始まらないラブストーリー

樫和 蓮

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幼馴染との始まりそうな恋

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「私ばっかり恋バナ、話してるけどさあ、亜依はなんかないん?」
「千紗のそれが恋バナかどうかは甚だ疑問なんだけど、私の話、聞く?」
「え!待ってなんかあんの?早く言ってよ!」
千紗は思わず前のめりになる。
「亜依のはちゃんと恋バナ!?」
「自分のが恋バナじゃないのは理解してるんや?」
「それはどうでもいいから早く!」
少し言いよどんだあと、亜依は話し始めた。

◆◆◆

亜依は5歳のときからピアノ教室に通っている。
近所にある個人の教室で、家族ぐるみで仲が良い澤村家に紹介されて通い始め、もう10年になる。
一緒に通い始めた澤村家の次男、佑人は同い年。ずっと一緒に育ってきた。
近所に子どもが少なかった亜依の、唯一の幼馴染といってもいいかもしれない。

中学生になってからは、個人レッスンが多くなり、佑人と顔を合わせることも少なくなった。
たまにレッスンが前後にあったときに話すくらいだ。月に一度、佑人の部活の都合でレッスン時間をずらしたとき。

ところが。

先月から、毎週会うようになった。
三週目にやっと尋ねた。
「そういや佑人、今月は同じ時間多いんやね」
「あ、言ってなかったな、俺、レッスンの時間、この時間に変えてん」
「え、そうなん、この時間が都合よかったん?」
「あー、うん、この時間のほうが部活に被ること少ないしな、あと亜依と会えるし」
「えっ?」
「いや、会えへんより会えるほうがいいやん」
「それはまあ、うん」
「じゃあまた来週な!」
振り返って帰っていった佑人の頬が心なしか赤いように見えたのは夕日のせいだろうか。

◆◆◆

「これ、結構恋バナじゃない?」
いたって涼しい顔で亜依は話を終えた。
「え!え!で?そっから??亜依はどう思ってんの!?どうなったん!?」
千紗は立ち上がりそうな勢いでまくしたてた。
「どうもなってないよ、これ話したん一昨日やねん、ほやほややろ」
「え」
「まあ佑人のこと悪くは思ってないけど、今までそんな風には見たことなかったからなあ。何か言われたら変わるかも」
「えーー始まってないやんーー」
「千紗の話よりは始まりそうな度合い強くない?」
「それは否定できない!」

「まあ、ちゃんと進展あったら報告するわ」
涼しい顔の亜依の頬も、夕日が照らしている。
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