい。モヤモヤも消えましたね。良かったですね。」
瞳が、普段の優しい青さに戻っている。
ソウンディックは大きなため息をつくと、そっと抱き締められた。
シャツ越しの身体は冷たく、小刻みに震えている。
頬に触れる胸からは、激しい動悸の音がしていた。
そっと腕を回し、背中をポンポンと叩いて落ち着かせる。
近所の子はよくこれで泣き止んでいた。
さらに密着する形になってしまって恥ずかしいが、一生懸命に近所の子の顔を思い浮かべて赤面するのを堪える。
「カルテット。軽率すぎやしないか。」
「それを確認したかっただけです。そこまで靄が広がるのは想定外でした。」
抱き締められているので、ソウンディックの表情は分からないが、声はまだ冷ややかだ。
「二度はないぞ、カルテット。」
「はい。で、団長。いつまでレティ嬢を抱えてるおつもりで?」
「せっかくの機会なので、もうしばらく。」
あぁ、大丈夫そうですね。
こっちの心臓がもたないので、早く離して欲しいのだけど。

「誰も俺を助けに来ないのは薄情じゃないか?」
動けないのか、地面に転がったままのアルベルトは、悲痛な叫びを上げていた。
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