アルトリアの花

マリネ

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今が夜で良かった。
邸や花の灯りなら、火照った頬は誤魔化せそうだ。

「摘み取った花の灯りは明日には消えちゃうから、また二人で来ようね。」
「…っ。」

そっと近づいて耳元で囁かれる。
彼の馨りたつような色香に眩暈がするほどだ。
一気に耳まで熱を持ったのが、自分でも分かる。
籠った熱を逃そうと顔を上げると、ん?と首を傾げるソウンディックとしっかり目があう。
「…は…い。」
掠れて小声にしか出てこない。
それでも嬉しそうに、本当に嬉しそうに彼は微笑む。

ソウンディックは自分の為にも、リュクスを探してたと聞いた。
リュクスの力を持って生まれた者と供に居たいのだと。

それは、自分じゃなくても、誰でも良いんじゃないの?

気がつけば、ソウンディックに惹かれてるのに素直に喜べない自分の気持ちが、悶々と空回りしている。
彼に惹かれれば惹かれるほど、彼の求めるリュクスと、何も持たない自分を卑屈なほど比べてしまうのだ。

「…ソウ様。ソウ様は何故、ここまでして下さるのですか?」

ソウンディックは、こてん、と、不思議そうに首を傾げる。
いつも凛としている姿と比べて、子供っぽく見えて可愛らしい。

「ここまでっていう程の事、してないよ。」
「あ、兄の事や私の身の回りまで。それにっ…ふぐっ。」
すっと伸ばされた指先が、唇に押し付けられる。
少し硬く大きな指先が口を塞いでいた。
目を見開いて彼を見上げると、ゆっくりと瞳を細める。
それは、いつもの微笑みよりも妖艶に、少しいたずらっ子のように楽しげにも見える。

そんな微笑み初めて見るし、これ以上、誘惑されては淡い期待を抱きたくなる。
リュクスの代わりでなく…とも、そんなふうに想ってくれますか?
聞いてしまいたい想いが込み上げてくるのを、必死で留めていた。

「お兄さんの事は、私が動かなくてもアルトリア騎士団が動いただろうし、レティの事なら、まだまだお世話したりないよ?」
ゆっくりと指先が離れる。
「それは…私が、リュクスだから…?」
掠れ掠れの声は、呟きよりも小さく、けれども彼にはしっかりと届いていた。

大きく見開かれた瞳に、しまった。と思った。
思わず口にしてしまった。
彼からの態度が居心地良くて、向けられる瞳が優しくて…。
それが変わってしまうのが嫌だと思って、怖くて、それなら我慢しようと思っていたのに。
決して困らせようと思っていたんじゃない。


「そんな事を思っていたの?」
一歩下がって向き合ったソウンディックの瞳には、今にも泣き出しそうなレティの顔が映っていた。
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