俺の相棒は元ワニ、今ドラゴン!?元飼育員の異世界スローライフ

ライカタイガ

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第42話 ゴロウの力

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翌朝、まだ薄暗いうちにオレたちは目を覚まし、
旅の準備を整えた。レオンナンドは野営の片付けを終え、
バルシュも周囲の気配を確認しながら静かに馬車に乗り込んでいる。
オレはゴロウを肩に乗せながら、再び王都へ向けての旅路に心を馳せていた。

「ダイ、今日も何かすごいことが起きるかな?僕、ちゃんと戦えるからね!」

ゴロウは朝からやる気満々だった。
彼の力を試すためにも、できれば安全に進みつつも、
適度な戦闘機会が訪れることを願っていた。

「そうだな、気を抜かずに行こう。父様とレオンナンドさんの言う通り、慎重にね。」

午前中は何事もなく穏やかに旅が続いていたが、
午後に差し掛かる頃、再び遠くの森から不穏な気配が感じられた。
オレたちの馬車は進行を少し遅らせ、周囲を警戒しながら進んでいく。

「バルシュ様、何か近づいてきます。魔物の気配です。」

オレもゴロウも、その緊張感を肌で感じ取っていた。
ゴロウは肩の上でそわそわし始め、オレに視線を送ってくる。

「ダイ、また何か来てる。僕、準備できてるよ。」

「分かってる、ゴロウ。落ち着いて。」

やがて、木々の間から巨大な影が現れた。それは、これまでの魔物とは異なる、奇妙な姿をした存在だった。
体は漆黒で、鋭い爪を持ち、まるで闇そのものが具現化したような、異形の魔物だ。
バルシュはその姿を確認すると
「シャドウビーストか。厄介だな・・・」

レオンナンドはオレとゴロウに向かって警告をする
「危険です!シャドウビーストは陰に出入りしての不意打ちを得意とし、
攻撃を仕掛けます。十分に警戒してください。」

オレはその言葉を聞き、さらに身を引き締めた。

バルシュは一瞬迷っていたが周囲に人の気配がないことを確認し
今回ゴロウに戦闘をさせることにしたようだ。

「ダイ、今回はゴロウに任せてみよう。だが、私たちがバックアップに回るから、何があっても無理はするな。」

オレもその言葉に決意を決め
「はい、分かりました。」
と返事をする。


ゴロウはもうやる気満々の表情で答える
「ダイ、行くよ!」


オレは馬車から降り、ゴロウを前に立たせた。
ゴロウはその小さな体の中に、元ワニとしての鋭い本能を宿している。
彼の目が戦闘モードに切り替わり、牙を剥き出しにして、敵を睨みつけた。

ゴロウは敵から目をそらさずにテレパシーを送ってきた。
「僕の力、見せてあげる!」

シャドウビーストが鋭い咆哮を上げて襲いかかってきた。
ゴロウはすばやく動き、シャドウビーストの一撃を避けると、背後に回り込んで鋭い歯で噛み付いた。
その強力な顎の力で、シャドウビーストの体に深く傷を負わせた。

だが、シャドウビーストは簡単には倒れない。すぐに影の中に姿を消し、
再びオレたちの視界から消えていった。ゴロウは鋭い目つきで周囲を警戒し、影の中を探っていた。


「ダイ、影に潜んでるよ。注意して!」

その瞬間、シャドウビーストがオレの背後から不意打ちを仕掛けてきた。
だが、ゴロウが素早く反応し、魔力を纏った尻尾でその攻撃を弾いた。

「やらせないよ!」
ゴロウは戦闘を楽しんでいるように見えた。


オレはゴロウの動きに驚嘆していたが、シャドウビーストはさらに激しく襲いかかってきた。
ゴロウは闘争本能を覚醒させ、再び相手を威嚇するように低く唸り声を上げた。
その瞬間、ゴロウはオレに目配せをした。

「ダイ、魔法であのあたりに水をいっぱいかけて」

「分かった!」

オレはゴロウの指示を受けて、水魔法を発動し、地面の一部に水をかけ続けた。
その水は次第に泥沼に変わり、ゴロウの戦闘に適した環境を整えた。

オレはゴロウのやりたいことがわかっていた。
「ゴロウなら、この泥沼で本領を発揮できるはずだ…!」


ゴロウはシャドウビーストを狙い、尻尾で強打を繰り出す。
シャドウビーストはその泥に足を取られ、動きが鈍くなる。


「これで動けないよ!」
そして、ゴロウはその隙を逃さず、シャドウビーストの足に噛み付いた。
ワニの必殺技の準備だ。
強力な顎でシャドウビーストをしっかりと捕らえ、そのまま泥の中で体を回転させ始めた。


ゴロウは泥の中でシャドウビーストを巻き込み、激しく体を回転させる。
ワニの必殺技『デスロール』だ

本来ワニのデスロールは、複数のワニが獲物に噛みついたまま高速回転し肉を噛みちぎる。
といった協力技なのだが、
ゴロウは沼に引きずり込み相手の自由を完璧に奪う『デスロール (沼)』にその技を進化させていた。


「何という…あの動きは一体…?」
レオンナンドは驚愕の表情を浮かべながら、ゴロウの動きに目を見張った。
彼はゴロウの前世がワニだということを知らないため、その独特な戦闘スタイルに戸惑っているようだった。

バルシュは静かに
「これが、ゴロウの戦闘本能か・・・」

シャドウビーストは泥沼の中で力を失い、ゴロウの回転に完全に飲み込まれていった。
最後にゴロウが一気に魔力を解放し、シャドウビーストは完全に消滅した。」


シャドウビーストが消滅すると、泥沼は再び静けさを取り戻した。
ゴロウは少し息を切らしながらも、満足げな表情で勝利を味わっているようだった。
「ダイ、どうだった?」


オレはその問いに心からの感動を込めて答えた。

「すごいよ、ゴロウ。デスロールを見事に決めたね!」

ゴロウは泥で目と口しかわからない顔で誇らしげに笑い、尻尾を揺らしていた。
「ダイの沼のおかげだよ!ありがとー」
と言いいつものように肩に乗ろうとしたが
反射的に手を伸ばし、ゴロウの顔を押さえて制止した。

「ちょっと待って!一回泥を落とそう」

その後、ゴロウは少し悲しそうに自ら魔法で作った水のボールに入り全身を洗濯するようにあらっていた。

ごめん、ゴロウ・・・
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