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第一章 支配者
第28話 制裁開始
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飛び降り騒動から三日後、休み明けの学校は何処か物々しく、登校中、多くの守衛の方が散見された。
生徒たちも触発されてか普段の活気はなく、その様相はまるで『恐怖』に怯える野兎のよう。
しかし、厳戒態勢が敷かれていたのは外だけの話。校内には犯人を刺激しない為か、はたまた外面だけ良く見せたいのか、それらしき人は一人も見当たらなかった。
『みなさん、おはようございます。校長の烏間久です。もう既に知っておられるとは思いますが、三日前、我が学園の生徒が三人――』
教室の左隅上部にはテレビが設置してあり、烏間校長の姿が流れている。
学園は入学始まって以来の静寂に包まれ、皆、喪に服している。今までこんなことはなかった。事件はあれど、人が死ぬなんてことは一度も……
正直、私は上の空で、所々しか聞いていなかった。それはみんなも同じだったようで、気付けば十五分ほどの放送は既に終わっていた。
◆
担任の滝先生は教壇に立つと、神妙な面持ちで皆に語り始める。
「はい……今、校長先生からお話があったように、つい三日前に学園の生徒が三人、飛び降りる事故がありました。うち二名はこのクラスの子で、六車くんは命に別状はないとのことですが、残念ながら井幡さんは……帰らぬ人となりました」
その事実に皆、顔を俯かせ、中には泣き出す子もいた。
生徒たちの悲しみが伝染し、滝先生の顔もより曇っていく。
だが続けなければならないのだろう。担任として……そして皆の前を歩く大人として。
「今回の事故で、みんな心を痛めてることでしょう。私も辛いです。だからこそ、みんなで乗り越えなければなりません。先程もお話がありましたように、これからメンタルケアの時間を設けます。一人、十五分程度、場所は『時戒室』にて行います。その間は自習とし、午後からは保護者の方たちへの説明会がありますので、みんなは午前中で帰宅となります。ここまでで何か質問はありますか?」
この学園で『時戒室』のことを知らない生徒はいないだろう。
『時戒室』とは『異能システム』が採用された特殊教室の一つで、本来は目に余る行為をした生徒を戒めるために設けられた懲罰用の教室である。
聞いた話によれば『時戒室』と外とでは時間の流れが違うらしく、時空間も複数点在しているとか。今回のように全校生徒が対象でも、午前中で終わらせられるのは、この特殊な空間のお陰だろう。
「ないのなら、相沢くんから始めます。以降は席順で『時戒室』まで来てください」
そう言って滝先生は教室を後にし、相沢くんも追う為と席を立つ。
その後、教室内は各々、自習の形を取り始める。
泣く者、慰める者、携帯を見る者、勉強する者。このまま静かに時間が流れていくのだろう。誰もがそう思っていた矢先――
「ほーんと余計なことしてくれたよねぇ……大和慧?」
廊下側、井幡さんの後ろの席に座る蛯原亮二くんが、唐突に声を響かせた。
シースルーマッシュの青髪、且つ同色のシャツを着こむ、全身青で統一した派手な外見の蛯原くん。アイドル然とした顔立ちから女子人気が高く、当然、井幡さんとも仲が良かった。
そんな彼に大和くんは顔を向けるだけに留める。
「お前が殺したんだろ? ――汐里のこと」
髪をいじりながら続ける蛯原くんに、周りの生徒も大和くんを睥睨する。元々アウェイではあったが、今回のことでより拍車がかかってる。状況は芳しくない……
「能力者が犯罪侵したら、あーだこーだって言ってたよねぇ? 自分で言ったんだから、さっさと自首してくれよ? みんなお前の所為で迷惑して――」
「いい加減にしなさいよ‼ 慧がやるわけないじゃない‼」
堪らず声を上げたのは藤宮さん。机を叩き、大和くんを庇うように間に立つ。
「アバズレに用は無いよ?」
「はぁ⁉ それは井幡が流した噂でしょ⁉ アンタだって見てたでしょうが⁉」
「犯罪者と連む奴はアバズレだって言われても仕方ないんじゃないかなぁ?」
「なんですって……⁉」
「だってそうだろ? だからこそ汐里は噂を流したんだ。本当の噂をね? それなのに汐里は逆恨みで殺されたんだ。ほんと可哀想だよ。お前たちみたいなクズの所為でさぁ?」
蛯原くんは首を撫でつつ、内ポケットからハサミを取り出すと、手の平の上に浮かせてみせる。
直後、ハサミが弾丸の如く射出され、その切っ先が大和くんへと吸い込まれていく。
「――ッ⁉」
しかし、藤宮さんが瞬時に一睨、飛来するハサミを床へ弾き飛ばす。
その横顔には『偃武場』の時と同様、涙のようなものが伝っていた。
「邪魔しないでよ? お前に用は無いんだからさ」
