20 / 51
【第20話】ミモの力と畑の異変
しおりを挟む
それから数日、ミモは俺たちの生活に完全に溶け込んでいた。温室ではいつも俺やリリィの肩や頭に乗って過ごし、作業の合間には植物の間をぴょんぴょんと跳ね回る。
姿を消すスキル《芽守》のおかげで、他の人たちにはその存在を気づかれていない。俺とリリィだけの秘密の仲間──それがミモだった。
そんなある日の朝、ミモはモフの背中に乗って遊んでいた。
モフがのんびり歩きながら、ミモを背中に乗せたり降ろしたりしている様子はまるで兄弟のようだった。
「にゃっ」「むー」
お互いに短く鳴き交わし、ミモがモフのふさふさした尾を軽くじゃれて引っ張ると、モフはくすぐったそうに転がる。
その光景を見ながら、俺とリリィは顔を見合わせて笑った。
「すっかり仲良しですね、あのふたり」
「ああ。なんか、癒されるな」
そんなある日の朝、俺たちは温室の特別区画で、育成中の野菜の様子を見ていた。
「最近、この子たちの成長が早くなってる気がするんです」
リリィが言いながら、葉を持つ植物の根元に手を添える。
「うん。俺も感じてた。魔力の流れが強くなってる」
その原因が何か、すぐに思い当たる。
しれはミモ。
彼女が植物の間を歩くたび、周囲の植物たちがほんのりと輝きを放つことがある。
最初は偶然かと思っていたが、日に日にその現象は明確になっていた。
ミモがそこにいるだけで、植物の育成が促進される
そう、まるで“微成長”スキルの発動を助けるように。
「タケルさん、あの……ちょっと試してみませんか?」
リリィが提案したのは、ミモと一緒に“微成長”スキルを使ってみるという実験だった。
俺たちは温室の隅に未発芽の種を用意し、ミモにそっと近くで見守ってもらいながら、スキルを発動した。
すると…種が、ぴくりと震え、わずか数秒で芽吹いた。
「っ……早すぎる……!」
「しかも、色が……普通の芽より、鮮やかです」
ミモは嬉しそうに「にゃっ」と鳴いた。
《微成長》に、ミモの力が加わることで、スキルの影響範囲と効率が倍増する
それは確信に変わった。
「これ、もしかしたら、今までの畑にも応用できるかも……」
そう思った俺は、その日の午後、村の畑に向かった。
温室とは違い、自然の風と光に包まれた畑。そこにもミモを連れて行って、
試しにひと区画でスキルを発動してみた。
ミモが畝の上をちょんちょんと歩く。
すると…地面から、新芽が一斉に顔を出し、畑全体が活気づくような感覚が広がった。
「これは……すごい。ミモの力、農業全体を変えられるかもしれない」
その時だった。
「……あれ? タケルさん、あそこ」
リリィが指差す先。いつも穏やかな畑の一角に、見慣れない影が立っていた。
それは、黒っぽいローブを羽織った小柄な人影
いや、存在感が異質だった。まるで自然の中に“異物”が混じっているような違和感。
「誰か……見てた?」
だが影はすぐにスッと消えた。
「気のせい……じゃないよな。今のは……」
ミモが俺の肩に飛び乗り、耳をぴくりと動かす。
そして、警戒するようにリリィの後ろへ隠れた。
「タケルさん……もしかして、ミモの力が外に漏れて……何かを引き寄せてるのかも」
俺は静かにうなずいた。
姿を消すスキル《芽守》のおかげで、他の人たちにはその存在を気づかれていない。俺とリリィだけの秘密の仲間──それがミモだった。
そんなある日の朝、ミモはモフの背中に乗って遊んでいた。
モフがのんびり歩きながら、ミモを背中に乗せたり降ろしたりしている様子はまるで兄弟のようだった。
「にゃっ」「むー」
お互いに短く鳴き交わし、ミモがモフのふさふさした尾を軽くじゃれて引っ張ると、モフはくすぐったそうに転がる。
その光景を見ながら、俺とリリィは顔を見合わせて笑った。
「すっかり仲良しですね、あのふたり」
「ああ。なんか、癒されるな」
そんなある日の朝、俺たちは温室の特別区画で、育成中の野菜の様子を見ていた。
「最近、この子たちの成長が早くなってる気がするんです」
リリィが言いながら、葉を持つ植物の根元に手を添える。
「うん。俺も感じてた。魔力の流れが強くなってる」
その原因が何か、すぐに思い当たる。
しれはミモ。
彼女が植物の間を歩くたび、周囲の植物たちがほんのりと輝きを放つことがある。
最初は偶然かと思っていたが、日に日にその現象は明確になっていた。
ミモがそこにいるだけで、植物の育成が促進される
そう、まるで“微成長”スキルの発動を助けるように。
「タケルさん、あの……ちょっと試してみませんか?」
リリィが提案したのは、ミモと一緒に“微成長”スキルを使ってみるという実験だった。
俺たちは温室の隅に未発芽の種を用意し、ミモにそっと近くで見守ってもらいながら、スキルを発動した。
すると…種が、ぴくりと震え、わずか数秒で芽吹いた。
「っ……早すぎる……!」
「しかも、色が……普通の芽より、鮮やかです」
ミモは嬉しそうに「にゃっ」と鳴いた。
《微成長》に、ミモの力が加わることで、スキルの影響範囲と効率が倍増する
それは確信に変わった。
「これ、もしかしたら、今までの畑にも応用できるかも……」
そう思った俺は、その日の午後、村の畑に向かった。
温室とは違い、自然の風と光に包まれた畑。そこにもミモを連れて行って、
試しにひと区画でスキルを発動してみた。
ミモが畝の上をちょんちょんと歩く。
すると…地面から、新芽が一斉に顔を出し、畑全体が活気づくような感覚が広がった。
「これは……すごい。ミモの力、農業全体を変えられるかもしれない」
その時だった。
「……あれ? タケルさん、あそこ」
リリィが指差す先。いつも穏やかな畑の一角に、見慣れない影が立っていた。
それは、黒っぽいローブを羽織った小柄な人影
いや、存在感が異質だった。まるで自然の中に“異物”が混じっているような違和感。
「誰か……見てた?」
だが影はすぐにスッと消えた。
「気のせい……じゃないよな。今のは……」
ミモが俺の肩に飛び乗り、耳をぴくりと動かす。
そして、警戒するようにリリィの後ろへ隠れた。
「タケルさん……もしかして、ミモの力が外に漏れて……何かを引き寄せてるのかも」
俺は静かにうなずいた。
265
あなたにおすすめの小説
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!
枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕
タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】
3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる