可愛いかもね

圍 杉菜ひ

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第2話

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 恐ろしいくらい中学校時代の顔馴染みばかりが同じクラスだった。もしかしてこの辺りは他に高校が無く、唯一の高校が黒能州高校だったのかと疑うほどだ。

 顔馴染みばかりなので、余計におでこ全開ヘアスタイルなのが恥ずかしくてしょうがない。
 隠したくても隠せないおでこ。せめてロングヘア―なら何かしらの対処ができたかもしれないけど、ショートヘアでは根元からパッツリ切られた前髪を救うことは不可能だった。

 私を知らない人からすれば元々そういう髪型なんだ~で終わるだろうけど。
 私を知っている人にとってはお前かなりイメチェンしたなと思ってくれればいいけど、明らかに失敗したよねって感じで笑いネタにされてしまうだろう。

 唯一安心できること、それは私には好きな人がいなかったこと。好きな人に失敗した髪型の姿なんて見られたら即死だ。

 入学式こそは存在を消して静かに過ごし、無事一日を終えることができたが……前髪が伸びるまで数日間も隠すことなど不可能であり、翌日にはみんなに知られることになった。


「初根《はつね》 雅《みやび》です」

 みんなの前で自己紹介、地獄でした。わざわざ注目されるために前に立つのですから。本来なら自信をもって自らの可愛さを前面にお知らせできる機会なので嬉しいはずなのに。

 顔馴染み同級生たち……特に男子から空気を読まない言葉が私へ向けられる。

「雅、前髪切りすぎっていうか、前髪失敗してね?」
「本当だ、失敗してるっぽい」

 私の失敗した前髪で盛り上がる顔馴染み同級生の男子たち……そんな男子たちに顔馴染み同級生の女子たちが立ち上がってくれた。

「あんたたち雅に謝りなさい、失敗してたっていいじゃない」
「そうよそうよ」

 不思議な空気に包まれ、その後は「雅、髪形が似合ってるよ」とお世辞、お世辞、お世辞の嵐。他クラスの顔馴染み同級生たちに会うだけでも同じことを言われた。一学年全員に広められてるんですけど……もう笑いネタにしておくれ、逆になんか恥ずかしくなってきたから。

 もう明日からいきなり不登校宣言を担任教師に伝えようかと心の片隅に抱きながら玄関ホールに私は居た。一番最初に私の前髪が失敗していることをみんなの前で堂々と発言した顔馴染み同級生の小山田《こやまだ》の靴にみかんの皮と美味しい成分が抽出済のペーパードリップ式コーヒーバッグを詰め込んだ。

 靴の嫌な臭いを取るという意味でも十分効果が期待できそうだけど、要するにお前の足は異臭が凄いぞと直接的には気付きにくい嫌がらせをしてやった。
 そんな時だった。

「その髪型似合ってるね。初根さんの顔がしっかり見ることができて好きだな」

 不意に背後から声を掛けられ振り返ると、笑顔の男子生徒が立っていた。初対面の人から可愛いって言ってもらえた時、私の胸がドキドキして恋をしたんだと知った。
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