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くもり
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犬も歩けば棒に当たる
とは、こんな意味だっただろうか。
石ころを蹴飛ばして歩く私は、幸か不幸かたくさんのものにぶつかることになる。
今日出会ったのは私と同じように石ころを蹴飛ばしている男の子だった。
「あっ」
お互いが蹴飛ばしていた石ころがぶつかったところで、お互いの存在に気付いた。
「お姉さんも、石ころマスター、目指してるの?」
なんだそれは。私は首を傾げながら答える。
「それは目指してないなあ。下見て歩いてたいから、ちょうどよくて蹴飛ばしてるだけ。」
「そっか。ぼくはね、目指してるよ、石ころマスター。」
男の子は神妙な顔つきで言う。背中のランドセルも神妙な顔つきを真似ている。
「立派な夢だね。」
私は馬鹿にするではなく、真面目にそう言った。だって素敵じゃないか。神妙な顔つきで言える夢なんて。私にはとんと無縁である。
男の子は私を怪訝な目で見た。
「石ころマスターが立派な夢なんて、誰も言わないよ。」
明らかに私を疑っている。
「みんなぼくのこと、ちょっと変わってるって笑うんだ。」
ランドセルと一緒に、男の子は俯いた。
足下の石ころさえ、さっきより落ち込んで見える。
私はどきりとした。目の前の男の子はいつかの私と同じように、足場がぐらついているのではないか。
救わねばならない、というのはやや傲慢かもしれない。
「変わってて上等じゃない。」
むしろ変わってるだなんて、面白くないよりよっぽどいい。とはさすがに言えないし、よくも偉そうに、と内心苦笑しながら、私は続ける。
「真っ直ぐに目指せるものがあるってそれだけで素敵なことなんだよ。変わってるだなんて言ってくる子たちには考えつかない夢なんて、かっこいいと思うけどな。」
男の子はしばし私の言葉を噛み砕いているようだったが、急に顔を上げた。
「わかった!やっぱりぼくは石ころマスターを目指すよ!」
よし、それでこそ君らしいぞ。君のことは出会ったばかりでよく知らないけれど。
「ありがとう、お姉さん。石ころマスターを目指してたら、また会うと思うけど、もっと強くなっておくね。」
神妙な顔つきを取り戻し、力強く言ってくれた。
「うん、また会おうね。」
足場はきっとまだ崩れていないはずだ。
元々あった私の足場も、少しだけ前の形を思い出したように、形成を始めたかもしれない。
石ころを蹴って元気に歩き出した男の子の背中を見送りながら、ぼんやりと私は思った。
空を厚く覆う雲が、私の背中を守るように押してくれた気がした。
とは、こんな意味だっただろうか。
石ころを蹴飛ばして歩く私は、幸か不幸かたくさんのものにぶつかることになる。
今日出会ったのは私と同じように石ころを蹴飛ばしている男の子だった。
「あっ」
お互いが蹴飛ばしていた石ころがぶつかったところで、お互いの存在に気付いた。
「お姉さんも、石ころマスター、目指してるの?」
なんだそれは。私は首を傾げながら答える。
「それは目指してないなあ。下見て歩いてたいから、ちょうどよくて蹴飛ばしてるだけ。」
「そっか。ぼくはね、目指してるよ、石ころマスター。」
男の子は神妙な顔つきで言う。背中のランドセルも神妙な顔つきを真似ている。
「立派な夢だね。」
私は馬鹿にするではなく、真面目にそう言った。だって素敵じゃないか。神妙な顔つきで言える夢なんて。私にはとんと無縁である。
男の子は私を怪訝な目で見た。
「石ころマスターが立派な夢なんて、誰も言わないよ。」
明らかに私を疑っている。
「みんなぼくのこと、ちょっと変わってるって笑うんだ。」
ランドセルと一緒に、男の子は俯いた。
足下の石ころさえ、さっきより落ち込んで見える。
私はどきりとした。目の前の男の子はいつかの私と同じように、足場がぐらついているのではないか。
救わねばならない、というのはやや傲慢かもしれない。
「変わってて上等じゃない。」
むしろ変わってるだなんて、面白くないよりよっぽどいい。とはさすがに言えないし、よくも偉そうに、と内心苦笑しながら、私は続ける。
「真っ直ぐに目指せるものがあるってそれだけで素敵なことなんだよ。変わってるだなんて言ってくる子たちには考えつかない夢なんて、かっこいいと思うけどな。」
男の子はしばし私の言葉を噛み砕いているようだったが、急に顔を上げた。
「わかった!やっぱりぼくは石ころマスターを目指すよ!」
よし、それでこそ君らしいぞ。君のことは出会ったばかりでよく知らないけれど。
「ありがとう、お姉さん。石ころマスターを目指してたら、また会うと思うけど、もっと強くなっておくね。」
神妙な顔つきを取り戻し、力強く言ってくれた。
「うん、また会おうね。」
足場はきっとまだ崩れていないはずだ。
元々あった私の足場も、少しだけ前の形を思い出したように、形成を始めたかもしれない。
石ころを蹴って元気に歩き出した男の子の背中を見送りながら、ぼんやりと私は思った。
空を厚く覆う雲が、私の背中を守るように押してくれた気がした。
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