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6話 ライラ
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中央区の大通りが大混乱と絶望に包まれている中、同じように中央区のビルも炎に包まれ、中にはまだ逃げられていない人々が沢山いた。
——-中央区 ビル内——-
ドッカーーーン
激しくなり続ける爆音。その爆風の影響で吹き飛ぶ室内の紙や物。窓ガラスは次々と割れている。
「外もしっかり賑わってんなぁおい!!」
ドッカーン
手から次々と爆破を起こす男は、逃げる人々を見つけては爆破で吹っ飛ばし殺していた。
「逃げろー!こっちだ!はやく!」
非常口階段から逃げる人々。非常口のドアを閉めようとしたら、向こうの廊下の角から顔を覗く爆破の男に見つかってしまった。
「あ、みーーつっけた!」
その瞬間両手を後ろに出し、思いっきり爆破を後ろへ放つと、その勢いで一気に非常口ドアの目の前まで来る。
「逃げんなよおらぁ!」
「うわー!!」
その瞬間、男が飛んできた反対側から突如飛んでくる青色の炎の塊。
ドッカーン
すぐに気づいた男は飛んでくる青色の炎に向けて爆破を放ち、後ろに回避する。
「危ない、間に合った。」
青く光り、メラメラと燃える右手を下に向け歩く女。
「おいおぃ、見たことねぇフォースだなぁ」
男が問うと、女は自信に溢れる顔で答える。
「あんたとは火力が違う"青い炎"よ」
そこに現れたのは
小さな女戦士。
所属シグナス 風見沙耶 フォース"蒼炎"
「よく見りゃ女じゃねえかよ!ふっざけんなよ!なんで俺がお前見てーな女と戦わねーといけねーんだよ!あぁん?」
「はーい、そこにいる皆さんは早く避難を!てかまさか、今うちを侮った!?」
そう言うと沙耶は右手に力を入れた。
「女だからって関係ない事をわからせてあげる…。燃やし尽くせ…蒼炎…」
その瞬間、右手に溜め込んだ青い炎のエネルギーを一気に男めがけて放出する。
「"アスルム"…!!!!」
廊下一面を覆い尽くす巨大な炎の一撃が逃げ場のないその男を喰らい尽くす。
「まじかよおぃ!!」
ズッバーーーーン!!
——中央区 ビル内別部屋——-
ゴォォォォ
「今のは沙耶っぽいな。暴れてるなあいつ。」
ボワンッ
呑気に話す峻太に突如飛んでくる赤い炎。
しかし軽い身のこなしでかわす。
「よそ見は禁物だぜそこのデブ!」
「あっ、今僕のことデブって言ったでしょ、
うわー、一番言われたくないんだよな~その言葉。見た目で判断する奴はダメ。ほんと」
(※見た目は太っています)
「でも今のをよく避けれたもんだぜ、その体でなぁ。」
「あ、急にお褒めいただき、ありがとうございます、ところでー。なんでこんな事すんの。関係ない人殺してさ。面白いかよ」
「面白さとかそんなの求めてないんだよ、俺たちはただ、待っていたんだよ。お前たちが行動に移すのを。やっと動いてくれたよ全く」
「何が言いたいんだよ」
男はニヤリと笑うと、ギュンっと峻太めがけて走り出し、赤く燃える右手を後ろに。
「奪うためだよ。"お前らのを"…な!!」
そして思いっきり前に突き出す。右手に込められた炎が峻太めがけて放たれる。
「ぐわっ!!」
ドカーーン
思いっきり受けた炎による爆風で峻太は後ろにあった窓ガラスに直撃。そのまま外へ放り出される。
「ここは19階だ。呆気なく死んだな。ハッハッハ!」
——————————
下から眺める人々は突如割れた窓ガラスに注目する。
「なんだ!割れたぞ!何か出てきたぞ!」
窓ガラスが割れ、炎と黒い煙の中からフッと抜け出す影。
「そーんな簡単に死なねーよ」
飛距離はあまり無かったはずが、50メートルほど距離のある四車線道路を挟んだ隣のビルの窓までフワッと飛び、窓ガラスを割る。
「死んだか。おもしろくねぇ、何のフォースかも知らねえが、まあいらねーか。次だ次」
男は後ろを振り向きテクテクと歩いていく。
その瞬間…
バンッ
「ふべっ!!」
突如どこからか飛んできた、机が男の後頭部めがけてぶつかったのだ。
倒れた男が立ち上がりながら言う。
「いってぇ、一体どこから…」
すると窓の外から声がする。
「ストラーイク!」
「あいつは…」
男の目線の先には、峻太が反対側のビルの窓からこちらを見ていた。
「なぜあいつ生きてやがる!ていうかなぜあんなとこに!?」
峻太はニヤリと笑うと、近くにあったオフィスの椅子を手に取る。
「1グラム…」
そう呟くと、その椅子を思いっきり投げた。
そして投げたと同時に、「5キロ」と呟いた
その椅子はスピードを落とすことなく男にまっすぐ飛んでいく。
「な、この距離を!?」
男は手から火を出し椅子を燃やし尽くす。
「…が、無駄だ」
すると影から突如現れる影が男を殴る。
ズザーーッ
「んだ?今度は…」
「格好つけてやられるほどださいやつはいねーよ。」
そこに現れたのは、ついさっきまで隣のビルにいた峻太だったのだ
「な、貴様なぜここに!?」
