アルトリアの花

マリネ

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一行はアルトリアの辺境伯邸に向かって出立した。
やって来る時は森の中を抜け、地を踏み均し、道を切り開いて進んできたため、半日の時間を要した。
そもそもカルテットはどうやってこんなに早く駆けつけることが出来たのか。

「この路、森の出入り口まで繋がってるんですよ。狭くなってるのもここだけですし。いやぁ、こんな広い道が隣国からアルトリアまで繋がってるなんて吃驚ですよね。」

駆け付けたカルテットに抜かりはない。
森の奥から広大な束状の光が立ち上がった瞬間に、入り口で警備に当たっていた騎士団の半数を引き連れ、身近にいた馬たちも拝借してきたのだ。
カルテットが引き連れてきたアルトリア騎士団も20名はいる。
ソウンディックがレティと相乗りするのは想定済みだったし、ケガを負っているエディルはクリストフが支えている。
護衛にはアルベルトとカルテットがいれば十分だ。
徒歩となってしまった騎士団の皆さんには事後処理をお任せして、先に戻りましょう。というカルテットの言葉が採用された。
「しかも馬を使えば半刻か。」
「ギルデガンドと話し合う必要があるな。」

「そういえばマリアはどうした。一人にしてきたのか?ダメだろ。」
「ギルデガンド伯に預けてきました。あの方の監視があれば過剰な事はしないでしょう。安心です。」
皆がうんうんと頷く。
「マリアは女の子だし、ですか?」
黙って聞いていたレティが、不思議そうに首を傾げる。
マリアも有名な第五騎士団の一員だ。
他の者の強さを鑑みれば、マリアも可憐な女性なだけではないはず。

「いいえ、性別も年齢も関係ないというか。マリアだからと言うか。」
「?」
カルテットはげんなりした様子で、疲れを滲ませる。
「あー、マリアよりも周りの被害が心配というか。」
「?」
皆が言いよどむ。
よく分からない。
「いや、うん。もう邸が見えてくる。すぐに分かるよ。」
ソウンディックまでが明後日の方向を見て、苦笑う。
なぜ皆が言及出来なかったのか、森を出ると、すぐにレティは理解した。

辺境伯邸と森の入り口は朝とは様変わりしていた。
こんなに離れて開けていただろうか。
邸と森はほぼ隣接していたはずが、今では幾つかテントを張られてるほどに平地が出来ている。
テントと森の入り口を、アルトリア騎士団が右往左往しているのが見え、その脇には、なぜか黒い塊が山積みになっている。

あれって、魔物の山だよね。
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