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第2章 第一回ダンジョンアタック編
第1部
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Dランク昇格試験を受けていた私達は、色々とあったがファルトの町へと帰ってきた。
アルは伯爵令嬢のラミスとそのお付きのメイドを連れて領主館の方に行った。
それ以外の私達は冒険者ギルドの方に報告ヘ行った。
冒険者ギルドの中に入り私達はまずネイラさんに声をかけた。
「ただいま、ネイラさん」
「リアナちゃん!エルちゃんも!よかった無事だったのね?」
泣きそうな顔で安堵されてしまった。
どうやら相当心配をかけたようだ。
「心配かけてごめんね?」
「いえ、いいのよ、悪いのはむしろ私達ギルドの方よ。だからそんな顔をしないで?」
やはり副ギルドマスターなだけあって私達に何があったのかは知っているようだ。
「ちょっと待ってね、あの男をちょっと〆て来るから、ね?」
恐る恐ると言った様子でネイラさんの事を伺っていたギルド職員達がサッと身を引いてネイラさんに敬礼しそうなぐらい直立不動になった。
「な、何が起きてるの?リアナ、わかる?」
「わからないわよ!?エルはネイラさんが怒った時の事を見た事ある?」
私とエルでネイラさんの事を相談していると、
「お願いします!?副ギルドマスターを止めてください!?」
ギルド職員の一人が頭を下げてこちらにお願いしていた。
「えっと、何で?というかネイラさんは何を怒っているの?」
私がそう問うと、
「Dランク昇格試験の件はギルドマスターと領主の独断だったんです!そこに貴女達を巻き込んだのがネイラは我慢ならなくて・・・」
怒っている、そう続けようとしたのだろう。
ドガァァァァァァァァ!!!?
建物の奥の方から爆発音が轟いた。
「ギルド職員は直ちに避難誘導をとって下さい!お願い!本気で怒ったネイラは多分貴女達じゃないと止められないと思うの!」
「・・・まぁ、事情はわかりました、とりあえず奥の方に行ってみますね・・・」
「あ、行ってらっしゃ~い・・・うにゃあ!?」
「あ、リアナ!俺は避難誘導の方に回るからな?」
「うん、わかったわ!一応こっちは任せて!」
「いやぁ~!?私もグリスの方がいい~!?」
避難誘導をグリスに頼み、一人外に逃げようとするエルの首根っこを掴み、私はエルを引きずりながら奥へと歩いて行った。
奥は軽めに言って大惨事だった。
「うわ~、ギルマスよく生きてるね?」
「早く殺られちゃえばいいのに・・・」
エルが不思議そうに現場を見て、私は煩わしそうに呟く。
「二人とも、そんなに呑気な事を言ってる場合じゃないよ?」
「冒険者ギルドが潰れるのはさすがに困る」
アカネとセナが私とエルを嗜める。
「とはいえ、あのネイラさんの無詠唱ぶっぱの中を突撃するのはちょっと勇気がいるね?」
「誰か適当に後ろから揉んじゃえば?」
「「・・・・・・」」
「いや、さすがに私達にそんな勇気はないよ?リアナ」
「え~?」
私のあんまりな発言に固まってしまった二人を放置して、
「まぁ、これ以上放置は出来ないから止めて来るよ」
私は気配を消してネイラさんの後ろから近づいて、
「ネイラさん、落ち着いてください、私達なら大丈夫でしたから!」
声をかけるも、爆発音に声がかき消されてしまいネイラさんに聞こえていない。
「あ~、仕方ないかぁ・・・エイヤ!!」
ムニィ!!
私は後ろからネイラさんに飛び付き、私よりも大きい、女性らしい部分を両手で鷲掴みにした。
「ひゃう!?・・・・・?」
無詠唱の爆撃は止まったが、今度は別の意味で不味いかもしれない。
「ネイラさん?落ち着きましたか?」
「・・・・リアナちゃん?」
私はむにむにと自分のよりも大きいそれの感触を楽しむ。
「うわ~、すごい大きいし柔らかい・・・何て言うか、癖になりそう」
「うんっ!?・・・やっ!?・・・リアナ、ちゃん!?・・・そんなに、しちゃ!?・・・やぁん!?」
ネイラさんは全く抵抗出来ずに私にされるがままになった。
「とりあえず、もう暴れないと約束してくれれば、やめてあげますよ?」
「んっ!?・・・はぁん!?・・・待って!?・・・わかっ、はう!?・・・わかったからぁ~!?」
さっきまでよりもちょっと激しくしたらネイラさんは私の言うことを聞いた。
「あぅぅ~、リアナちゃんのいけずぅ~!?」
ネイラさんが顔を真っ赤にしながら涙目で私を恨めしそうに睨む。
「こんな暴れ方をするから悪いんですよ?」
そう言って私は周りを見る。
あっちこっちに風穴が空いてるし、多分ギルマスの部屋は粉々だろう。
「ギルドマスターは生きてますかね?」
私は首を捻りながらギルマスの部屋だった所を見ていると、
「やれやれ、死ぬかと思った・・・」
巨大な盾を持ってギルマスが奥から歩いてきた。
「・・・ギルマス、よく生きてたわね?正直、もう生存は絶望的かと思ってネイラさんの罪をどうやってなかった事にしようかと考えてたのに・・・」
「普通に酷いな!?」
私がそう言うとギルマスは傷ついた顔をするが、
「元はと言えばあなたがリアナちゃんを利用しようとしたのが悪いんだから当たり前じゃない!」
ネイラさんが再びヒートアップしてきたので、
「ネイラさん?冷静でいられないならまたしてあげよっか?」
私が笑顔で手をワキワキさせると、
「そ、それはもういいから!?」
私の両手を自分の両手で抑えて、首を横に振っている。
「とりあえず詳しい話は領主様の所でやるからリアナ嬢も含めてDランク昇格試験を受けた者は全員ついて来てくれ。」
するとネイラさんが、
「私もついていくからね?」
とギルマスに向けて宣言し
「いや、お前は残ってこの惨状を片付けろよ・・・」
ガックリと肩を落とし、
「またあいつらに文句を言われるだろうが・・・」
ギルマスの言うあいつらとは、恐らく冒険者ギルドの職員達だろう。
「内緒にして怒られた段階でもう手遅れだと思うけどね」
「ぐむぅ・・・」
ギルマスもこれには反論できないようだ。
「はぁ、ついてきてもいいが、領主様に魔法を撃ち込むのはやめろよ?後、戻ったらちゃんと片付けるのを手伝うこと、それが条件だ。」
疲れた顔でネイラさんにそう告げるギルマス、
「わかったわ、それじゃあ領主様の所に行きましょうか?」
「みんな~、いる~?」
私がエル達を呼ぶと、
「終わった?」
エル達がこっちに来た。
「今度は領主様の所に行かないといけないんだって」
「え~、ちょっと面倒・・・」
「ん、同意」
「もう、二人ともダメだってばぁ!?」
私がこの後の事を伝えると、エルが不満を示し、セナが同意して、アカネが二人を嗜めた。
「戻ったばかりで手間をかけるが、頼むわ」
ギルマスがそう言うので、渋々と私達はギルマスとネイラさんと共に領主館の方に移動するのであった。
ギルマスが用意した馬車に私達は乗り、ヴェルデ達はその横を歩く。
馬車が進むペースで私達は領主館に向かっていた。
「領主館に着く前に一言だけ謝罪をさせてくれ、すまなかった。」
ギルマスはそう言って頭を下げる。
「いいわよ、別に」
私はあっさりと何でもないようにそう答える。
「いいの?リアナ?」
エルが驚いた顔で私を見ていた。
「確かに帰ってくるまではネイラさんもグルなのかなぁ?ってちょっと悩んで凹んでたけど、ネイラさんにも内緒だったみたいじゃない?だからまぁ、良いかなって思っただけよ。」
「時々、魔力が昂ってたから怒ってたのかと思った、なんか笑顔だったし・・・」
私がエルにそう答えると、アカネが大変不本意な事を言った。
「アカネ?私の笑顔がどうかした?」
「ごめんなさい、何でもないです・・・」
アカネは私の笑顔の問い掛けにスッと顔を逸らした。
「リアナの魔力は凶悪だから仕方ない」
「セナ、ちょっと酷くない?ひょっとしてまだアカネが自分より先に、私の方に説明したのを根にもっているのかしら?」
セナがかなりはっきりと言うので、ついつい笑顔で圧力を掛けてしまった。
「でも、事実」
「むぅ~」
だが、セナはそれでもはっきりと言うので私は頬を膨らませる。
「まぁ、とりあえずゲイル、貴方は私に借り2つだからね?ちょっとした事じゃ許さないからね?」
ネイラさんがギルマスに釘を刺す。
「わかってるよ、どうにか休みを合わせてやるから」
「そ、そういう意味じゃない!?」
ズレたギルマスの一言に嬉しいのだろう、口ではそうじゃないと言いつつも、ネイラさんの顔はほんのりと赤く嬉しそうな表情をしていた。
「あ、着いたみたいね」
私がふと外を見れば、大きな館の門の前に馬車は止まっていた。
そして、門が開き再び馬車は動く。
馬車は領主館の前で止まり、
「ヴェルデ、ここで待っててね?」
「キュル~」
私が馬車から降りてヴェルデにそう頼むと、わかっていると言うようにヴェルデは鳴いた。
「エレスもヴェルデと一緒に待っててね?」
「わう!」
次に降りて来たエルが自分の相棒にそう声を掛け、エレスが一声鳴いて返した。
「アスカもね?」
「ピュルル」
馬車の上に止まっていたアスカに、アカネが私達二人と同様の事を頼んだ。
「みんな、いいな・・・」
次に降りて来たセナが私達三人の様子を羨ましそうに眺め、
「セナちゃんにもきっと出会えるわよ」
ネイラさんがそっとセナを慰めた。
一番先に降りていたギルマスは、
「案内の者が来たから、そろそろ行くぞ?」
「「「「は~い」」」」
「さて、どうしましょうかね?・・・リアナちゃん、アカネちゃんとセナちゃんを入れればもう四人なんだし、そろそろパーティー名を出してくれると私が助かるんだけど?」
案内の人と話をして私達を先導し、ネイラさんが会話の流れをぶった斬って全然関係無いことを言い出した。
「後でみんなと話をしてから決めますよ」
私はネイラさんにそう返す事にした。
「決めてないなら、リアナと愉快な仲間達で登録しちゃうわよ?」
「ネイラさん!?それだけは勘弁して下さい!?」
エルがネイラさんの一言に慌てたように謝る。
「なんでエルが謝ってるのかしら?」
「私、そこまで愉快じゃないし!?」
「あ~、なるほどなぁ~」
するとギルドで避難誘導をしていたグリスが後ろから歩いてきた。
「グリス、それは何に対する納得かしら?」
ジロッと私はグリスを睨む。
「いやぁ~、昇格試験で組んだだけだけど結構面白かったぞ?」
グリスが素直な感想を述べる。
「ところでグリスはギルドで避難誘導をしていたんじゃないの?」
アカネがグリスに質問すると、
「ギルドマスターが伝言を俺に寄越してくれたから適当に歩いてきた。」
とグリスが答えた。
「彼も当事者だからな、これからの話にも少し関係ある。」
ギルマスがそう言ったところで私達は案内の人に連れられて領主館に入った。
案内をするメイドさんに先導されて、私達は領主様がいる執務室に案内された。
「こちらが領主レアード・ファルト様の執務室になります。」
そして、メイドは扉をノックして私達が来た旨を中に伝える。
「入ってくれ」
「失礼します」
返事が来た後に、ギルマスが一言掛けてから扉の中に入っていく。
私達もそれに続いて中に入ると、町の外から戻る時に助けた伯爵令嬢のラミスと我が国の第一王女、アルフェリア・エクレール王女がソファーに座っていた。
そして、奥の執務机に座っているまだ若そうに見えるおじ様がこちらを見ながら声を掛けてきた。
「初めまして今日Dランクに昇格した冒険者諸君、私がこのファルト領を治めるレアード・ファルトだ。この度は君たちを非常に危険な目に合わせてしまって申し訳なく思う。」
そう自己紹介をして、
「すまなかった」
頭を下げた。
「俺からももう一度謝罪をさせてくれ、すまなかった。」
ギルマスまで頭を下げ始めた。
私はこの重い空気にため息をしながら、
「頭を上げて下さい。」
チラッとアルの方に目を向けると何も言う気が無いようなので、私が二人に声を掛けて顔を上げさせた。
「そちらにも事情があることはこちらも重々承知しております。元々危険を省みずまだ見ぬ地を、物を、生物や文化、ありとあらゆるモノを求める強欲な者達の端くれです。その事情が何かは知りませんが、こちらも手を貸す事には躊躇いは御座いません。」
私は紳士の礼をしながらそう答えた。
「ちょっとお待ちなさい!」
すると、ソファーに座っていたラミスが話に割り込んできた。
「平民風情が随分と上から言ってくれるモノね?」
こちらを睨むラミスに、
「別にそんなつもりは無いわ、ただ現状を分析して手を貸してもいいって言っただけよ。自分の身も守れない貴族様よりは、使える自負はあるわよ?どうやら貴族様は噂に違わず礼儀を知らないようだし、ね?」
その瞬間、私の中にある苛立ちが表に出てしまった。
「!!!??・・ひっ!?」
あまりの重圧に後退り、腰を抜かしてしまう伯爵令嬢。
「そこまでにしてくれないか?」
その状況で普通に声を掛けてきたのは、それまで一言も喋らず沈黙を守っていたアルフェリア王女だった。
「はぁ、わかったわよ」
そう言って私は色々と引っ込める。
「ラミス嬢?」
「はっ!?はい!?」
私が退いたのを見て、アルフェリア王女はラミスにこう言った。
「彼女は私が幼い頃からの親友なんだ、その彼女に向かってその様なことを言うのはやめて頂きたい。」
「で、ですが!?」
「それと、貴族であっても領主であっても、そして王族であろうと・・・我が国の民をその様に扱う事は誰であろうと許さぬ!!」
そして、態度を改めないラミスに殺気を込めた視線と怒気の籠った言葉を伝えた。
「あ、も、申し訳ございません・・・」
娘のその様子を冷めた目で見ながらレアード伯はこう言った。
「ここから先はお前が聞いていい話ではない、自らの我が儘で無断で屋敷を抜け出し、危険な目に遭遇しそれを助けられながら礼も言えぬ様な愚かな我が娘よ、相応の罰が降ると心得よ!」
静かに、だけどハッキリと自らの娘のその態度が悪いと父親であるレアードが告げた。
「そんな・・・私は悪く・・・私だけが・・・そうよ!あのメイドだって!?」
あまりの言い訳にレアード伯が一喝した。
「いい加減せぬか!!」
「!?」
「これ以上は捨て置けぬ!お前と親子であるのもこれが最後だと思え!!アルフェリア王女に御近づきになりたいからと、他国の者達と手引きをしおって!!恥を知れ!!」
その言葉にラミスは青ざめた。
「そ、そんな!?お父様!?どうかお許しを!?」
ラミスは父親に許しを乞うが、
「お前がしっかりと反省し、自らの立場を考え直せば良かった!!だが、アルフェリア王女の前でこのような醜態!!最早捨て置けぬ!!誰か!!この娘を部屋に捕らえよ!!」
レアード伯は激昂しており、娘の言い訳に耳を貸さずに娘を部屋から追い出した。
レアード伯は少し息を整えてから、
「申し訳ありません、お見苦しい所をお見せしました。」
レアード伯はアルフェリア王女にそう頭を下げた。
入ってきた時は、まだ若そうに感じたおじ様は一気に10年くらい老けて見えた。
「はぁ~、仕方ないわね~」
私はため息をつきながら、レアード伯に告げた。
「伯爵様、厨房を貸して下さい。このような空気ではどのような話をされても上手くいかないでしょう?美味しい物を作りますので少々お待ちください。」
そう言って私は執務室の外に出ると、丁度いい所にラミスの傍にいたメイドが表情を固くして立っていた。
「あ、いい所にいたわね、厨房まで案内して頂戴?」
私はメイドの手を取り、歩き出す。
「あ、あの!?」
「みんな、あのおバカさんのせいで疲れてるでしょ?美味しい物を作ってあげるから手伝いなさい」
私はメイドを引っ張りながら厨房へと案内された。
「よし!?じゃあ、たのも~!?」
そう言って私は厨房に飛び込んだ。
飛び込んだ先の厨房で、領主館で働く料理人達の視線がこちらに刺さる。
が、これで怯む私ではない。
「料理長さんは誰かしら?」
すると、意外と強そうなおじ様が前に出てきた。
「私が料理長を務めているが、君は誰かな?」
「私は、今日Dランクに上がったばかりの冒険者よ!私はリアナ・フレーベル、神剣鍛治士ガウスの孫よ!」
私がそう自己紹介をすると、
「君が料理の女神リール様の娘か!?」
「へっ!?」
料理長さんがよくわからない事を言い出した。
「あの、母をご存知なんですか?」
いきなり我が母を様付けして呼ぶ料理長さんに私は問い掛ける。
「この町に住む、いやこの国の料理人達の女神と言ってもいいお方だ!」
なんと言う事でしょう!母が私の知らないところで偶像化していた。
「そ、そうなんですか・・・と、とりあえず厨房を貸してもらっていいですか?」
私はどうにか目的を果たすべく、料理長に確認をとると、
「もちろん!好きに使ってくれ!」
かなりいい返事を貰えた。
「ま、まぁいいわ、それじゃ使わせてもらうわね」
そう言って私は厨房に入っていった。
結論から言うと私が作ったのはカレーだ。
但し、この国、いやこの世界でカレーをまともに作ろうとすると恐ろしくお金がかかってしまう。
だから私はカレー粉の代わりになりそうな香辛料を探して代用する事にした。
そして、見つけた。
名前はカリービーンズ、若干黄色っぽい褐色が特徴の豆だ。
それを乾燥させゴリゴリと擂り潰して粉末にした後、ひき肉と微塵切りにした野菜を一緒に炒めルーを作る。
その後、この世界の唐辛子、レッドクロウとも呼ばれるレッドペッパーで辛味を調整する。
更に、料理に使える薬草類を隠し味として微量だけ使う。
スパイス類は使い過ぎると匂いがキツくなって鼻についてしまうので色々と比率を変える事で風味を変える。
今日のスパイスとルーの配合は私が現在一番気に入ってるモノだ。
バッチリに煮込んで、後は少し置いておくだけ。
次に問題なのが、お米だ。
パンと一緒に食べるのもありかもしれないが、やはりカレーにはお米が一番だ。
お鍋でお米を炊くのはかなり難しい、だから私は釜鍋を作ってお米を炊く事にした。
何回か失敗したが、一度成功すると後はどうにかなった。
祖父に何回か食べて貰ったが中々の好評価だった。
そんなわけで私はアイテムボックスから釜鍋を取り出し、米を炊く準備をする。
この世界にコンロはまだ開発されていない。
だから炉で薪を燃やして調理するのだがその調整が結構難しいので、私は即座に魔法に頼った。
風を操って火の勢いを操作したのである。
これのおかげで美味しいご飯が出来る。
と、料理長さん達にカレーの事を説明しながら作っている時にふと閃いて、
「料理長さん、少し味見をしてみますか?」
「!!?よろしいのですか!?」
すごい食い付きだった。
「その代わり、この料理に合うサラダかスープなんかを作ってもらってもいいですか?他の料理人さん達にも手伝ってもらっても大丈夫ですし、レシピとお米の炊き方を簡単にお教えしますよ?」
私がそう言うと、
「「「「おおおおおぉぉぉぉぉ!!!?」」」」
何故か勝鬨が上がった。
「・・・・みんなどうしたのかしら?」
私が料理人さん達の様子にドン引きしていると、
「失礼しました、少し興奮して取り乱してしまいました。」
と頭を下げる料理長さん達。
「では、味見の方をさせてもらいます。」
そう言って出来立てのカレーを味見させると、
「!!!?これは!?旨い!!」
「ほら、他の人も少しだけね?」
そう言って私はみんなに味見用の皿にカレーを少しだけ盛り付け渡していく。
「一番大きい鍋にして正解だったわね・・・」
犬のように皿を舐める料理人達を見て私は呆れ気味に呟く。
「これは素晴らしい料理です!?どうか私を弟子にして下さい!?」
「私は冒険者なんだから、料理人さんに弟子入りを申し込まれても困るわよ、さっきも言った通りレシピは教えてあげるわ。ただそこから先は自分で研鑽を積みなさい」
私は困り顔で料理長にそう答えた。
「むぅ、仕方ありませんか・・・」
残念そうな顔で料理長は弟子になる事を諦めた。
「一応、母にこの話を教えておいてあげるから何か聞きたい事があるならウチに来ればいいわ」
「ありがとうございます!」
料理長さんは感激したように涙目で頭を下げる。
「しかし、お米ですか・・・こちらも味見させて貰っても?」
「いいわよ」
私は釜鍋を3つ、カレーを一番大きい鍋2つで用意している。
「ちょっと熱いし、この後に響くからちょっとだけよ?」
そう言って炊きたてのご飯を料理人の皆さんに配る。
「これは、これが今まで見向きもされなかった白麦なのか!?」
ホクホクしたご飯を口に含み、この様な食材を素通りしていた事に対するショックを料理長さんは受けていた。
「見てたと思うけどこの料理は薬草類を使っているわ、そして煮込む事によってより栄養を吸収しやすくなっている料理よ。具材を変える事でスパイスとルーの配合を変える必要があるけど、それだけ奥が深い料理だから研究は怠らないようにね?」
「もちろんです!」
そう言って私は料理長にレシピを渡す。
「これが今日作ったカレーのレシピね、意外と材料費がいい値段するから領主様と相談してね?」
私は注意事項を伝えながら、メイドさんの方を向く。
「料理出来たから、向こうの方を確認してもらえるかしら?」
「畏まりました。」
「それと、あなた達も食べてね?領主様にも言っておくから」
「あ、ありがとうございます!」
頭を下げて彼女は領主様の所に歩いて行った。
「さぁ、あなた達が作ったサラダやスープも盛り付けて晩餐を始めましょう!」
テンションが既に振り切れている料理人さん達が雄叫びを上げたのは言うまでも無い。
そして、私達は領主様や領主様のまともな方の家族と共にテーブルを囲い出来上がった料理を眺めている。
「これが今、この町で一番噂になっている料理か・・・」
領主様であるレアード様がそう呟いた。
「これは私も初めて食べるから、楽しみだよリアナ?」
アルフェリア王女が私に向かってそう言うので、
「さぁ、皆さん思い思いの事があるでしょうが、今だけは目の前にある一皿をお楽しみ下さい。」
「うむ、では乾杯!」
「「「「乾杯!」」」」
領主様がグラスを持ち上げ、音頭を取り食事は始まった。
「!?これは!?」
「美味しい!?」
カレーを食べた領主様一家は感動に震えた面持ちでカレーを味わう。
「料理長さんにレシピは渡してあるから今後も作って貰えますよ」
「!!?よいのか!?」
レアード様が驚いた顔をする。
「いいのです、この料理はもっと世間に広めたいので」
私がそう言うと、
「女神の子は、女神だった・・・」
「おぉ、神よあなたの慈悲に感謝します!」
領主様一家に拝まれた。
子供たちは、
「美味しい!野菜も一杯食べれる!」
と、野菜を食べれる事に感動しているようだった。
一方で静かな私の仲間達の方に視線を向けると、
「うまっ!?・・・バクっ!」
「「「バクっ!バクっ!バクっ!」」」
「・・・・」
グリスも結構男の子らしくガッツリと食べているけど、その傍で年頃の女の子としてどうだろうと言う勢いで私とアル以外の女の子が、がつがつとカレーを食べていた。
その様子に私は何も言えなかった。
「リアナちゃん、私にも後でこの料理を教えて貰える?」
ネイラさんは流石である。
「えぇ、なんだったまたウチに泊まりに来ませんか?」
「いいわね、じゃあ約束ね?」
「はい!」
ギルマスもしっかりとおかわりをしている。
使用人の人達も代わる代わる食べているようだった。
「リアナ、お金を払うから今度王城に勤める料理人達にもカレーを教えてくれないかな?」
「アル、只の冒険者にお願いする事じゃないわよ?」
集中してカレーを食べていたアルからそんな事を言われた。
「今度、行く事があったらね?」
「約束だからね!?」
アルに約束させられてしまった。
「女神様!このような素晴らしきお食事をありがとうございます!」
「女神様はやめて!?」
素晴らしき晩餐はこのように過ぎていった。
昨日の晩餐から一夜明け、私達領主館に一晩泊めて貰った。
本来なら昨日で済んだはずなのだが色々とあり、事情の説明が今日までズレてしまった為である。
「昨晩は素晴らしい一皿を提供してくれてありがとう、リアナ君」
どうにか領主様一家の女神様扱いを止める事が出来たようだ。
「だが、やはり私達はあなた方女神親子を信仰している、あの奇跡のような味を味わえた感動を忘れる事など私達にはもう出来ないからね」
元気になってくれればいいと思って作ったら、ちょっと元気になりすぎたようである。
私は心の中でため息をついた。
「レアード伯、そろそろ本題に入らないと不味いのでは?」
アルの言う通り、流石にこれ以上の時間の浪費は避けたい所である。
「そうだね、そちらが本題だったね」
領主様の重要事項を私は料理で上書きしてしまったようだ。
「まず、この度は私達貴族のつまらない争いに君たちを巻き込んでしまって申し訳なかった。」
レアード様は私達に頭を下げる。
「リアナ君、そしてその友である君たちは近年稀に見ない程優秀で才能豊かな宝物のように貴重な若者のようだ。そんな君たちのおかげで、愚かではあるが娘を助ける事が出来たその事も礼を言う、ありがとう」
頭を上げたと思ったら再び頭を下げて礼を言うレアード様に私はこう言った。
「レアード様、その件に関してはレアード様がしっかりと対応して頂いたので私達は気にはしておりません。」
「そうか、すまない」
「とりあえず、私達に何をして欲しいのかと今ファルト領がどういう状況なのかを教えて頂けますか?」
私がそう諭すと、
「まずは今の我がファルト領の現状から説明を聞いて欲しい。」
レアード様は重々しく口を開いた。
「まず、我が領にはダンジョンが2つ程存在するのだがそれはご存知かな?」
レアード様は私達にそう確認した。
「ここから東にあるグリューデン大深緑地帯にダンジョンの入口があってそのダンジョンを抜けた先にある竜鉄山脈にもダンジョンの入口があるという話は聞いた事があります。」
エルがそう答え、アカネとセナが驚愕の表情を浮かべる。
そんな二人をエルはバッチリと睨む先にはグレイもいた。
「まず、グリューデンのダンジョンで手に入るアイテムは主に食材や薬草類などがメインでオーク等も出るから肉類も手に入る、食材の流通には欠かせないダンジョンなんだ。」
そんな事を気にせず、レアード様は話を続ける。
「現在、町にいる冒険者はランクがCランクの者がほとんどなんだ。理由は周辺の領主達からの嫌がらせでね、今ある我が領のダンジョンは祖父の代で出来たモノで、ダンジョンとしてはかなり年季が入っている部類に当たる。だから結構な広さがあるんだ、それこそ攻略に一月、二月はかかるぐらいには・・・」
「グリューデンのダンジョンの攻略難度は現在どれくらいに設定しているのですか?」
レアード様は周辺の領主達の嫌がらせを告発しグリューデンのダンジョンの現在広さを説いた。
それに対して、私はグリューデンのダンジョン自体の攻略難度を問い掛けた。
「グリューデンのダンジョンは攻略難度はCランクだが、ここ最近は奥の方に入って行った者は皆無なはずだ。」
ギルマスが私の質問に答え、
「という事は、スタンピードとかそういうのが起こる可能性があるんですか?」
エルが少し青い顔をしながらギルマスに質問していた。
「いや、グリューデンのダンジョンはスタンピードは起きないよ、結構頻繁に皆狩りに行っているからね。」
レアード様の訂正にホッとした顔をするエルがいるが、私はもう一方のダンジョンの事を聞く。
「では、竜鉄山脈にあるというダンジョンの方は?」
「・・・・・」
私の質問にレアード様は沈黙した。
「君の読み通りだ、竜鉄山脈の方に足を向けた冒険者は皆無ではないだが、日増しに深くなっていくダンジョンに山脈を拝むどころか、グリューデンのダンジョンの最深部に辿り着く事すら現状では出来ていない。」
重々しく、そう告げるレアード様にアルが
「なら、私達がダンジョンの奥の奥まで辿り着けばこの問題は解決するね」
軽くそう告げた。
「・・・アル、ついてくるの?」
「アル様、流石に学校サボるのにも限度が・・・」
「あの、アルフェリア様、お気持ちは凄く嬉しいのですがここで貴女をダンジョンに行かせると私が王妃殿下に殺さ・・・オホンッ!?いや、お叱りを受ける事になるので先にそちらの説得をしてからダンジョンの方に入って下さいね?」
私とエルが呆れた目でアルを見れば、レアード様が結構本気で王妃様のお仕置きを恐れていた。
「本当の事を言うと、この状況はもう終わると思うのだが、先程言った探索時間の問題で事前調査が必要でね、早いうちに竜鉄山脈の様子が知りたいのだ、だからその調査が今回君たちに頼みたい仕事だ」
レアード様が王妃様の仕事っぷりにより周辺の嫌がらせをした領主達は何らかの罰を受ける事を確信しているようだった。
「その王妃様ってそんなに強いの?いや、アル様のお母様だから強いのはわかるんだけど・・・」
「あぁ、アカネは隣のヤマト皇国の人だもんね・・・マルディア・エクレール王妃殿下、通称、剣妃様と言われる国内外問わずに最強の一人として扱われている人ね。」
実際に会った事がある私が王妃様をこう説明する
「ライオス・エクレール国王陛下は魔法特化らしくって若い頃はマルディア王妃が前で敵を斬って、ライオス陛下が後ろから魔法でマルディア王妃の援護をするのがお決まりだったらしいわ、本人達から聞いた話だったしこの話は吟遊詩人なんかが歌にしてるから結構有名な話ね。」
「リアナ、ライオス陛下に会った事あるの!?」
エルがまた妙な所に食い付いた。
「マルディア王妃が剣を頼みに来る前にライオス陛下自らが交渉に来たみたい、誕生日のサプライズの一つだったんだって、で、その時にこう二人の馴れ初めを聞いちゃった」
「そうなのかい?私も聞いているけど結構メチャクチャな馴れ初めだよ?」
「あぁ、私も知っているな・・・ライオス陛下は当時は只の貴族でね、マルディア王妃とご結婚された時に婿として入ったお人で、若い頃から魔法の天才と評される程の凄いお方で当時から相当強かったんだ。正直、同年代はもちろんその上の年代の者達を含めて最強と言われていたのだが、アルフェリア様が今通っている学校に彼の後輩としてマルディア王妃が入った所から吟遊詩人達は歌にしているはずだね。」
レアード様がかなり細かい説明を私達にしてくれる。
「どんな風に恋に落ちたの!?」
エルが純粋な目でアルやレアード様に話をねだる。
「確か、入学早々にマルディア様がライオス陛下に勝負を挑んだのではなかったのですか?」
私がそう聞くと、
「そうだよ、確か入学早々に学校で最強と言われるお父様に挑みに行ったと言っていたね」
アルがそう答えて、
「私はマルディア王妃と同学年にいたのだがそれはもう酷かったね・・・学校の校舎が半壊以上なうえに周辺もボロボロ、最終的に勝ったのはライオス陛下だが、あれ以来ライオス陛下がマルディア王妃の勝負を受けた事は無いんだ。」
「?そうなんですか?」
「あぁ、流石にライオス陛下も校舎を壊したのは悪いと思ったらしくてね、卒業を早めて冒険者として活動してその稼いだお金を学校に寄付していたそうだ、ただ、マルディア様からすれば勝ち逃げだからね、こちらはこちらで一年で卒業資格を取って卒業してからライオス陛下を追いかけていったね・・・」
レアード様が懐かしそうに目を細める、校舎が壊れた辺りの話をしている時は目から光が消えていたが二人が卒業した後は平和な学校だったのだろう。
「確か、ライオス陛下がマルディア王妃にかなり不躾な事を言った辺りから互いに意識しだしたと私は聞きましたね」
「不躾な事?」
「確か、ライオス陛下がマルディア王妃の事を狂暴と言って」
「お母様がお父様の事を無愛想って言ったとかそんな感じだったかな」
「それで、口論になってお互いに本音がポロっと出ちゃって付き合いだしたらしいわよ?」
「うわぁ~、甘酸っぱ~い!?」
そこまで話をしたところで私達は脱線した話を戻す。
「とにかく、アルはこの仕事に参加したいのならマルディア様の説得は絶対!いいわね?」
「わかったよ・・・ついでに私も卒業資格を取って卒業してしまおうかな?」
「アルフェリア様、くれぐれもお城は壊さないようにお願いします。」
「・・・流石にこの剣じゃ荷が重いね」
「そこは否定しなさいよ!まったく、とりあえずウチで一振り、剣を打って貰うから行く前に私の家に来てね?」
私がアルの剣を用意しようとすると、
「泊まるのは昨日一晩だけにしてるんだ、この後、リアナの家に上がらせてもらうよ」
「そう、わかったわ」
アルはこのまま私の家に来るようなので祖父と相談しながら剣を作ってもらおう。
「それでは、色々と話が逸れてしまったが、こちらからの説明は以上だが、聞きたい事はあるかね?」
レアード様がそう聞いてきたので、
「特には、探索の方は準備が済み次第動きたいと思います。」
「わかった、よろしく頼む。」
レアード様にそう頼まれ、私達は仕事の準備を始めるべく領主館を後にした。
領主館を後にした私達は冒険者ギルドに来ていた。
「じゃあ、パーティー名は“竜の守護者”ね?」
ネイラさんに催促されていたパーティー名を登録する為だ。
「はい、それでお願いします。」
私は諦めた表情でそのパーティー名を肯定する。
「ふふ~ん♪これでまたリアナの伝説にまた1ページね?」
「エル~、わかってて提案したわね~?」
「ひゃあ、ここでそれはダメ~!?」
いつものやり取りにセナとアカネはいつも通りとネイラさんと話をしていると、
「グリス君?何してるの?」
「いや、もうちょっと人の目を気にして欲しいなって」
不意討ちを食らって少し顔を赤くしながらグレイは、精神を落ち着けていた。
「おい、見ろよ?あのボウズ、傍であんな事してんのに表情を変えねぇぞ!?」
「やつの心はオリハルコンで出来ているのか!?」
「だが、それを別にしても羨ましすぎる!?」
周囲の男達がグリスに妙な評価を持ち出した。
「・・・よかったね?」
「良くないわ!?」
セナがそう言うと、グリスは心外とはっきりと口にした。
「何よ~!?私のどこが不満なのよ~!?」
「いや!?そうじゃなくてだな!?」
すると、エルがグリスの反応がお気に召さなかったようで頬をプクっと膨らませてグリスに抗議して、グリスが凄い動揺してる。
「ハイハイ、イチャイチャしないの・・・」
「「イチャイチャなんてしてない!?」」
二人はいつの間に仲良くなったのだろうか?
「まぁとりあえず、グリューデン大深緑地帯にあるダンジョンの入口はまた後日に教えてあげるから、今日は一旦帰ってしばらくグリューデン大深緑地帯の情報とか集めたり、装備とか整えてからまた来なさい?」
ネイラさんがそう言うと、
「まぁ確かに私がいないうちにダンジョンに入られるとちょっと困るかな・・・」
アルが真剣な表情でその事を思案しながらそう言うと、他の受付嬢がアルを熱い視線で見蕩れている。
「はぁ、追いかけて来るのをわかっていて先には行かないわよ・・・」
私が疲れた感じに肩を落とすと、
「なら、いいかな?」
アルは満足気にそう頷いた。
「じゃあ、今日はもう帰ろうよ~?」
エルがそう言う後ろで、グリスが項垂れていた。
「エル、グリスの事をあんまりイジメちゃダメよ?」
「別にそんな事してないし!?」
「別にイジメられてないからな!?ただ、今度何か・・・ムガッ!?」
「わ~~ー!?言っちゃダメ~!?」
ちょっと注意しておこうと思ったらグリスがエルにラリアットされながら連れ去られ、凄い大惨事になってしまった。
私は心の中で、ごめんね?グリス、強く生きて・・・っと思って祈った。
「あっ!?リアナがまた失礼な事を考えてる!?」
エルが私の心を読んで何やらまた言い出したが、
「そんな事は無いわよ、さぁ、早く帰りましょ?ネイラさんもまた後日話を聞きに行くわね」
私がエルにそう誤魔化してネイラさんに声をかけると、
「わかったわリアナちゃん、こっちの色々な後始末が終わったら遊びに行くからね?」
「楽しみに待ってますね!?」
ネイラさんが楽しげにそう告げると、エルが期待した目をネイラさんに向ける。
「やれやれ、アカネ、セナ、二人もウチに泊まってね?試験に行く前に頼んだ拡張工事が終わってるはずだから、ちゃんと二人の部屋も用意出来てるはずよ」
「・・・いいの?」
「リアナはもうそのつもりみたいだから、いいんじゃない?正直、リアナの家に泊まると安宿とか泊まりたくないし・・・」
「確かに・・・」
アカネがいいのか迷っていると、セナがウチに泊まる利点を説いてきたのですぐに納得していた。
「二人はウチのメンバーなんだから当然じゃない?」
そう言って私は歩き出す。
「とにかく、帰ってお祝いしましょ!?」
「「「おぉ~!!」」」
「やれやれ、まだお昼過ぎなんだが・・・」
元気な女子に囲まれてグリスがこっそりとため息をついた。
家に帰った私達が見たものは、
「なにこれ?」
「鍛冶屋の後ろに何か更に家が建ってるね?」
「パーティーメンバーは、何人増やすつもりなの?リアナ?」
「これは、お風呂は期待してもいいのではないだろうか?」
アカネ、セナ、エル、そしてアルの順番で現在の我が家の外観を見て感想を述べると、
「あら?お帰りなさい」
母がご飯を用意しながら待っていた。
「やっぱりアルも来ていたのね?マールにはちゃんと行き先を言ってあるのかしら?」
母はアルの母親と友人で、親友とも言っていい間柄である。
私の母親であるリールは、アルの母親の事をマールと呼び、アルの母親であるマルディア様は、私の母親をリルと呼ぶ、かなり気安い間柄なのだとか。
「母上の許可はちゃんと取ってあります、リールおば様もお元気そうで何よりです。」
「ふふっ、今日は腕によりをかけてお料理を作るから期待してね?」
「リールおばさんの本気料理!?」
アルが母に挨拶をしていると、エルが母の一言に反応した。
「エル、ちょっとはしたないよ?」
アカネがそう言うと、
「そんな事ないよ!?あのリールおばさんの本気料理なんだよ!?どれくらい美味しい料理が出来るのかわからないぐらい美味しそうな料理が出てくるのかわからないんだよ!?」
「エル、言ってることちょっと意味不明」
興奮し過ぎてエルが壊れだした所でセナが冷静にエルにツッコミを入れる。
「とりあえず、お風呂に入らない?」
私はそんなエルを放置して皆にお風呂を提案する。
「「「賛成~」」」
「・・・はっ!?さ、賛成!?」
アカネとセナとアルは賛成に1票入れて私とともにお風呂場に向かい、エルはワンテンポ遅れて正気に戻ってついてきた。
「うわぁ~、下手すると私の城のお風呂より立派じゃないかな?」
服を脱いで一緒にお風呂に入ったアルの声が響く。
「行く前よりお風呂がデカくなってるんだけど・・・」
「・・・大きい事は良いことだ、深く考えてはいけない・・・」
アカネとセナが我が家の立派すぎるお風呂に驚きを禁じ得ないようだ。
「これ、もう泳げるんじゃない?」
「エル、ちょっとはしたないわよ?」
遂には泳ぐと言い出したエルを私は嗜めた。
「アル、背中を流してあげる」
そう言って私はアルを座らせ、
「ひゃあ!?」
勿論イタズラした。
「リアナ!?脇は!?脇はダメ~!?」
「そんなにくすぐってないよ?」
「ひゃん!?」
面白いぐらい反応するアルを尻目に、
「リアナの家の石鹸は良い匂いだね~」
「これは薔薇かな?」
「それは髪を洗った後に使うやつだよ~、トリートメントって言うんだって」
「これつけると、あまり香水をつけなくても大丈夫かもね?」
他の3人はシャンプーとトリートメントを堪能していた。
「・・・リアナ、よくこんなのを作ったね?」
「錬金術に不可能は無いわ!」
そう、錬金術で苛性ソーダを作って石鹸を作ったのである。
「水や香油の量を調整して、香りや使いやすさもバッチリよ!」
そう、私の中にある前世の記憶にある石鹸を元に試行錯誤して作った作品である。
「ドワーフの女に不可能の言葉は無いわ!」
燃え上がる情熱に身を任せながら私はタオルで身体を隠す事もせずに仁王立ちをする。
「・・・良いなぁ・・・」
「・・・セナ?」
「・・・確かに、あの大きさはちょっと憧れるよね?」
「・・・少し反撃しても良いよね?」
セナが羨ましそうに私を見れば、アカネがセナに声をかけて、エルが代弁し、アルが不穏な事を口にした。
「ほら?身体も洗ったし、湯船に浸かりましょ?」
正気に戻った私は皆を湯船に誘う。
「はぁ~♪」
皆で極楽を堪能してお風呂を上がった。
お風呂から上がると、そこにはホカホカしてるグリスがいた。
「やっと上がったか?」
ちょっと呆れ気味にグリスはそう言った。
「そこまで長かった?」
エルがグリスにそう聞くと、
「俺より20分は長かったな」
「?どこのお風呂に入ったの?」
アカネが疑問を口にすると、
「リアナの家って、男湯もあるんだな・・・」
グレイは呆れた視線を私に向ける。
「だって、お風呂1個しかないとゆっくりと入れないじゃない?」
私も流石にどうかと思ったから、私は少し唇を尖らせて拗ねたように言い訳した。
「まぁ、気持ち良かったから良いと思うけどな」
諦めたグリスがそう言った。
「ほら、椅子に座って?ご飯を食べましょう?」
母から、未だに立ちっぱなしな私達に声をかけられたので、それぞれ椅子に座った。
「今日はハンバーグとかコロッケとか色々と作ったからいっぱい食べてね?」
母がそう告げると、
「八神の恵みに感謝を」
「「「「「いただきます!!」」」」」
食事前に祈りを捧げて私達は食事を始めた。
「まずは、ハンバーグから・・・はむっ!?」
「・・・!?噛む度に肉汁が溢れ出してくる!?」
「お米との相性もバッチリだわ!パンと一緒に食べてもイケる!というかパンもめっちゃ美味しいんだけど!?」
まず私とセナとアカネは、恐らくこの世界初のハンバーグを食べてその美味しさに酔いしれていた。
「じゃあ俺はこの、コロッケとやらを・・・!?」
「うわぁ~、外はサクサクしてて中の具はホクホクしてる!?このソースの味も酸味と甘味のバランスが絶妙!」
「このオムライスと言う料理も良いね!この赤いソース、ケチャップと言うだっけ?の酸味がバターの風味とよくマッチしているし、中のご飯はガーリックと塩コショウの風味が一段と感じられて病みつきになってしまうよ!?」
グリスとエルがコロッケの食感を楽しみ、アルはオムライスの食べやすさに驚いていた。
「ふふっ、おかわりはいっぱいあるわよ?」
「「「「「おかわり!!」」」」」
食べ盛りな私達は、食べ過ぎなぐらいに母の本気料理を堪能した。
翌朝、私はアルと一緒に祖父の所にいた。
「確かにそろそろアル嬢ちゃんにも剣を打ってもいいかもしれないな」
祖父は立派すぎる自らの髭を撫でながら、しみじみとそう言った。
「本当ですか!?」
アルは祖父に認めてもらって嬉しそうだ。
「おじいちゃん、私にも手伝わせてね?」
私は祖父にお願いする。
「よいぞ、しっかりと見て覚えるようにな?」
「うん!」
私が笑顔で返事すると、
「ふぉぉ~~!!」
祖父のテンションが急に爆上がりした。
「今すぐ取り掛かりたい所じゃが、リアナに情けない仕事は見せられん!明日には仕事を始めれるように準備をしておく故にどのような剣がよいのか今のうちにアル嬢ちゃんはワシに教えよ!」
素晴らしい熱意を秘めた眼をアルに向けて祖父は矢継ぎ早に質問をしていくが、
(これ、1時間じゃ終わらなそうだな~)
私はそう判断すると、二人に一声かけてから最近作り始めた小物類の製作に入る。
「指輪のデザインも凝って作ると納得できる出来のやつが中々作れないわね~」
この世界の指輪は、はっきりと分かりやすく言うと只のわっかに宝石をくっつけた物が多い。
私はヤスリを手に持って指輪の外側を削り、紋様を彫っている。
「でも、中々上手くいかないのねぇ~・・・」
頭にはこういう形にしたいというイメージがあるのに、道具が一種類しか無いのがこの問題に拍車をかけている。
「無いなら作るしかないか・・・」
私はそう呟き、指輪作りを一旦止めて魔道具製作に取り掛かった。
翌日、魔道具の設計図を携えて私はアルの剣を作る手伝いをする次いでに、祖父に新たに製作する魔道具の設計図を見せた。
「どう?おじいちゃん?」
「ふうむ、これはまた画期的な魔道具じゃのう・・・」
私が設計図に書いたのはペン型の小型万能ドリルのような物だ。
用途に応じて先端に付いているドリルをその時々のシチュエーションに合わせたパーツに取り替えて使用できる物を設計してみた。
ドリル一つにしても様々なサイズを揃える事で削る幅を調整できる事でより綺麗にイメージ通りに彫刻できる。
「これはアル嬢ちゃんの剣を急いで打たねばなるまい・・・」
我が祖父はアルの扱いが雑である。
「おじいちゃん、手抜きはダメだよ?」
私は一応釘を刺す。
「心配しなくても準備は万端、仕込みも十分じゃ!後は仕上げを魅せるのみ!」
祖父の笑顔から歯が輝いて見えた。
「では、そろそろ・・・」
空気を読んだアルが祖父に声をかける。
「うむ、始めようか!!」
そう言って祖父は材料を一つ一つ順番に炉に入れていく。
それにより室内は高温となり熱気に包まれる。
「これが、世界一の鍛冶師の仕事場か・・・」
額から溢れる汗を手で拭いながらアルはそう呟く。
「まだ始まったばかりだよ、アル」
そう言って私は祖父の手伝いを始める。
「おじいちゃん、こっちは準備オッケーだよ!」
「うむ、ではまずは溶けた鉄を炉から流すぞ!」
そう言って炉の口を開けると、更なる熱気と共に溶けた鉄が流れ出てくる。
流れ出た鉄はやがて冷えて固まっていく。
流れ出た全ての鉄が固まったら祖父はハンマーを振り下ろし、固まった鉄の塊を砕く。
すると外側のくすんだ鉄が割れ、中の綺麗な鉄が中心に残る。
そして、くすんだ鉄を再び炉で溶かして口から流して、また砕く。
そうして鉄の中にある不純物を取り除き、純粋な鉄のみを手元に集め、その純粋な鉄を別の炉で熱して溶かす。
そして、今度は溶かした鉄を長方形の型に流し込み蓋を閉じて水で冷やす。
冷やして固めた鉄は一旦ここで置いておき、今度はまた別の金属を鉄の時と同じ手順で溶かして砕く。
しかし、鉄の時とは違い不純物でも中々砕けない。
だから念入り叩いて不純物を取り除いていく。
この硬い金属の名は、アダマンタイトという世界で4番目に硬い金属だ。
またの名を黒鉄といい、これを自在に加工が出来るようになって初めて名工と呼ばれるようになる。
「まずは純粋な部分を取り出してその後に混ぜて、合金を作る。」
その合金の名を、ブラックスチール合金という。
「この合金の強度は、オリハルコンには劣るが純粋なアダマンタイトよりも硬い金属になる上にそれなりの柔軟性を持った金属に仕上がる。更には魔力の伝導率もミスリルに匹敵する、正に上質な金属よ!」
祖父は実に楽しそうに解説しながら鍛造の準備に取り掛かる。
「フッフッフッ、こうやって剣を打つのも実に久しぶりじゃわい!血が滾りおる!」
そして、鎚を手に取り、
「どっせい!」
鎚が青白く光らせながら鉄を叩いた。
「よし、嬢ちゃんもそこにある鎚でこの鉄を叩け!」
「えっ!?」
アルは驚いた顔をして、
「アルの剣だから、アルの魔力が必要なのよ。」
私がそう説明すると、
「わ、わかった、魔力を込めながら叩けばいいんだね?」
ガァン!!と重い音を響かせながら鎚を叩きつける。
「うむ!よい感じじゃな!よし、リアナ!出番じゃぞ!」
「は~い、アルの背中から私の魔力を流すからアルはそのまま剣を鎚で叩いてちょうだい。」
「うん、わかった!」
するとアルの魔力が紅く輝きながら剣に宿り出した。
「いい感じ!そのまま続けて!」
「つっ!?これ!?けっこう、キツイ!?」
アルが苦しそうな表情で鎚を叩きつける。
「儂が形を整える!お前さんは全力で鎚を振るえ!」
アルが鎚を叩きつける度にまるで生き物のように剣の形になっていく。
「最後じゃ、思いきり行け!」
「ッはぁ!」
祖父の掛け声にアルは応え、鋭く呼気を吐いて鎚を振り下ろした。
ガァァァン!!?
「アル!?」
最後に全力で鎚を振り下ろしたアルはさすがにもう立っている事も出来ず、後ろから私が支える。
「ふむ・・・見よ、これから研いで磨き、拵えを整えると完成じゃ、嬢ちゃん、いやアル、お主のおかげで見事な剣を一振り作れたわい!」
祖父は満足気に剣を眺め、アルを褒めた。
「後の仕上げは儂とリアナでやるからアル嬢ちゃんは風呂にでも入るといい、よし、リアナ出番じゃぞ!?」
「オーケー、おじいちゃん!アル、ゆっくりして待っててね?」
私はオリハルコンの砥石を手に剣を直接研ぐ。
「相変わらず、メチャクチャじゃのう・・・」
「だってこっちの方が綺麗に鋭く研げるんだもん。」
私は火花を散らしながら砥石で剣を研いでいく。
綺麗に研いで剣身を磨いた所で祖父に渡す。
「よし、この拵えを付ければ完成じゃ!」
「今回の拵えは、何の木材なの?」
私がそう問いかけると、
「エンシェント・トレントという地上にいてはダメなモンスターじゃ、ダンジョンの中から出てきた日には少なくとも3国は力を合わせんと仕留められんじゃろうな。」
「アル、腰抜かさないと良いけど・・・」
あまりの希少素材にアルの反応を心配した。
「何、心配するのはこの剣を見た親の反応よ、自分の剣よりもいい出来なんだからもう一本打ってくれと来るかも知れんな?」
がッはッはッと笑う祖父に私は何も言えなくなった。
その晩、夕食の後にアルに剣を手渡した。
アルはあの後、お風呂に入りそのまま部屋で寝てしまったようだ。
「ご飯の時間まで寝てしまうとは、ちょっと恥ずかしいな・・・」
「魔力を限界以上に使ったんだから当然だよ、それよりどう?」
「うん、よく手に馴染む、いい剣、いや素晴らしい剣だよ!」
剣を抜き、剣身を眺めながらアルはそう言う。
「とりあえず明日1日は休んで出発は明後日にしなよ?」
「わかってるさ、さすがにそんな無茶はしないよ。」
「後、剣を振ったらもう1回お風呂に入ってね?」
「一応、これでもちゃんと女の子だからね!?それくらいはちゃんとするよ!?」
アルが少し赤くなりながら抗議してきた。
「そう言うならリアナにも付き合ってもらおうかな?」
アルがニヤッとしながら私の腕を掴む。
「えっ!?いや私今日はもうお風呂に入ったし・・・」
「いつもみたいにいっしょに入れば大丈夫だよ!」
「ちょっ、エル助けて~~~?!」
「行ってらっしゃ~い(敬礼)」
「覚えておきなさいよ~?!」
高笑いしながら私を引きずっていくアルに逆らえず、私はアルと夜遅くまで手合わせを行った。
次はエルも連れてこようと思った。
アルは伯爵令嬢のラミスとそのお付きのメイドを連れて領主館の方に行った。
それ以外の私達は冒険者ギルドの方に報告ヘ行った。
冒険者ギルドの中に入り私達はまずネイラさんに声をかけた。
「ただいま、ネイラさん」
「リアナちゃん!エルちゃんも!よかった無事だったのね?」
泣きそうな顔で安堵されてしまった。
どうやら相当心配をかけたようだ。
「心配かけてごめんね?」
「いえ、いいのよ、悪いのはむしろ私達ギルドの方よ。だからそんな顔をしないで?」
やはり副ギルドマスターなだけあって私達に何があったのかは知っているようだ。
「ちょっと待ってね、あの男をちょっと〆て来るから、ね?」
恐る恐ると言った様子でネイラさんの事を伺っていたギルド職員達がサッと身を引いてネイラさんに敬礼しそうなぐらい直立不動になった。
「な、何が起きてるの?リアナ、わかる?」
「わからないわよ!?エルはネイラさんが怒った時の事を見た事ある?」
私とエルでネイラさんの事を相談していると、
「お願いします!?副ギルドマスターを止めてください!?」
ギルド職員の一人が頭を下げてこちらにお願いしていた。
「えっと、何で?というかネイラさんは何を怒っているの?」
私がそう問うと、
「Dランク昇格試験の件はギルドマスターと領主の独断だったんです!そこに貴女達を巻き込んだのがネイラは我慢ならなくて・・・」
怒っている、そう続けようとしたのだろう。
ドガァァァァァァァァ!!!?
建物の奥の方から爆発音が轟いた。
「ギルド職員は直ちに避難誘導をとって下さい!お願い!本気で怒ったネイラは多分貴女達じゃないと止められないと思うの!」
「・・・まぁ、事情はわかりました、とりあえず奥の方に行ってみますね・・・」
「あ、行ってらっしゃ~い・・・うにゃあ!?」
「あ、リアナ!俺は避難誘導の方に回るからな?」
「うん、わかったわ!一応こっちは任せて!」
「いやぁ~!?私もグリスの方がいい~!?」
避難誘導をグリスに頼み、一人外に逃げようとするエルの首根っこを掴み、私はエルを引きずりながら奥へと歩いて行った。
奥は軽めに言って大惨事だった。
「うわ~、ギルマスよく生きてるね?」
「早く殺られちゃえばいいのに・・・」
エルが不思議そうに現場を見て、私は煩わしそうに呟く。
「二人とも、そんなに呑気な事を言ってる場合じゃないよ?」
「冒険者ギルドが潰れるのはさすがに困る」
アカネとセナが私とエルを嗜める。
「とはいえ、あのネイラさんの無詠唱ぶっぱの中を突撃するのはちょっと勇気がいるね?」
「誰か適当に後ろから揉んじゃえば?」
「「・・・・・・」」
「いや、さすがに私達にそんな勇気はないよ?リアナ」
「え~?」
私のあんまりな発言に固まってしまった二人を放置して、
「まぁ、これ以上放置は出来ないから止めて来るよ」
私は気配を消してネイラさんの後ろから近づいて、
「ネイラさん、落ち着いてください、私達なら大丈夫でしたから!」
声をかけるも、爆発音に声がかき消されてしまいネイラさんに聞こえていない。
「あ~、仕方ないかぁ・・・エイヤ!!」
ムニィ!!
私は後ろからネイラさんに飛び付き、私よりも大きい、女性らしい部分を両手で鷲掴みにした。
「ひゃう!?・・・・・?」
無詠唱の爆撃は止まったが、今度は別の意味で不味いかもしれない。
「ネイラさん?落ち着きましたか?」
「・・・・リアナちゃん?」
私はむにむにと自分のよりも大きいそれの感触を楽しむ。
「うわ~、すごい大きいし柔らかい・・・何て言うか、癖になりそう」
「うんっ!?・・・やっ!?・・・リアナ、ちゃん!?・・・そんなに、しちゃ!?・・・やぁん!?」
ネイラさんは全く抵抗出来ずに私にされるがままになった。
「とりあえず、もう暴れないと約束してくれれば、やめてあげますよ?」
「んっ!?・・・はぁん!?・・・待って!?・・・わかっ、はう!?・・・わかったからぁ~!?」
さっきまでよりもちょっと激しくしたらネイラさんは私の言うことを聞いた。
「あぅぅ~、リアナちゃんのいけずぅ~!?」
ネイラさんが顔を真っ赤にしながら涙目で私を恨めしそうに睨む。
「こんな暴れ方をするから悪いんですよ?」
そう言って私は周りを見る。
あっちこっちに風穴が空いてるし、多分ギルマスの部屋は粉々だろう。
「ギルドマスターは生きてますかね?」
私は首を捻りながらギルマスの部屋だった所を見ていると、
「やれやれ、死ぬかと思った・・・」
巨大な盾を持ってギルマスが奥から歩いてきた。
「・・・ギルマス、よく生きてたわね?正直、もう生存は絶望的かと思ってネイラさんの罪をどうやってなかった事にしようかと考えてたのに・・・」
「普通に酷いな!?」
私がそう言うとギルマスは傷ついた顔をするが、
「元はと言えばあなたがリアナちゃんを利用しようとしたのが悪いんだから当たり前じゃない!」
ネイラさんが再びヒートアップしてきたので、
「ネイラさん?冷静でいられないならまたしてあげよっか?」
私が笑顔で手をワキワキさせると、
「そ、それはもういいから!?」
私の両手を自分の両手で抑えて、首を横に振っている。
「とりあえず詳しい話は領主様の所でやるからリアナ嬢も含めてDランク昇格試験を受けた者は全員ついて来てくれ。」
するとネイラさんが、
「私もついていくからね?」
とギルマスに向けて宣言し
「いや、お前は残ってこの惨状を片付けろよ・・・」
ガックリと肩を落とし、
「またあいつらに文句を言われるだろうが・・・」
ギルマスの言うあいつらとは、恐らく冒険者ギルドの職員達だろう。
「内緒にして怒られた段階でもう手遅れだと思うけどね」
「ぐむぅ・・・」
ギルマスもこれには反論できないようだ。
「はぁ、ついてきてもいいが、領主様に魔法を撃ち込むのはやめろよ?後、戻ったらちゃんと片付けるのを手伝うこと、それが条件だ。」
疲れた顔でネイラさんにそう告げるギルマス、
「わかったわ、それじゃあ領主様の所に行きましょうか?」
「みんな~、いる~?」
私がエル達を呼ぶと、
「終わった?」
エル達がこっちに来た。
「今度は領主様の所に行かないといけないんだって」
「え~、ちょっと面倒・・・」
「ん、同意」
「もう、二人ともダメだってばぁ!?」
私がこの後の事を伝えると、エルが不満を示し、セナが同意して、アカネが二人を嗜めた。
「戻ったばかりで手間をかけるが、頼むわ」
ギルマスがそう言うので、渋々と私達はギルマスとネイラさんと共に領主館の方に移動するのであった。
ギルマスが用意した馬車に私達は乗り、ヴェルデ達はその横を歩く。
馬車が進むペースで私達は領主館に向かっていた。
「領主館に着く前に一言だけ謝罪をさせてくれ、すまなかった。」
ギルマスはそう言って頭を下げる。
「いいわよ、別に」
私はあっさりと何でもないようにそう答える。
「いいの?リアナ?」
エルが驚いた顔で私を見ていた。
「確かに帰ってくるまではネイラさんもグルなのかなぁ?ってちょっと悩んで凹んでたけど、ネイラさんにも内緒だったみたいじゃない?だからまぁ、良いかなって思っただけよ。」
「時々、魔力が昂ってたから怒ってたのかと思った、なんか笑顔だったし・・・」
私がエルにそう答えると、アカネが大変不本意な事を言った。
「アカネ?私の笑顔がどうかした?」
「ごめんなさい、何でもないです・・・」
アカネは私の笑顔の問い掛けにスッと顔を逸らした。
「リアナの魔力は凶悪だから仕方ない」
「セナ、ちょっと酷くない?ひょっとしてまだアカネが自分より先に、私の方に説明したのを根にもっているのかしら?」
セナがかなりはっきりと言うので、ついつい笑顔で圧力を掛けてしまった。
「でも、事実」
「むぅ~」
だが、セナはそれでもはっきりと言うので私は頬を膨らませる。
「まぁ、とりあえずゲイル、貴方は私に借り2つだからね?ちょっとした事じゃ許さないからね?」
ネイラさんがギルマスに釘を刺す。
「わかってるよ、どうにか休みを合わせてやるから」
「そ、そういう意味じゃない!?」
ズレたギルマスの一言に嬉しいのだろう、口ではそうじゃないと言いつつも、ネイラさんの顔はほんのりと赤く嬉しそうな表情をしていた。
「あ、着いたみたいね」
私がふと外を見れば、大きな館の門の前に馬車は止まっていた。
そして、門が開き再び馬車は動く。
馬車は領主館の前で止まり、
「ヴェルデ、ここで待っててね?」
「キュル~」
私が馬車から降りてヴェルデにそう頼むと、わかっていると言うようにヴェルデは鳴いた。
「エレスもヴェルデと一緒に待っててね?」
「わう!」
次に降りて来たエルが自分の相棒にそう声を掛け、エレスが一声鳴いて返した。
「アスカもね?」
「ピュルル」
馬車の上に止まっていたアスカに、アカネが私達二人と同様の事を頼んだ。
「みんな、いいな・・・」
次に降りて来たセナが私達三人の様子を羨ましそうに眺め、
「セナちゃんにもきっと出会えるわよ」
ネイラさんがそっとセナを慰めた。
一番先に降りていたギルマスは、
「案内の者が来たから、そろそろ行くぞ?」
「「「「は~い」」」」
「さて、どうしましょうかね?・・・リアナちゃん、アカネちゃんとセナちゃんを入れればもう四人なんだし、そろそろパーティー名を出してくれると私が助かるんだけど?」
案内の人と話をして私達を先導し、ネイラさんが会話の流れをぶった斬って全然関係無いことを言い出した。
「後でみんなと話をしてから決めますよ」
私はネイラさんにそう返す事にした。
「決めてないなら、リアナと愉快な仲間達で登録しちゃうわよ?」
「ネイラさん!?それだけは勘弁して下さい!?」
エルがネイラさんの一言に慌てたように謝る。
「なんでエルが謝ってるのかしら?」
「私、そこまで愉快じゃないし!?」
「あ~、なるほどなぁ~」
するとギルドで避難誘導をしていたグリスが後ろから歩いてきた。
「グリス、それは何に対する納得かしら?」
ジロッと私はグリスを睨む。
「いやぁ~、昇格試験で組んだだけだけど結構面白かったぞ?」
グリスが素直な感想を述べる。
「ところでグリスはギルドで避難誘導をしていたんじゃないの?」
アカネがグリスに質問すると、
「ギルドマスターが伝言を俺に寄越してくれたから適当に歩いてきた。」
とグリスが答えた。
「彼も当事者だからな、これからの話にも少し関係ある。」
ギルマスがそう言ったところで私達は案内の人に連れられて領主館に入った。
案内をするメイドさんに先導されて、私達は領主様がいる執務室に案内された。
「こちらが領主レアード・ファルト様の執務室になります。」
そして、メイドは扉をノックして私達が来た旨を中に伝える。
「入ってくれ」
「失礼します」
返事が来た後に、ギルマスが一言掛けてから扉の中に入っていく。
私達もそれに続いて中に入ると、町の外から戻る時に助けた伯爵令嬢のラミスと我が国の第一王女、アルフェリア・エクレール王女がソファーに座っていた。
そして、奥の執務机に座っているまだ若そうに見えるおじ様がこちらを見ながら声を掛けてきた。
「初めまして今日Dランクに昇格した冒険者諸君、私がこのファルト領を治めるレアード・ファルトだ。この度は君たちを非常に危険な目に合わせてしまって申し訳なく思う。」
そう自己紹介をして、
「すまなかった」
頭を下げた。
「俺からももう一度謝罪をさせてくれ、すまなかった。」
ギルマスまで頭を下げ始めた。
私はこの重い空気にため息をしながら、
「頭を上げて下さい。」
チラッとアルの方に目を向けると何も言う気が無いようなので、私が二人に声を掛けて顔を上げさせた。
「そちらにも事情があることはこちらも重々承知しております。元々危険を省みずまだ見ぬ地を、物を、生物や文化、ありとあらゆるモノを求める強欲な者達の端くれです。その事情が何かは知りませんが、こちらも手を貸す事には躊躇いは御座いません。」
私は紳士の礼をしながらそう答えた。
「ちょっとお待ちなさい!」
すると、ソファーに座っていたラミスが話に割り込んできた。
「平民風情が随分と上から言ってくれるモノね?」
こちらを睨むラミスに、
「別にそんなつもりは無いわ、ただ現状を分析して手を貸してもいいって言っただけよ。自分の身も守れない貴族様よりは、使える自負はあるわよ?どうやら貴族様は噂に違わず礼儀を知らないようだし、ね?」
その瞬間、私の中にある苛立ちが表に出てしまった。
「!!!??・・ひっ!?」
あまりの重圧に後退り、腰を抜かしてしまう伯爵令嬢。
「そこまでにしてくれないか?」
その状況で普通に声を掛けてきたのは、それまで一言も喋らず沈黙を守っていたアルフェリア王女だった。
「はぁ、わかったわよ」
そう言って私は色々と引っ込める。
「ラミス嬢?」
「はっ!?はい!?」
私が退いたのを見て、アルフェリア王女はラミスにこう言った。
「彼女は私が幼い頃からの親友なんだ、その彼女に向かってその様なことを言うのはやめて頂きたい。」
「で、ですが!?」
「それと、貴族であっても領主であっても、そして王族であろうと・・・我が国の民をその様に扱う事は誰であろうと許さぬ!!」
そして、態度を改めないラミスに殺気を込めた視線と怒気の籠った言葉を伝えた。
「あ、も、申し訳ございません・・・」
娘のその様子を冷めた目で見ながらレアード伯はこう言った。
「ここから先はお前が聞いていい話ではない、自らの我が儘で無断で屋敷を抜け出し、危険な目に遭遇しそれを助けられながら礼も言えぬ様な愚かな我が娘よ、相応の罰が降ると心得よ!」
静かに、だけどハッキリと自らの娘のその態度が悪いと父親であるレアードが告げた。
「そんな・・・私は悪く・・・私だけが・・・そうよ!あのメイドだって!?」
あまりの言い訳にレアード伯が一喝した。
「いい加減せぬか!!」
「!?」
「これ以上は捨て置けぬ!お前と親子であるのもこれが最後だと思え!!アルフェリア王女に御近づきになりたいからと、他国の者達と手引きをしおって!!恥を知れ!!」
その言葉にラミスは青ざめた。
「そ、そんな!?お父様!?どうかお許しを!?」
ラミスは父親に許しを乞うが、
「お前がしっかりと反省し、自らの立場を考え直せば良かった!!だが、アルフェリア王女の前でこのような醜態!!最早捨て置けぬ!!誰か!!この娘を部屋に捕らえよ!!」
レアード伯は激昂しており、娘の言い訳に耳を貸さずに娘を部屋から追い出した。
レアード伯は少し息を整えてから、
「申し訳ありません、お見苦しい所をお見せしました。」
レアード伯はアルフェリア王女にそう頭を下げた。
入ってきた時は、まだ若そうに感じたおじ様は一気に10年くらい老けて見えた。
「はぁ~、仕方ないわね~」
私はため息をつきながら、レアード伯に告げた。
「伯爵様、厨房を貸して下さい。このような空気ではどのような話をされても上手くいかないでしょう?美味しい物を作りますので少々お待ちください。」
そう言って私は執務室の外に出ると、丁度いい所にラミスの傍にいたメイドが表情を固くして立っていた。
「あ、いい所にいたわね、厨房まで案内して頂戴?」
私はメイドの手を取り、歩き出す。
「あ、あの!?」
「みんな、あのおバカさんのせいで疲れてるでしょ?美味しい物を作ってあげるから手伝いなさい」
私はメイドを引っ張りながら厨房へと案内された。
「よし!?じゃあ、たのも~!?」
そう言って私は厨房に飛び込んだ。
飛び込んだ先の厨房で、領主館で働く料理人達の視線がこちらに刺さる。
が、これで怯む私ではない。
「料理長さんは誰かしら?」
すると、意外と強そうなおじ様が前に出てきた。
「私が料理長を務めているが、君は誰かな?」
「私は、今日Dランクに上がったばかりの冒険者よ!私はリアナ・フレーベル、神剣鍛治士ガウスの孫よ!」
私がそう自己紹介をすると、
「君が料理の女神リール様の娘か!?」
「へっ!?」
料理長さんがよくわからない事を言い出した。
「あの、母をご存知なんですか?」
いきなり我が母を様付けして呼ぶ料理長さんに私は問い掛ける。
「この町に住む、いやこの国の料理人達の女神と言ってもいいお方だ!」
なんと言う事でしょう!母が私の知らないところで偶像化していた。
「そ、そうなんですか・・・と、とりあえず厨房を貸してもらっていいですか?」
私はどうにか目的を果たすべく、料理長に確認をとると、
「もちろん!好きに使ってくれ!」
かなりいい返事を貰えた。
「ま、まぁいいわ、それじゃ使わせてもらうわね」
そう言って私は厨房に入っていった。
結論から言うと私が作ったのはカレーだ。
但し、この国、いやこの世界でカレーをまともに作ろうとすると恐ろしくお金がかかってしまう。
だから私はカレー粉の代わりになりそうな香辛料を探して代用する事にした。
そして、見つけた。
名前はカリービーンズ、若干黄色っぽい褐色が特徴の豆だ。
それを乾燥させゴリゴリと擂り潰して粉末にした後、ひき肉と微塵切りにした野菜を一緒に炒めルーを作る。
その後、この世界の唐辛子、レッドクロウとも呼ばれるレッドペッパーで辛味を調整する。
更に、料理に使える薬草類を隠し味として微量だけ使う。
スパイス類は使い過ぎると匂いがキツくなって鼻についてしまうので色々と比率を変える事で風味を変える。
今日のスパイスとルーの配合は私が現在一番気に入ってるモノだ。
バッチリに煮込んで、後は少し置いておくだけ。
次に問題なのが、お米だ。
パンと一緒に食べるのもありかもしれないが、やはりカレーにはお米が一番だ。
お鍋でお米を炊くのはかなり難しい、だから私は釜鍋を作ってお米を炊く事にした。
何回か失敗したが、一度成功すると後はどうにかなった。
祖父に何回か食べて貰ったが中々の好評価だった。
そんなわけで私はアイテムボックスから釜鍋を取り出し、米を炊く準備をする。
この世界にコンロはまだ開発されていない。
だから炉で薪を燃やして調理するのだがその調整が結構難しいので、私は即座に魔法に頼った。
風を操って火の勢いを操作したのである。
これのおかげで美味しいご飯が出来る。
と、料理長さん達にカレーの事を説明しながら作っている時にふと閃いて、
「料理長さん、少し味見をしてみますか?」
「!!?よろしいのですか!?」
すごい食い付きだった。
「その代わり、この料理に合うサラダかスープなんかを作ってもらってもいいですか?他の料理人さん達にも手伝ってもらっても大丈夫ですし、レシピとお米の炊き方を簡単にお教えしますよ?」
私がそう言うと、
「「「「おおおおおぉぉぉぉぉ!!!?」」」」
何故か勝鬨が上がった。
「・・・・みんなどうしたのかしら?」
私が料理人さん達の様子にドン引きしていると、
「失礼しました、少し興奮して取り乱してしまいました。」
と頭を下げる料理長さん達。
「では、味見の方をさせてもらいます。」
そう言って出来立てのカレーを味見させると、
「!!!?これは!?旨い!!」
「ほら、他の人も少しだけね?」
そう言って私はみんなに味見用の皿にカレーを少しだけ盛り付け渡していく。
「一番大きい鍋にして正解だったわね・・・」
犬のように皿を舐める料理人達を見て私は呆れ気味に呟く。
「これは素晴らしい料理です!?どうか私を弟子にして下さい!?」
「私は冒険者なんだから、料理人さんに弟子入りを申し込まれても困るわよ、さっきも言った通りレシピは教えてあげるわ。ただそこから先は自分で研鑽を積みなさい」
私は困り顔で料理長にそう答えた。
「むぅ、仕方ありませんか・・・」
残念そうな顔で料理長は弟子になる事を諦めた。
「一応、母にこの話を教えておいてあげるから何か聞きたい事があるならウチに来ればいいわ」
「ありがとうございます!」
料理長さんは感激したように涙目で頭を下げる。
「しかし、お米ですか・・・こちらも味見させて貰っても?」
「いいわよ」
私は釜鍋を3つ、カレーを一番大きい鍋2つで用意している。
「ちょっと熱いし、この後に響くからちょっとだけよ?」
そう言って炊きたてのご飯を料理人の皆さんに配る。
「これは、これが今まで見向きもされなかった白麦なのか!?」
ホクホクしたご飯を口に含み、この様な食材を素通りしていた事に対するショックを料理長さんは受けていた。
「見てたと思うけどこの料理は薬草類を使っているわ、そして煮込む事によってより栄養を吸収しやすくなっている料理よ。具材を変える事でスパイスとルーの配合を変える必要があるけど、それだけ奥が深い料理だから研究は怠らないようにね?」
「もちろんです!」
そう言って私は料理長にレシピを渡す。
「これが今日作ったカレーのレシピね、意外と材料費がいい値段するから領主様と相談してね?」
私は注意事項を伝えながら、メイドさんの方を向く。
「料理出来たから、向こうの方を確認してもらえるかしら?」
「畏まりました。」
「それと、あなた達も食べてね?領主様にも言っておくから」
「あ、ありがとうございます!」
頭を下げて彼女は領主様の所に歩いて行った。
「さぁ、あなた達が作ったサラダやスープも盛り付けて晩餐を始めましょう!」
テンションが既に振り切れている料理人さん達が雄叫びを上げたのは言うまでも無い。
そして、私達は領主様や領主様のまともな方の家族と共にテーブルを囲い出来上がった料理を眺めている。
「これが今、この町で一番噂になっている料理か・・・」
領主様であるレアード様がそう呟いた。
「これは私も初めて食べるから、楽しみだよリアナ?」
アルフェリア王女が私に向かってそう言うので、
「さぁ、皆さん思い思いの事があるでしょうが、今だけは目の前にある一皿をお楽しみ下さい。」
「うむ、では乾杯!」
「「「「乾杯!」」」」
領主様がグラスを持ち上げ、音頭を取り食事は始まった。
「!?これは!?」
「美味しい!?」
カレーを食べた領主様一家は感動に震えた面持ちでカレーを味わう。
「料理長さんにレシピは渡してあるから今後も作って貰えますよ」
「!!?よいのか!?」
レアード様が驚いた顔をする。
「いいのです、この料理はもっと世間に広めたいので」
私がそう言うと、
「女神の子は、女神だった・・・」
「おぉ、神よあなたの慈悲に感謝します!」
領主様一家に拝まれた。
子供たちは、
「美味しい!野菜も一杯食べれる!」
と、野菜を食べれる事に感動しているようだった。
一方で静かな私の仲間達の方に視線を向けると、
「うまっ!?・・・バクっ!」
「「「バクっ!バクっ!バクっ!」」」
「・・・・」
グリスも結構男の子らしくガッツリと食べているけど、その傍で年頃の女の子としてどうだろうと言う勢いで私とアル以外の女の子が、がつがつとカレーを食べていた。
その様子に私は何も言えなかった。
「リアナちゃん、私にも後でこの料理を教えて貰える?」
ネイラさんは流石である。
「えぇ、なんだったまたウチに泊まりに来ませんか?」
「いいわね、じゃあ約束ね?」
「はい!」
ギルマスもしっかりとおかわりをしている。
使用人の人達も代わる代わる食べているようだった。
「リアナ、お金を払うから今度王城に勤める料理人達にもカレーを教えてくれないかな?」
「アル、只の冒険者にお願いする事じゃないわよ?」
集中してカレーを食べていたアルからそんな事を言われた。
「今度、行く事があったらね?」
「約束だからね!?」
アルに約束させられてしまった。
「女神様!このような素晴らしきお食事をありがとうございます!」
「女神様はやめて!?」
素晴らしき晩餐はこのように過ぎていった。
昨日の晩餐から一夜明け、私達領主館に一晩泊めて貰った。
本来なら昨日で済んだはずなのだが色々とあり、事情の説明が今日までズレてしまった為である。
「昨晩は素晴らしい一皿を提供してくれてありがとう、リアナ君」
どうにか領主様一家の女神様扱いを止める事が出来たようだ。
「だが、やはり私達はあなた方女神親子を信仰している、あの奇跡のような味を味わえた感動を忘れる事など私達にはもう出来ないからね」
元気になってくれればいいと思って作ったら、ちょっと元気になりすぎたようである。
私は心の中でため息をついた。
「レアード伯、そろそろ本題に入らないと不味いのでは?」
アルの言う通り、流石にこれ以上の時間の浪費は避けたい所である。
「そうだね、そちらが本題だったね」
領主様の重要事項を私は料理で上書きしてしまったようだ。
「まず、この度は私達貴族のつまらない争いに君たちを巻き込んでしまって申し訳なかった。」
レアード様は私達に頭を下げる。
「リアナ君、そしてその友である君たちは近年稀に見ない程優秀で才能豊かな宝物のように貴重な若者のようだ。そんな君たちのおかげで、愚かではあるが娘を助ける事が出来たその事も礼を言う、ありがとう」
頭を上げたと思ったら再び頭を下げて礼を言うレアード様に私はこう言った。
「レアード様、その件に関してはレアード様がしっかりと対応して頂いたので私達は気にはしておりません。」
「そうか、すまない」
「とりあえず、私達に何をして欲しいのかと今ファルト領がどういう状況なのかを教えて頂けますか?」
私がそう諭すと、
「まずは今の我がファルト領の現状から説明を聞いて欲しい。」
レアード様は重々しく口を開いた。
「まず、我が領にはダンジョンが2つ程存在するのだがそれはご存知かな?」
レアード様は私達にそう確認した。
「ここから東にあるグリューデン大深緑地帯にダンジョンの入口があってそのダンジョンを抜けた先にある竜鉄山脈にもダンジョンの入口があるという話は聞いた事があります。」
エルがそう答え、アカネとセナが驚愕の表情を浮かべる。
そんな二人をエルはバッチリと睨む先にはグレイもいた。
「まず、グリューデンのダンジョンで手に入るアイテムは主に食材や薬草類などがメインでオーク等も出るから肉類も手に入る、食材の流通には欠かせないダンジョンなんだ。」
そんな事を気にせず、レアード様は話を続ける。
「現在、町にいる冒険者はランクがCランクの者がほとんどなんだ。理由は周辺の領主達からの嫌がらせでね、今ある我が領のダンジョンは祖父の代で出来たモノで、ダンジョンとしてはかなり年季が入っている部類に当たる。だから結構な広さがあるんだ、それこそ攻略に一月、二月はかかるぐらいには・・・」
「グリューデンのダンジョンの攻略難度は現在どれくらいに設定しているのですか?」
レアード様は周辺の領主達の嫌がらせを告発しグリューデンのダンジョンの現在広さを説いた。
それに対して、私はグリューデンのダンジョン自体の攻略難度を問い掛けた。
「グリューデンのダンジョンは攻略難度はCランクだが、ここ最近は奥の方に入って行った者は皆無なはずだ。」
ギルマスが私の質問に答え、
「という事は、スタンピードとかそういうのが起こる可能性があるんですか?」
エルが少し青い顔をしながらギルマスに質問していた。
「いや、グリューデンのダンジョンはスタンピードは起きないよ、結構頻繁に皆狩りに行っているからね。」
レアード様の訂正にホッとした顔をするエルがいるが、私はもう一方のダンジョンの事を聞く。
「では、竜鉄山脈にあるというダンジョンの方は?」
「・・・・・」
私の質問にレアード様は沈黙した。
「君の読み通りだ、竜鉄山脈の方に足を向けた冒険者は皆無ではないだが、日増しに深くなっていくダンジョンに山脈を拝むどころか、グリューデンのダンジョンの最深部に辿り着く事すら現状では出来ていない。」
重々しく、そう告げるレアード様にアルが
「なら、私達がダンジョンの奥の奥まで辿り着けばこの問題は解決するね」
軽くそう告げた。
「・・・アル、ついてくるの?」
「アル様、流石に学校サボるのにも限度が・・・」
「あの、アルフェリア様、お気持ちは凄く嬉しいのですがここで貴女をダンジョンに行かせると私が王妃殿下に殺さ・・・オホンッ!?いや、お叱りを受ける事になるので先にそちらの説得をしてからダンジョンの方に入って下さいね?」
私とエルが呆れた目でアルを見れば、レアード様が結構本気で王妃様のお仕置きを恐れていた。
「本当の事を言うと、この状況はもう終わると思うのだが、先程言った探索時間の問題で事前調査が必要でね、早いうちに竜鉄山脈の様子が知りたいのだ、だからその調査が今回君たちに頼みたい仕事だ」
レアード様が王妃様の仕事っぷりにより周辺の嫌がらせをした領主達は何らかの罰を受ける事を確信しているようだった。
「その王妃様ってそんなに強いの?いや、アル様のお母様だから強いのはわかるんだけど・・・」
「あぁ、アカネは隣のヤマト皇国の人だもんね・・・マルディア・エクレール王妃殿下、通称、剣妃様と言われる国内外問わずに最強の一人として扱われている人ね。」
実際に会った事がある私が王妃様をこう説明する
「ライオス・エクレール国王陛下は魔法特化らしくって若い頃はマルディア王妃が前で敵を斬って、ライオス陛下が後ろから魔法でマルディア王妃の援護をするのがお決まりだったらしいわ、本人達から聞いた話だったしこの話は吟遊詩人なんかが歌にしてるから結構有名な話ね。」
「リアナ、ライオス陛下に会った事あるの!?」
エルがまた妙な所に食い付いた。
「マルディア王妃が剣を頼みに来る前にライオス陛下自らが交渉に来たみたい、誕生日のサプライズの一つだったんだって、で、その時にこう二人の馴れ初めを聞いちゃった」
「そうなのかい?私も聞いているけど結構メチャクチャな馴れ初めだよ?」
「あぁ、私も知っているな・・・ライオス陛下は当時は只の貴族でね、マルディア王妃とご結婚された時に婿として入ったお人で、若い頃から魔法の天才と評される程の凄いお方で当時から相当強かったんだ。正直、同年代はもちろんその上の年代の者達を含めて最強と言われていたのだが、アルフェリア様が今通っている学校に彼の後輩としてマルディア王妃が入った所から吟遊詩人達は歌にしているはずだね。」
レアード様がかなり細かい説明を私達にしてくれる。
「どんな風に恋に落ちたの!?」
エルが純粋な目でアルやレアード様に話をねだる。
「確か、入学早々にマルディア様がライオス陛下に勝負を挑んだのではなかったのですか?」
私がそう聞くと、
「そうだよ、確か入学早々に学校で最強と言われるお父様に挑みに行ったと言っていたね」
アルがそう答えて、
「私はマルディア王妃と同学年にいたのだがそれはもう酷かったね・・・学校の校舎が半壊以上なうえに周辺もボロボロ、最終的に勝ったのはライオス陛下だが、あれ以来ライオス陛下がマルディア王妃の勝負を受けた事は無いんだ。」
「?そうなんですか?」
「あぁ、流石にライオス陛下も校舎を壊したのは悪いと思ったらしくてね、卒業を早めて冒険者として活動してその稼いだお金を学校に寄付していたそうだ、ただ、マルディア様からすれば勝ち逃げだからね、こちらはこちらで一年で卒業資格を取って卒業してからライオス陛下を追いかけていったね・・・」
レアード様が懐かしそうに目を細める、校舎が壊れた辺りの話をしている時は目から光が消えていたが二人が卒業した後は平和な学校だったのだろう。
「確か、ライオス陛下がマルディア王妃にかなり不躾な事を言った辺りから互いに意識しだしたと私は聞きましたね」
「不躾な事?」
「確か、ライオス陛下がマルディア王妃の事を狂暴と言って」
「お母様がお父様の事を無愛想って言ったとかそんな感じだったかな」
「それで、口論になってお互いに本音がポロっと出ちゃって付き合いだしたらしいわよ?」
「うわぁ~、甘酸っぱ~い!?」
そこまで話をしたところで私達は脱線した話を戻す。
「とにかく、アルはこの仕事に参加したいのならマルディア様の説得は絶対!いいわね?」
「わかったよ・・・ついでに私も卒業資格を取って卒業してしまおうかな?」
「アルフェリア様、くれぐれもお城は壊さないようにお願いします。」
「・・・流石にこの剣じゃ荷が重いね」
「そこは否定しなさいよ!まったく、とりあえずウチで一振り、剣を打って貰うから行く前に私の家に来てね?」
私がアルの剣を用意しようとすると、
「泊まるのは昨日一晩だけにしてるんだ、この後、リアナの家に上がらせてもらうよ」
「そう、わかったわ」
アルはこのまま私の家に来るようなので祖父と相談しながら剣を作ってもらおう。
「それでは、色々と話が逸れてしまったが、こちらからの説明は以上だが、聞きたい事はあるかね?」
レアード様がそう聞いてきたので、
「特には、探索の方は準備が済み次第動きたいと思います。」
「わかった、よろしく頼む。」
レアード様にそう頼まれ、私達は仕事の準備を始めるべく領主館を後にした。
領主館を後にした私達は冒険者ギルドに来ていた。
「じゃあ、パーティー名は“竜の守護者”ね?」
ネイラさんに催促されていたパーティー名を登録する為だ。
「はい、それでお願いします。」
私は諦めた表情でそのパーティー名を肯定する。
「ふふ~ん♪これでまたリアナの伝説にまた1ページね?」
「エル~、わかってて提案したわね~?」
「ひゃあ、ここでそれはダメ~!?」
いつものやり取りにセナとアカネはいつも通りとネイラさんと話をしていると、
「グリス君?何してるの?」
「いや、もうちょっと人の目を気にして欲しいなって」
不意討ちを食らって少し顔を赤くしながらグレイは、精神を落ち着けていた。
「おい、見ろよ?あのボウズ、傍であんな事してんのに表情を変えねぇぞ!?」
「やつの心はオリハルコンで出来ているのか!?」
「だが、それを別にしても羨ましすぎる!?」
周囲の男達がグリスに妙な評価を持ち出した。
「・・・よかったね?」
「良くないわ!?」
セナがそう言うと、グリスは心外とはっきりと口にした。
「何よ~!?私のどこが不満なのよ~!?」
「いや!?そうじゃなくてだな!?」
すると、エルがグリスの反応がお気に召さなかったようで頬をプクっと膨らませてグリスに抗議して、グリスが凄い動揺してる。
「ハイハイ、イチャイチャしないの・・・」
「「イチャイチャなんてしてない!?」」
二人はいつの間に仲良くなったのだろうか?
「まぁとりあえず、グリューデン大深緑地帯にあるダンジョンの入口はまた後日に教えてあげるから、今日は一旦帰ってしばらくグリューデン大深緑地帯の情報とか集めたり、装備とか整えてからまた来なさい?」
ネイラさんがそう言うと、
「まぁ確かに私がいないうちにダンジョンに入られるとちょっと困るかな・・・」
アルが真剣な表情でその事を思案しながらそう言うと、他の受付嬢がアルを熱い視線で見蕩れている。
「はぁ、追いかけて来るのをわかっていて先には行かないわよ・・・」
私が疲れた感じに肩を落とすと、
「なら、いいかな?」
アルは満足気にそう頷いた。
「じゃあ、今日はもう帰ろうよ~?」
エルがそう言う後ろで、グリスが項垂れていた。
「エル、グリスの事をあんまりイジメちゃダメよ?」
「別にそんな事してないし!?」
「別にイジメられてないからな!?ただ、今度何か・・・ムガッ!?」
「わ~~ー!?言っちゃダメ~!?」
ちょっと注意しておこうと思ったらグリスがエルにラリアットされながら連れ去られ、凄い大惨事になってしまった。
私は心の中で、ごめんね?グリス、強く生きて・・・っと思って祈った。
「あっ!?リアナがまた失礼な事を考えてる!?」
エルが私の心を読んで何やらまた言い出したが、
「そんな事は無いわよ、さぁ、早く帰りましょ?ネイラさんもまた後日話を聞きに行くわね」
私がエルにそう誤魔化してネイラさんに声をかけると、
「わかったわリアナちゃん、こっちの色々な後始末が終わったら遊びに行くからね?」
「楽しみに待ってますね!?」
ネイラさんが楽しげにそう告げると、エルが期待した目をネイラさんに向ける。
「やれやれ、アカネ、セナ、二人もウチに泊まってね?試験に行く前に頼んだ拡張工事が終わってるはずだから、ちゃんと二人の部屋も用意出来てるはずよ」
「・・・いいの?」
「リアナはもうそのつもりみたいだから、いいんじゃない?正直、リアナの家に泊まると安宿とか泊まりたくないし・・・」
「確かに・・・」
アカネがいいのか迷っていると、セナがウチに泊まる利点を説いてきたのですぐに納得していた。
「二人はウチのメンバーなんだから当然じゃない?」
そう言って私は歩き出す。
「とにかく、帰ってお祝いしましょ!?」
「「「おぉ~!!」」」
「やれやれ、まだお昼過ぎなんだが・・・」
元気な女子に囲まれてグリスがこっそりとため息をついた。
家に帰った私達が見たものは、
「なにこれ?」
「鍛冶屋の後ろに何か更に家が建ってるね?」
「パーティーメンバーは、何人増やすつもりなの?リアナ?」
「これは、お風呂は期待してもいいのではないだろうか?」
アカネ、セナ、エル、そしてアルの順番で現在の我が家の外観を見て感想を述べると、
「あら?お帰りなさい」
母がご飯を用意しながら待っていた。
「やっぱりアルも来ていたのね?マールにはちゃんと行き先を言ってあるのかしら?」
母はアルの母親と友人で、親友とも言っていい間柄である。
私の母親であるリールは、アルの母親の事をマールと呼び、アルの母親であるマルディア様は、私の母親をリルと呼ぶ、かなり気安い間柄なのだとか。
「母上の許可はちゃんと取ってあります、リールおば様もお元気そうで何よりです。」
「ふふっ、今日は腕によりをかけてお料理を作るから期待してね?」
「リールおばさんの本気料理!?」
アルが母に挨拶をしていると、エルが母の一言に反応した。
「エル、ちょっとはしたないよ?」
アカネがそう言うと、
「そんな事ないよ!?あのリールおばさんの本気料理なんだよ!?どれくらい美味しい料理が出来るのかわからないぐらい美味しそうな料理が出てくるのかわからないんだよ!?」
「エル、言ってることちょっと意味不明」
興奮し過ぎてエルが壊れだした所でセナが冷静にエルにツッコミを入れる。
「とりあえず、お風呂に入らない?」
私はそんなエルを放置して皆にお風呂を提案する。
「「「賛成~」」」
「・・・はっ!?さ、賛成!?」
アカネとセナとアルは賛成に1票入れて私とともにお風呂場に向かい、エルはワンテンポ遅れて正気に戻ってついてきた。
「うわぁ~、下手すると私の城のお風呂より立派じゃないかな?」
服を脱いで一緒にお風呂に入ったアルの声が響く。
「行く前よりお風呂がデカくなってるんだけど・・・」
「・・・大きい事は良いことだ、深く考えてはいけない・・・」
アカネとセナが我が家の立派すぎるお風呂に驚きを禁じ得ないようだ。
「これ、もう泳げるんじゃない?」
「エル、ちょっとはしたないわよ?」
遂には泳ぐと言い出したエルを私は嗜めた。
「アル、背中を流してあげる」
そう言って私はアルを座らせ、
「ひゃあ!?」
勿論イタズラした。
「リアナ!?脇は!?脇はダメ~!?」
「そんなにくすぐってないよ?」
「ひゃん!?」
面白いぐらい反応するアルを尻目に、
「リアナの家の石鹸は良い匂いだね~」
「これは薔薇かな?」
「それは髪を洗った後に使うやつだよ~、トリートメントって言うんだって」
「これつけると、あまり香水をつけなくても大丈夫かもね?」
他の3人はシャンプーとトリートメントを堪能していた。
「・・・リアナ、よくこんなのを作ったね?」
「錬金術に不可能は無いわ!」
そう、錬金術で苛性ソーダを作って石鹸を作ったのである。
「水や香油の量を調整して、香りや使いやすさもバッチリよ!」
そう、私の中にある前世の記憶にある石鹸を元に試行錯誤して作った作品である。
「ドワーフの女に不可能の言葉は無いわ!」
燃え上がる情熱に身を任せながら私はタオルで身体を隠す事もせずに仁王立ちをする。
「・・・良いなぁ・・・」
「・・・セナ?」
「・・・確かに、あの大きさはちょっと憧れるよね?」
「・・・少し反撃しても良いよね?」
セナが羨ましそうに私を見れば、アカネがセナに声をかけて、エルが代弁し、アルが不穏な事を口にした。
「ほら?身体も洗ったし、湯船に浸かりましょ?」
正気に戻った私は皆を湯船に誘う。
「はぁ~♪」
皆で極楽を堪能してお風呂を上がった。
お風呂から上がると、そこにはホカホカしてるグリスがいた。
「やっと上がったか?」
ちょっと呆れ気味にグリスはそう言った。
「そこまで長かった?」
エルがグリスにそう聞くと、
「俺より20分は長かったな」
「?どこのお風呂に入ったの?」
アカネが疑問を口にすると、
「リアナの家って、男湯もあるんだな・・・」
グレイは呆れた視線を私に向ける。
「だって、お風呂1個しかないとゆっくりと入れないじゃない?」
私も流石にどうかと思ったから、私は少し唇を尖らせて拗ねたように言い訳した。
「まぁ、気持ち良かったから良いと思うけどな」
諦めたグリスがそう言った。
「ほら、椅子に座って?ご飯を食べましょう?」
母から、未だに立ちっぱなしな私達に声をかけられたので、それぞれ椅子に座った。
「今日はハンバーグとかコロッケとか色々と作ったからいっぱい食べてね?」
母がそう告げると、
「八神の恵みに感謝を」
「「「「「いただきます!!」」」」」
食事前に祈りを捧げて私達は食事を始めた。
「まずは、ハンバーグから・・・はむっ!?」
「・・・!?噛む度に肉汁が溢れ出してくる!?」
「お米との相性もバッチリだわ!パンと一緒に食べてもイケる!というかパンもめっちゃ美味しいんだけど!?」
まず私とセナとアカネは、恐らくこの世界初のハンバーグを食べてその美味しさに酔いしれていた。
「じゃあ俺はこの、コロッケとやらを・・・!?」
「うわぁ~、外はサクサクしてて中の具はホクホクしてる!?このソースの味も酸味と甘味のバランスが絶妙!」
「このオムライスと言う料理も良いね!この赤いソース、ケチャップと言うだっけ?の酸味がバターの風味とよくマッチしているし、中のご飯はガーリックと塩コショウの風味が一段と感じられて病みつきになってしまうよ!?」
グリスとエルがコロッケの食感を楽しみ、アルはオムライスの食べやすさに驚いていた。
「ふふっ、おかわりはいっぱいあるわよ?」
「「「「「おかわり!!」」」」」
食べ盛りな私達は、食べ過ぎなぐらいに母の本気料理を堪能した。
翌朝、私はアルと一緒に祖父の所にいた。
「確かにそろそろアル嬢ちゃんにも剣を打ってもいいかもしれないな」
祖父は立派すぎる自らの髭を撫でながら、しみじみとそう言った。
「本当ですか!?」
アルは祖父に認めてもらって嬉しそうだ。
「おじいちゃん、私にも手伝わせてね?」
私は祖父にお願いする。
「よいぞ、しっかりと見て覚えるようにな?」
「うん!」
私が笑顔で返事すると、
「ふぉぉ~~!!」
祖父のテンションが急に爆上がりした。
「今すぐ取り掛かりたい所じゃが、リアナに情けない仕事は見せられん!明日には仕事を始めれるように準備をしておく故にどのような剣がよいのか今のうちにアル嬢ちゃんはワシに教えよ!」
素晴らしい熱意を秘めた眼をアルに向けて祖父は矢継ぎ早に質問をしていくが、
(これ、1時間じゃ終わらなそうだな~)
私はそう判断すると、二人に一声かけてから最近作り始めた小物類の製作に入る。
「指輪のデザインも凝って作ると納得できる出来のやつが中々作れないわね~」
この世界の指輪は、はっきりと分かりやすく言うと只のわっかに宝石をくっつけた物が多い。
私はヤスリを手に持って指輪の外側を削り、紋様を彫っている。
「でも、中々上手くいかないのねぇ~・・・」
頭にはこういう形にしたいというイメージがあるのに、道具が一種類しか無いのがこの問題に拍車をかけている。
「無いなら作るしかないか・・・」
私はそう呟き、指輪作りを一旦止めて魔道具製作に取り掛かった。
翌日、魔道具の設計図を携えて私はアルの剣を作る手伝いをする次いでに、祖父に新たに製作する魔道具の設計図を見せた。
「どう?おじいちゃん?」
「ふうむ、これはまた画期的な魔道具じゃのう・・・」
私が設計図に書いたのはペン型の小型万能ドリルのような物だ。
用途に応じて先端に付いているドリルをその時々のシチュエーションに合わせたパーツに取り替えて使用できる物を設計してみた。
ドリル一つにしても様々なサイズを揃える事で削る幅を調整できる事でより綺麗にイメージ通りに彫刻できる。
「これはアル嬢ちゃんの剣を急いで打たねばなるまい・・・」
我が祖父はアルの扱いが雑である。
「おじいちゃん、手抜きはダメだよ?」
私は一応釘を刺す。
「心配しなくても準備は万端、仕込みも十分じゃ!後は仕上げを魅せるのみ!」
祖父の笑顔から歯が輝いて見えた。
「では、そろそろ・・・」
空気を読んだアルが祖父に声をかける。
「うむ、始めようか!!」
そう言って祖父は材料を一つ一つ順番に炉に入れていく。
それにより室内は高温となり熱気に包まれる。
「これが、世界一の鍛冶師の仕事場か・・・」
額から溢れる汗を手で拭いながらアルはそう呟く。
「まだ始まったばかりだよ、アル」
そう言って私は祖父の手伝いを始める。
「おじいちゃん、こっちは準備オッケーだよ!」
「うむ、ではまずは溶けた鉄を炉から流すぞ!」
そう言って炉の口を開けると、更なる熱気と共に溶けた鉄が流れ出てくる。
流れ出た鉄はやがて冷えて固まっていく。
流れ出た全ての鉄が固まったら祖父はハンマーを振り下ろし、固まった鉄の塊を砕く。
すると外側のくすんだ鉄が割れ、中の綺麗な鉄が中心に残る。
そして、くすんだ鉄を再び炉で溶かして口から流して、また砕く。
そうして鉄の中にある不純物を取り除き、純粋な鉄のみを手元に集め、その純粋な鉄を別の炉で熱して溶かす。
そして、今度は溶かした鉄を長方形の型に流し込み蓋を閉じて水で冷やす。
冷やして固めた鉄は一旦ここで置いておき、今度はまた別の金属を鉄の時と同じ手順で溶かして砕く。
しかし、鉄の時とは違い不純物でも中々砕けない。
だから念入り叩いて不純物を取り除いていく。
この硬い金属の名は、アダマンタイトという世界で4番目に硬い金属だ。
またの名を黒鉄といい、これを自在に加工が出来るようになって初めて名工と呼ばれるようになる。
「まずは純粋な部分を取り出してその後に混ぜて、合金を作る。」
その合金の名を、ブラックスチール合金という。
「この合金の強度は、オリハルコンには劣るが純粋なアダマンタイトよりも硬い金属になる上にそれなりの柔軟性を持った金属に仕上がる。更には魔力の伝導率もミスリルに匹敵する、正に上質な金属よ!」
祖父は実に楽しそうに解説しながら鍛造の準備に取り掛かる。
「フッフッフッ、こうやって剣を打つのも実に久しぶりじゃわい!血が滾りおる!」
そして、鎚を手に取り、
「どっせい!」
鎚が青白く光らせながら鉄を叩いた。
「よし、嬢ちゃんもそこにある鎚でこの鉄を叩け!」
「えっ!?」
アルは驚いた顔をして、
「アルの剣だから、アルの魔力が必要なのよ。」
私がそう説明すると、
「わ、わかった、魔力を込めながら叩けばいいんだね?」
ガァン!!と重い音を響かせながら鎚を叩きつける。
「うむ!よい感じじゃな!よし、リアナ!出番じゃぞ!」
「は~い、アルの背中から私の魔力を流すからアルはそのまま剣を鎚で叩いてちょうだい。」
「うん、わかった!」
するとアルの魔力が紅く輝きながら剣に宿り出した。
「いい感じ!そのまま続けて!」
「つっ!?これ!?けっこう、キツイ!?」
アルが苦しそうな表情で鎚を叩きつける。
「儂が形を整える!お前さんは全力で鎚を振るえ!」
アルが鎚を叩きつける度にまるで生き物のように剣の形になっていく。
「最後じゃ、思いきり行け!」
「ッはぁ!」
祖父の掛け声にアルは応え、鋭く呼気を吐いて鎚を振り下ろした。
ガァァァン!!?
「アル!?」
最後に全力で鎚を振り下ろしたアルはさすがにもう立っている事も出来ず、後ろから私が支える。
「ふむ・・・見よ、これから研いで磨き、拵えを整えると完成じゃ、嬢ちゃん、いやアル、お主のおかげで見事な剣を一振り作れたわい!」
祖父は満足気に剣を眺め、アルを褒めた。
「後の仕上げは儂とリアナでやるからアル嬢ちゃんは風呂にでも入るといい、よし、リアナ出番じゃぞ!?」
「オーケー、おじいちゃん!アル、ゆっくりして待っててね?」
私はオリハルコンの砥石を手に剣を直接研ぐ。
「相変わらず、メチャクチャじゃのう・・・」
「だってこっちの方が綺麗に鋭く研げるんだもん。」
私は火花を散らしながら砥石で剣を研いでいく。
綺麗に研いで剣身を磨いた所で祖父に渡す。
「よし、この拵えを付ければ完成じゃ!」
「今回の拵えは、何の木材なの?」
私がそう問いかけると、
「エンシェント・トレントという地上にいてはダメなモンスターじゃ、ダンジョンの中から出てきた日には少なくとも3国は力を合わせんと仕留められんじゃろうな。」
「アル、腰抜かさないと良いけど・・・」
あまりの希少素材にアルの反応を心配した。
「何、心配するのはこの剣を見た親の反応よ、自分の剣よりもいい出来なんだからもう一本打ってくれと来るかも知れんな?」
がッはッはッと笑う祖父に私は何も言えなくなった。
その晩、夕食の後にアルに剣を手渡した。
アルはあの後、お風呂に入りそのまま部屋で寝てしまったようだ。
「ご飯の時間まで寝てしまうとは、ちょっと恥ずかしいな・・・」
「魔力を限界以上に使ったんだから当然だよ、それよりどう?」
「うん、よく手に馴染む、いい剣、いや素晴らしい剣だよ!」
剣を抜き、剣身を眺めながらアルはそう言う。
「とりあえず明日1日は休んで出発は明後日にしなよ?」
「わかってるさ、さすがにそんな無茶はしないよ。」
「後、剣を振ったらもう1回お風呂に入ってね?」
「一応、これでもちゃんと女の子だからね!?それくらいはちゃんとするよ!?」
アルが少し赤くなりながら抗議してきた。
「そう言うならリアナにも付き合ってもらおうかな?」
アルがニヤッとしながら私の腕を掴む。
「えっ!?いや私今日はもうお風呂に入ったし・・・」
「いつもみたいにいっしょに入れば大丈夫だよ!」
「ちょっ、エル助けて~~~?!」
「行ってらっしゃ~い(敬礼)」
「覚えておきなさいよ~?!」
高笑いしながら私を引きずっていくアルに逆らえず、私はアルと夜遅くまで手合わせを行った。
次はエルも連れてこようと思った。
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