「椅子につかまって飛んできたんだよ」
峻太は男に向かって歩きながら話す。
「で?お前、何者だ一体」
「まずはお前だ。一体何のフォースだ、答えろ」
「俺は"重量"ってフォースだ。自分や他人、他の物の重さをコントロールできる」
「なるほど。椅子も机も軽くして投げてたってことか。」
「離す瞬間に重さを上げることで、速い勢いのままその物体が飛ぶようにコントロールしてたんだ。椅子につかまるときは僕の重量をゼロにしたからな。んで、お前は?」
男は手から火を出しながら答える。
「俺の名はバルコ。俺たちの正体は明かさないが…まあ、一つだけヒントをやるよ。」
バルコは走って峻太に近づくと目をギラギラさせながら言った。
「俺たちの目的は、"フォース奪還"だ」
その瞬間、炎を思いっきり峻太めがけて放った。
「1キロ!」
素早い動きでスッとよけると、バルコの腕を掴み、足をかける。
バルコはこけそうになるが地面に手をつき、その手で地面に火を出し勢いで反転、そのまま手から炎を峻太めがけて放つ。
「クッ!」
しかしそれも軽い身のこなしでよける峻太
メラメラと燃え続けるビルの中ではすでに大量の煙が蔓延していた。
「お前は俺に勝てない。」
「お前も僕を倒すことはできない」
バルコは笑いながら峻太に言う。
「何の根拠で俺がお前を倒せないって?お前は重さをコントロールできるだけ。俺は炎を出せる"炎"というフォース。誰が考えてもお前は俺に勝てないんだよ。この状況!」
すると峻太は呆れたように笑う。
「お前、僕が誰だか分かってないから言うんだろ?そうやって舐めたように」
「あぁん?」
峻太はそう言うと、体を構える
「見せてやるよ。僕の戦い方を…」
——————
蓮&剛斗サイド
「おい、なんだこれ…」
「すげえことになってやがる…」
2人の目の前に現れた光景は、とてつもなく悲惨であった。
大量に死んでいる人々。血だらけで命を乞う者も見える。道路には燃える沢山の車。その周りのビルも崩壊し、燃え続けている。
大通りを横断する高速道路は崩壊し、道を大きく塞いでいた。
「今までとは規模が違いすぎる。誰だ。これやったの。人間かよまじで」
蓮は少し冷静に考え、耳のイヤホンを触る。
「お、おい。真由。どうすればいんだよこれ。まず、俺は戦えねーぞ?」
——————
「うん、今回はちょっと予想外だわ。さっきから沙耶と峻太と連絡がつかない。どこのビルで戦っているかもわからないし、時間もないわ。シグナスには、沙耶と峻太の捜索、人命救助をお願いしてる。2人はそのまま近くの人命救助をお願い」
するとシグナスの司令室で警報が鳴る。
「ま、真由!今情報が入った!"渋谷区"に多数の謎の生物が出没!」
俺は聞こえた。イヤホン越しに。"渋谷"と。
「渋谷!?渋谷は"ライラ"の担当地区。しかし住宅街はまずいわ。蓮!剛斗!聞こえる?急いで人命救助を!他のメンバーにも沙耶と峻太の捜索と援護、人命救助を…」
(渋谷って言ったよな…)
「…え?」
イヤホン越しから聞こえる蓮のその言葉の意味に真由は理解できなかった。
「渋谷…だけど、それがなに?」
(愛が…。まだ俺の…俺の家にいるかもしれないんだ…。)
真由は驚き、少し察したように目を見開く。
「あなた、まさか…」
————————
「おい、剛斗。」
「な、なんだよ。」
「ここ、頼むぞ。」
「え、は?」
その瞬間、蓮は来た道を思いっきり走り出した。
「え、おい!蓮!どこ行くんだ!」
背中を眺めることしかできなかった剛斗は真由にすぐ連絡する。
「お、おい!真由!蓮が…!」
(わかってる。蓮を追いかけて。彼はまだフォースが使えない。あなたが援護するの)
「は?いや、ここは?どうすんだよ」
(現状、一番被害が大きい中央区には、今"五天峰の一人"が向かっているわ。)
「そ、そーなのか。なら、蓮についていけばいんだな?」
(ごめん、よろしく。)
「わかった!」
そして剛斗も蓮を走って追いかける。
——————
渋谷区
突如現れた謎の生物に人々は大混乱だった。
「うわー!逃げろー!」
「嫌だ、死にたくない!」
その謎の生物は一体だけではなかった。
赤色のゴツゴツとした体。2、3メートルはある大柄なその生物は、人を捕まえては頭を潰し殺している。
「さあ、わしが"召喚"した"オーガ"達よ。殺せ!殺せ!」
小柄で髭を生やす黒いマントを纏った男は、手を横に広げながらニタニタと笑い道路の真ん中を歩いている。
大量発生したオーガによって破壊される車。電柱や街灯。殺される人々。
逃げ惑う人々には小さな子供もいる。
その中のぬいぐるみを持った少女が必死に走って逃げている。
「ママ…ママ!」
泣きながら走るその少女は、逃げ惑う人々の大混雑の影響で親とはぐれてしまっていた。
そして…
ドシャッ
「えーーーん」
地面に足がつまずき、こけてしまった。
持っていたぬいぐるみは前に吹き飛び、逃げ惑う人々に踏まれ、ボロボロになってしまった。その背後にうつる巨大な生物
「ニンゲン ミツケ タ」
