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【第49話】王都の貴族とおにぎり外交
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王都での営業が順調に続くある日、主催者から「特別なお客様がいらっしゃる」と事前に知らされた。
「特別って、誰なんですか?」
リリィがそう尋ねると、主催者は少し声をひそめて答えた。
「王都北部を治める伯爵家のお嬢様です。とても食にうるさい方ですが、味に感動すれば強力な支援者にもなり得ます」
そんな大物が来るのか、と緊張が走る屋台。
そして昼下がり、小さな馬車が広場に滑り込んできた。
降りてきたのは、明るい栗色の巻き髪に上品なワンピースをまとった少女。周囲に数名の護衛を従えている。
「ふくにぎり亭……ここね。あなたが、タケルとリリィ?」
はじめは少し高飛車な印象だったが、彼女──アナスタシア嬢はふくにぎりを一口食べるなり、表情を変えた。
「……なに、これ……こんなに……優しい味、食べたことない……」
目を丸くし、しばらく無言でふくにぎりを噛みしめる彼女。その様子に、護衛たちがザワつく。
「お嬢様がこんなに静かに……」「あれは感動の顔だ……」
「これ、中に何が入ってるの?」「焼いた山菜と香草、それに少しの味噌です」
「すごい……素材だけでこんな味が出せるなんて」
ふくにぎりを食べ終えたアナスタシア嬢は、ふっと微笑んだ。
「あなたたち、今度、私の屋敷に来なさい。正式に“ふくにぎり”を披露する機会を設けるわ」
王都の貴族たちに認められる日が来るとは思わなかった。リリィが小声で囁く。
「タケルさん……これって、すごく大きなことですよね」
「ああ、間違いなく。貴族の支援がつけば、王都での常設店も夢じゃない」
アナスタシア嬢が立ち去った後、主催者がこっそり近寄ってくる。
「ふくにぎり亭さん、大成功です。あのお嬢様は王都の料理ギルドにも影響力があります。きっと話題になりますよ」
王都の風が、ふくにぎり亭に本格的に吹き始めた。
その夜、モフが焚き火の前で尻尾をふるふると揺らし、ミモがその上でごろごろと転がっていた。
「……なあ、ミモ。俺たち、ここまで来たんだな」
「にゃっ」
透明なまま、ミモは小さく鳴いた。
ふくにぎりと共に歩んできたこの日々。
次はどんな出会いが待っているのか、楽しみで仕方がなかった。
「特別って、誰なんですか?」
リリィがそう尋ねると、主催者は少し声をひそめて答えた。
「王都北部を治める伯爵家のお嬢様です。とても食にうるさい方ですが、味に感動すれば強力な支援者にもなり得ます」
そんな大物が来るのか、と緊張が走る屋台。
そして昼下がり、小さな馬車が広場に滑り込んできた。
降りてきたのは、明るい栗色の巻き髪に上品なワンピースをまとった少女。周囲に数名の護衛を従えている。
「ふくにぎり亭……ここね。あなたが、タケルとリリィ?」
はじめは少し高飛車な印象だったが、彼女──アナスタシア嬢はふくにぎりを一口食べるなり、表情を変えた。
「……なに、これ……こんなに……優しい味、食べたことない……」
目を丸くし、しばらく無言でふくにぎりを噛みしめる彼女。その様子に、護衛たちがザワつく。
「お嬢様がこんなに静かに……」「あれは感動の顔だ……」
「これ、中に何が入ってるの?」「焼いた山菜と香草、それに少しの味噌です」
「すごい……素材だけでこんな味が出せるなんて」
ふくにぎりを食べ終えたアナスタシア嬢は、ふっと微笑んだ。
「あなたたち、今度、私の屋敷に来なさい。正式に“ふくにぎり”を披露する機会を設けるわ」
王都の貴族たちに認められる日が来るとは思わなかった。リリィが小声で囁く。
「タケルさん……これって、すごく大きなことですよね」
「ああ、間違いなく。貴族の支援がつけば、王都での常設店も夢じゃない」
アナスタシア嬢が立ち去った後、主催者がこっそり近寄ってくる。
「ふくにぎり亭さん、大成功です。あのお嬢様は王都の料理ギルドにも影響力があります。きっと話題になりますよ」
王都の風が、ふくにぎり亭に本格的に吹き始めた。
その夜、モフが焚き火の前で尻尾をふるふると揺らし、ミモがその上でごろごろと転がっていた。
「……なあ、ミモ。俺たち、ここまで来たんだな」
「にゃっ」
透明なまま、ミモは小さく鳴いた。
ふくにぎりと共に歩んできたこの日々。
次はどんな出会いが待っているのか、楽しみで仕方がなかった。
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