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ジェイニーとカーラから強く睨みつけられ、そのあまりの迫力にテイラーは半歩ほど後退った。その動きに合わせたかのように、ずいとジェイニーが前に出る。
「テイラー様、謝れとはどういうことですの? マリアーナ様はやっていないと言ってらっしゃるわ」
「ふ、ふん、あんなのは言い逃れるための嘘に決まっている!」
「嘘? あら、それはおかしいですわねぇ」
かわいらしく首を傾げた後、ジェイニーは細めた目でテイラーをねめつけた。
「だって昨日の放課後、わたくしたち三人は教室を出たその足で、街で評判のカフェへと一緒に出かけましたのよ? 寄り道はしておらず、そこの男爵令嬢とは一度も会いませんでしたわ」
「……ジェイニー嬢、友人を庇いたい気持ちは分かるが、あまり褒められたこととは思えないな。友人だからこそ真実を語るべきでは?」
「あら、テイラー様はわたくしが嘘をついているとおっしゃるの? 今代の王妃様を伯母に持つこのわたくしが? こんな公衆の面前で嘘を言っていると? おっしゃるの? え、本当に?」
目が一ミリも笑っていない笑顔で自分を凝視するジェイニーに、テイラーの背筋に悪寒が走る。
「そ、そんなつもりはないが、しかし、状況から考えると……」
とその時、テイラーの後からジョゼが叫んだ。
「あのっ、あのっ、もしかしたら、あたしが見間違えたかもしれないです」
ジョゼの声に、え、とテイラーが目を大きく見開いた。
「シ、ジョゼ……?」
「あたしを突き落とした相手のこと、実は後ろ姿しか見えなかったんです。マリアーナ様と同じ髪色だったし後ろ姿もよく似てたから、それでつい思い込んじゃったのかも。でもそれはいつもマリアーナ様に虐められていたから、今回もそう違いないと思っちゃったからで……」
「な、なるほど、そうだったのか。そ、そうだな、やはりジョゼは悪くない。悪いのは勘違いされる原因を作ったマリアーナの方だ。自業自得だ!」
勘違いを謝罪するでもなく、冤罪をかけられたマリアーナの方に非があると言わんばかりのテイラーたち。そんな彼らに我慢できなくなったのか、今度はカーラまでもが凍える視線をテイラーとジョゼに向けた。
「ねえ、そこのあなた、虐められたとか言っているけれど、マリアーナ様が本当にあなたを虐めたの?」
「されました! ホントですっ! 低い身分をバカにされたり、庶子であることを蔑まれたり、教科書を破かれたり廊下で足をひっかけて転ばされたりしました。それに池に落とされたことだって、お母様の形見のネックレスを捨てられたことだってあります! あたし、とても悲しくて……っ!!」
ジョゼは顔を両手で覆うと、ひっくひっくと泣き始めた。
かわいそうに、とテイラーが労わるように泣くジョゼを抱きしめる。
それを見ていた周囲の生徒たちからは、ジョゼに同情するような優しい視線が向けられた。反対に、虐めたとされるマリアーナには、怒りと蔑みの視線が突き刺さる。
「泣くな、ジョゼ。これからは俺が守ってあげるから。もう二度と虐めなどさせやしない」
「あ……ありがとう、テイラー。すごく嬉しい。あたし、今までずっと、とても怖かったの! 辛かったの! ぐすっ」
「大丈夫だ、もう大丈夫」
「うんっ、ありがとう、テイラー」
「あー、ゴホンゴホン」
とそこでカーラがわざとらしく咳払いをしてみせた。その顔は笑顔でありながら、不機嫌さとイラつきの感情だけを表している。
「話を戻すけど、マリアーナ様がいつ虐めをしたと言うの? 言わせてもらえばあなた、いつも男性たち数人を周りにはべらしていて、一人になることがないように見えたど? テイラー様も、休み時間や放課後のたびに彼女と一緒にいましたよね? そんな中で、マリアーナ様がそこの令嬢に虐めをする機会があったとは思えませんが?」
「そ、それは……」
一瞬たじろいだテイラーだったが、すぐに反論した。
「ジョゼだって一人になる時くらいはあるだろう。俺は学年が違うから、常に一緒にいたわけじゃない」
「そうです。マリアーナ様はいつもあたしが一人でいる時を見計らって意地悪してくるんです。だから人に助けてもらうことができなくて……」
「あら、そんなこと不可能じゃない?」
「え? 不可能? なんで?」
不思議そうな顔をするジョゼに、諭すような口調でカーラが説明する。
「あなたが一人になる時を狙うためには、マリアーナ様はいつもあなたを見張っていなければならない。先ほどテイラー様も言っていたけれど、わたしたちとあなたとは学年が違うから校舎も別。休み時間のたびに一年の校舎に行って虐める機会を探るなんて、そんなことできるはずがないわ」
そうね、とジェイニーも同意する。
ジェイニー、カーラ、マリアーナの三人は、学園にいる間は基本的にいつも一緒に行動している。そんな中、マリアーナがこっそりと教室を抜け出し、他の二人に知られずにジョゼを虐めるなど、どう考えても不可能なのだった。
