グラン王国の錬金術師 if 悪役錬金術師に転生してました!

えん水無月

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36 そりゃ名前って言ったらアレね

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 応接室のテーブルにはカラスが乗せられている。

 あの後、騒動を聞きつけて部屋に入ってきたノエと、後ろから熊のぬいぐるみを抱きかかえ走ってきたナナに事情を説明した。
 気まぐれに餌を上げようとしたら、光物が好きなカラスが精霊ちゃんの小瓶を飲み込んだと。

 そのカラスは私の渾身の一撃によって死んだ。
 私の気まぐれで殺してしまったのは罪悪感がありまくる。と、思っていたんだけど……ナナがゆっくりですけど心臓うごいていますよと。
 という事で、場所は応接間に戻って逃げないように足に紐を巻いて観察している。

「精霊の小瓶を飲み込んだんですよね?」

 確認してきたナナの言葉で私はそれに答えた。
 どうやって取り出そうかしら。

「そうね、困った事に…………懐かしさのあまり餌なんて上げようとおもわなければよかったわ」
「動物にごはんをあげるのは、優しいと思いますっ! でも、懐かしいって……」

 
 そうよね、懐かしさも何も無いわよね。

「昔の話よ、小さい時の思い出。それよりもカラスは光物が好きだって話が本当だったとはね」


 おじょうさまーと、ノエが入ってきた。
 手には白い手袋と腰には何か小さな袋が入っている。

「ナナさま、言われた物を持ってきました」
「あれ、ナナ何か頼んだの?」
「はい、このカラスさんはエルンさんの大事な精霊の小瓶を飲んだのですよね」
「そうね」

 先ほどから逆さにふっても何しても小瓶は出てこなかった。
 ナナはノエから受け取った袋から手袋を取り出す。
 それを身につけると、次にサビがあるなたを取り出した。

「鉈?」

 私の疑問にノエが、
「はい、サビたので研ぎ師さんに渡そうと思っていた物です。ナナさんが要らない鉈を下さいと言われて」
 と教えてくれた。

 ナナは鉈を手にもつと大きく振り上げる。
 ちょ、まったまったまっ!

「った、まったまった!」

 ナナは私の言葉を聞いて振り下ろした鉈の起動を無理やり止め、鉈はカラスの数センチ前で止まる。

「エルンさん、なんでしょう」

 不思議そうな顔で私を見てくる。

「……首落とすの?」
「はいっ! 首落として内臓を切ればエルンさんの大事な精霊の小瓶も取り出せます!
 本当は良く切れるほうが良いんでしょうけど……解体した後の鉈を使うのは困ると思って」

 満面の笑みで言うナナ。
 ちょっと、いやかなり怖い。

「その、生きてるのに殺すのはちょっと……」

 小動物のスプラッターで倒れるほど可愛い性格じゃないけど、自ら好き好んで見たいとも思わない。


「その、ナナはそういう解体とか平気なの?」
「はいっ! 最初は怖かったですけど、最近は慣れて来ました」

 いやいやいや、虫も殺せないような可愛い顔なのに。
 んーーでも、錬金術師としてはそういう者なのかな。こうもりの爪とか、草原イノシシの肉とかも素材に合ったわよね……。
 そんな思いとともに、最近は一人でも解体でるのが増えてきました! と報告してくれた。


「ひゃっ!」

 突然にお尻をぷにぷにと触られた。
 振り向くと、ぬいぐるみが私の尻をぽんぽん触っていた。

「エルンさん、可愛い悲鳴です!」
「と、突然触られたら変な声もでるわよっ」
「おじょうさま、可愛いです!」
「あーもう、ノエまで。で、何?」
「くまたんどうしたの?」

 
 そういえば、くまたんっていう名前だったわね。
 そのぬいぐるみであり精霊のくまたんは私とナナに向けて腕をクロスさせた。
 両手でバツ印を作る格好である。

 精霊ちゃんの主であるナナは、くまたんに向かって、
「くまたん、カラスをから小瓶を取り出すなって事?」
 と尋ねた。

 くまたんは無言で頷く。
 次にテーブルへとよじ登り始めた。
 腕をぐるぐると回すと、カラスの体をポンポンと叩く。

 叩く。

 叩く。

 起こしているのかな? 叩く、あっ殴った。

 カラスの首がビクッと動くと、くまたんの動きも止まった。
 突然にくまたんが吹っ飛んだ。

 なんと、くまたんは空中大回転を決めると綺麗に着地した。
 腕を動かして問題ないと意思表紙している姿は、かわいすぎる。

 ・・・・・・コロコロコロ。

 ん?
 私は足元に転がってきた小瓶を拾い上げた。
 それは精霊ちゃんが入った小瓶であり、今は空き瓶だ。

 急いでカラスを見ると、私たちがつけた足紐を器用にクチバシで突いて解く。
 大きく羽を広げたと思ったら、カーと大きく鳴いた。

「え。もしかして…………私の精霊ちゃんって」

 カーっ!

 カラスは嬉しそうに鳴くと、私の肩へと羽ばたき乗ってきた。
 吹っ飛ばされた、くまたんが、ゆっくりと歩いてくる。
 無言で喋れないのに怒っているように見えるのは気のせいか。

 いや気のせいじゃなかった。
 カンフーの達人さながらの準備運動を見せた後、私の肩に乗っているカラスへと腕をクイクイと二回折り曲げる。
 かかって来いの合図だ。

 カー! と鳴いた後にカラスは大きく羽ばたいた。
 その攻防はまさしく竜虎の戦いだ。
 薄っすらとカラスのほうには竜、くまたんには虎のオーラが見えるようだって止めないとっ!
 羽は飛ぶし、飾ってある小物などが床に落ちる。
 ノエなどは青い顔をして食器棚を押さえ始めた。


「いい加減に……」
「くまたんっ……」
「「辞めなさい!!」」


 私とナナの声が響くと二匹?は攻防をやめた。
 カラスは私の肩へと乗って小さく鳴く。
 くまたんもナナの胸にしがみ付き、泣いたようなしぐさをする。それを見たカラスはあざ笑うような声でまた鳴いた。

 何でわかるかといえば、何となくカラスの気持ちがわかるのだ。

「こ、こらっ!」
「カァ……」

 くまたんのほうも、ナナから離れるとブンブンと腕を回す。
 ナナはくまたんを軽く怒る。

「くまたんっ!」

 おお、くまたんが反省したポーズを取っている。

「エルンさんごめんなさい……くまたんが暴れて」
「え? いいわよ。暴れたのはこっちの……」

 カラスを見る。
 耳元でカーカーと鳴くので煩い。
 そうね、精霊ちゃんと呼ぶのもしのびない、名前をつけてあげないと。
 よしっ!

「カー助でいいわね」

 私の名づけにノエが手を叩いて喜んでくれる。

「いい名前と思います! でも、何ででしょう? カー助ちゃんが嫌がっているような」


 ああん? 名前に不満があるのか。
 カー!? カーカーカー!!?? カッカッカカカカカカーア!!!
 耳元で抗議してるけど、私カラス語なんてわからないもーん。
 わかるのは、こいつが精霊ちゃんの元を飲み込んで憑依した精霊ちゃんというぐらいだ。

「決定だから」
「カァ……」
「というわけで、改めてナナ紹介するわ。これが私の精霊ちゃんみたい」

 私がもう一度言うとカー助は小さくカァカァと鳴いた。
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