47 / 73
36
しおりを挟む
今が夜で良かった。
邸や花の灯りなら、火照った頬は誤魔化せそうだ。
「摘み取った花の灯りは明日には消えちゃうから、また二人で来ようね。」
「…っ。」
そっと近づいて耳元で囁かれる。
彼の馨りたつような色香に眩暈がするほどだ。
一気に耳まで熱を持ったのが、自分でも分かる。
籠った熱を逃そうと顔を上げると、ん?と首を傾げるソウンディックとしっかり目があう。
「…は…い。」
掠れて小声にしか出てこない。
それでも嬉しそうに、本当に嬉しそうに彼は微笑む。
ソウンディックは自分の為にも、リュクスを探してたと聞いた。
リュクスの力を持って生まれた者と供に居たいのだと。
それは、自分じゃなくても、誰でも良いんじゃないの?
気がつけば、ソウンディックに惹かれてるのに素直に喜べない自分の気持ちが、悶々と空回りしている。
彼に惹かれれば惹かれるほど、彼の求めるリュクスと、何も持たない自分を卑屈なほど比べてしまうのだ。
「…ソウ様。ソウ様は何故、ここまでして下さるのですか?」
ソウンディックは、こてん、と、不思議そうに首を傾げる。
いつも凛としている姿と比べて、子供っぽく見えて可愛らしい。
「ここまでっていう程の事、してないよ。」
「あ、兄の事や私の身の回りまで。それにっ…ふぐっ。」
すっと伸ばされた指先が、唇に押し付けられる。
少し硬く大きな指先が口を塞いでいた。
目を見開いて彼を見上げると、ゆっくりと瞳を細める。
それは、いつもの微笑みよりも妖艶に、少しいたずらっ子のように楽しげにも見える。
そんな微笑み初めて見るし、これ以上、誘惑されては淡い期待を抱きたくなる。
リュクスの代わりでなく…とも、そんなふうに想ってくれますか?
聞いてしまいたい想いが込み上げてくるのを、必死で留めていた。
「お兄さんの事は、私が動かなくてもアルトリア騎士団が動いただろうし、レティの事なら、まだまだお世話したりないよ?」
ゆっくりと指先が離れる。
「それは…私が、リュクスだから…?」
掠れ掠れの声は、呟きよりも小さく、けれども彼にはしっかりと届いていた。
大きく見開かれた瞳に、しまった。と思った。
思わず口にしてしまった。
彼からの態度が居心地良くて、向けられる瞳が優しくて…。
それが変わってしまうのが嫌だと思って、怖くて、それなら我慢しようと思っていたのに。
決して困らせようと思っていたんじゃない。
「そんな事を思っていたの?」
一歩下がって向き合ったソウンディックの瞳には、今にも泣き出しそうなレティの顔が映っていた。
邸や花の灯りなら、火照った頬は誤魔化せそうだ。
「摘み取った花の灯りは明日には消えちゃうから、また二人で来ようね。」
「…っ。」
そっと近づいて耳元で囁かれる。
彼の馨りたつような色香に眩暈がするほどだ。
一気に耳まで熱を持ったのが、自分でも分かる。
籠った熱を逃そうと顔を上げると、ん?と首を傾げるソウンディックとしっかり目があう。
「…は…い。」
掠れて小声にしか出てこない。
それでも嬉しそうに、本当に嬉しそうに彼は微笑む。
ソウンディックは自分の為にも、リュクスを探してたと聞いた。
リュクスの力を持って生まれた者と供に居たいのだと。
それは、自分じゃなくても、誰でも良いんじゃないの?
気がつけば、ソウンディックに惹かれてるのに素直に喜べない自分の気持ちが、悶々と空回りしている。
彼に惹かれれば惹かれるほど、彼の求めるリュクスと、何も持たない自分を卑屈なほど比べてしまうのだ。
「…ソウ様。ソウ様は何故、ここまでして下さるのですか?」
ソウンディックは、こてん、と、不思議そうに首を傾げる。
いつも凛としている姿と比べて、子供っぽく見えて可愛らしい。
「ここまでっていう程の事、してないよ。」
「あ、兄の事や私の身の回りまで。それにっ…ふぐっ。」
すっと伸ばされた指先が、唇に押し付けられる。
少し硬く大きな指先が口を塞いでいた。
目を見開いて彼を見上げると、ゆっくりと瞳を細める。
それは、いつもの微笑みよりも妖艶に、少しいたずらっ子のように楽しげにも見える。
そんな微笑み初めて見るし、これ以上、誘惑されては淡い期待を抱きたくなる。
リュクスの代わりでなく…とも、そんなふうに想ってくれますか?
聞いてしまいたい想いが込み上げてくるのを、必死で留めていた。
「お兄さんの事は、私が動かなくてもアルトリア騎士団が動いただろうし、レティの事なら、まだまだお世話したりないよ?」
ゆっくりと指先が離れる。
「それは…私が、リュクスだから…?」
掠れ掠れの声は、呟きよりも小さく、けれども彼にはしっかりと届いていた。
大きく見開かれた瞳に、しまった。と思った。
思わず口にしてしまった。
彼からの態度が居心地良くて、向けられる瞳が優しくて…。
それが変わってしまうのが嫌だと思って、怖くて、それなら我慢しようと思っていたのに。
決して困らせようと思っていたんじゃない。
「そんな事を思っていたの?」
一歩下がって向き合ったソウンディックの瞳には、今にも泣き出しそうなレティの顔が映っていた。
0
あなたにおすすめの小説
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
私は既にフラれましたので。
椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…?
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
出来レースだった王太子妃選に落選した公爵令嬢 役立たずと言われ家を飛び出しました でもあれ? 意外に外の世界は快適です
流空サキ
恋愛
王太子妃に選ばれるのは公爵令嬢であるエステルのはずだった。結果のわかっている出来レースの王太子妃選。けれど結果はまさかの敗北。
父からは勘当され、エステルは家を飛び出した。頼ったのは屋敷を出入りする商人のクレト・ロエラだった。
無一文のエステルはクレトの勧めるままに彼の邸で暮らし始める。それまでほとんど外に出たことのなかったエステルが初めて目にする外の世界。クレトのもとで仕事をしながら過ごすうち、恩人だった彼のことが次第に気になりはじめて……。
純真な公爵令嬢と、ある秘密を持つ商人との恋愛譚。
わたしたちの庭
犬飼ハルノ
恋愛
『夜明けになるまで絶対に寝室の扉を開けないで』
未来の義母が告げたのは奇妙な夜の掟だった。
父に売られる形でブルーノ伯爵子息の婚約者になったフィリスの物語。
ヒロインのフィリスが自らの力と周囲の人々に支えられて幸せをつかむ話ですが、しばらくは暗く重い展開です。
タグを途中から追加します。
他サイトでも公開中。
愛する義兄に憎まれています
ミカン♬
恋愛
自分と婚約予定の義兄が子爵令嬢の恋人を両親に紹介すると聞いたフィーナは、悲しくて辛くて、やがて心は闇に染まっていった。
義兄はフィーナと結婚して侯爵家を継ぐはずだった、なのにフィーナも両親も裏切って真実の愛を貫くと言う。
許せない!そんなフィーナがとった行動は愛する義兄に憎まれるものだった。
2023/12/27 ミモザと義兄の閑話を投稿しました。
ふわっと設定でサクっと終わります。
他サイトにも投稿。
お姫様は死に、魔女様は目覚めた
悠十
恋愛
とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。
しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。
そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして……
「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」
姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。
「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」
魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……
三年目の離婚から始まる二度目の人生
あい
恋愛
三年子ができなければ、無条件で離婚できる――王国の制度。
三年目の夜、オーレリアは自らその条文を使い、公爵ルートヴィッヒに離婚を告げた。
理由はただ一つ。
“飾り”として生きるのをやめ、自分の手で商いをしたいから。
女性が公の場で立てる服を作るため、彼女は屋敷を去り、仕立て屋〈オーレリア・テイラーズ〉を開く。
店は順調に軌道に乗り、ついに王女の式典衣装を任されることに。
だが、その夜――激しい雨の中、彼女は馬車事故に遭い命を落とす。
(あと少し早く始めていたら、もっと夢を叶えられたのに……)
そう思った瞬間、目を覚ますと――三年前、ルートヴィッヒと結婚する前の世界に戻っていた。
これは、“三年目の離婚”から始まる、二度目の人生。
今度こそ、自分の人生を選び取るために。
ーーー
不定期更新になります。
全45話前後で完結予定です、よろしくお願いします🙇
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる