13 / 38
13 別の人とも?!
しおりを挟む
「ああ~~~~っ、ティルマン様、やぁっ、そこ気持ちいっもっと……もっと突いてぇ!」
「ん? ここかい? ここが好き?」
「そうそこっ、はぁ……あっ……そこ好きっ、ああっ、奥っ、奥が凄いの!!」
「アンヌのここは本当に具合がいいね。僕もすごく気持ちいいよ」
「あ――っ、もうだめイくっ、ティルマン様ぁ、アンヌもうイっちゃう――っ!!」
「ダメだよ、もう少し我慢だ」
「そんなぁ……意地悪言っちゃいや――っ、きもちぃ……きもちいのっ! イくっ、イくぅっ!!!」
「はっ、締め過ぎだよ……ぁ、うっ!」
……なにが「ぁ、うっ!」よ。
まったく、呆れるわ。
キースの不自然な狼狽えようから、こんなことだろうとは思っていた。お相手はきっとまた公爵家の使用人だろう。
今日、この屋敷にわたしがいることを知っていて自室で不貞に及ぶなんて……。
あまりの浅慮に呆れて言葉もでない。
というか、わたしを馬鹿にするにもほどがある。
チラリと周囲に目をやると、アンは鬼の形相をしていて、キースは蒼白で立ちすくみ、リリカは血の気のない顔で愕然としている。
リリカの様子を見る限り、ティルマン様の浮気相手は自分だけだと思っていたのかもしれない。自分も遊び相手の一人にすぎなかったことを知り、かなりショックを受けているようだ。
わたし自身、ここに来るまではリリカが本命であり、ティルマン様にとって唯一の愛する人なのだと思っていた。
けれど、どうやらそれは間違いだったらしい。
ティルマン様は不特定多数の女に手を出す、下半身のだらしないただの浮気常習犯だった。
「はぁ、もういいわ。アン、その扉を早く閉めてちょうだい。耳障りだわ」
「はい」
アンが扉を閉めると、その後も続いていたよがり声や淫らな水音、ベッドの軋む音などがピタリと聞こえなくなった。
立ち尽くしていたキースがハッと我に返る。
「あっ、あの、違うんです、クリステル様! これは、そのっ、そういうことじゃなく……」
「……」
「先ほどのことは、ちょっとした間違いで……ティルマン様はクリステル様を愛していらっしゃいます!! ええ、絶対にそうです!」
ティルマン様を必死で庇おうとするキースはとても憐れだ。
確かキースはティルマン様の乳兄弟だったはず。これまで何度も顔を合わせ、会話をしたことがあるけれど、誠実で思いやりのある人物だという印象が高い。
けれど、いい従者ではない。
本当に主人思いで忠誠心の厚い従者なら、どんな手を使ってでも、どれだけ自分が嫌われようともティルマン様に忠言して、浮気などさせるべきではなかった。しないよう諭すべきだった。
まあ、なにを言ったところで、今更遅いけれどね。
あんな場面に複数の証人と共に遭遇したのだから、わたしたちの婚約は間違いなく破棄されることになる。今やわたしがティルマン様やキースのことを心配する必要は、もうどこにもない。
「アン、帰りましょう。このお屋敷での用事はなくなったわ。恐らく永遠に、ね」
気の抜けた様なリリカとあたふたするキースをその場に残し、わたしとアンはすぐにアダルベルト公爵邸を後にしたのだった。
「ん? ここかい? ここが好き?」
「そうそこっ、はぁ……あっ……そこ好きっ、ああっ、奥っ、奥が凄いの!!」
「アンヌのここは本当に具合がいいね。僕もすごく気持ちいいよ」
「あ――っ、もうだめイくっ、ティルマン様ぁ、アンヌもうイっちゃう――っ!!」
「ダメだよ、もう少し我慢だ」
「そんなぁ……意地悪言っちゃいや――っ、きもちぃ……きもちいのっ! イくっ、イくぅっ!!!」
「はっ、締め過ぎだよ……ぁ、うっ!」
……なにが「ぁ、うっ!」よ。
まったく、呆れるわ。
キースの不自然な狼狽えようから、こんなことだろうとは思っていた。お相手はきっとまた公爵家の使用人だろう。
今日、この屋敷にわたしがいることを知っていて自室で不貞に及ぶなんて……。
あまりの浅慮に呆れて言葉もでない。
というか、わたしを馬鹿にするにもほどがある。
チラリと周囲に目をやると、アンは鬼の形相をしていて、キースは蒼白で立ちすくみ、リリカは血の気のない顔で愕然としている。
リリカの様子を見る限り、ティルマン様の浮気相手は自分だけだと思っていたのかもしれない。自分も遊び相手の一人にすぎなかったことを知り、かなりショックを受けているようだ。
わたし自身、ここに来るまではリリカが本命であり、ティルマン様にとって唯一の愛する人なのだと思っていた。
けれど、どうやらそれは間違いだったらしい。
ティルマン様は不特定多数の女に手を出す、下半身のだらしないただの浮気常習犯だった。
「はぁ、もういいわ。アン、その扉を早く閉めてちょうだい。耳障りだわ」
「はい」
アンが扉を閉めると、その後も続いていたよがり声や淫らな水音、ベッドの軋む音などがピタリと聞こえなくなった。
立ち尽くしていたキースがハッと我に返る。
「あっ、あの、違うんです、クリステル様! これは、そのっ、そういうことじゃなく……」
「……」
「先ほどのことは、ちょっとした間違いで……ティルマン様はクリステル様を愛していらっしゃいます!! ええ、絶対にそうです!」
ティルマン様を必死で庇おうとするキースはとても憐れだ。
確かキースはティルマン様の乳兄弟だったはず。これまで何度も顔を合わせ、会話をしたことがあるけれど、誠実で思いやりのある人物だという印象が高い。
