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第3話
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私は小山田のことを許して普通の同級生として接してあげることにした。なぜなら、私は昨日の玄関ホールで私のことを可愛いと言ってくれた男子生徒のことで頭の中も心も一杯だったから。
体育の時間、考え事で身の入らない私は準備体操を手抜きしたことにより、走り出した瞬間に足がつり転倒。保健室に運ばれる失態。
「軽い捻挫ね。とりあえずこの時間は保健室で休憩してなさい」
「はーい」
私は保健室の山田先生に言われた通り静かにベッドに横たわって休息することにした。しばらくすると山田先生は「ちょっと職員室に行ってくるから、静かにしてなさいね。初根さん、嶋野《しまの》くん」と言って保健室を出た。
この時初めて隣に他の人が居ることを知った。二床のベッドの間にカーテンで仕切られていたことを考えれば使用していたんだね。安易に爆睡していびきをしないように気をつけなければいけない。
「初根さん、体調でも悪いの?」
静かな空間の中、カーテン越しに話しかけてきた人物は私のことを知っているようだ。どこかで聞いた覚えのある声なので思い出そうと頑張った、けど思い出せない。学年が分からないのでとりあえず敬語調で話す。
「ちょっと捻挫です」
「そうなんだ。大変だね、僕はラッキーだったけど」
「なんでラッキーなんですか?」
「え、初根さんと一緒の空間に居ることが幸せだからだよ」
聞き覚えのある声、段々と昨日のことを思い出してきて、声も何となく一致し始めた。昨日、私のことを可愛いと言ってくれた人物で間違いない。
「あの、あなたの顔を見たいです」
なぜか唐突に出た言葉が顔を見たいという言葉。流れ的にはありえないけど、恐らくは私は彼に恋をしていて今このチャンスは逃したくないと本能が働いたのだろう。
「うん、初根さんが問題なければいいよ。カーテン開けるね」
「ありがとう」
嶋野くんがカーテンを開けようとした瞬間のことだった。突然、保健室の扉が勢いよく開けられた。
「雅、雅、大変なの。私はあなたと同じクラスの田中《たなか》。急いで体育館倉庫に来て!」
「は?」
私は大して仲も良いわけでもない同級生の田中さんに下の名前で呼ばれたことに少々複雑な表情を見せるも、彼女は軽い捻挫の私を強引にベッドから起こし、体育館倉庫まで強引に連れ出された。
渋々私が体育館倉庫を開けるとケチャップまみれの女子生徒が一人倒れていた。
「雅、雅、この死体の首元を見て」
田中さんは青ざめた表情でケチャップまみれで倒れている女子生徒のことを死体だと言った。あまりに深刻そうな表情なので本当に死体なのかと私は思いはじめた。もしそうなら、なぜ私を呼んで死体の首元を見させようとするのだろうか。
私にとって初めてなんだよ。おじいちゃんもおばあちゃんも健在で冷たくなっている人なんて一度も見たことがないんだ。
「どれどれ、こ、これは首元に何者かに……」
「これは恐らく吸血鬼だよね」
「残念ながらそれは違う、これはただのキスマーク」
「キ、キ、キスマーク? 本当なの雅」
「ええ、彼女は死んでいない。死んだふりをしてこの場を乗り切ろうとしている人でしかない」
私は倒れて死んでいるかのようにしている女子生徒の脇をこちょこちょしてみた。するとどうでしょうか、普通に声を出しながら笑い出しました。
田中さんは私を押しのけて、死んだふりをしていることやキスマークのことを女子生徒に問い詰める。黙っていた方が女子生徒のためになるかもしれないけど、謎は残さない方がいいと思い私は口を開く。
「恐らく彼女はそこの跳び箱の中に隠れている人物と……ほにゃららしていたのかも」
「え、どういうこと雅? ほにゃらら?」
「ええ、ほにゃらら」
「だから雅、ほにゃららって?」
なんてことなんでしょうか、本当は察しているはずなのにほにゃららを理解できてないみたいな反応をする田中さん。高校生で未成年の私に言葉を濁さずに言わせようとしている……ただでさえ前髪のことで自信を失いつつある私に対して追い打ちをかけようというのでしょうか。
「男女がなんていうの、こう」
本当に知らないパターンもあるので、私はとりあえず身振り手振りで田中さんにほにゃららの説明をした。
「あ、そういう意味じゃなくて……ほにゃららを教えて」
「ほにゃららは言いにくい言葉を濁すために用いています」
「あ~そういうことなんだ」
このくらいはなんとなく雰囲気で覚えておいて欲しいものだと思った。
体育の時間、考え事で身の入らない私は準備体操を手抜きしたことにより、走り出した瞬間に足がつり転倒。保健室に運ばれる失態。
「軽い捻挫ね。とりあえずこの時間は保健室で休憩してなさい」
「はーい」
私は保健室の山田先生に言われた通り静かにベッドに横たわって休息することにした。しばらくすると山田先生は「ちょっと職員室に行ってくるから、静かにしてなさいね。初根さん、嶋野《しまの》くん」と言って保健室を出た。
この時初めて隣に他の人が居ることを知った。二床のベッドの間にカーテンで仕切られていたことを考えれば使用していたんだね。安易に爆睡していびきをしないように気をつけなければいけない。
「初根さん、体調でも悪いの?」
静かな空間の中、カーテン越しに話しかけてきた人物は私のことを知っているようだ。どこかで聞いた覚えのある声なので思い出そうと頑張った、けど思い出せない。学年が分からないのでとりあえず敬語調で話す。
「ちょっと捻挫です」
「そうなんだ。大変だね、僕はラッキーだったけど」
「なんでラッキーなんですか?」
「え、初根さんと一緒の空間に居ることが幸せだからだよ」
聞き覚えのある声、段々と昨日のことを思い出してきて、声も何となく一致し始めた。昨日、私のことを可愛いと言ってくれた人物で間違いない。
「あの、あなたの顔を見たいです」
なぜか唐突に出た言葉が顔を見たいという言葉。流れ的にはありえないけど、恐らくは私は彼に恋をしていて今このチャンスは逃したくないと本能が働いたのだろう。
「うん、初根さんが問題なければいいよ。カーテン開けるね」
「ありがとう」
嶋野くんがカーテンを開けようとした瞬間のことだった。突然、保健室の扉が勢いよく開けられた。
「雅、雅、大変なの。私はあなたと同じクラスの田中《たなか》。急いで体育館倉庫に来て!」
「は?」
私は大して仲も良いわけでもない同級生の田中さんに下の名前で呼ばれたことに少々複雑な表情を見せるも、彼女は軽い捻挫の私を強引にベッドから起こし、体育館倉庫まで強引に連れ出された。
渋々私が体育館倉庫を開けるとケチャップまみれの女子生徒が一人倒れていた。
「雅、雅、この死体の首元を見て」
田中さんは青ざめた表情でケチャップまみれで倒れている女子生徒のことを死体だと言った。あまりに深刻そうな表情なので本当に死体なのかと私は思いはじめた。もしそうなら、なぜ私を呼んで死体の首元を見させようとするのだろうか。
私にとって初めてなんだよ。おじいちゃんもおばあちゃんも健在で冷たくなっている人なんて一度も見たことがないんだ。
「どれどれ、こ、これは首元に何者かに……」
「これは恐らく吸血鬼だよね」
「残念ながらそれは違う、これはただのキスマーク」
「キ、キ、キスマーク? 本当なの雅」
「ええ、彼女は死んでいない。死んだふりをしてこの場を乗り切ろうとしている人でしかない」
私は倒れて死んでいるかのようにしている女子生徒の脇をこちょこちょしてみた。するとどうでしょうか、普通に声を出しながら笑い出しました。
田中さんは私を押しのけて、死んだふりをしていることやキスマークのことを女子生徒に問い詰める。黙っていた方が女子生徒のためになるかもしれないけど、謎は残さない方がいいと思い私は口を開く。
「恐らく彼女はそこの跳び箱の中に隠れている人物と……ほにゃららしていたのかも」
「え、どういうこと雅? ほにゃらら?」
「ええ、ほにゃらら」
「だから雅、ほにゃららって?」
なんてことなんでしょうか、本当は察しているはずなのにほにゃららを理解できてないみたいな反応をする田中さん。高校生で未成年の私に言葉を濁さずに言わせようとしている……ただでさえ前髪のことで自信を失いつつある私に対して追い打ちをかけようというのでしょうか。
「男女がなんていうの、こう」
本当に知らないパターンもあるので、私はとりあえず身振り手振りで田中さんにほにゃららの説明をした。
「あ、そういう意味じゃなくて……ほにゃららを教えて」
「ほにゃららは言いにくい言葉を濁すために用いています」
「あ~そういうことなんだ」
このくらいはなんとなく雰囲気で覚えておいて欲しいものだと思った。
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