その恐ろしい姿のオーガを見た少女は恐怖で震え、腰が抜け立ち上がれず、ただ涙を流すことしかできなかった。
オーガが少女を掴もうとした…
そのときだった。
フッ
突如オーガの懐に現れた人影が、オーガの腹あたりをグシャリと凹むほどに強く拳を当てる。そしてその強烈な一撃でオーガはかなり遠くのビルに吹き飛んだ。
ズッドーーン
その少女の目の前に突如として現れたのは、小柄で、後ろに髪をくくり、赤い中華風の服を着た女だった。
「ふぅ、間に合った。」
そう言うとその女は少女の方を振り向きニコッと笑い言う。
「もう大丈夫よ。私たちが来たから」
大パニックに陥っている渋谷の街。中央区と同じく、渋谷も車は大渋滞、人々も必死に逃げまどう。何百体と出没したそのオーガは、路地やらビルの中やら、殺しの嗅覚が、人がたくさんいるであろう場所へといざなう。
そんな渋谷には、オーガの行動を食い止める
"戦士たち"が懸命に戦っていた。
「せいやっ!」
武器はなし。拳でオーガを一掃する
少女を救った中華風の女。
伊良知 奈々子(いらち ななこ)
フォース"格闘"
オーガ達は緑色の髪をした女に襲いかかる。
「プランターダンザ!」
地面から出てくる牙を持つ多数の高さのある植物がオーガを噛みつきブンブンと振り回している。
その植物を操る緑色の髪をした女。
穂志 楓(ほし かえで)
フォース"植物"
違う場所では、オーガが暴れることにより、
建物は崩れ、巨大な瓦礫が人々に落ちる。
ガラガラッ
「うわー!あぶなーい!」
グォン
すると突然、瓦礫が紫色のオーラに覆われ、人々に落ちるギリギリの所で空中停止する。
その瓦礫の近くで、手を前に伸ばし、念力を出す者がいた。魔術師のような黒いローブを纏った茶色い髪の男。
今治 泉眼(いまじ せんめ)
フォース"念力"
別の場所では、三体のオーガが青い髪をした男の背後から飛びかかる。
しかしその瞬間…
グサッ
男の足元から現れた透明でゴツゴツとした鉱石のようなものがオーガたちの体を貫通する。
「雑魚が。」
その鉱石を操る青い髪をしたクールな男。
萩 大亜(はぎ だいあ)
フォース"鉱石"
交差点の少し広い場所でもオーガ達がたくさんいた。すると…
「蟻地獄…!」
交差点の上を走る大量のオーガたちの足元に突如として現れた、巨大な砂の蟻地獄。
ゴォォォォ
ものすごい音と凄まじいスピードで吸収するその蟻地獄の目の前には背の高い、茶色い髪をした男が立っていた。
「奈落の底へ堕ちろ。」
無惨に引きづり込まれるオーガを上から眺めるその男。
加地 綾人(かじ あやと)
フォース"砂"
「ママ"~、だれかぁ」
泣きわめく女の子の目の前には、瓦礫の下敷きになった女の子の母親の姿があった。
「は…やく、にげ…て!」
その女の子の背後に迫る、巨大なオーガの姿
それに気づいた母親は涙を流しながら、ダメ…ダメ…と、意識が薄れそうな中、必死にもがいている。
その瞬間…
スローモーションのように、オーガの首が横からへし曲がる。
ガッシャーーン
勢いよく飛んだオーガは、近くのビルの窓に吹き飛ぶ。
オーガを横から蹴り飛ばした、その小柄な男はスタッと着地すると、顔を上げる。
「もう大丈夫だぜ」
その瞬間、母親を下敷きにしている瓦礫がガラガラっと浮き上がる。
「さぁ、お母さん、逃げて」
そこには何トンもありそうな巨大な瓦礫を持ち上げる筋肉ムキムキの男がいた。
「あ…ありがとうございます…!」
その母親は娘に抱きつくと、足をひこずりながら逃げ出す。
ガッシャーーン
瓦礫を離した筋肉ムキムキの男は小柄の男を見ると言う。
「さぁ、次だ!」
オーガを吹き飛ばした小柄な男。手や足はバネのようになっている。
羽根 陸
フォース"弾速"
瓦礫を持ち上げた筋肉ムキムキの男。
八賀力 吾郎(はがりき ごろう)
フォース"筋肉"
———渋谷 ビル内——
渋谷の被害は、外だけではなかった。
ビルにも数体のオーガが侵入し、人々を襲っていた。
「ぎゃーーー!」
「助けてー!だれかー!」
女の従業員を必死に助ける男の従業員
しかし敵わない力の差
「逃げてください!くっ…!」
オーガが男の従業員を押し倒す。
「コロ ス」
「やめろ…やめてくれ…」
オーガが襲おうとしたその瞬間…
「力(りき)」
突如現れた男がオーガを横から強く殴る。
ガシャーーン
「へっ!?へっ!?」
突然のことに焦る周りの人々や男の従業員
「うしっ、間に合ったか!」
突如現れた男に、オーガたちは一斉に飛びかかる。
「速(そく)」
ヒュンッ
そう言うと男は凄まじいスピードで消える。
そして…
「力(りき)」
オーガたちを一斉に殴りまくる。
突如現れた男のおかげで助かった人々はおぉー!と歓声をあげる。
「余裕だぜっ!」
腕を曲げグッとする男。
丸郷 楽(まるごう がく)
フォース"身体(しんたい)"
部屋は変わり、違う階でも人々は襲われていた。
窓の手前まで逃げる女性。
「きゃっ!」
オーガにつかまれそうになりしゃがむと、その手が窓を突き破り割れる。
バリンッ!!
「いやっ!」
オーガは手を引っ込め、女性を上から見下ろすと、唸り声をあげる。
「いやだ…やめて…殺さないで…」
女性が後ろを見ると、10階の部屋であるため、相当高いのがわかった。
目の前にはオーガ。後ろには絶壁。逃げ道なしの絶体絶命の時だった。
「ドルミール オロール」
突如聞こえる静かそうな女の声。
そこには手のひらを上に向け、手のひらから"何か"を放出している。
すると突然、オーガたちが眠ったかのように倒れる。
女性はぎりぎり避けたが足を踏み外してしまう。
「きゃっ!」
スルッと落ちる女性。手を伸ばし「いやっ!」と叫ぶ。すると…
ギュンッ
突然体宙で止まる。
「えっ、えっ、なに!?」
足を踏み外した所を見ると、帽子を被った女がこっちをみて手を伸ばしている。しかし手は届いていない。
女性は自分の体を見ると、体を縛るように糸が巻きついていた。
「ふーっ、間に合った」
糸を出し、女性を救った帽子を被る女。
斎間 亜弥加(さいま あやか)
フォース"糸"
オーガたちを次々と眠らせた女。
古澄 香(こずみ かおる)
フォース"香"
渋谷区に突如現れたオーガたちは、彼ら"ライラ"の行いによって次々と倒されていく。倒されたオーガは、星くずのようにサーっと消えていく。
その様子を見ていたオーガを召喚した、髭を生やした小柄な男は黙っていなかった。
「なんだ…こいつら調子に乗りよって…!」
男は、手を呪文を唱える形にし、すぐ目の前に巨大な魔法陣を作り出す。
「さぁ、いでよ、怪物、ヒュドラよ!」
その瞬間…
「ソイル ハンド!」
その男の足元の地面がうごめき、足をガシッと掴む。
「ん?な、なんだ?」
その男の後ろで、地面に手のひらを置く一人の男。
「お前だろ?この怪物達を生み出した元凶。
でももう逃げられねぇ、その足はどう足掻いても取れねぇからな。」
髭を生やした小柄な男の足は、地面から出た"土"でできた手に掴まれている。それを操るのは、突如現れた少し肌黒目の男。
土屋 奏太(つちや かなた)
フォース"土"
絶体絶命と思われた髭を生やした小柄な男は、不気味に笑う。
「もう遅いんだよ」
その後ろには魔法陣から召喚された、"ヒュドラ"が、ゆっくりと姿を現している。
「"やつ"は召喚された。そしてわしを捕まえることもできない…。"マギトキ"!」
そう言った瞬間、突如その男の足元にワープ状の穴が出現する。
「なっ、なに…!」
奏太は土を操り、その男を捕まえようとするが、土もろごとその穴へと引き摺り込まれる。
「ここにはいないようだ。"我らの求めるフォース"はな。」
そういってその髭を生やした小柄な男は消えていった。そしてそれと同時に召喚されたヒュドラがこちらをギラリと睨む。4本の蛇のような首を持つ黒くゴツゴツとしたドラゴンのような体。その恐ろしい姿はまさに怪物である。
そして凄まじい叫びをするとともに、4本の首の口が大きく開く。
その瞬間…
ゴォォォ!
口から放たれた炎の息吹が奏太に向かって襲いかかる。
「くっ、やべぇ!」
ドパァァン!
その瞬間、突如"盾"のような巨大な壁を作り出す1人の男が現れた。体は少し小さく、羽織る黒いコートがその炎の息吹によってできた爆風で大きく靡く。
「淳人!!」
盾を作り出す、少し小柄の黒いコートを纏い、炎の息吹から奏太を守るこの男。
杉谷 淳人(すぎたに あつと)
フォース"盾"
しかし炎の息吹はまだおさまらない。
その炎の息吹を必死でガードする淳人は横目で奏太を見ながらいう。
「おい!奏太!こいつ一体なんなんだ!」
「わからねぇ、でもその元凶はたしかにいる!取り逃したけど!」
「っざけんな」
そういうと、さらにパワーを込めて盾が二重になる。
しかし炎の息吹は止まらない。
すると突然
バコーーン!
ヒュドラの体が横から凹む。
なんと横から奈々子が飛び蹴りをしたのだ。
ヒュドラは火を吹くのをやめるとそのまま横に倒れる。
スタッ
着地した奈々子は言う。
「ちょっと、こいつなに?」
「わからねぇが、これ以上こいつを暴れさせたら、この街は終わりだ。俺たちがなんとかしねーと。」
そう奏太がいうと、続けて奈々子が手をパシッとし、言う。
「望む所よ」
三人の立つ目の前には、立ち上がる巨大なヒュドラの姿がある。
——6話 完——
——-中央区 ビル内——-
ドッカーーーン
激しくなり続ける爆音。その爆風の影響で吹き飛ぶ室内の紙や物。窓ガラスは次々と割れている。
「外もしっかり賑わってんなぁおい!!」
ドッカーン
手から次々と爆破を起こす男は、逃げる人々を見つけては爆破で吹っ飛ばし殺していた。
「逃げろー!こっちだ!はやく!」
非常口階段から逃げる人々。非常口のドアを閉めようとしたら、向こうの廊下の角から顔を覗く爆破の男に見つかってしまった。
「あ、みーーつっけた!」
その瞬間両手を後ろに出し、思いっきり爆破を後ろへ放つと、その勢いで一気に非常口ドアの目の前まで来る。
「逃げんなよおらぁ!」
「うわー!!」
その瞬間、男が飛んできた反対側から突如飛んでくる青色の炎の塊。
ドッカーン
すぐに気づいた男は飛んでくる青色の炎に向けて爆破を放ち、後ろに回避する。
「危ない、間に合った。」
青く光り、メラメラと燃える右手を下に向け歩く女。
「おいおぃ、見たことねぇフォースだなぁ」
男が問うと、女は自信に溢れる顔で答える。
「あんたとは火力が違う"青い炎"よ」
そこに現れたのは
小さな女戦士。
所属シグナス 風見沙耶 フォース"蒼炎"
「よく見りゃ女じゃねえかよ!ふっざけんなよ!なんで俺がお前見てーな女と戦わねーといけねーんだよ!あぁん?」
「はーい、そこにいる皆さんは早く避難を!てかまさか、今うちを侮った!?」
そう言うと沙耶は右手に力を入れた。
「女だからって関係ない事をわからせてあげる…。燃やし尽くせ…蒼炎…」
その瞬間、右手に溜め込んだ青い炎のエネルギーを一気に男めがけて放出する。
「"アスルム"…!!!!」
廊下一面を覆い尽くす巨大な炎の一撃が逃げ場のないその男を喰らい尽くす。
「まじかよおぃ!!」
ズッバーーーーン!!
——中央区 ビル内別部屋——-
ゴォォォォ
「今のは沙耶っぽいな。暴れてるなあいつ。」
ボワンッ
呑気に話す峻太に突如飛んでくる赤い炎。
しかし軽い身のこなしでかわす。
「よそ見は禁物だぜそこのデブ!」
「あっ、今僕のことデブって言ったでしょ、
うわー、一番言われたくないんだよな~その言葉。見た目で判断する奴はダメ。ほんと」
(※見た目は太っています)
「でも今のをよく避けれたもんだぜ、その体でなぁ。」
「あ、急にお褒めいただき、ありがとうございます、ところでー。なんでこんな事すんの。関係ない人殺してさ。面白いかよ」
「面白さとかそんなの求めてないんだよ、俺たちはただ、待っていたんだよ。お前たちが行動に移すのを。やっと動いてくれたよ全く」
「何が言いたいんだよ」
男はニヤリと笑うと、ギュンっと峻太めがけて走り出し、赤く燃える右手を後ろに。
「奪うためだよ。"お前らのを"…な!!」
そして思いっきり前に突き出す。右手に込められた炎が峻太めがけて放たれる。
「ぐわっ!!」
ドカーーン
思いっきり受けた炎による爆風で峻太は後ろにあった窓ガラスに直撃。そのまま外へ放り出される。
「ここは19階だ。呆気なく死んだな。ハッハッハ!」
——————————
下から眺める人々は突如割れた窓ガラスに注目する。
「なんだ!割れたぞ!何か出てきたぞ!」
窓ガラスが割れ、炎と黒い煙の中からフッと抜け出す影。
「そーんな簡単に死なねーよ」
飛距離はあまり無かったはずが、50メートルほど距離のある四車線道路を挟んだ隣のビルの窓までフワッと飛び、窓ガラスを割る。
「死んだか。おもしろくねぇ、何のフォースかも知らねえが、まあいらねーか。次だ次」
男は後ろを振り向きテクテクと歩いていく。
その瞬間…
バンッ
「ふべっ!!」
突如どこからか飛んできた、机が男の後頭部めがけてぶつかったのだ。
倒れた男が立ち上がりながら言う。
「いってぇ、一体どこから…」
すると窓の外から声がする。
「ストラーイク!」
「あいつは…」
男の目線の先には、峻太が反対側のビルの窓からこちらを見ていた。
「なぜあいつ生きてやがる!ていうかなぜあんなとこに!?」
峻太はニヤリと笑うと、近くにあったオフィスの椅子を手に取る。
「1グラム…」
そう呟くと、その椅子を思いっきり投げた。
そして投げたと同時に、「5キロ」と呟いた
その椅子はスピードを落とすことなく男にまっすぐ飛んでいく。
「な、この距離を!?」
男は手から火を出し椅子を燃やし尽くす。
「…が、無駄だ」
すると影から突如現れる影が男を殴る。
ズザーーッ
「んだ?今度は…」
「格好つけてやられるほどださいやつはいねーよ。」
そこに現れたのは、ついさっきまで隣のビルにいた峻太だったのだ
「な、貴様なぜここに!?」
「椅子につかまって飛んできたんだよ」
峻太は男に向かって歩きながら話す。
「で?お前、何者だ一体」
「まずはお前だ。一体何のフォースだ、答えろ」
「俺は"重量"ってフォースだ。自分や他人、他の物の重さをコントロールできる」
「なるほど。椅子も机も軽くして投げてたってことか。」
「離す瞬間に重さを上げることで、速い勢いのままその物体が飛ぶようにコントロールしてたんだ。椅子につかまるときは僕の重量をゼロにしたからな。んで、お前は?」
男は手から火を出しながら答える。
「俺の名はバルコ。俺たちの正体は明かさないが…まあ、一つだけヒントをやるよ。」
バルコは走って峻太に近づくと目をギラギラさせながら言った。
「俺たちの目的は、"フォース奪還"だ」
その瞬間、炎を思いっきり峻太めがけて放った。
「1キロ!」
素早い動きでスッとよけると、バルコの腕を掴み、足をかける。
バルコはこけそうになるが地面に手をつき、その手で地面に火を出し勢いで反転、そのまま手から炎を峻太めがけて放つ。
「クッ!」
しかしそれも軽い身のこなしでよける峻太
メラメラと燃え続けるビルの中ではすでに大量の煙が蔓延していた。
「お前は俺に勝てない。」
「お前も僕を倒すことはできない」
バルコは笑いながら峻太に言う。
「何の根拠で俺がお前を倒せないって?お前は重さをコントロールできるだけ。俺は炎を出せる"炎"というフォース。誰が考えてもお前は俺に勝てないんだよ。この状況!」
すると峻太は呆れたように笑う。
「お前、僕が誰だか分かってないから言うんだろ?そうやって舐めたように」
「あぁん?」
峻太はそう言うと、体を構える
「見せてやるよ。僕の戦い方を…」
——————
蓮&剛斗サイド
「おい、なんだこれ…」
「すげえことになってやがる…」
2人の目の前に現れた光景は、とてつもなく悲惨であった。
大量に死んでいる人々。血だらけで命を乞う者も見える。道路には燃える沢山の車。その周りのビルも崩壊し、燃え続けている。
大通りを横断する高速道路は崩壊し、道を大きく塞いでいた。
「今までとは規模が違いすぎる。誰だ。これやったの。人間かよまじで」
蓮は少し冷静に考え、耳のイヤホンを触る。
「お、おい。真由。どうすればいんだよこれ。まず、俺は戦えねーぞ?」
——————
「うん、今回はちょっと予想外だわ。さっきから沙耶と峻太と連絡がつかない。どこのビルで戦っているかもわからないし、時間もないわ。シグナスには、沙耶と峻太の捜索、人命救助をお願いしてる。2人はそのまま近くの人命救助をお願い」
するとシグナスの司令室で警報が鳴る。
「ま、真由!今情報が入った!"渋谷区"に多数の謎の生物が出没!」
俺は聞こえた。イヤホン越しに。"渋谷"と。
「渋谷!?渋谷は"ライラ"の担当地区。しかし住宅街はまずいわ。蓮!剛斗!聞こえる?急いで人命救助を!他のメンバーにも沙耶と峻太の捜索と援護、人命救助を…」
(渋谷って言ったよな…)
「…え?」
イヤホン越しから聞こえる蓮のその言葉の意味に真由は理解できなかった。
「渋谷…だけど、それがなに?」
(愛が…。まだ俺の…俺の家にいるかもしれないんだ…。)
真由は驚き、少し察したように目を見開く。
「あなた、まさか…」
————————
「おい、剛斗。」
「な、なんだよ。」
「ここ、頼むぞ。」
「え、は?」
その瞬間、蓮は来た道を思いっきり走り出した。
「え、おい!蓮!どこ行くんだ!」
背中を眺めることしかできなかった剛斗は真由にすぐ連絡する。
「お、おい!真由!蓮が…!」
(わかってる。蓮を追いかけて。彼はまだフォースが使えない。あなたが援護するの)
「は?いや、ここは?どうすんだよ」
(現状、一番被害が大きい中央区には、今"五天峰の一人"が向かっているわ。)
「そ、そーなのか。なら、蓮についていけばいんだな?」
(ごめん、よろしく。)
「わかった!」
そして剛斗も蓮を走って追いかける。
——————
渋谷区
突如現れた謎の生物に人々は大混乱だった。
「うわー!逃げろー!」
「嫌だ、死にたくない!」
その謎の生物は一体だけではなかった。
赤色のゴツゴツとした体。2、3メートルはある大柄なその生物は、人を捕まえては頭を潰し殺している。
「さあ、わしが"召喚"した"オーガ"達よ。殺せ!殺せ!」
小柄で髭を生やす黒いマントを纏った男は、手を横に広げながらニタニタと笑い道路の真ん中を歩いている。
大量発生したオーガによって破壊される車。電柱や街灯。殺される人々。
逃げ惑う人々には小さな子供もいる。
その中のぬいぐるみを持った少女が必死に走って逃げている。
「ママ…ママ!」
泣きながら走るその少女は、逃げ惑う人々の大混雑の影響で親とはぐれてしまっていた。
そして…
ドシャッ
「えーーーん」
地面に足がつまずき、こけてしまった。
持っていたぬいぐるみは前に吹き飛び、逃げ惑う人々に踏まれ、ボロボロになってしまった。その背後にうつる巨大な生物
「ニンゲン ミツケ タ」
