宝箱の中のキラキラ ~悪役令嬢に仕立て上げられそうだけど回避します~

よーこ

文字の大きさ
4 / 7

4

しおりを挟む
 ジェイニーとカーラから強く睨みつけられ、そのあまりの迫力にテイラーは半歩ほど後退あとずさった。その動きに合わせたかのように、ずいとジェイニーが前に出る。

「テイラー様、謝れとはどういうことですの? マリアーナ様はやっていないと言ってらっしゃるわ」
「ふ、ふん、あんなのは言い逃れるための嘘に決まっている!」
「嘘? あら、それはおかしいですわねぇ」

 かわいらしく首を傾げた後、ジェイニーは細めた目でテイラーをねめつけた。

「だって昨日の放課後、わたくしたち三人は教室を出たその足で、街で評判のカフェへと一緒に出かけましたのよ? 寄り道はしておらず、そこの男爵令嬢とは一度も会いませんでしたわ」
「……ジェイニー嬢、友人をかばいたい気持ちは分かるが、あまり褒められたこととは思えないな。友人だからこそ真実を語るべきでは?」
「あら、テイラー様はわたくしが嘘をついているとおっしゃるの? 今代の王妃様を伯母に持つこのわたくしが? こんな公衆の面前で嘘を言っていると? おっしゃるの? え、本当に?」

 目が一ミリも笑っていない笑顔で自分を凝視するジェイニーに、テイラーの背筋に悪寒が走る。

「そ、そんなつもりはないが、しかし、状況から考えると……」

 とその時、テイラーの後からジョゼが叫んだ。

「あのっ、あのっ、もしかしたら、あたしが見間違えたかもしれないです」

 ジョゼの声に、え、とテイラーが目を大きく見開いた。

「シ、ジョゼ……?」
「あたしを突き落とした相手のこと、実は後ろ姿しか見えなかったんです。マリアーナ様と同じ髪色だったし後ろ姿もよく似てたから、それでつい思い込んじゃったのかも。でもそれはいつもマリアーナ様に虐められていたから、今回もそう違いないと思っちゃったからで……」
「な、なるほど、そうだったのか。そ、そうだな、やはりジョゼは悪くない。悪いのは勘違いされる原因を作ったマリアーナの方だ。自業自得だ!」

 勘違いを謝罪するでもなく、冤罪をかけられたマリアーナの方に非があると言わんばかりのテイラーたち。そんな彼らに我慢できなくなったのか、今度はカーラまでもが凍える視線をテイラーとジョゼに向けた。

「ねえ、そこのあなた、虐められたとか言っているけれど、マリアーナ様が本当にあなたを虐めたの?」
「されました! ホントですっ! 低い身分をバカにされたり、庶子であることを蔑まれたり、教科書を破かれたり廊下で足をひっかけて転ばされたりしました。それに池に落とされたことだって、お母様の形見のネックレスを捨てられたことだってあります! あたし、とても悲しくて……っ!!」

 ジョゼは顔を両手で覆うと、ひっくひっくと泣き始めた。
 かわいそうに、とテイラーがいたわるように泣くジョゼを抱きしめる。

 それを見ていた周囲の生徒たちからは、ジョゼに同情するような優しい視線が向けられた。反対に、虐めたとされるマリアーナには、怒りと蔑みの視線が突き刺さる。

「泣くな、ジョゼ。これからは俺が守ってあげるから。もう二度と虐めなどさせやしない」
「あ……ありがとう、テイラー。すごく嬉しい。あたし、今までずっと、とても怖かったの! 辛かったの! ぐすっ」
「大丈夫だ、もう大丈夫」
「うんっ、ありがとう、テイラー」
「あー、ゴホンゴホン」

 とそこでカーラがわざとらしく咳払いをしてみせた。その顔は笑顔でありながら、不機嫌さとイラつきの感情だけを表している。

「話を戻すけど、マリアーナ様がいつ虐めをしたと言うの? 言わせてもらえばあなた、いつも男性たち数人を周りにはべらしていて、一人になることがないように見えたど? テイラー様も、休み時間や放課後のたびに彼女と一緒にいましたよね? そんな中で、マリアーナ様がそこの令嬢に虐めをする機会があったとは思えませんが?」
「そ、それは……」

 一瞬たじろいだテイラーだったが、すぐに反論した。

「ジョゼだって一人になる時くらいはあるだろう。俺は学年が違うから、常に一緒にいたわけじゃない」
「そうです。マリアーナ様はいつもあたしが一人でいる時を見計らって意地悪してくるんです。だから人に助けてもらうことができなくて……」
「あら、そんなこと不可能じゃない?」
「え? 不可能? なんで?」

 不思議そうな顔をするジョゼに、諭すような口調でカーラが説明する。

「あなたが一人になる時を狙うためには、マリアーナ様はいつもあなたを見張っていなければならない。先ほどテイラー様も言っていたけれど、わたしたちとあなたとは学年が違うから校舎も別。休み時間のたびに一年の校舎に行って虐める機会を探るなんて、そんなことできるはずがないわ」

 そうね、とジェイニーも同意する。

 ジェイニー、カーラ、マリアーナの三人は、学園にいる間は基本的にいつも一緒に行動している。そんな中、マリアーナがこっそりと教室を抜け出し、他の二人に知られずにジョゼを虐めるなど、どう考えても不可能なのだった。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ヒロインは敗北しました

東稔 雨紗霧
ファンタジー
王子と懇ろになり、王妃になる玉の輿作戦が失敗して証拠を捏造して嵌めようとしたら公爵令嬢に逆に断罪されたルミナス。 ショックのあまり床にへたり込んでいると聞いた事の無い音と共に『ヒロインは敗北しました』と謎の文字が目の前に浮かび上がる。 どうやらこの文字、彼女にしか見えていないようで謎の現象に混乱するルミナスを置いてきぼりに断罪はどんどん進んでいき、公爵令嬢を国外追放しようとしたルミナスは逆に自分が国外追放される事になる。 「さっき、『私は優しいから処刑じゃなくて国外追放にしてあげます』って言っていたわよね?ならわたくしも優しさを出して国外追放にしてさしあげるわ」 そう言って嘲笑う公爵令嬢の頭上にさっきと同じ音と共に『国外追放ルートが解放されました』と新たな文字が現れた。

【完結】数十分後に婚約破棄&冤罪を食らうっぽいので、野次馬と手を組んでみた

月白ヤトヒコ
ファンタジー
「レシウス伯爵令嬢ディアンヌ! 今ここで、貴様との婚約を破棄するっ!?」  高らかに宣言する声が、辺りに響き渡った。  この婚約破棄は数十分前に知ったこと。  きっと、『衆人環視の前で婚約破棄する俺、かっこいい!』とでも思っているんでしょうね。キモっ! 「婚約破棄、了承致しました。つきましては、理由をお伺いしても?」  だからわたくしは、すぐそこで知り合った野次馬と手を組むことにした。 「ふっ、知れたこと! 貴様は、わたしの愛するこの可憐な」 「よっ、まさかの自分からの不貞の告白!」 「憎いねこの色男!」  ドヤ顔して、なんぞ花畑なことを言い掛けた言葉が、飛んで来た核心的な野次に遮られる。 「婚約者を蔑ろにして育てた不誠実な真実の愛!」 「女泣かせたぁこのことだね!」 「そして、婚約者がいる男に擦り寄るか弱い女!」 「か弱いだぁ? 図太ぇ神経した厚顔女の間違いじゃぁねぇのかい!」  さあ、存分に野次ってもらうから覚悟して頂きますわ。 設定はふわっと。 『腐ったお姉様。伏してお願い奉りやがるから、是非とも助けろくださいっ!?』と、ちょっと繋りあり。『腐ったお姉様~』を読んでなくても大丈夫です。

妹が嫁げば終わり、、、なんてことはありませんでした。

頭フェアリータイプ
ファンタジー
物語が終わってハッピーエンド、なんてことはない。その後も人生は続いていく。 結婚エピソード追加しました。

王女殿下は欲しがり王女

碧井 汐桜香
ファンタジー
他人の物を欲しがる王女。 幼少の頃は、兄王子のお菓子や服、弟王子のおもちゃ。王妃の宝飾品まで。 大きくなってからもそれは続き、国王の買ったばかりの魔術具まで欲しがった。 しかし、王家の者はだれも王女の欲しがりを止めることなく、王女の言うがままになって、王女の我が儘を許している。 王女の欲しがりを断った、先の宰相はその立場を失ったという噂すら流れている。 微笑みのまま行われる王女の欲しがりは断ってはならない。そんな不文律から、各貴族家は多くのものを差し出した。 伯爵家の家宝、辺境伯家の家畜、子爵家の商会まで。 そんな王女がついに、他人の婚約者まで欲しがった。

逆行転生って胎児から!?

章槻雅希
ファンタジー
冤罪によって処刑されたログス公爵令嬢シャンセ。母の命と引き換えに生まれた彼女は冷遇され、その膨大な魔力を国のために有効に利用する目的で王太子の婚約者として王家に縛られていた。家族に冷遇され王家に酷使された彼女は言われるままに動くマリオネットと化していた。 そんな彼女を疎んだ王太子による冤罪で彼女は処刑されたのだが、気づけば時を遡っていた。 そう、胎児にまで。 別の連載ものを書いてる最中にふと思いついて書いた1時間クオリティ。 長編予定にしていたけど、プロローグ的な部分を書いているつもりで、これだけでも短編として成り立つかなと、一先ずショートショートで投稿。長編化するなら、後半の国王・王妃とのあれこれは無くなる予定。

婚約破棄令嬢は、前線に立つ

あきづきみなと
ファンタジー
「婚約を破棄する!」 おきまりの宣言、おきまりの断罪。 小説家に○ろうにも掲載しています。

(完結)婚約破棄を破棄?そうは問屋がおろしません!〜婚約破棄の現場に報道部員が居合わせた!〜

オリハルコン陸
ファンタジー
自分から婚約破棄した癖によりを戻したがる第一王子と、御断りする気満々な元婚約者。最初の婚約破棄の原因になった男爵令嬢に、デバガメ報道部員。 さあ、四つ巴のショーの始まりだ!

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

処理中です...