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69 親切だけど居心地の悪い屋敷
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アクアの港町。
漁港と小さい貿易が盛んでグラン王国の小さな玄関と私は習った。
とりあえず町中にある小さいカフェで旅の疲れを癒したあと、領主の館まで行った。
やる気の無い門兵に紹介状を見せると、慌てて奥へと走っていったのを見送る。
「大きい家よね」
領主の家は丘の上にあり、建物はコの字になっていた。
部屋数だけでも数十はありそう。
「にゃは、着たみたいよ」
アマンダが言うと、屋敷から白髪のお爺さんが走ってくる。
玄関から門まではざっと二百メートルはある、そこを全力で走ってくるのだから可愛そうにも見えた。
「はぁはぁはぁはぁ……え。エル、エルン・カミューラ……ヌ様はど、どちらで?」
「私ですけど」
「これはこれ、げっほげほ。お美しいごほごほ」
「あのー、落ち着いてから喋ってもらえば……」
白髪のお爺さんは、私の言葉に頷くと、深呼吸を何度も何度も繰り返す。
「ふうー失礼しました。当主のマギナ・コンタルと申します」
「え、執事じゃないの!?」
「何をもうされます、エレン・カミュラーヌ様をお迎えするのに執事など使ってはコンタル家の恥でございます。ささ」
当主のマギナさんが手を叩くと、背後の玄関から赤い絨毯がスルスルスルと伸びてきた。
丁度私の手前まで伸びると、マギナさんがどうぞ! と頭を下げた。
「どうぞって、そこまで歓迎されるほどの身分でもないんだけど……」
「何をおっしゃいます! カミュラーヌ家といえば、今やグラン王国を支える大貴族。さらにその御令嬢といえば、王や王子に信頼され異国へと見聞の旅に出られるとお聞きします。現に護衛の騎士どのは、女性ながらその腕は未知数と呼ばれる銀髪の紅剣アマンダ氏。
町中を上げてパレード出来ないのがもったいのう御座います」
いやいやいやいや。
町中上げてパレードなんてされたら、恥ずかしさで引きこもるわよ。
しっかし、アマンダが銀髪の紅剣ねぇ、有名なのかしら?
もう一度どうぞどうぞと言われて、仕方がなく赤絨毯の上を歩く。
その一歩斜め後ろにアマンダと反対側に当主であるマギナさん、どっちも絨毯の上ではなく整地された土の上を歩いている。
なんだこの待遇は……。
屋敷に入ると数十人のメイド達が頭を下げている。
誰も喋らなく逆に怖いんですけど。
「今晩はどこかにお泊りで?」
「え、いやまだ宿は取ってないけど……」
「そうでしたか! では、特別な部屋を御用意しておりますので」
「いや、悪いわよ」
「何をおっしゃいます! 是非にこちらにっ!」
鬼気迫る顔で私に話しかけてきた、おもわず頷くと、ほっとした顔になり部屋に案内される。
通された部屋は広かった。
いや広すぎよ。元は二部屋あったと思われる、だって壁をぶち抜いた後があるもの。
「狭すぎて申し訳ありません。しかし、港にいってもこれ以上の部屋は早々無いと自負しております。どうぞ、どうぞ船の出る日までごゆっくりお過ごしください」
「え。広すぎるぐらいだし。まぁ……そういうのなら。でも迷惑じゃないの?」
首が壊れるほど横に振って否定してくる。
「紅剣アマンダ様もご一緒でよろしいでしょうか?」
「エルン様の護衛ですので」
あ、いつものにゃはーじゃない。
まさに猫被ってるわね。いや普段が猫だから、ああもう何て言ったらいいのかしら。
「では、お食事の御用意をしますので暫しお待ちを」
バタンと扉が閉まると、足音が遠ざかる。
「なになになにこのくうもごもごもご」
私が叫ぼうとすると、アマンダの手が直ぐに口を封じた。
「ぷはっ、わかったわよ、静に喋りますー。歓迎されてるのはわかるんだけど、何かピリピリしてない?」
「にゃはー、でしょー。城に居たらいつもこんな空気よ。ぐったりにゃー」
「まっ、数日で終わるにゃよー。船のれば貴族扱いも終わりー」
そんなものなのねーと、アマンダへ言ってから、私は豪華なベッドへと倒れこむ。
廊下を誰かか走ってくる音が聞こえる。
「あー誰かか走ってくるわね。はしたない」
「にゃー、エルンちゃんは走った事ないの?」
「とうぜん、あるわよ」
ベッドの隣にある椅子で腰掛けているアマンダと小さい声で掛け合いをすると、部屋の扉がノックされた。
「はいはいー」
「お、おしょ。お食事の御用意が出来ました」
「今行きますー」
◇◇◇
この食事を一言で言えば『お通夜』だ。
食事は確かに凄い、焼き魚に、魚の煮付け。エビや貝などもあり、それに飽きたらお肉もどうぞと食べきれないほど並んでおり、高そうなワインまで置いてある。
私が上座に座り、アマンダは食べずに横に立っている。
私から見て右手の席にはマギナお爺さん。
左手の席には息子夫婦と紹介されたスラングさんと奥さんのアケミさん。
三人とも笑顔で話してくれるけど顔が引きつっている。
そんな楽しい食事会にもかかわらず、場の空気が重いのだ。
「ささ、エルン様はお酒がお好きと聴いております、この年代ものの……」
「ありがとう……でも、もうお腹一杯で」
「ななななんと! 食事が口に合わなかったでしょうか!」
「いいえ、凄いおいしいですよ」
味は美味しいわよ。空気が美味しくないんだって、マギナさんもわかるでしょうに、息子の嫁さんであるアケミさんとかもう、空気に耐え切れず泣きそうになってるわよ。
ドンドン。
放すでござる!
いけません、坊ちゃまっ!
どんなお客でござる? 美人でござるか? ちょっと、ちょっとだけ覗くだけだから大丈夫でござるよ。
そういう言葉が聞こえてきたと思うと、突然にマギナさんが立ち上がる。
同時に食堂の扉が開かれた。
「扉が壊れたでござる。やぁ、父上に兄上。おや、義姉上も随分お顔が暗い。噂の我侭を通す悪役令嬢を見に行ったつもりがアクアの町に戻っていたでござる、とりあえず父上殿に知らせようと。お客人、これは用こそアクアの町へでござるよ。
おや? そのこ顔がちょっとケバイお嬢さん、どこかでお会いしたでござるかな?」
人もどき。いや、数時間前まで一緒太った男が笑顔を見せると、当主のマギナさんが、この家も破滅だと言って口から泡を吹いて倒れた。
え? 何がどうなってるのよ!
アクアの港町。
漁港と小さい貿易が盛んでグラン王国の小さな玄関と私は習った。
とりあえず町中にある小さいカフェで旅の疲れを癒したあと、領主の館まで行った。
やる気の無い門兵に紹介状を見せると、慌てて奥へと走っていったのを見送る。
「大きい家よね」
領主の家は丘の上にあり、建物はコの字になっていた。
部屋数だけでも数十はありそう。
「にゃは、着たみたいよ」
アマンダが言うと、屋敷から白髪のお爺さんが走ってくる。
玄関から門まではざっと二百メートルはある、そこを全力で走ってくるのだから可愛そうにも見えた。
「はぁはぁはぁはぁ……え。エル、エルン・カミューラ……ヌ様はど、どちらで?」
「私ですけど」
「これはこれ、げっほげほ。お美しいごほごほ」
「あのー、落ち着いてから喋ってもらえば……」
白髪のお爺さんは、私の言葉に頷くと、深呼吸を何度も何度も繰り返す。
「ふうー失礼しました。当主のマギナ・コンタルと申します」
「え、執事じゃないの!?」
「何をもうされます、エレン・カミュラーヌ様をお迎えするのに執事など使ってはコンタル家の恥でございます。ささ」
当主のマギナさんが手を叩くと、背後の玄関から赤い絨毯がスルスルスルと伸びてきた。
丁度私の手前まで伸びると、マギナさんがどうぞ! と頭を下げた。
「どうぞって、そこまで歓迎されるほどの身分でもないんだけど……」
「何をおっしゃいます! カミュラーヌ家といえば、今やグラン王国を支える大貴族。さらにその御令嬢といえば、王や王子に信頼され異国へと見聞の旅に出られるとお聞きします。現に護衛の騎士どのは、女性ながらその腕は未知数と呼ばれる銀髪の紅剣アマンダ氏。
町中を上げてパレード出来ないのがもったいのう御座います」
いやいやいやいや。
町中上げてパレードなんてされたら、恥ずかしさで引きこもるわよ。
しっかし、アマンダが銀髪の紅剣ねぇ、有名なのかしら?
もう一度どうぞどうぞと言われて、仕方がなく赤絨毯の上を歩く。
その一歩斜め後ろにアマンダと反対側に当主であるマギナさん、どっちも絨毯の上ではなく整地された土の上を歩いている。
なんだこの待遇は……。
屋敷に入ると数十人のメイド達が頭を下げている。
誰も喋らなく逆に怖いんですけど。
「今晩はどこかにお泊りで?」
「え、いやまだ宿は取ってないけど……」
「そうでしたか! では、特別な部屋を御用意しておりますので」
「いや、悪いわよ」
「何をおっしゃいます! 是非にこちらにっ!」
鬼気迫る顔で私に話しかけてきた、おもわず頷くと、ほっとした顔になり部屋に案内される。
通された部屋は広かった。
いや広すぎよ。元は二部屋あったと思われる、だって壁をぶち抜いた後があるもの。
「狭すぎて申し訳ありません。しかし、港にいってもこれ以上の部屋は早々無いと自負しております。どうぞ、どうぞ船の出る日までごゆっくりお過ごしください」
「え。広すぎるぐらいだし。まぁ……そういうのなら。でも迷惑じゃないの?」
首が壊れるほど横に振って否定してくる。
「紅剣アマンダ様もご一緒でよろしいでしょうか?」
「エルン様の護衛ですので」
あ、いつものにゃはーじゃない。
まさに猫被ってるわね。いや普段が猫だから、ああもう何て言ったらいいのかしら。
「では、お食事の御用意をしますので暫しお待ちを」
バタンと扉が閉まると、足音が遠ざかる。
「なになになにこのくうもごもごもご」
私が叫ぼうとすると、アマンダの手が直ぐに口を封じた。
「ぷはっ、わかったわよ、静に喋りますー。歓迎されてるのはわかるんだけど、何かピリピリしてない?」
「にゃはー、でしょー。城に居たらいつもこんな空気よ。ぐったりにゃー」
「まっ、数日で終わるにゃよー。船のれば貴族扱いも終わりー」
そんなものなのねーと、アマンダへ言ってから、私は豪華なベッドへと倒れこむ。
廊下を誰かか走ってくる音が聞こえる。
「あー誰かか走ってくるわね。はしたない」
「にゃー、エルンちゃんは走った事ないの?」
「とうぜん、あるわよ」
ベッドの隣にある椅子で腰掛けているアマンダと小さい声で掛け合いをすると、部屋の扉がノックされた。
「はいはいー」
「お、おしょ。お食事の御用意が出来ました」
「今行きますー」
◇◇◇
この食事を一言で言えば『お通夜』だ。
食事は確かに凄い、焼き魚に、魚の煮付け。エビや貝などもあり、それに飽きたらお肉もどうぞと食べきれないほど並んでおり、高そうなワインまで置いてある。
私が上座に座り、アマンダは食べずに横に立っている。
私から見て右手の席にはマギナお爺さん。
左手の席には息子夫婦と紹介されたスラングさんと奥さんのアケミさん。
三人とも笑顔で話してくれるけど顔が引きつっている。
そんな楽しい食事会にもかかわらず、場の空気が重いのだ。
「ささ、エルン様はお酒がお好きと聴いております、この年代ものの……」
「ありがとう……でも、もうお腹一杯で」
「ななななんと! 食事が口に合わなかったでしょうか!」
「いいえ、凄いおいしいですよ」
味は美味しいわよ。空気が美味しくないんだって、マギナさんもわかるでしょうに、息子の嫁さんであるアケミさんとかもう、空気に耐え切れず泣きそうになってるわよ。
ドンドン。
放すでござる!
いけません、坊ちゃまっ!
どんなお客でござる? 美人でござるか? ちょっと、ちょっとだけ覗くだけだから大丈夫でござるよ。
そういう言葉が聞こえてきたと思うと、突然にマギナさんが立ち上がる。
同時に食堂の扉が開かれた。
「扉が壊れたでござる。やぁ、父上に兄上。おや、義姉上も随分お顔が暗い。噂の我侭を通す悪役令嬢を見に行ったつもりがアクアの町に戻っていたでござる、とりあえず父上殿に知らせようと。お客人、これは用こそアクアの町へでござるよ。
おや? そのこ顔がちょっとケバイお嬢さん、どこかでお会いしたでござるかな?」
人もどき。いや、数時間前まで一緒太った男が笑顔を見せると、当主のマギナさんが、この家も破滅だと言って口から泡を吹いて倒れた。
え? 何がどうなってるのよ!
漁港と小さい貿易が盛んでグラン王国の小さな玄関と私は習った。
とりあえず町中にある小さいカフェで旅の疲れを癒したあと、領主の館まで行った。
やる気の無い門兵に紹介状を見せると、慌てて奥へと走っていったのを見送る。
「大きい家よね」
領主の家は丘の上にあり、建物はコの字になっていた。
部屋数だけでも数十はありそう。
「にゃは、着たみたいよ」
アマンダが言うと、屋敷から白髪のお爺さんが走ってくる。
玄関から門まではざっと二百メートルはある、そこを全力で走ってくるのだから可愛そうにも見えた。
「はぁはぁはぁはぁ……え。エル、エルン・カミューラ……ヌ様はど、どちらで?」
「私ですけど」
「これはこれ、げっほげほ。お美しいごほごほ」
「あのー、落ち着いてから喋ってもらえば……」
白髪のお爺さんは、私の言葉に頷くと、深呼吸を何度も何度も繰り返す。
「ふうー失礼しました。当主のマギナ・コンタルと申します」
「え、執事じゃないの!?」
「何をもうされます、エレン・カミュラーヌ様をお迎えするのに執事など使ってはコンタル家の恥でございます。ささ」
当主のマギナさんが手を叩くと、背後の玄関から赤い絨毯がスルスルスルと伸びてきた。
丁度私の手前まで伸びると、マギナさんがどうぞ! と頭を下げた。
「どうぞって、そこまで歓迎されるほどの身分でもないんだけど……」
「何をおっしゃいます! カミュラーヌ家といえば、今やグラン王国を支える大貴族。さらにその御令嬢といえば、王や王子に信頼され異国へと見聞の旅に出られるとお聞きします。現に護衛の騎士どのは、女性ながらその腕は未知数と呼ばれる銀髪の紅剣アマンダ氏。
町中を上げてパレード出来ないのがもったいのう御座います」
いやいやいやいや。
町中上げてパレードなんてされたら、恥ずかしさで引きこもるわよ。
しっかし、アマンダが銀髪の紅剣ねぇ、有名なのかしら?
もう一度どうぞどうぞと言われて、仕方がなく赤絨毯の上を歩く。
その一歩斜め後ろにアマンダと反対側に当主であるマギナさん、どっちも絨毯の上ではなく整地された土の上を歩いている。
なんだこの待遇は……。
屋敷に入ると数十人のメイド達が頭を下げている。
誰も喋らなく逆に怖いんですけど。
「今晩はどこかにお泊りで?」
「え、いやまだ宿は取ってないけど……」
「そうでしたか! では、特別な部屋を御用意しておりますので」
「いや、悪いわよ」
「何をおっしゃいます! 是非にこちらにっ!」
鬼気迫る顔で私に話しかけてきた、おもわず頷くと、ほっとした顔になり部屋に案内される。
通された部屋は広かった。
いや広すぎよ。元は二部屋あったと思われる、だって壁をぶち抜いた後があるもの。
「狭すぎて申し訳ありません。しかし、港にいってもこれ以上の部屋は早々無いと自負しております。どうぞ、どうぞ船の出る日までごゆっくりお過ごしください」
「え。広すぎるぐらいだし。まぁ……そういうのなら。でも迷惑じゃないの?」
首が壊れるほど横に振って否定してくる。
「紅剣アマンダ様もご一緒でよろしいでしょうか?」
「エルン様の護衛ですので」
あ、いつものにゃはーじゃない。
まさに猫被ってるわね。いや普段が猫だから、ああもう何て言ったらいいのかしら。
「では、お食事の御用意をしますので暫しお待ちを」
バタンと扉が閉まると、足音が遠ざかる。
「なになになにこのくうもごもごもご」
私が叫ぼうとすると、アマンダの手が直ぐに口を封じた。
「ぷはっ、わかったわよ、静に喋りますー。歓迎されてるのはわかるんだけど、何かピリピリしてない?」
「にゃはー、でしょー。城に居たらいつもこんな空気よ。ぐったりにゃー」
「まっ、数日で終わるにゃよー。船のれば貴族扱いも終わりー」
そんなものなのねーと、アマンダへ言ってから、私は豪華なベッドへと倒れこむ。
廊下を誰かか走ってくる音が聞こえる。
「あー誰かか走ってくるわね。はしたない」
「にゃー、エルンちゃんは走った事ないの?」
「とうぜん、あるわよ」
ベッドの隣にある椅子で腰掛けているアマンダと小さい声で掛け合いをすると、部屋の扉がノックされた。
「はいはいー」
「お、おしょ。お食事の御用意が出来ました」
「今行きますー」
◇◇◇
この食事を一言で言えば『お通夜』だ。
食事は確かに凄い、焼き魚に、魚の煮付け。エビや貝などもあり、それに飽きたらお肉もどうぞと食べきれないほど並んでおり、高そうなワインまで置いてある。
私が上座に座り、アマンダは食べずに横に立っている。
私から見て右手の席にはマギナお爺さん。
左手の席には息子夫婦と紹介されたスラングさんと奥さんのアケミさん。
三人とも笑顔で話してくれるけど顔が引きつっている。
そんな楽しい食事会にもかかわらず、場の空気が重いのだ。
「ささ、エルン様はお酒がお好きと聴いております、この年代ものの……」
「ありがとう……でも、もうお腹一杯で」
「ななななんと! 食事が口に合わなかったでしょうか!」
「いいえ、凄いおいしいですよ」
味は美味しいわよ。空気が美味しくないんだって、マギナさんもわかるでしょうに、息子の嫁さんであるアケミさんとかもう、空気に耐え切れず泣きそうになってるわよ。
ドンドン。
放すでござる!
いけません、坊ちゃまっ!
どんなお客でござる? 美人でござるか? ちょっと、ちょっとだけ覗くだけだから大丈夫でござるよ。
そういう言葉が聞こえてきたと思うと、突然にマギナさんが立ち上がる。
同時に食堂の扉が開かれた。
「扉が壊れたでござる。やぁ、父上に兄上。おや、義姉上も随分お顔が暗い。噂の我侭を通す悪役令嬢を見に行ったつもりがアクアの町に戻っていたでござる、とりあえず父上殿に知らせようと。お客人、これは用こそアクアの町へでござるよ。
おや? そのこ顔がちょっとケバイお嬢さん、どこかでお会いしたでござるかな?」
人もどき。いや、数時間前まで一緒太った男が笑顔を見せると、当主のマギナさんが、この家も破滅だと言って口から泡を吹いて倒れた。
え? 何がどうなってるのよ!
アクアの港町。
漁港と小さい貿易が盛んでグラン王国の小さな玄関と私は習った。
とりあえず町中にある小さいカフェで旅の疲れを癒したあと、領主の館まで行った。
やる気の無い門兵に紹介状を見せると、慌てて奥へと走っていったのを見送る。
「大きい家よね」
領主の家は丘の上にあり、建物はコの字になっていた。
部屋数だけでも数十はありそう。
「にゃは、着たみたいよ」
アマンダが言うと、屋敷から白髪のお爺さんが走ってくる。
玄関から門まではざっと二百メートルはある、そこを全力で走ってくるのだから可愛そうにも見えた。
「はぁはぁはぁはぁ……え。エル、エルン・カミューラ……ヌ様はど、どちらで?」
「私ですけど」
「これはこれ、げっほげほ。お美しいごほごほ」
「あのー、落ち着いてから喋ってもらえば……」
白髪のお爺さんは、私の言葉に頷くと、深呼吸を何度も何度も繰り返す。
「ふうー失礼しました。当主のマギナ・コンタルと申します」
「え、執事じゃないの!?」
「何をもうされます、エレン・カミュラーヌ様をお迎えするのに執事など使ってはコンタル家の恥でございます。ささ」
当主のマギナさんが手を叩くと、背後の玄関から赤い絨毯がスルスルスルと伸びてきた。
丁度私の手前まで伸びると、マギナさんがどうぞ! と頭を下げた。
「どうぞって、そこまで歓迎されるほどの身分でもないんだけど……」
「何をおっしゃいます! カミュラーヌ家といえば、今やグラン王国を支える大貴族。さらにその御令嬢といえば、王や王子に信頼され異国へと見聞の旅に出られるとお聞きします。現に護衛の騎士どのは、女性ながらその腕は未知数と呼ばれる銀髪の紅剣アマンダ氏。
町中を上げてパレード出来ないのがもったいのう御座います」
いやいやいやいや。
町中上げてパレードなんてされたら、恥ずかしさで引きこもるわよ。
しっかし、アマンダが銀髪の紅剣ねぇ、有名なのかしら?
もう一度どうぞどうぞと言われて、仕方がなく赤絨毯の上を歩く。
その一歩斜め後ろにアマンダと反対側に当主であるマギナさん、どっちも絨毯の上ではなく整地された土の上を歩いている。
なんだこの待遇は……。
屋敷に入ると数十人のメイド達が頭を下げている。
誰も喋らなく逆に怖いんですけど。
「今晩はどこかにお泊りで?」
「え、いやまだ宿は取ってないけど……」
「そうでしたか! では、特別な部屋を御用意しておりますので」
「いや、悪いわよ」
「何をおっしゃいます! 是非にこちらにっ!」
鬼気迫る顔で私に話しかけてきた、おもわず頷くと、ほっとした顔になり部屋に案内される。
通された部屋は広かった。
いや広すぎよ。元は二部屋あったと思われる、だって壁をぶち抜いた後があるもの。
「狭すぎて申し訳ありません。しかし、港にいってもこれ以上の部屋は早々無いと自負しております。どうぞ、どうぞ船の出る日までごゆっくりお過ごしください」
「え。広すぎるぐらいだし。まぁ……そういうのなら。でも迷惑じゃないの?」
首が壊れるほど横に振って否定してくる。
「紅剣アマンダ様もご一緒でよろしいでしょうか?」
「エルン様の護衛ですので」
あ、いつものにゃはーじゃない。
まさに猫被ってるわね。いや普段が猫だから、ああもう何て言ったらいいのかしら。
「では、お食事の御用意をしますので暫しお待ちを」
バタンと扉が閉まると、足音が遠ざかる。
「なになになにこのくうもごもごもご」
私が叫ぼうとすると、アマンダの手が直ぐに口を封じた。
「ぷはっ、わかったわよ、静に喋りますー。歓迎されてるのはわかるんだけど、何かピリピリしてない?」
「にゃはー、でしょー。城に居たらいつもこんな空気よ。ぐったりにゃー」
「まっ、数日で終わるにゃよー。船のれば貴族扱いも終わりー」
そんなものなのねーと、アマンダへ言ってから、私は豪華なベッドへと倒れこむ。
廊下を誰かか走ってくる音が聞こえる。
「あー誰かか走ってくるわね。はしたない」
「にゃー、エルンちゃんは走った事ないの?」
「とうぜん、あるわよ」
ベッドの隣にある椅子で腰掛けているアマンダと小さい声で掛け合いをすると、部屋の扉がノックされた。
「はいはいー」
「お、おしょ。お食事の御用意が出来ました」
「今行きますー」
◇◇◇
この食事を一言で言えば『お通夜』だ。
食事は確かに凄い、焼き魚に、魚の煮付け。エビや貝などもあり、それに飽きたらお肉もどうぞと食べきれないほど並んでおり、高そうなワインまで置いてある。
私が上座に座り、アマンダは食べずに横に立っている。
私から見て右手の席にはマギナお爺さん。
左手の席には息子夫婦と紹介されたスラングさんと奥さんのアケミさん。
三人とも笑顔で話してくれるけど顔が引きつっている。
そんな楽しい食事会にもかかわらず、場の空気が重いのだ。
「ささ、エルン様はお酒がお好きと聴いております、この年代ものの……」
「ありがとう……でも、もうお腹一杯で」
「ななななんと! 食事が口に合わなかったでしょうか!」
「いいえ、凄いおいしいですよ」
味は美味しいわよ。空気が美味しくないんだって、マギナさんもわかるでしょうに、息子の嫁さんであるアケミさんとかもう、空気に耐え切れず泣きそうになってるわよ。
ドンドン。
放すでござる!
いけません、坊ちゃまっ!
どんなお客でござる? 美人でござるか? ちょっと、ちょっとだけ覗くだけだから大丈夫でござるよ。
そういう言葉が聞こえてきたと思うと、突然にマギナさんが立ち上がる。
同時に食堂の扉が開かれた。
「扉が壊れたでござる。やぁ、父上に兄上。おや、義姉上も随分お顔が暗い。噂の我侭を通す悪役令嬢を見に行ったつもりがアクアの町に戻っていたでござる、とりあえず父上殿に知らせようと。お客人、これは用こそアクアの町へでござるよ。
おや? そのこ顔がちょっとケバイお嬢さん、どこかでお会いしたでござるかな?」
人もどき。いや、数時間前まで一緒太った男が笑顔を見せると、当主のマギナさんが、この家も破滅だと言って口から泡を吹いて倒れた。
え? 何がどうなってるのよ!
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または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
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