グラン王国の錬金術師 if 悪役錬金術師に転生してました!

えん水無月

文字の大きさ
107 / 209

103 最近男運ないなーと思うエルンさん

しおりを挟む
 鍵は掛けられていない武具予備室の扉が大きく開かれた。
 武具予備室と言うのは、その名の通り練習用の剣や盾や槍、または役に立つのかわからないマットや雑貨。
 平たく言えば用具室のさらに予備、物置みたいな部屋だ。

 私が部屋内・・・から廊下を見ると、ディーオが息を切らしてこちらを見ている。

 私と目が合うと、静に吐いて、なんと!
 にらみ付けてきた。


「………………何をしてるんだ?」


 声がちょっと怒気を含んでいる。ようなきがする。


「こっちが聞きたいわよ…………どうみえる?」
「見たままを説明しよう。錬金科のエルン君がチアガールの衣装を着て、騎士科のジャンベル君に向けてムチを振ってるようにしか見えないな。
 そして、ジャンベル君は半裸になって四つん這いになっているようにしか見えない」
「もっとだー! エルン女王様! この哀れなオークに褒美を振るってくれ! 喋る、全て喋るからムチをもっとー!」


 私の近くで四つん這いになったオークもとい、騎士科のジャンベルという生徒が媚を振って来る。
 その背中には私が振るったムチの痕があり、ちょっと痛々しい。


「見たままを説明したぞ、今度はエルン君の番だ」
「ええっと、この人に試合が見えるいい場所があるって言われて、この部屋に通されて」


 そう、近道だからと武具予備室へと通された。
 流石に直ぐ逃げれるように、していたんだけど。
 入った瞬間この大男は脱ぎだした。
 さっとムチを取り出すと、突然一度だけでいいんだとムチを振るってくれと土下座までされてお願いされた。

 なんでも、私のような美人…………自称だけど。
 その美人な女性に痛めつけられるのが趣味だとかなんとか。


「なんでも喋るって言うからさー……」

 
 私が試しに、さっきライデイと交換して物は何? って聞いたら。
 ご褒美をくれたら話すから! と土下座したまま言われたのだ。

 一度だけ振ったら、もっともっとと言われて。
 数回振り続け、さぁ喋りなさい、このオーク! と叫ぼうとした所で扉が開いたのだ。

 何でこうなったのかしら?


「喋る! ライデイの秘密を。あの剣技は偽物だってのも喋るから褒美をくれー!」
「なに!」


 ディーオが大きな声を出すと、突然亀のようになるオーク……じゃないええっと。


「名を思い出そうとしてるなエルン君、彼の名はジャンベルだ」
「そうポンポン覚えきれないわよ。こんなモブ」
「で、その話は本当なのか、ジャンベル君!」
「……………………」


 亀のような体勢からディーオの顔をちらっとみて私を見る。
 そしてまた亀のように頭を隠すと無言のアピールを始めた。


「エルン君、その……叩いてやってくれ」
「やっぱそうなるでしょ? だから突然私に怒られてもー、こっちも仕方がなくムチ打ってるのよ?」
「君の事情は大体わかった」


 ディーオ公認で叩く事を許可された。
 

「ほら! もっと鳴きなさい。何を隠しているのっ!」
「エルン女王さま。四角い小物は雷撃の小箱ですうー!」
「なんだと……」


 手もとい、ムチを止めてディーオに顔を向ける。


「雷撃の箱は対大型魔物へ電撃を飛ばす大型道具だ、そんな小箱とか聞いた事は……誰から手に入れた!」
「………………」


 ディーオが言うと、ジャンベルは私をチラっとみてくる。


「エルン君……頼む」
「はいはい。醜い亀ね! 次はどんな情報を教えてくれるのかしら?」


 バシイッ!


「はいいいいい…………先日見かけた赤毛の錬金術師から買いましたあああ」
「「……………………」」


 私もディーオも無言になる。


「ねぇディーオ?」
「いや、まて! まだ誰とは言っていないし! ボクは無関係だ!」


 やっぱり、思い浮かべたのは錬金術師ミーナよね。


「他は?」
「他か……ライデイが戦闘スタイルを見直したいと嘘をつきに遠見の水晶を買ったぐらです。さぁこのオークめにご褒美を!」

 ビシッ!

 あふんっ!

 バシッ!

 もっとだー!


 数回続けも新しい情報は出てこない。

「エルンさん!!」
「エルン様……どこをほっつき歩いて――――」
「何をしてるのでしょうか?」
「ナナにガルド……何してるように見える?」


 出入り口の前で固まる二人に私は問いかける。


「ええっと、エルンさんが上半身裸の人にムチを振って、ディーオ先生が頷いているようにしか……」
「じゃぁそうなのね」
「待て! ボクは関係ない!」


 あ、ずるい! ディーオが逃げに入った。
 ガルドが、
「関係ないなら、なんでここにいるんだ?」
 と、凄くまともな突っ込みをする。


「そ、それはだな…………」
「あれ、ナナそれは?」


 私はナナの手に持っている物に注目した。
 白い野球ボールを両手に持っているからだ。合わせて二球でも何故野球? ボールを。

「これですか、ベトベト君です、相手にぶつけると衝撃で発動し相手の体を絡み取る糸がでるアイテムなんですけど……念のために二つ」


 防犯用のカラーボールとトリモチが融合したようなアイテムって事かしら。


「まぁまぁまぁ。そんな事より、はいこれ」


 ナナの持っているベトベト君を強制的に受け取り、ポケット……がないから胸の谷間に二つ入れた。
 代わりに私が使っていたムチを手渡す。


「え?? 何所に……いや、あのエルンさん!?」
「いい、ムチを振るときは腕でじゃなくて手首を利かせるのよ」
「わ、私そんな事を教えて貰い――――」
「ロリ女王様! 快楽に負けて秘密を喋るオークへご褒美をっ」
「きゃ、近よらないでくださいー!」


 バシ!


