お義兄様に一目惚れした!

よーこ

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13 別の人とも?!

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「ああ~~~~っ、ティルマン様、やぁっ、そこ気持ちいっもっと……もっと突いてぇ!」
「ん? ここかい? ここが好き?」
「そうそこっ、はぁ……あっ……そこ好きっ、ああっ、奥っ、奥が凄いの!!」
「アンヌのここは本当に具合がいいね。僕もすごく気持ちいいよ」
「あ――っ、もうだめイくっ、ティルマン様ぁ、アンヌもうイっちゃう――っ!!」
「ダメだよ、もう少し我慢だ」
「そんなぁ……意地悪言っちゃいや――っ、きもちぃ……きもちいのっ! イくっ、イくぅっ!!!」
「はっ、締め過ぎだよ……ぁ、うっ!」

 ……なにが「ぁ、うっ!」よ。
 まったく、呆れるわ。

 キースの不自然な狼狽えようから、こんなことだろうとは思っていた。お相手はきっとまた公爵家の使用人だろう。
 今日、この屋敷にわたしがいることを知っていて自室で不貞ことに及ぶなんて……。
 あまりの浅慮に呆れて言葉もでない。

 というか、わたしを馬鹿にするにもほどがある。

 チラリと周囲に目をやると、アンは鬼の形相をしていて、キースは蒼白で立ちすくみ、リリカは血の気のない顔で愕然としている。

 リリカの様子を見る限り、ティルマン様の浮気相手は自分だけだと思っていたのかもしれない。自分も遊び相手の一人にすぎなかったことを知り、かなりショックを受けているようだ。
 わたし自身、ここに来るまではリリカが本命であり、ティルマン様にとって唯一の愛する人なのだと思っていた。
 けれど、どうやらそれは間違いだったらしい。

 ティルマン様は不特定多数の女に手を出す、下半身のだらしないただの浮気常習犯だった。

「はぁ、もういいわ。アン、その扉を早く閉めてちょうだい。耳障りだわ」
「はい」

 アンが扉を閉めると、その後も続いていたよがり声や淫らな水音、ベッドの軋む音などがピタリと聞こえなくなった。

 立ち尽くしていたキースがハッと我に返る。

「あっ、あの、違うんです、クリステル様! これは、そのっ、そういうことじゃなく……」
「……」
「先ほどのことは、ちょっとした間違いで……ティルマン様はクリステル様を愛していらっしゃいます!! ええ、絶対にそうです!」

 ティルマン様を必死で庇おうとするキースはとても憐れだ。

 確かキースはティルマン様の乳兄弟だったはず。これまで何度も顔を合わせ、会話をしたことがあるけれど、誠実で思いやりのある人物だという印象が高い。

 けれど、いい従者ではない。

 本当に主人思いで忠誠心の厚い従者なら、どんな手を使ってでも、どれだけ自分が嫌われようともティルマン様に忠言して、浮気などさせるべきではなかった。しないよう諭すべきだった。

 まあ、なにを言ったところで、今更遅いけれどね。
 あんな場面に複数の証人と共に遭遇したのだから、わたしたちの婚約は間違いなく破棄されることになる。今やわたしがティルマン様やキースのことを心配する必要は、もうどこにもない。

「アン、帰りましょう。このお屋敷での用事はなくなったわ。恐らく永遠に、ね」

 気の抜けた様なリリカとあたふたするキースをその場に残し、わたしとアンはすぐにアダルベルト公爵邸を後にしたのだった。


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