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夜 ソウンディック
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ソウンディックが寝泊まりしている部屋にはギルデガンド、アルベルト、カルテットが集まっていた。
ゲストルームの中でも一番広く、レティの部屋とも近い。
警備の問題からも他の者に詮索されないためにも、一番集まりやすかった。
「鍛練所での話は聞きましたぞ。」
執務机の前に用意されたソファーに座り、開口一番にギルデガンドは笑う。
「あれはカルテットが悪い。」
「俺、まだ背中痛いんだけど。」
「すみませんでした。町で聞いた話からレティ嬢の力を試してみたいと思ったもので。後は想像していたよりも素朴なので、団長はどんな反応するかなぁと出来心です。」
報告書です。と執務机の上に紙束を置くと、その一部をソウンディックに手渡す。
パラパラとめくるとレティから聞いた経緯の他に、街での評判、隣国にいた頃の商家についてまでが書かれている。
「この短時間でよく調べてたな。」
さっと目を通すとギルデガンドに投げ渡す。
カルテットは、アルベルトに指示を出してから一刻もしないうちに鍛練所まで現れた。
「ちっと早すぎやしないか?隣国まで行って来たのかよ。」
アルベルトは横から覗き見ている。
「行きませんよ。アルトリアの近隣調査はソウンディック様が出掛けるって言い出した時に済ませてあります。レティ嬢の生家については有名な店子だったようで、アルトリアの商家の者がよく覚えてました。」
資料を指差しながら語る。
「隣国では有名な事件だったらしいんですが、内乱の最中、王宮関係者が押し行って夫婦を惨殺。その後で火をつけたようです。王宮関係者の意図は不明ですが、行方不明になっていた子供を探す不審人物も確認されてます。アルトリアの商家の者は、レティ嬢がその子供だと分かってて黙っていたようでした。」
「義兄が連れ出したって言ってたな。」
「そのお兄さんですが、二週間前に魔物の森の入り口で目撃されてます。気になるところは、隣国側で偵察と思われる者も動いてる事ですね。」
隣国の内乱は十数年経っても落ち着くどころか年々ひどくなっている。
元々は、旧体制派と新体制を急進する王家の御家騒動だったはずだ。
「旧王家か新王家の者か。」
「どちらかまでは不明です。探りますか?」
「いや、いい。よく調べてくれた。」
晩餐用にセットした髪を無造作に掻き乱すと、背もたれに身体を預ける。
「まだありますよ。鍛練所での行動についてですが、街の聞き込みの際に近所の人達が口を揃えて言ってたんです。あの子の前では嘘が着けない。病気さえ良くなるようだ。と。」
「だからリュクスの力か試したのか。」
「はい。団長の話ではリュクスの力は洗礼と浄化、レティ嬢が噂の通りなら、団長の力にも触れられるかと。抱擁だけで煽りすぎになると思いませんでしたが。」
カルテットは肩を竦める。
「俺はとばっちりで長年の主兼幼なじみに殺されるところだったのか。」
「アルベルトさんには、お詫びにこの手紙を差し上げましょう。長年恋患ってる愛しのフィン王女からです。」
胸元から取り出した手紙を奪うように持っていくと、空いていたソファーに横になって早速開けはじめた。
「レティ嬢が靄を払うところを見ました。私たちが触れれば激痛が走り、飲み込まれる事さえある、あの靄をです。しかも、本人は無自覚でしたね。」
「ああ、消えて良かったですねって微笑んでた。可愛いかったな。」
頬を染め、小さな手で触れてきたレティを思い出すと、自然と口角が上がる。
靄の危険性など知らなかったはずだ。
「アルベルト、フィン殿下はなんと?」
手紙を持ったまま、しかめ面をしてるアルベルトを、ギルデガンドは気にしていた。
「ソウンディックと英雄が同一だと気づかれたらしい。弟のシュタイン派と英雄派で王位継承問題に発展しそうだと。」
「放っておこう。王位に興味はないし、継承権は放棄してあるはずだ。そもそも私は王の恩情で王宮に身を置いてるだけで、家族として接してくれる皆の重荷には、これ以上成りたくない。レティが気にして結婚してくれなかったらどうする。」
「あれ、やっぱり本気なのか。」
「もちろんだ。他の男が彼女の隣に立つなど考えたくもない。」
「くっついただけで嫉妬心丸出しですからね。深遠で誰か消えてしまわないうちに、彼女を囲った方が安全でしょう。」
「カルテット、思い出させるな。力が漏れる。」
おっと。と、カルテットは素早くソウンディックから距離をとる。
「じゃ、貴族側の手回しは任せろ。ギルデガンドには辺境伯家に籍を用意してもらって、王宮側は自分でどうにかしろよ?」
アルベルトは手に持った手紙をひらつかせた。
「お兄様がリュクスの光に目が眩んで暴走しないように見張って。だそうだ。もう手遅れだしな。」
「手遅れだ。」
「すでに手遅れですね。」
各々が可哀想なものを見る目をソウンディックに向けた。
ソウンディックはそんな視線を振り払うように、手をあげる。
「全く、お前たちは私を何だと思ってるんだ。」
ゲストルームの中でも一番広く、レティの部屋とも近い。
警備の問題からも他の者に詮索されないためにも、一番集まりやすかった。
「鍛練所での話は聞きましたぞ。」
執務机の前に用意されたソファーに座り、開口一番にギルデガンドは笑う。
「あれはカルテットが悪い。」
「俺、まだ背中痛いんだけど。」
「すみませんでした。町で聞いた話からレティ嬢の力を試してみたいと思ったもので。後は想像していたよりも素朴なので、団長はどんな反応するかなぁと出来心です。」
報告書です。と執務机の上に紙束を置くと、その一部をソウンディックに手渡す。
パラパラとめくるとレティから聞いた経緯の他に、街での評判、隣国にいた頃の商家についてまでが書かれている。
「この短時間でよく調べてたな。」
さっと目を通すとギルデガンドに投げ渡す。
カルテットは、アルベルトに指示を出してから一刻もしないうちに鍛練所まで現れた。
「ちっと早すぎやしないか?隣国まで行って来たのかよ。」
アルベルトは横から覗き見ている。
「行きませんよ。アルトリアの近隣調査はソウンディック様が出掛けるって言い出した時に済ませてあります。レティ嬢の生家については有名な店子だったようで、アルトリアの商家の者がよく覚えてました。」
資料を指差しながら語る。
「隣国では有名な事件だったらしいんですが、内乱の最中、王宮関係者が押し行って夫婦を惨殺。その後で火をつけたようです。王宮関係者の意図は不明ですが、行方不明になっていた子供を探す不審人物も確認されてます。アルトリアの商家の者は、レティ嬢がその子供だと分かってて黙っていたようでした。」
「義兄が連れ出したって言ってたな。」
「そのお兄さんですが、二週間前に魔物の森の入り口で目撃されてます。気になるところは、隣国側で偵察と思われる者も動いてる事ですね。」
隣国の内乱は十数年経っても落ち着くどころか年々ひどくなっている。
元々は、旧体制派と新体制を急進する王家の御家騒動だったはずだ。
「旧王家か新王家の者か。」
「どちらかまでは不明です。探りますか?」
「いや、いい。よく調べてくれた。」
晩餐用にセットした髪を無造作に掻き乱すと、背もたれに身体を預ける。
「まだありますよ。鍛練所での行動についてですが、街の聞き込みの際に近所の人達が口を揃えて言ってたんです。あの子の前では嘘が着けない。病気さえ良くなるようだ。と。」
「だからリュクスの力か試したのか。」
「はい。団長の話ではリュクスの力は洗礼と浄化、レティ嬢が噂の通りなら、団長の力にも触れられるかと。抱擁だけで煽りすぎになると思いませんでしたが。」
カルテットは肩を竦める。
「俺はとばっちりで長年の主兼幼なじみに殺されるところだったのか。」
「アルベルトさんには、お詫びにこの手紙を差し上げましょう。長年恋患ってる愛しのフィン王女からです。」
胸元から取り出した手紙を奪うように持っていくと、空いていたソファーに横になって早速開けはじめた。
「レティ嬢が靄を払うところを見ました。私たちが触れれば激痛が走り、飲み込まれる事さえある、あの靄をです。しかも、本人は無自覚でしたね。」
「ああ、消えて良かったですねって微笑んでた。可愛いかったな。」
頬を染め、小さな手で触れてきたレティを思い出すと、自然と口角が上がる。
靄の危険性など知らなかったはずだ。
「アルベルト、フィン殿下はなんと?」
手紙を持ったまま、しかめ面をしてるアルベルトを、ギルデガンドは気にしていた。
「ソウンディックと英雄が同一だと気づかれたらしい。弟のシュタイン派と英雄派で王位継承問題に発展しそうだと。」
「放っておこう。王位に興味はないし、継承権は放棄してあるはずだ。そもそも私は王の恩情で王宮に身を置いてるだけで、家族として接してくれる皆の重荷には、これ以上成りたくない。レティが気にして結婚してくれなかったらどうする。」
「あれ、やっぱり本気なのか。」
「もちろんだ。他の男が彼女の隣に立つなど考えたくもない。」
「くっついただけで嫉妬心丸出しですからね。深遠で誰か消えてしまわないうちに、彼女を囲った方が安全でしょう。」
「カルテット、思い出させるな。力が漏れる。」
おっと。と、カルテットは素早くソウンディックから距離をとる。
「じゃ、貴族側の手回しは任せろ。ギルデガンドには辺境伯家に籍を用意してもらって、王宮側は自分でどうにかしろよ?」
アルベルトは手に持った手紙をひらつかせた。
「お兄様がリュクスの光に目が眩んで暴走しないように見張って。だそうだ。もう手遅れだしな。」
「手遅れだ。」
「すでに手遅れですね。」
各々が可哀想なものを見る目をソウンディックに向けた。
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「全く、お前たちは私を何だと思ってるんだ。」
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