アルトリアの花

マリネ

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コンコンと扉を叩く音がする。
湯浴みを終え、マリアと部屋に戻って歓談していた。
「晩餐は騎士団の元に行くよ。」
ソウンディックとエディルが、白シャツにズボンと軽装で扉の前に立っていた。
レティとマリアも湯浴み後は簡略したワンピース姿なので、すぐに動ける。
「外に行くのですか?」
ソウンディックに手を差しのべられ、自然と載せる。
すっかりエスコートして貰う癖が着いてしまったみたいだ。
薄手のゆったりとしたシャツが、彼のしなやかな動きに添って艶かしい。

「魔物肉を焼くのね!ギルデガンドの魔物料理は美味しいのよ。クリストフも行ってるから、香辛料料理も食べれるわね。」
魔物肉は上手く調理しないと毒気が抜けきらず、体調を崩したり、臭みが強かったりする。
腕っぷしで辺境伯になったギルデガンドは、冒険者だった頃の知識を生かして魔物料理に長けているのだと、マリアはご機嫌だ。
「レティもフルブルディの肉は好きだっただろ?」
エディルが思い出す。
たまにご近所の冒険者から貰う魔物肉は、エディルが毒気を抜き、美味しく頂いていた。
治療して貰ったとは聞いたが、添え木で動かせなくなっている腕が痛々しい。
「豚に似ている魔物ね。あれなら、今日は一杯狩ったわ。」
「ふふ、楽しみです。」
自慢気に鼻を高くするマリアに、夕日に映える凛とした姿を思い出して笑みが溢れる。
「余った肉は、後でラウルとソルトにあげるから取っておいてね。」
「マリアの狼ですか?」
「そうよ。普段は私の影に隠れてるんだけど、戦闘は手伝って貰ってるのよ。魔物肉が好物なの。」
「ギルデガンドに頼んでおこう。レティの好きなメニューもね。」
精霊の加護が無くても、魔物の力を借りれば女性でも戦える。
マリアはそれを、体現していた。
私にも何か出来れば良いのに…。

「レティ?」
俯いて顔にかかった髪を、ソウンディックは掬う。
その手元から、ふわりと花の香りが漂った。
「良い香り…。」
「そう?肉が焼けたかな?美味しそうな匂いした?」
きょとんとするソウンディックが覗き込んでいる。
「やっ、違うのです。」
はっとなって顔を上げたが、すぐに頬が焼けるように暑くなる。
皆、泥だらけで帰って来たのだ。
ソウンディックやエディルだって湯浴みを済ませたのだろう。
今のって、浴室の石鹸の香り…。

「ぶふっ。」
「ちょっ、兄さん笑うなんてひどい!」
その様子を見たエディルは、横で盛大に吹き出した。
余計に恥ずかしくなるじゃない!
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