森永くんはダース伯爵家の令息として甘々に転生する

梅春

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【異世界】江崎からグリコ? サントが再び集合する

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 サントノーレ・グリコ・・・なんというか、この名前、、、香ばしいというか、怪しい。

 怪しすぎる。

 菓子まみれの甘々な名詞の羅列だし、グリコだし、僕が森永でダースってことは、グリコっていえば、いや、でも、それは甘すぎる願望か。

 こっちの世界では、明治柊人がファルマ・チェルシーとなり、恋人になっていた。

 これはまさに僕の理想の状況。でも、僕が現実世界で抱いていた、もう一つの願望というか妄想というか理想は、それは・・・

 いや、いや、ここまでが順調で幸せで甘々すぎる。

 そろそろ手ひどいしっぺ返しがあってもおかしくない。

 グリコとかサントノーレとか期待させといて、ものすごい相撲取りのやぶにらみのボンボンがぶつかりげいこを申し込んできても全くおかしくない。

 それぐらい今の状況は幸せ。天にも昇るほどの幸せなんだから・・・

「あの・・・お気分でも?」

 控えていた部下が心配そうな顔でこちらを覗き込んでいる。

「あ、いや、大丈夫。ごめん。なんでもない。仕事ね、仕事。すみません。がんばります」

 フィナンシェは笑顔で答え、目の前の書類に目を落とす。

 集中、集中。いまは仕事に集中しないと。
 僕が目を通しているのは国の運営に関するもの。

 これが滞ると、国内のお金や仕事の流れに影響が出て、困る人がたくさん出てきてしまうのだ。

 偉い人には偉い人なりのプレッシャーがあるんだなあ。それは、サブキャラの僕は今まで感じたことのないものだった。

*************************

 一日の仕事を終え、帰宅すると、大きな男が家で待っていた。

 その堂々とした後ろ姿を見て、フィナンシェは確信する。

 ファルマほどではないが十分な長身、そしてがっちりと広く厚い筋肉質の体。高校生の頃よりずっとグレードアップしている。

 そして、後頭部からも漂うすっきりきりりとした緊張感と爽快感。

 やっぱり彼は・・・

「おかえりなさいませ、フィナンシェさま」
「ただいま、ファルマ」

 二人のやりとりに反応して、男が振り向いた。

「おかえり、フィナンシェ」

 そうやって大きな笑顔を浮かべたのは、大翔だった。

 予想していたこととはいえ、やっぱりうれしくなる。

 フィナンシェもまた大きな笑みを顔に浮かべた。

 それを見たサントノーレがさらにうれしそうな顔になり、フィナンシェに近づき、その体を抱きしめた。

「私もうれしいぞ。久しぶりに会えて」

 ぎゅっとされフィナンシェは気絶しそうになる。

 この幸福感・・・ファルマにキュンキュンさせられっぱなしだが、やはり慣れない。
 息苦しいほどの多幸感で体がはちきれそうだ。

「ひさしぶりにおまえを抱けるかと思うと、朝から落ち着かなかったぞ」

 耳元で囁かれ、フィナンシェは頬を赤らめる。

「ぼ、僕も・・・」

 何かうまい言葉を返したいのに、それができない。

 これじゃ現実世界と同じじゃん。異世界に来てもダメな僕。

「サントノーレさま、お仕事のほうはうまくいったんですか?」

 ファルマがサントノーレに声をかける。

「ああ。大きな暴動だったが、中心人物を早く特定して、捕らえることができた。そしたら、思ったよりあっという間に鎮静化してな」
「暴動?」

 フィナンシェは驚いて声をあげる。

「大丈夫ですよ。サントノーレさまは剣の達人ですから」
「でも、役人なのに、そんな危険な」

 自分の仕事とはぜんぜん違うことにフィナンシェは衝撃を受ける。

「うちの一族は代々武闘派だからな。だから、ここまで出世してこれた。自分の力を活かせるのはありがたいよ」

 フィナンシェから優しく離れながら、サントノーレが言った。

「フィナンシェさまは先にお風呂に入ってください。食事の用意をしておきますから」
「あ、うん。わかった」

 にこにこと機嫌よく笑うサントノーレに見送られ、フィナンシェはファルマに連れられて浴室へと移動した。

*************************

 食事の後、フィナンシェとサントノーレはベランダに出た。

 ベランダとはいえ広い。フィナンシェは、ベランダというか庭の一部だな、屋根がついてるだけでと思う。

 この世界の建造物はいちいちでかい。

 そして贅沢だ。その技術には驚かされるばかりで、慣れることはない。

 これが全部機械ではなく手でつくられてるのだから。

 二人の前にワインが置かれる。

「どうぞ」

 ファルマがテーブルを離れる。

「ありがとう」

 サントノーレがファルマに笑いかける。ファルマも小さく笑い返した。
 フィナンシェはわずかに心が痛むのを感じた。

 な、なにをこんなことで傷ついてるんだ。

 やきもちがすぎるぞ。前はこんなの当たり前だったじゃないか。わがままになりすぎている。自重! 自重! 驕れる者は久しからず!