その恐ろしい姿のオーガを見た少女は恐怖で震え、腰が抜け立ち上がれず、ただ涙を流すことしかできなかった。
オーガが少女を掴もうとした…
そのときだった。
フッ
突如オーガの懐に現れた人影が、オーガの腹あたりをグシャリと凹むほどに強く拳を当てる。そしてその強烈な一撃でオーガはかなり遠くのビルに吹き飛んだ。
ズッドーーン
その少女の目の前に突如として現れたのは、小柄で、後ろに髪をくくり、赤い中華風の服を着た女だった。
「ふぅ、間に合った。」
そう言うとその女は少女の方を振り向きニコッと笑い言う。
「もう大丈夫よ。私たちが来たから」
大パニックに陥っている渋谷の街。中央区と同じく、渋谷も車は大渋滞、人々も必死に逃げまどう。何百体と出没したそのオーガは、路地やらビルの中やら、殺しの嗅覚が、人がたくさんいるであろう場所へといざなう。
そんな渋谷には、オーガの行動を食い止める
"戦士たち"が懸命に戦っていた。
「せいやっ!」
武器はなし。拳でオーガを一掃する
少女を救った中華風の女。
伊良知 奈々子(いらち ななこ)
フォース"格闘"
オーガ達は緑色の髪をした女に襲いかかる。
「プランターダンザ!」
地面から出てくる牙を持つ多数の高さのある植物がオーガを噛みつきブンブンと振り回している。
その植物を操る緑色の髪をした女。
穂志 楓(ほし かえで)
フォース"植物"
違う場所では、オーガが暴れることにより、
建物は崩れ、巨大な瓦礫が人々に落ちる。
ガラガラッ
「うわー!あぶなーい!」
グォン
すると突然、瓦礫が紫色のオーラに覆われ、人々に落ちるギリギリの所で空中停止する。
その瓦礫の近くで、手を前に伸ばし、念力を出す者がいた。魔術師のような黒いローブを纏った茶色い髪の男。
今治 泉眼(いまじ せんめ)
フォース"念力"
別の場所では、三体のオーガが青い髪をした男の背後から飛びかかる。
しかしその瞬間…
グサッ
男の足元から現れた透明でゴツゴツとした鉱石のようなものがオーガたちの体を貫通する。
「雑魚が。」
その鉱石を操る青い髪をしたクールな男。
萩 大亜(はぎ だいあ)
フォース"鉱石"
交差点の少し広い場所でもオーガ達がたくさんいた。すると…
「蟻地獄…!」
交差点の上を走る大量のオーガたちの足元に突如として現れた、巨大な砂の蟻地獄。
ゴォォォォ
ものすごい音と凄まじいスピードで吸収するその蟻地獄の目の前には背の高い、茶色い髪をした男が立っていた。
「奈落の底へ堕ちろ。」
無惨に引きづり込まれるオーガを上から眺めるその男。
加地 綾人(かじ あやと)
フォース"砂"
「ママ"~、だれかぁ」
泣きわめく女の子の目の前には、瓦礫の下敷きになった女の子の母親の姿があった。
「は…やく、にげ…て!」
その女の子の背後に迫る、巨大なオーガの姿
それに気づいた母親は涙を流しながら、ダメ…ダメ…と、意識が薄れそうな中、必死にもがいている。
その瞬間…
スローモーションのように、オーガの首が横からへし曲がる。
ガッシャーーン
勢いよく飛んだオーガは、近くのビルの窓に吹き飛ぶ。
オーガを横から蹴り飛ばした、その小柄な男はスタッと着地すると、顔を上げる。
「もう大丈夫だぜ」
その瞬間、母親を下敷きにしている瓦礫がガラガラっと浮き上がる。
「さぁ、お母さん、逃げて」
そこには何トンもありそうな巨大な瓦礫を持ち上げる筋肉ムキムキの男がいた。
「あ…ありがとうございます…!」
その母親は娘に抱きつくと、足をひこずりながら逃げ出す。
ガッシャーーン
瓦礫を離した筋肉ムキムキの男は小柄の男を見ると言う。
「さぁ、次だ!」
オーガを吹き飛ばした小柄な男。手や足はバネのようになっている。
羽根 陸
フォース"弾速"
瓦礫を持ち上げた筋肉ムキムキの男。
八賀力 吾郎(はがりき ごろう)
フォース"筋肉"
———渋谷 ビル内——
渋谷の被害は、外だけではなかった。
ビルにも数体のオーガが侵入し、人々を襲っていた。
「ぎゃーーー!」
「助けてー!だれかー!」
女の従業員を必死に助ける男の従業員
しかし敵わない力の差
「逃げてください!くっ…!」
オーガが男の従業員を押し倒す。
「コロ ス」
「やめろ…やめてくれ…」
オーガが襲おうとしたその瞬間…
「力(りき)」
突如現れた男がオーガを横から強く殴る。
ガシャーーン
「へっ!?へっ!?」
突然のことに焦る周りの人々や男の従業員
「うしっ、間に合ったか!」
突如現れた男に、オーガたちは一斉に飛びかかる。
「速(そく)」
ヒュンッ
そう言うと男は凄まじいスピードで消える。
そして…
「力(りき)」
オーガたちを一斉に殴りまくる。
突如現れた男のおかげで助かった人々はおぉー!と歓声をあげる。
「余裕だぜっ!」
腕を曲げグッとする男。
丸郷 楽(まるごう がく)
フォース"身体(しんたい)"
部屋は変わり、違う階でも人々は襲われていた。
窓の手前まで逃げる女性。
「きゃっ!」
オーガにつかまれそうになりしゃがむと、その手が窓を突き破り割れる。
バリンッ!!
「いやっ!」
オーガは手を引っ込め、女性を上から見下ろすと、唸り声をあげる。
「いやだ…やめて…殺さないで…」
女性が後ろを見ると、10階の部屋であるため、相当高いのがわかった。
目の前にはオーガ。後ろには絶壁。逃げ道なしの絶体絶命の時だった。
「ドルミール オロール」
突如聞こえる静かそうな女の声。
そこには手のひらを上に向け、手のひらから"何か"を放出している。
すると突然、オーガたちが眠ったかのように倒れる。
女性はぎりぎり避けたが足を踏み外してしまう。
「きゃっ!」
スルッと落ちる女性。手を伸ばし「いやっ!」と叫ぶ。すると…
ギュンッ
突然体宙で止まる。
「えっ、えっ、なに!?」
足を踏み外した所を見ると、帽子を被った女がこっちをみて手を伸ばしている。しかし手は届いていない。
女性は自分の体を見ると、体を縛るように糸が巻きついていた。
「ふーっ、間に合った」
糸を出し、女性を救った帽子を被る女。
斎間 亜弥加(さいま あやか)
フォース"糸"
オーガたちを次々と眠らせた女。
古澄 香(こずみ かおる)
フォース"香"
渋谷区に突如現れたオーガたちは、彼ら"ライラ"の行いによって次々と倒されていく。倒されたオーガは、星くずのようにサーっと消えていく。
その様子を見ていたオーガを召喚した、髭を生やした小柄な男は黙っていなかった。
「なんだ…こいつら調子に乗りよって…!」
男は、手を呪文を唱える形にし、すぐ目の前に巨大な魔法陣を作り出す。
「さぁ、いでよ、怪物、ヒュドラよ!」
その瞬間…
「ソイル ハンド!」
その男の足元の地面がうごめき、足をガシッと掴む。
「ん?な、なんだ?」
その男の後ろで、地面に手のひらを置く一人の男。
「お前だろ?この怪物達を生み出した元凶。
でももう逃げられねぇ、その足はどう足掻いても取れねぇからな。」
髭を生やした小柄な男の足は、地面から出た"土"でできた手に掴まれている。それを操るのは、突如現れた少し肌黒目の男。
土屋 奏太(つちや かなた)
フォース"土"
絶体絶命と思われた髭を生やした小柄な男は、不気味に笑う。
「もう遅いんだよ」
その後ろには魔法陣から召喚された、"ヒュドラ"が、ゆっくりと姿を現している。
「"やつ"は召喚された。そしてわしを捕まえることもできない…。"マギトキ"!」
そう言った瞬間、突如その男の足元にワープ状の穴が出現する。
「なっ、なに…!」
奏太は土を操り、その男を捕まえようとするが、土もろごとその穴へと引き摺り込まれる。
「ここにはいないようだ。"我らの求めるフォース"はな。」
そういってその髭を生やした小柄な男は消えていった。そしてそれと同時に召喚されたヒュドラがこちらをギラリと睨む。4本の蛇のような首を持つ黒くゴツゴツとしたドラゴンのような体。その恐ろしい姿はまさに怪物である。
そして凄まじい叫びをするとともに、4本の首の口が大きく開く。
その瞬間…
ゴォォォ!
口から放たれた炎の息吹が奏太に向かって襲いかかる。
「くっ、やべぇ!」
ドパァァン!
その瞬間、突如"盾"のような巨大な壁を作り出す1人の男が現れた。体は少し小さく、羽織る黒いコートがその炎の息吹によってできた爆風で大きく靡く。
「淳人!!」
盾を作り出す、少し小柄の黒いコートを纏い、炎の息吹から奏太を守るこの男。
杉谷 淳人(すぎたに あつと)
フォース"盾"
しかし炎の息吹はまだおさまらない。
その炎の息吹を必死でガードする淳人は横目で奏太を見ながらいう。
「おい!奏太!こいつ一体なんなんだ!」
「わからねぇ、でもその元凶はたしかにいる!取り逃したけど!」
「っざけんな」
そういうと、さらにパワーを込めて盾が二重になる。
しかし炎の息吹は止まらない。
すると突然
バコーーン!
ヒュドラの体が横から凹む。
なんと横から奈々子が飛び蹴りをしたのだ。
ヒュドラは火を吹くのをやめるとそのまま横に倒れる。
スタッ
着地した奈々子は言う。
「ちょっと、こいつなに?」
「わからねぇが、これ以上こいつを暴れさせたら、この街は終わりだ。俺たちがなんとかしねーと。」
そう奏太がいうと、続けて奈々子が手をパシッとし、言う。
「望む所よ」
三人の立つ目の前には、立ち上がる巨大なヒュドラの姿がある。
——6話 完——
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