「あんた……! 自分が何してるか分かってんの⁉」
「もちろん。犯罪者を捕まえようとしてるんだ。みんなの……延いては学園の為にね」
蛯原くんは続けざまにカッターを浮かせると、大和くんへ再び照準を合わせた。
生徒たちも触発されてか普段の活気はなく、その様相はまるで『恐怖』に怯える野兎のよう。
しかし、厳戒態勢が敷かれていたのは外だけの話。校内には犯人を刺激しない為か、はたまた外面だけ良く見せたいのか、それらしき人は一人も見当たらなかった。
『みなさん、おはようございます。校長の烏間久です。もう既に知っておられるとは思いますが、三日前、我が学園の生徒が三人――』
教室の左隅上部にはテレビが設置してあり、烏間校長の姿が流れている。
学園は入学始まって以来の静寂に包まれ、皆、喪に服している。今までこんなことはなかった。事件はあれど、人が死ぬなんてことは一度も……
正直、私は上の空で、所々しか聞いていなかった。それはみんなも同じだったようで、気付けば十五分ほどの放送は既に終わっていた。
◆
担任の滝先生は教壇に立つと、神妙な面持ちで皆に語り始める。
「はい……今、校長先生からお話があったように、つい三日前に学園の生徒が三人、飛び降りる事故がありました。うち二名はこのクラスの子で、六車くんは命に別状はないとのことですが、残念ながら井幡さんは……帰らぬ人となりました」
その事実に皆、顔を俯かせ、中には泣き出す子もいた。
生徒たちの悲しみが伝染し、滝先生の顔もより曇っていく。
だが続けなければならないのだろう。担任として……そして皆の前を歩く大人として。
「今回の事故で、みんな心を痛めてることでしょう。私も辛いです。だからこそ、みんなで乗り越えなければなりません。先程もお話がありましたように、これからメンタルケアの時間を設けます。一人、十五分程度、場所は『時戒室』にて行います。その間は自習とし、午後からは保護者の方たちへの説明会がありますので、みんなは午前中で帰宅となります。ここまでで何か質問はありますか?」
この学園で『時戒室』のことを知らない生徒はいないだろう。
『時戒室』とは『異能システム』が採用された特殊教室の一つで、本来は目に余る行為をした生徒を戒めるために設けられた懲罰用の教室である。
聞いた話によれば『時戒室』と外とでは時間の流れが違うらしく、時空間も複数点在しているとか。今回のように全校生徒が対象でも、午前中で終わらせられるのは、この特殊な空間のお陰だろう。
「ないのなら、相沢くんから始めます。以降は席順で『時戒室』まで来てください」
そう言って滝先生は教室を後にし、相沢くんも追う為と席を立つ。
その後、教室内は各々、自習の形を取り始める。
泣く者、慰める者、携帯を見る者、勉強する者。このまま静かに時間が流れていくのだろう。誰もがそう思っていた矢先――
「ほーんと余計なことしてくれたよねぇ……大和慧?」
廊下側、井幡さんの後ろの席に座る蛯原亮二くんが、唐突に声を響かせた。
シースルーマッシュの青髪、且つ同色のシャツを着こむ、全身青で統一した派手な外見の蛯原くん。アイドル然とした顔立ちから女子人気が高く、当然、井幡さんとも仲が良かった。
そんな彼に大和くんは顔を向けるだけに留める。
「お前が殺したんだろ? ――汐里のこと」
髪をいじりながら続ける蛯原くんに、周りの生徒も大和くんを睥睨する。元々アウェイではあったが、今回のことでより拍車がかかってる。状況は芳しくない……
「能力者が犯罪侵したら、あーだこーだって言ってたよねぇ? 自分で言ったんだから、さっさと自首してくれよ? みんなお前の所為で迷惑して――」
「いい加減にしなさいよ‼ 慧がやるわけないじゃない‼」
堪らず声を上げたのは藤宮さん。机を叩き、大和くんを庇うように間に立つ。
「アバズレに用は無いよ?」
「はぁ⁉ それは井幡が流した噂でしょ⁉ アンタだって見てたでしょうが⁉」
「犯罪者と連む奴はアバズレだって言われても仕方ないんじゃないかなぁ?」
「なんですって……⁉」
「だってそうだろ? だからこそ汐里は噂を流したんだ。本当の噂をね? それなのに汐里は逆恨みで殺されたんだ。ほんと可哀想だよ。お前たちみたいなクズの所為でさぁ?」
蛯原くんは首を撫でつつ、内ポケットからハサミを取り出すと、手の平の上に浮かせてみせる。
直後、ハサミが弾丸の如く射出され、その切っ先が大和くんへと吸い込まれていく。
「――ッ⁉」
しかし、藤宮さんが瞬時に一睨、飛来するハサミを床へ弾き飛ばす。
その横顔には『偃武場』の時と同様、涙のようなものが伝っていた。
「邪魔しないでよ? お前に用は無いんだからさ」
「あんた……! 自分が何してるか分かってんの⁉」
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