森永くんはダース伯爵家の令息として甘々に転生する

梅春

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【現代】拓斗、絡まれる

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「ええ~、いいじゃん、そんな意地悪しなくても~。あんなにいっつも一緒なんだから、大翔くんをちょ~っと連れてくることぐらい簡単でしょ~」

 三人組の中央の女子が拓斗をにらみながら言う。

 口調は甘えているが、目は決して笑っていない。

 拓斗は緊張して、体がこわばるのを感じた。

 幼いころにいじめられたせいで、拓斗は威圧的な態度にはめっぽう弱い。

 廊下で声をかけられ、振り向いたら、クラスでも勝気なグループの女子たちが立っていた。

 中央の麻美という女子がリーダーだ。

 かわいいけど、性格がきつい。クラス中の男女からそう評される子だった。

「え、いや、でも、大翔、そーゆーの嫌がるし」

 三人は拓斗を逃がさないとばかりに睨んでいる。

 おしゃれでかわいくスクールカーストの上位に位置する女子たちだ。

 遠目に見て、やっかいな性格だなと思っていた奴らだった。面倒なので、関わりたくないと、衝突を避けてきたのに、なんでこんなことに。

 拓斗は逃げ出したいのを必死に我慢した。

 ここで逃げれば、さらにやっかいなことになる。

 大翔たちに迷惑がかかるかもしれないのだ。

「なんで嫌がんの?」
「え? いや、だって、大翔、いまは女とか興味ないって言ってて」

「そんなこと言って、ほっといたら外の女と付き合ったりするんだよ」
 麻美がきつい口調で言う。

 出た、本性。
 拓斗は、事を構えてはいけないと思いつつ麻美をにらんでしまう。

 その様子を察知した、隣の女子が加勢する。

「そうだよ、麻美、負けんな負けんな」
「そんな、けしかけないでよ」

「けしかけてなんかねーよ」
「そんなに気になるんなら、ラインとかで連絡とれば」

「そんなことはとっくのとんまにやってんだよ。進展がねーから、直で対決したいんだろうが」
「直で対決って」

 そんな昔のヤンキーみたいな。
 麻美がここまで激しい性格とは思わなかった。

 教室ではやはり猫を被っていたのだ。

「おまえは、言うこと聞いとけばいいんだよ、このサブキャラがっ!」
 我慢がきれたように麻美が怒鳴った。

「サブキャラって・・・」

 拓斗は上手いこと言うなあと思い、笑いそうになる。

 そんなことは今さら言われなくても十分にわかっている。

 柊人や大翔のような、なにもかも優れた二人を毎日見ているのだ。

 自分の平凡さは嫌というほど思い知っている。

「なにがおかしいんだよ」

 次の瞬間、麻美に足を蹴られていた。

「拓斗になにすんだよ、おまえら、ぶっ殺すぞ!」

 え?
 声のほうを見ると、すごい勢いで柊人が廊下を駆けてきていた。

「大丈夫か、拓斗」

 そして、拓斗と女子たちの間に立つ。

「麻美。おまえ、いま、拓斗のこと蹴っただろ」
「は? 蹴ってねーよ」

「いや、蹴っただろ。嘘つくな!」
「だって、こいつが」

「なんだよ」

 いつもは穏やかで優しい柊人の怒っている姿を目の当たりにし、麻美たちばかりではなく拓斗も言葉を失う。

「大翔のこと呼び出してくれってたのんでんのに、嫌がるから・・・」
「そんなの、てめーらでやれ!」

「わかったよ。わるかったな。いこ」

 麻美がぺこりと頭をさげ、踵を返すと、まねるように両脇の女子たちもそれに続いた。

「ふん、金魚の糞が。拓斗、大丈夫か?」
「あ、うん。ありがと。ちょっとびっくりしただけ。ぜんぜん大丈夫」

「怖かったな」

 言い終わらないうちに、柊人が拓斗を抱きしめる。

「え? 柊人?」
「嫌だったよな」

「え、あ、うん。でも、大丈夫。ありがとう」

 拓斗はひとめが気になって柊人の大きな体を押し返す。

「大丈夫だから」
「そっか」

 柊人が膝を折り、拓斗に目線を合わせ、笑った。
 そして、拓斗の頭をくしゃくしゃと撫でながら、 

「拓斗は、あまり一人にさせられないな」
 と続けた。

 その間ずっと、拓斗は赤くなって下を向いていた。

*************************

 後日、大翔も麻美たちを怒鳴りつけたらしい。

 麻美はごめんなさいと大翔に泣いて謝ったそうだ。

 拓斗は麻美が気の毒になる。

 好きだった相手に怒鳴られるなんて、どれだけ辛いだろう。

 麻美はやり方は間違ったが、好きな人にぶつかろうとしていたのだ。

 それはとても勇気のいる行動だと思う。

 自分なんかには絶対にできない。

 拓斗は、なんとかして、麻美を大翔と二人きりにしてあげればよかったと思った。

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