「じゃあ、乾杯」
「うん、乾杯」

 フィナンシェとサントノーレはグラスを小さくぶつけ合う。

 ほんとに大人になったんだなあ、大人になって大翔と酒が飲めるなんてとフィナンシェは秘かに感激する。

「これも秘かに夢見てたこと」
「ん?」

「ううん、なんでもない。飲むぞー」
「そんなに強くないのに」

 サントノーレが子供に対するような微笑みを向けてくる。

 ちょっと上から目線で、子供扱いするのは変わってないな。
 むっとしながら、フィナンシェはワインを煽る。

「うん。うまい」

 大丈夫。酒がうまく感じる。体が大人になってるのだ。

「あ、ファルマも一緒に」

 いつも三人だったんだから。

 そう思うが、それまでは側にひかえていたファルマはニコリと笑い、「いえ、私は失礼します」と部屋のなかに入っていった。

 思えば、この世界に来て仕事以外でファルマと離れるのは初めてだった。

 フィナンシェは少し不安になる。

「そう不安そうな顔をするな」

 気づかれたとフィナンシェは焦る。

「そ、そんなことないよ。ひろ、じゃなくて、さ、サントノーレが一緒だし」

 フィナンシェは動揺を悟られないように、もう一度ワインを煽り、グラスを空にした。

「おかわり!」

 サントノーレの前にグラスを差し出す。

「ほら、もう酔ってるじゃないか」
「酔ってないもん。ただのテンションアップだもん」

「なんだ、それ」

 笑いながらもサントノーレがフィナンシェのグラスにワインを注ぐ。
 フィナンシェはそれも一気に飲み干した。

 初めての酒に興奮していた。こんなにうまいものだったとは。

 こっちに来てから、甘いコトばかりに踊らされていて自分が情けない。もっと見聞を広めなければ。大人になっているんだから。

「ういーっ」

 フィナンシェが再びサントノーレに乾杯を求める。
 サントノーレがあきれた顔をしながら、それに応じた。

「飲みすぎだぞ」
「うーん、気持ちいい」

 フィナンシェはテーブルに肘をつき、サントノーレのほうに身を乗り出す。

「おまえとファルマはほんとに仲が良いな。少しうらやましいぞ」

 おまえ。そう呼ばれたことにフィナンシェの胸がきゅっと音をたてる。新雪を踏みしめたときのような音だった。

 異世界に転生しても、変わらないこの距離の近さ。う、うれしい・・・

「そ、そんなこと・・・」

 あるけど~。あるんですけど~。やきもちやかれて、これ以上なく萌えるんですけど~。

「サントノーレにも、その、僕にとってのファルマのような人が?」
「いるぞ。小さいころからのお付きが」

 この世界では、貴族には幼いころからすべてを共有する付き人が存在する。
 同性の友達のような恋人のような関係の者が。

 そのことは理解しているし、自分にもファルマがいる。

 でもサントノーレにもその相手がいるというのは、理屈ではわかっていても、心がちょっと痛むというか、軋む。

「そうだよね。その、当然、いろんなことを共有してるといいますか・・・」
「なんだ、なんだ、やきもちか?」

「いや、そんなことない。僕にだってファルマがいるわけだし」
「そうだよなあ。でも、付き人と恋人はまったく別物だ」

「そんなにドライに割り切れるもの?」
「恋人は・・・ひいては結婚となると、家の格が問題になる。この世のなかは性別も身分も関係のない自由恋愛を楽しんでいるが、それはあくまでも性の話。恋や結婚となると、家の格にしばられ完全に自由というわけにはいかん。おまえもわかってるだろう」

「ってことは、サントノーレは、僕とは妥協して」
「馬鹿なことをいうな! 好きじゃなかったら、婚約なぞするか! 結婚は無理にしなくてもいいものだからな・・・少し酒が過ぎるぞ」

「ご、ごめん」

 ちょっと激しい所は大翔のままだな。
 フィナンシェはうれしくなる。

「なんだ、うれしそうに」
「え?」

「おまえは大丈夫なのか?」
「え?」

「その・・・私よりファルマのほうが、、、その、なんだ・・・ほんとはいいとか、そーゆーことは・・・」

 サントノーレがしどろもどろになる。

 こんな大翔は見たことがない。しかも、これはジェラシー。

 フィナンシェとファルマの仲の良さを焼いてるのだ。低めに見積もって、最アンド高~!!
 テンション爆あげ~、パリロリパリロリ~

「ど、どうした。急に立ち上がって踊りだして」

 サントノーレが慌てて立ち上がる。

「あ、ごめん。テンションが」
「テンション?」

「もう、いちいちめんどくさいな」

 フィナンシェは目の前の、自分より背の高いサントノーレをふわりと包むように優しく抱きしめた。

 大事な大事なガラス細工に触れるように、ゆっくりと。

「こんなに大事に思ってるのに、わからないの?」
「・・・そうだったな」

 サントノーレがフィナンシェを抱きしめ返す。

「もっと、ぎゅっとして」

 フィナンシェが声を漏らすと、ふっとサントノーレが小さく笑った。

「やっぱり酔っぱらってるな」

 サントノーレはフィナンシェから離れ、その体の横に移動する。

 そして、フィナンシェの腰と足に手を回し、その体を抱きかかえた。

「え、な、なに? なに?」

 これって、お姫様だっこじゃん。

「おまえはこれが好きであろう」

 近くで笑いかけられて、フィナンシェは小さく頷く。

 うん、嫌いじゃない。

「今夜は寝かせないぞ」
「あ・・・うん・・・」

 フィナンシェを抱きかかえたまま、サントノーレはベランダから寝室へ、ゆっくりと移動していった。

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