「テイラー様、謝れとはどういうことですの? マリアーナ様はやっていないと言ってらっしゃるわ」
「ふ、ふん、あんなのは言い逃れるための嘘に決まっている!」
「嘘? あら、それはおかしいですわねぇ」
かわいらしく首を傾げた後、ジェイニーは細めた目でテイラーをねめつけた。
「だって昨日の放課後、わたくしたち三人は教室を出たその足で、街で評判のカフェへと一緒に出かけましたのよ? 寄り道はしておらず、そこの男爵令嬢とは一度も会いませんでしたわ」
「……ジェイニー嬢、友人を庇いたい気持ちは分かるが、あまり褒められたこととは思えないな。友人だからこそ真実を語るべきでは?」
「あら、テイラー様はわたくしが嘘をついているとおっしゃるの? 今代の王妃様を伯母に持つこのわたくしが? こんな公衆の面前で嘘を言っていると? おっしゃるの? え、本当に?」
目が一ミリも笑っていない笑顔で自分を凝視するジェイニーに、テイラーの背筋に悪寒が走る。
「そ、そんなつもりはないが、しかし、状況から考えると……」
とその時、テイラーの後からジョゼが叫んだ。
「あのっ、あのっ、もしかしたら、あたしが見間違えたかもしれないです」
ジョゼの声に、え、とテイラーが目を大きく見開いた。
「シ、ジョゼ……?」
「あたしを突き落とした相手のこと、実は後ろ姿しか見えなかったんです。マリアーナ様と同じ髪色だったし後ろ姿もよく似てたから、それでつい思い込んじゃったのかも。でもそれはいつもマリアーナ様に虐められていたから、今回もそう違いないと思っちゃったからで……」
「な、なるほど、そうだったのか。そ、そうだな、やはりジョゼは悪くない。悪いのは勘違いされる原因を作ったマリアーナの方だ。自業自得だ!」
勘違いを謝罪するでもなく、冤罪をかけられたマリアーナの方に非があると言わんばかりのテイラーたち。そんな彼らに我慢できなくなったのか、今度はカーラまでもが凍える視線をテイラーとジョゼに向けた。
「ねえ、そこのあなた、虐められたとか言っているけれど、マリアーナ様が本当にあなたを虐めたの?」
「されました! ホントですっ! 低い身分をバカにされたり、庶子であることを蔑まれたり、教科書を破かれたり廊下で足をひっかけて転ばされたりしました。それに池に落とされたことだって、お母様の形見のネックレスを捨てられたことだってあります! あたし、とても悲しくて……っ!!」
ジョゼは顔を両手で覆うと、ひっくひっくと泣き始めた。
かわいそうに、とテイラーが労わるように泣くジョゼを抱きしめる。
それを見ていた周囲の生徒たちからは、ジョゼに同情するような優しい視線が向けられた。反対に、虐めたとされるマリアーナには、怒りと蔑みの視線が突き刺さる。
「泣くな、ジョゼ。これからは俺が守ってあげるから。もう二度と虐めなどさせやしない」
「あ……ありがとう、テイラー。すごく嬉しい。あたし、今までずっと、とても怖かったの! 辛かったの! ぐすっ」
「大丈夫だ、もう大丈夫」
「うんっ、ありがとう、テイラー」
「あー、ゴホンゴホン」
とそこでカーラがわざとらしく咳払いをしてみせた。その顔は笑顔でありながら、不機嫌さとイラつきの感情だけを表している。
「話を戻すけど、マリアーナ様がいつ虐めをしたと言うの? 言わせてもらえばあなた、いつも男性たち数人を周りにはべらしていて、一人になることがないように見えたど? テイラー様も、休み時間や放課後のたびに彼女と一緒にいましたよね? そんな中で、マリアーナ様がそこの令嬢に虐めをする機会があったとは思えませんが?」
「そ、それは……」
一瞬たじろいだテイラーだったが、すぐに反論した。
「ジョゼだって一人になる時くらいはあるだろう。俺は学年が違うから、常に一緒にいたわけじゃない」
「そうです。マリアーナ様はいつもあたしが一人でいる時を見計らって意地悪してくるんです。だから人に助けてもらうことができなくて……」
「あら、そんなこと不可能じゃない?」
「え? 不可能? なんで?」
不思議そうな顔をするジョゼに、諭すような口調でカーラが説明する。
「あなたが一人になる時を狙うためには、マリアーナ様はいつもあなたを見張っていなければならない。先ほどテイラー様も言っていたけれど、わたしたちとあなたとは学年が違うから校舎も別。休み時間のたびに一年の校舎に行って虐める機会を探るなんて、そんなことできるはずがないわ」
そうね、とジェイニーも同意する。
ジェイニー、カーラ、マリアーナの三人は、学園にいる間は基本的にいつも一緒に行動している。そんな中、マリアーナがこっそりと教室を抜け出し、他の二人に知られずにジョゼを虐めるなど、どう考えても不可能なのだった。
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