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26 精霊王の指輪

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 名も無きメイドに連れられて大きな部屋へと連れて行かれた。
 お召し物をお脱ぎくださいといわれたので、その通りに脱ぐ。
 
 私より年上のメイドが頭を下げて体を拭くのだから少し恥ずかしい。
 途中からはタオルを借りて自分で拭いた。
 渡された衣服を着るも……胸元が強調される服が多い。

「申し訳御座いません、ゲスト着でサイズが会うの物が無くて」
「え、いやいいわよ別に。ただお辞儀するとこれ、見えるわよね?」
「はい……」

 巨乳用のワンピースなのだろう、お辞儀をすると、中身が見える。
 ついさっきディーオに注意されたばっかりだしなぁ。
 この格好で出て行くと何言われるかわからない。

 さて……仕方が無い、帰ろう。

「と、いう事で流石にこの服のまま戻れないし帰ります」

 メイドさんは驚く顔をしたけど、主人へとお伝えしてきますと出て行った。

 広い部屋で考える。
 リュートの許婚ねぇ……私にかかってきたマギカの事を考える。
 まさに悪役令嬢と言った行動だった。

 昔の私もあんな感じだったようなきがする。

 悪役令嬢といえば、どうもこれ乙女ゲームに近くなってるわよね……。
 そもそも、ナナの錬金術師は乙女ゲームと似てるようで違う。

 恋愛対称はリュート。

 友情系で、道具屋のミーティア。

 武具ルートは、おっさんだ。

 冒険者ルートは、ソロで旅をしたり、とお城でちらっと顔を見たアマンダさんと一緒などがあったはずだ。

 なんでキャラが少ないのかというと、ゲームが古いからだ。
 錬金術師シリーズはその後も舞台や設定、時代を変えてどんどん発売していくが、ナナの錬金術師はシリーズ二作目の作品。

 この世界で生きていくと決めた今、私はどうするべきなのか迷う。
 錬金術師になれって決まってからは、予定ではがっぽがっぽアイテムを作って、がっぽがっぽ儲けるつもりだったのに。


「そういえば、ナナの錬金術師もナナは目的があったけど、周りは無いのよね。
 特に私エルンに居たってはナナを虐め抜く事に生きがいを感じてたし。
 昔のゲームだからって手を抜きすぎよね」
「では、どうされたいんです?」
「そこが問題なのよね。私としては楽に暮らしたい!」
「では、結婚なさればいいのに……」
「結婚ってもまだ表面上は十六よ、それに学生だし……」


 ちょっとまて、私は誰と会話してるのだろう?
 私の会話に付き合ってくれたほうへ向くと、エレファントさんが困り顔で立っていた。

「ぬおおおおおおおお!」
「ど、どうしたのっ!?」
「い、いつからそこに」
「いつからって、エルンさんがゲームだから手を抜くとかなんとかの時に、声をかけましたけど」

 気づかなかった、そういえばあのメイドさんはエレファントさんに知らせてくるって言ってたわね。

「あの、とりあえず帰ります。あまり大胆な服を着ると煩い男がいるので」
「まぁまぁ、確かにリュートが見たら倒れそうかもね」
「あはは、まぁリュートの事は置いておいて、父が正式に婚約破棄の書状を送ったと思うので」
「残念ながら来ましたわ。エルンさん素直に聞きますわ。弱小貴族の嫁は嫌だったんですか?」
「そういうわけでは……そのリュートには私よりもいい人が居ると思って、私と付き合うとお互いに不幸になるというかそういう感を」


 エレフェントさんは黙って私を見ると、表情を崩す。
 諦めにも似た顔だ。


「ランバート家に不利な事は一切無いと書状も貰ってます。
 私の持病の薬、そして今回の不手際、あの子はその、親戚の子でして。
 いくらお礼をしても足りないぐらいですね」
「いやいやいや。まぁその適当な貴族なので」
「これをお詫びにお送りしますわ」

 エレファントさんは私に一つの箱を手渡してくれた。
 中を開くと指輪が入っている。
 銀色の指輪で見ようによっては結婚指輪にも見えた。

「なんだが結婚指輪みたいですね」
「ええ、そうですよ」
「「…………」」


 私は箱を閉じると、エレファントさんへと押し戻す。
 ちなみに結婚指輪は婚約指輪と違い、普段夫婦でつけるものだ。


「あらあら」
「婚約を破棄した今受け取るわけには……」
「面白い子ですね、噂と全然違いますし。
 元結婚指輪と言ったほうがいいでしょう。この指輪は普通のと違って特別な指輪なんですよ。例えば……西の精霊ちゃんに会う事ができますの……」
「ええ! 精霊の眼鏡や精霊の手袋、精霊の小瓶が無くてもいいんですかっ!?」


 精霊ちゃん、光るもの、特に金貨が好きな精霊で平たく言えば森の幽霊みたいなものだ。
 ぬいぐるみなどに憑依すると、調合や掃除などを手伝ってくれる。

 精霊の眼鏡は精霊を見るための物。
 手袋は触るのに必要なもの。
 小瓶は捕まえるもの、小瓶は友好じゃない精霊用だから使う事は殆どないけど。


「さすが錬金術師ですわね、もう作れる人が居ないと思っていた道具の名前まで」
「でも」
「本当はリュートが結婚した時に送ろうと思ったのですけどね、婚約は破棄されますし。
 それに、貴女に送るのが一番な気がして。
 リュートの嫁になる方にはまた別な物を御用意しますわ」
「いやでも、そんな貴重な物を……エレファントさんは使わないんですか?」
「ええ、使わなくても


 物静かな言い方に部屋の温度が一気に下がった気がする。
 銀色の髪から長い耳が見え隠れするような錯覚なのかな。


「あらあら、ごめんなさい。で、受け取って貰えるかしら?」
「え? あ……ありがとうございます……」
「では、帰りの馬車の手配してくるわね」


 エレファントさんは部屋から出て行った。
 私は黙ってその指輪を見つめポケットにしまった。
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