グラン王国の錬金術師 if 悪役錬金術師に転生してました!

えん水無月

文字の大きさ
152 / 209

148 他人の噂

しおりを挟む
 朝から体を揺らされる。
 やっと賢者の石の後遺症から抜け出した私は、昨夜から寝ていたのだ。
 その睡眠を邪魔するのは、王様だって許さない。

 例えだからね、本当に王様だったらこっちが土下座するわ。


「あわわわ、そのあの、すみませんおじょうさま」


 私はノエの体を掴むと、そのままベッドに引き込む。
 全力で抱きしめベッドの上で転がった。小さい悲鳴とともにノエが目を回しているのが面白い。


「おはようノエ」
「あわわわ、お、おはようございます」


 超至近距離のノエの体を解放して起き上がる。
 こうして起しに着たという事は何か用事があるのだろう。


「誰か来たの?」
「はっはい、ナナさまが朝一番で」
「珍しいわね、すぐ行くって伝えておいて」


 髪をまとめて軽く身だしなみをして階段を降りる。
 応接室にナナが座っているので、おはようと声をかけた。


「エ、エルンさん。大丈夫です! わたしはエルンさんの味方ですから!」
「はぁ……」


 なんだろ、朝から鬼気迫る勢いで突然の告白をされた。
 味方なのは嬉しいけど……なにやらゴソゴソと荷物を取り出している。
 良く見ると大きな箱がある。

 ナナはそこからホウキを取り出した。
 中心部分にクッションがついている、見間違いないそ、とんでるホウキだ。

 自由自在に空を飛べるホウキで作れるのは私が知っている限り、ナナとミーナ。
 なんでこんな便利な物が普及しないのかというと、危ないから。
 両手離したら落ちるし。
 
 実際に私が落ちた。
 なんでも、アレをみた人間が思ったよりも多く、さらにはリュート親戚のマギカが、飛んでるホウキから私が落ちた事を回りに話したらしく、余計に人気が無い。

 次にゴーグルを取り出した。
 これは、以前改良点はどこでしょう? と聞いて来た時に私がゴーグルがあったほうがいいわねと言ったから。


「ええっと……ピクニックでもいくの?」


 いやだって、それしか考えられないし。


「違います! 捕まる前に逃げてください!」
「誰に?」


 乱暴なドアノッカーの音が応接室まで聞こえてきた。
 私はナナとの会話を切って、そちらのほうをみる。
 ナナは、もう顔面が蒼白になっているけど、なんなんだ。


「ちょっとまってねナナ。ノエー玄関見てきてー」


 ノエに声をかけると、ノエが動く前に玄関の扉が開いた。
 複数の足音が聞こえると、ガルドとリュートが入ってくる。


「あら、おはよう」
「玄関前に居たから連れて来たぞ」
「よかったエルンここにいたか、罪を償おう。前々からいつかするとは思っていたが」
「リュートさん! エルンさんだって魔がさしたんだと思います! ここは捕まる前に逃げたほうがっ!」


 まてまてまてまて、一体何の話だ。
 リュートとナナが言い争いをしているのを止める。

「ちょっとまった、何の話?」
「「なんのって」」


 私はナナに喋らせる。

「わたしは、エルンさんがギルド予定の建物に火をつけたって、なので、嫌な事があったとはいえほとぼりが冷めるまで逃げましょうと」


 次にリュートに喋らせる。


「俺のほうは放火した犯人を捕まえたが、表に出す事なく殺して埋めたと。
 いくら貴族でも殺人は不味いからな……有利な証言を約束するから出頭しようと」


 …………。


「なるほど、二人はそういう人間と思っていたわけだ! そんなわけないじゃない!
 被害者よ、被害者」
「え、エルンさん顔が」
「まて、俺は有利な証言をしとうとな……違うのか?」



 ◇◇◇


 応接室のソファーに座り足を組む。
 目の前ではナナとリュートが、朝食代わりのパンを一緒に食べている所だ。
 誤解を解いた私も一緒にそのパンを食べては、甘めのカフェオレで口の中を満たす。


「まったく……」
「ごめんなさい、わたしはその近所の人からそういう話を」
「俺はいつも宅配にくる人間からな、そういう噂を聞いて飛んできた」
「そりゃどうもご丁寧に、友達思いで助かるわ」


 トントントン!

 ドアノッカーの音が聞こえてきた。
 嫌な予感しかしない、一応ガルドに頼んで私の事を知っている人間に事情を説明しに言って貰ったけど……。

 別室にいたのノエがパタパタと玄関を開けにいく。
 すぐにお客をつれてきた。


「よう……」


 熊のようなブルックスは部屋をきょろきょろしながら私に挨拶をしてくる。


「今度はなに?」
「貴族の家ってのも珍しいからな、態度が変ですまねえ」
「あっそうか……ブルックスってこの家来るの初めてだっけ?」
「ああ、比較的庶民的と思っていたが、やっぱ貴族だな……こんな汚ねえ服でもうしわけねえ」
「別に汚くは無いわよ……」
「そうですよ、わたしも普段着ですよ!」


 ナナも恐縮するブルックスに助け舟を出してくる。


「とりあえず、座ったら?」
「いいのか?」


 ブルックスは椅子の端に小さくすわりだす。
 案外気を使う人間なのね、見かけによらず優しいし。


「じゃなくて! 何か用あったんでしょ?」
「っと、そうだったな……昨日の火事あっただろ? あれでお前さんが犯人グループを実家の金山へ輸送したって噂が流れてきてな、一応それをいった人間には否定しておいたが」
「…………本当、私の事を思ってくれてる人がこんなにもいて幸せだわ……」


 思わず天井を見上げて呟くと、ブルックスが違うのか? と聞いてくる。

「違うわっ! ボッ…………違いますわよ、おほほほ」


 貴族らしからぬ言葉がでそうになったので止めた。


「じゃぁわたし帰りにミーティアさんの所いって新聞発行を止めてきます」
「ん? ミーティアってナナの幼馴染で商人のミーティアよね?」
「はい、その……今回の情報ってミーティアさんでして、グラン新聞の編集部員でもあるんです」
「逆に良かったわ……裏取ってくれるような人物で」
「はい、その…………裏を取らないで記事書く人もいるんですけど、ミーティアさんはちゃんと取るんです」


 本人が来るって所を、ナナが私が取るからと断ってきたらしい。
 そして、ナナは私を逃がそうとした、涙ぐましいわね。
 これはそうそうに犯人を見つけないと、私の評判が悪くなっていくし。


 つらたん。

 べ、べつに評判なんていいんですけどー、これが元で冤罪で捕まりましたっていったら、これまでの苦労が水の泡よ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!

白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。 辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。 夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆  異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆ 

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

異世界転生した私は甘味のものがないことを知り前世の記憶をフル活用したら、甘味長者になっていた~悪役令嬢なんて知りません(嘘)~

詩河とんぼ
恋愛
とあるゲームの病弱悪役令嬢に異世界転生した甘味大好きな私。しかし、転生した世界には甘味のものないことを知る―――ないなら、作ろう!と考え、この世界の人に食べてもらうと大好評で――気づけば甘味長者になっていた!?  小説家になろう様でも投稿させていただいております 8月29日 HOT女性向けランキングで10位、恋愛で49位、全体で74位 8月30日 HOT女性向けランキングで6位、恋愛で24位、全体で26位 8月31日 HOT女性向けランキングで4位、恋愛で20位、全体で23位 に……凄すぎてびっくりしてます!ありがとうございますm(_ _)m

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

処理中です...