可愛いかもね

圍 杉菜ひ

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第1話

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 妙に喉が渇き目が覚める……興奮しているかあるいは緊張しているようだ。
 だって今日は黒能州《こくのうす》高校の入学式だから。

 起きるには早いけど準備をすることにした。
 ベッドから起き上がり、部屋の明かりをつけた後に勉強机に向かい、アルミフレームの卓上鏡を目の前に置く。
 前髪をセットしながら時計を確認した。午前三時か……。

 私は鏡に映る自分の姿を毎日とまではいかないけど、ほぼほぼ毎日見続けていて思ったことがある。
 私って可愛いい。アイドルや女優さんとまではいかなくても一般人レベルを遥かに超越している可愛さなんだ。

 あ、ちょっと待って! 前髪が微妙に長い気がしてきた。

 私は慌てて引き出しからハサミを取り出した。
 ほぼほぼ毎日見ているからこそ、自らの絶対的に可愛い領域を知っている。 
 だからこそ入学式などを含めイベントというイベント前には必ず可愛い領域にしておく必要が絶対。

「左斜め一ミリ……」
「みや~び~」

 集中して前髪を切ろうとしている私を呼ぶ声がした。
 なんとも力のない声を発しているのは母親である。
 普段なら「はーい」と元気な返事もできたでしょうけど、今は前髪を切るために集中しているので無視。

 チョキ、チョキと寸分の狂いもなく前髪を切っていく。

「雅、生きてるー」

 母親の大きな叫び声がドア越しに聞こえた次の瞬間、ノックをすることもなく私の部屋のドアを蹴破ってきた。 
 プライベート問題もあるので人の部屋に入る時はノックを必ずしなさいと躾けられてきたものですが、その躾を厳しくしてきた母親がドアを蹴破るって……どうなんだ。

 普段は瞼が垂れ下がっていて眠そうな表情の母親ではあったが、瞼を限界まで押し上げて眼球が今にも飛び出してしまいそうなほどに見開いる。必死な表情の母親の顔を見て私は開いた口が塞がらない。

 なぜですか、なぜそんなに必死なの?

 蹴破ったドアは部屋の窓ガラスを割り外まで飛び出してしまった。かなりの近所迷惑だろう。
 恐ろしいほどの風圧を受け、部屋中の物がぐちゃぐちゃに汚れてしまった。

「雅、生きてるなら返事してよね。はあ~心配した」
「……」
「あら……ぷぷぷぷ。なに雅? ひょっとして高校デビューていうのそれ」

 母親は笑いながら私の顔を見て指を差すので何事かと鏡を見て見れば……。

「ちょ、ちょっと待って。ま、ま、前髪が、私の前髪が無くなってるー」

 おでこ全開……私の可愛いの絶対領域はどこへいってしまったの。これでは恥ずかしくて高校デビューどころじゃないよー。
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