アルトリアの花

マリネ

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「レティ、しっかり誤解を解かせて。」
彼は顔を上げるとレティの顔を覗き込む。
涙は引っ込んだとはいえ、あれだけ騒いだ後だ、あまり近くから見ないで欲しい。

「わ、分かりました。分かりましたから、離して下さい。」
ぐいと、手の当たるソウンディックの胸を押すが、びくともしない。
彼が柔らかな微笑みを浮かべた途端、周りに漂っていた靄も消えていった。
肩をがっしりと掴まれていて、顔を背けたくても伏せるぐらいしか許されない。

「それじゃあ…」
「おい。何だよこれ。」
いつの間に側に来ていたのか、ソウンディックの背の影からアルベルトの声がする。

「今はレティと大事な話の最中だ。後にしてくれ。」
「こっちも大事な話だ。何で庭が一部失くなってるんだ。」
アルベルトの手が、すっと伸びるとソウンディックの耳を掴んだ。
「いてっ。」

「あ、アルベルト様。」
ソウンディックの肩越しに、アルベルトの姿を見つける。
「レティ、怖かったんじゃないか?」
「だ、大丈夫です。お話させて頂いてただけですので…。」
そう?と疑わしい目をソウンディックへと向ける。
静かに話をしていた体勢ではないので、説得力はない。

「…少し食い違いがあっただけだ。」
「それで?誤解は解けたんだろうな?」
アルベルトはソウンディックとレティを交互に見るが、レティは小さく首を横にする。
まだ、彼の口からリュクスの事は何も聞いてない。
「いや、まだこれからだ。」
同じく首を振るソウンディックに、アルベルトは頭を抱えた。
「庭師が泣くぞ、これ。」
「致し方ない。少し興奮しすぎたんだ。ギルデガルドには後で話しておく。」

「それより、今はレティの誤解を解きたい。」
ソウンディックの腕の中で身動きの取れないレティは小さく頷く。
一気に想いをぶつけたので、少しは気持ちがすっきりしたが、肝心の疑問と疑惑はそのままだ。
この際だ、しっかりと確認しておきたい。

二人の様子を見てため息をつくと、アルベルトは邸の方へと踵を返した。
「分かった。二人だけの方が良いんだな。ただ、これ以上邸を壊さないためにも、隅に控えさせて貰うぞ。」
分かってるよな?と念を推すと、ああ。と、ソウンディックも短く答えた。

「…レティ。落ち着いた?」
ソウンディックの腕の中に隠されて、ドキドキは止まらないが、頭ははっきりしている。
「大丈夫です。それより、離して頂けると…。」
「ダメ。逃げちゃうでしょ?」
確かに…。
「何から話そうか…。まずは、誤解から先に解こうか。」
見上げた彼の顔には、落ち着いたいつもの優しげな微笑みが浮かんでいた。
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