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脆弱を覆う優しさ
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しおりを挟む2階の奥から2番目のドア、そこが司の部屋。
なんの戸惑いもなく、なんの疑いもなく、あたしはそのドアのチャイムを指で押した。
ピンポーン、微かにドアを隔てた向こう側でその音が鳴るのが聞こえた。
けれど、目の前のドアが開く事はなく、シンとした静寂に包まれたまま。
何気にドアノブに伸ばした手。くるっと回してみれば、ガチャリとそれが開いた。
どうやら鍵は掛けられていないようだった。
ゆっくりとドアを開ける。
ギィ…低く唸るようなその音が、少し不気味に聞こえた。
薄暗い玄関が視界に映し出される。
なんだか嫌な予感がしたのはきっと――…そこに見覚えのない女物のローファーがあったから。
1DKという決して広くない間取り。
耳を澄ませば、ふたつの声が微かに奥から聞こえてくる。
「――…っねぇ、今チャイム鳴らなかった?」
「んー?そうだっけ?聞こえなかった」
「…っ出なくていいの?」
「いーよ。どうせ勧誘かなんかだろうし。それより…ほら、集中してよ」
「…っん、」
そこで会話は途切れて、スプリングが軋む安っぽい音とまるで泣いてるような女の嬌声だけが断続的に流れてくる。
薄いドアを隔てた先で何が行われているのか、この状況でそれが分からないほどあたしは鈍くもないしバカでもない。
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