「じゃ、そういう事で。ディーオ行きましょう」
「は?」


 私は小声で、この場から逃げ出すなら今がチャンスよとささやく。
 ディーオの顔が一瞬引きつったあとに、真面目な顔になった。


「…………そうだな。緊急な用事が出来た、後で職員を向かわせる」


 ディーオと共に、早急に離れる。
 背後でナナの叫び声と、変態の声と、変態からナナを守るガルドの声が重なっているようだ。
 ナナ、立派な女王様になってね。



 ◇◇◇


 廊下から試合会場へと出る。
 既に試合が始まっていた。私達の居る場所は注意されなければ二階席からは見えない位置にあった。
 何人かの教師や職員、騎士科の生徒が私達をみるけど、直ぐに興味をなくし試合のほうへ集中する。


 ライデイの雷の攻撃がリュートを襲っている。
 リュートはその攻撃をかわしながら間合いを取っている、でも、その顔は何時もより苦しそうだ。

 先ほどまでいた二階にある観客席へ目を移すと、いつの間にか来ていたマギカ隣に居るエレファントさんへ何かを言っているのがみえる。
 表情が暗く見えるのは、リュートが負けそうだからだろう。



「まずいな…………もう試合が始まっていたか」
「え、じゃぁどうするのよ!」
「試合が終われば拘束も出来よう。しかし試合中であるし、たとえ不正で勝ったとしてもシラを切られるだろう、恐らくは身体検査の係員も買収されて、証拠も無いだろう。
 このままリュートが勝てば、また付け入る事も……まて、天才であるボクが今考える」


 ディーオは腕を組んでは、試合を止めるべきか、いや、試合後に拘束をしたほうが、とかブツブツと呟いては別な事を呟きだす。

 その間にも、ライデイがリュートを追い込んでいく。
 あ、ライデイの腕がお尻へと動く、とたんに弱くなった雷が強くなったようなきがする。


「なるほど……あそこに何か隠してるのね。
 ようはあれよね? 証拠を掴めばいいのよね。リュート! 反対側に逃げて!」


 私が叫ぶと、リュートがこっちを向く、信じられないという顔をしていた。


「何でここに!」
「説明は後!」
「くっ! 昨日の女かっ! 神聖な試合に口を出すな!」


 ライデイも叫ぶけど、それも無視。その神聖な試合とやらにインチキして出るとは何事よ。

 リュートは私の言うとおりに反対側へ雷を避けつつ移動する。
 雷が弱くなっていき、ライデイはまたお尻と手を動かした、とたんに雷の威力が強くなる。

 私はベトベト君を軽く握ると、足を高く上げた。
 一瞬ネックレスにした賢者の石が光ったような気がしたけど、気のせいね。

 そんな事よりもエルンピッチャー第一球を投げました!!
 心で叫ぶと、一気にベトベト君を投げた。
 
 丁度雷を打つタイミングだったのだろう、ベトベト君はライデイの背中に当たった。
 瞬時に白い糸が爆発的に増えライデイの体を拘束し始めた。
 リュートへ行くはずの雷が、なぜかライデイの全身を襲いその場に倒れる。


 エルンピッチャー第二球も投げました!


 突然の事で、呆然としているリュートに、私の投げたベトベト君を回避しきれなくリュートもその場に倒れた。
 隣で見ていたディーオが私へと振り向く。

「エルン! きみは何をっ!?」
「いや、だって……証拠証拠って言うから……アイツがお尻触るたびに雷強くなってるし、証拠は多分そこよ。無効試合にしたら解決じゃないの?」


 あれ? 私変な事したかしら? 一番いい解決方法と思ったんだけど……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!

白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。 辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。 夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆  異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆ 

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

異世界転生した私は甘味のものがないことを知り前世の記憶をフル活用したら、甘味長者になっていた~悪役令嬢なんて知りません(嘘)~

詩河とんぼ
恋愛
とあるゲームの病弱悪役令嬢に異世界転生した甘味大好きな私。しかし、転生した世界には甘味のものないことを知る―――ないなら、作ろう!と考え、この世界の人に食べてもらうと大好評で――気づけば甘味長者になっていた!?  小説家になろう様でも投稿させていただいております 8月29日 HOT女性向けランキングで10位、恋愛で49位、全体で74位 8月30日 HOT女性向けランキングで6位、恋愛で24位、全体で26位 8月31日 HOT女性向けランキングで4位、恋愛で20位、全体で23位 に……凄すぎてびっくりしてます!ありがとうございますm(_ _)m

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

処理中です...