けれど、いい従者ではない。
本当に主人思いで忠誠心の厚い従者なら、どんな手を使ってでも、どれだけ自分が嫌われようともティルマン様に忠言して、浮気などさせるべきではなかった。しないよう諭すべきだった。
まあ、なにを言ったところで、今更遅いけれどね。
あんな場面に複数の証人と共に遭遇したのだから、わたしたちの婚約は間違いなく破棄されることになる。今やわたしがティルマン様やキースのことを心配する必要は、もうどこにもない。
「アン、帰りましょう。このお屋敷での用事はなくなったわ。恐らく永遠に、ね」
気の抜けた様なリリカとあたふたするキースをその場に残し、わたしとアンはすぐにアダルベルト公爵邸を後にしたのだった。
58
あなたにおすすめの小説
愛しい人、あなたは王女様と幸せになってください
無憂
恋愛
クロエの婚約者は銀の髪の美貌の騎士リュシアン。彼はレティシア王女とは幼馴染で、今は護衛騎士だ。二人は愛し合い、クロエは二人を引き裂くお邪魔虫だと噂されている。王女のそばを離れないリュシアンとは、ここ数年、ろくな会話もない。愛されない日々に疲れたクロエは、婚約を破棄することを決意し、リュシアンに通告したのだが――
冷酷王子と逃げたいのに逃げられなかった婚約者
月下 雪華
恋愛
我が国の第2王子ヴァサン・ジェミレアスは「氷の冷酷王子」と呼ばれている。彼はその渾名の通り誰に対しても無反応で、冷たかった。それは、彼の婚約者であるカトリーヌ・ブローニュにでさえ同じであった。そんな彼の前に現れた常識のない女に心を乱したカトリーヌは婚約者の席から逃げる事を思いつく。だが、それを阻止したのはカトリーヌに何も思っていなさそうなヴァサンで……
誰に対しても冷たい反応を取る王子とそんな彼がずっと好きになれない令嬢の話
【完結】私は義兄に嫌われている
春野オカリナ
恋愛
私が5才の時に彼はやって来た。
十歳の義兄、アーネストはクラウディア公爵家の跡継ぎになるべく引き取られた子供。
黒曜石の髪にルビーの瞳の強力な魔力持ちの麗しい男の子。
でも、両親の前では猫を被っていて私の事は「出来損ないの公爵令嬢」と馬鹿にする。
意地悪ばかりする義兄に私は嫌われている。
お買い上げありがとうございます旦那様
キマイラ
恋愛
借金のかたに嫁いだ私。だというのに旦那様は「すまないアデライン、君を愛することはない。いや、正確には恐らく私は君を愛することができない。許してくれ」などと言ってきた。
乙女ゲームのヒロインの姉に転生した女の結婚のお話。
「王太子殿下に魅了をかけてしまいました。大至急助けてください」にチラッと出てきたアデラインが主人公です。単体で読めます。
すれ違いのその先に
ごろごろみかん。
恋愛
転がり込んできた政略結婚ではあるが初恋の人と結婚することができたリーフェリアはとても幸せだった。
彼の、血を吐くような本音を聞くまでは。
ほかの女を愛しているーーーそれを聞いたリーフェリアは、彼のために身を引く決意をする。
*愛が重すぎるためそれを隠そうとする王太子と愛されていないと勘違いしてしまった王太子妃のお話
【完結】夢見たものは…
伽羅
恋愛
公爵令嬢であるリリアーナは王太子アロイスが好きだったが、彼は恋愛関係にあった伯爵令嬢ルイーズを選んだ。
アロイスを諦めきれないまま、家の為に何処かに嫁がされるのを覚悟していたが、何故か父親はそれをしなかった。
そんな父親を訝しく思っていたが、アロイスの結婚から三年後、父親がある行動に出た。
「みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る」で出てきたガヴェニャック王国の国王の側妃リリアーナの話を掘り下げてみました。
ハッピーエンドではありません。
第二王子の婚約者候補になりましたが、専属護衛騎士が好みのタイプで困ります!
春浦ディスコ
恋愛
王城でのガーデンパーティーに参加した伯爵令嬢のシャルロットは第二王子の婚約者候補に選ばれる。
それが気に食わないもう一人の婚約者候補にビンタされると、騎士が助けてくれて……。
第二王子の婚約者候補になったシャルロットが堅物な専属護衛騎士のアランと両片思いを経たのちに溺愛されるお話。
前作「婚活に失敗したら第四王子の家庭教師になりました」と同じ世界観ですが、単品でお読みいただけます。
コワモテ軍人な旦那様は彼女にゾッコンなのです~新婚若奥様はいきなり大ピンチ~
二階堂まや♡電書「騎士団長との~」発売中
恋愛
政治家の令嬢イリーナは社交界の《白薔薇》と称される程の美貌を持ち、不自由無く華やかな生活を送っていた。
彼女は王立陸軍大尉ディートハルトに一目惚れするものの、国内で政治家と軍人は長年対立していた。加えて軍人は質実剛健を良しとしており、彼女の趣味嗜好とはまるで正反対であった。
そのためイリーナは華やかな生活を手放すことを決め、ディートハルトと無事に夫婦として結ばれる。
幸せな結婚生活を謳歌していたものの、ある日彼女は兄と弟から夜会に参加して欲しいと頼まれる。
そして夜会終了後、ディートハルトに華美な装いをしているところを見られてしまって……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる