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呼んでいる声がする(その27)まりもの猫
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猫男は何処にいったのか、あの追いかけて行った女の人は追いついたのだろうか。
夕凪書店から見えるガラス扉の外は夕焼けの光を失い暗く夜の気配が色濃くなって来た。
そんな気配を感じながらも海外の作家のエッセイ、宇宙についての本、ヨーロッパの家の写真集、イラスト集、それからまた、蓮子と話した旅客船、その様な本棚を見て周っているうちに時計を見ると、蓮子と別れてから1時間が過ぎ7時半をまわっていた。
本屋にいると世界を回っている様だと瑠子は幸せ感な感覚に包まれた。
書店の外に出ると北風が体に吹きつけた。夕凪駅の周りは会社帰りの人も疎らになりそこから少し離れたバン屋が煌々と明かりを照らしていた。踏切を渡って海岸通りを歩いて行く。
風の冷たさを堪えながら蓮花との会話を思い出す。蓮花はあんな嫌がっている家に今いるのだ。
そんな事を考えていると皆が家路を急ぐこんな夜は暗い海が寂しく見えた
こういう時は、隣の家の留萌さんの様な陽気な会話が懐かしいと思った。
空には寒月が輝いていた。
ああ、本当に寒い、家直行の路線バスがあればいいのに、でも家の前のあの急坂を上るのはバスには大変に違いないと瑠子は思うのだった。
今日もチョコレートが食べたいと瑠子は強烈に思った。海岸の店まりもなら夜の10時までやっていると思ったので波音を聞きながら足早に進んだ。
やっと暖かい明かりが灯る(まりも)が見えて来た。
店内に入るとほっとする暖かさが体を包んだ。
「いらっしゃい。」
店の店主はにこやかに挨拶してくれる。
「あ、こんにちは。」
そう言って店の奥の方へ歩いて行った。
すると驚いた事に猫がついて来た。その猫は首輪をしているので飼い猫だろうかと、店主の方を見ると彼はにこっと笑って頷いた。
ああ、こないだ言ってた店主さんの飼っている猫の秀子ちゃんかなと思い出した。
秀子ちゃんは蓮子がチョコレートを手に取るのを見上げている様子だ。
棚から並んでいる赤い板チョコレートの中から一つを手に取るとレジに向かったのだが、秀子ちゃんもついて来る
店主にチョコレートを渡すと店主の隣の丸椅子の上に秀子ちゃんはちょこんと座った。
「お、これ美味しいよね。わたしも好きなんだよ。」
秀子ちゃんは黙って座って瑠子をじっと見ている。
「かわいいですね。」
そういうと店主は嬉しそうだった。
赤いチョコレートを買った嬉しさと秀子ちゃんに会えた嬉しさで瑠子は、ほほえみながら店の外に出た。その途端北風は容赦なく吹き付けた。そしてまた大きな波の音が聞こえて来る。
腕時計を見ると8時半を差していて、すこし不気味な感じがした。
そう思った矢先、左側から男の人の気配がした
「おや。」
男の人は声を発した。瑠子は身構えた。
「瑠子ちゃん、寒いね。」
その男は言った。店の明かりに照らされた男はまたしても猫男であった。
「あービックリした。」
「そう?でも俺もここ、家に向かう道だからさ。」
少し寂し気に猫男は言ったのであった。
つづく
チョコレート食べたくなりました^^
いつも読んでいただいてありがとうございます
夕凪書店から見えるガラス扉の外は夕焼けの光を失い暗く夜の気配が色濃くなって来た。
そんな気配を感じながらも海外の作家のエッセイ、宇宙についての本、ヨーロッパの家の写真集、イラスト集、それからまた、蓮子と話した旅客船、その様な本棚を見て周っているうちに時計を見ると、蓮子と別れてから1時間が過ぎ7時半をまわっていた。
本屋にいると世界を回っている様だと瑠子は幸せ感な感覚に包まれた。
書店の外に出ると北風が体に吹きつけた。夕凪駅の周りは会社帰りの人も疎らになりそこから少し離れたバン屋が煌々と明かりを照らしていた。踏切を渡って海岸通りを歩いて行く。
風の冷たさを堪えながら蓮花との会話を思い出す。蓮花はあんな嫌がっている家に今いるのだ。
そんな事を考えていると皆が家路を急ぐこんな夜は暗い海が寂しく見えた
こういう時は、隣の家の留萌さんの様な陽気な会話が懐かしいと思った。
空には寒月が輝いていた。
ああ、本当に寒い、家直行の路線バスがあればいいのに、でも家の前のあの急坂を上るのはバスには大変に違いないと瑠子は思うのだった。
今日もチョコレートが食べたいと瑠子は強烈に思った。海岸の店まりもなら夜の10時までやっていると思ったので波音を聞きながら足早に進んだ。
やっと暖かい明かりが灯る(まりも)が見えて来た。
店内に入るとほっとする暖かさが体を包んだ。
「いらっしゃい。」
店の店主はにこやかに挨拶してくれる。
「あ、こんにちは。」
そう言って店の奥の方へ歩いて行った。
すると驚いた事に猫がついて来た。その猫は首輪をしているので飼い猫だろうかと、店主の方を見ると彼はにこっと笑って頷いた。
ああ、こないだ言ってた店主さんの飼っている猫の秀子ちゃんかなと思い出した。
秀子ちゃんは蓮子がチョコレートを手に取るのを見上げている様子だ。
棚から並んでいる赤い板チョコレートの中から一つを手に取るとレジに向かったのだが、秀子ちゃんもついて来る
店主にチョコレートを渡すと店主の隣の丸椅子の上に秀子ちゃんはちょこんと座った。
「お、これ美味しいよね。わたしも好きなんだよ。」
秀子ちゃんは黙って座って瑠子をじっと見ている。
「かわいいですね。」
そういうと店主は嬉しそうだった。
赤いチョコレートを買った嬉しさと秀子ちゃんに会えた嬉しさで瑠子は、ほほえみながら店の外に出た。その途端北風は容赦なく吹き付けた。そしてまた大きな波の音が聞こえて来る。
腕時計を見ると8時半を差していて、すこし不気味な感じがした。
そう思った矢先、左側から男の人の気配がした
「おや。」
男の人は声を発した。瑠子は身構えた。
「瑠子ちゃん、寒いね。」
その男は言った。店の明かりに照らされた男はまたしても猫男であった。
「あービックリした。」
「そう?でも俺もここ、家に向かう道だからさ。」
少し寂し気に猫男は言ったのであった。
つづく
チョコレート食べたくなりました^^
いつも読んでいただいてありがとうございます
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