呼んでいる声がする

音羽有紀

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呼んでいる声がする(その32)彼氏の事

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 心の闇は、秀子ちゃんの温かさで薄まった様だと瑠子は思った。

暖かいマーマレードから出るとなおさら寒さは身に染みる。

 凍えながら猫達の集まる街灯まで来るともう、猫はいなかった。

猫男からご飯を貰ってねぐらに帰ったのだろうかと思った。

イエローハウスが坂の上に見える。

猫の集まる街灯、そして淋しい人間が集うイエローハウスか

 しかし、猫男は、それでも大学の女の子に囲まれて幸せな感じがしたが

彼は彼で孤独を感じているのだ。人は見た目ではわからないのだなと思った。

その時、佐季店長の勘ぐる様な眼差しが、凍える氷の様な空気に

浮かんだ。

「佐季店長、少女漫画の見過ぎかも。」

と思わず呟いてしまった。その後辺りを見回した

 坂の途中に家が並ぶこの坂の周辺、聞かれてしまうではないか、

 それにしても、今日は一段と寒いなと瑠子は思った、携帯のお天気を見ると

明日は雪になっていた。瑠子はこないだの雪の日を思い出してぞっとした。

 あんな大変な目はまっぴらだと思った。厚手の桃色のセーターを着てまりもで買った板チョコを食べた。

明日の雪の恐怖は、チョコレートの甘さと共に少し薄らいだ。

 翌日は案の定、街は白く染まってしまっていた。

しかしながら窓から見えるその景色はやはり美しく雪の妖精が舞い降りる様だと瑠子は思った。

 凍えながら、身支度をして携帯の列車の延滞情報を見た。

遅れてはいない、やはり樹海線は、よほどの事が無い限り止まりはしないのだと思った。

わかってはいたが、がっかりした。

 帰り積もらない事を祈りながら家を出た。

この時はこれが、またもや長い一日の始まりになるのだとは予想できていなかった。

 雑貨屋の仕事中も雪が気になったが外に出た佐季店長は、こう言った

「この前より、積もらないみたい。」

それを聞いて安心した。

帰り、瑠子は蓮子の務める鞄屋に寄った。

「今日、雪あまり積もらないらしい。」

そう瑠子は仕事中の蓮花に話しかけた。

「良かったですね。」

「ね。」

お茶でもと思ったがダメだよね、今日もどうせ蓮花は早々と帰っちゃうから内心思った。

 だけどなぜいつも早く帰ってしまうのだろうかという

沸き上がる疑念を解消しなければ、もうどうにもならない気がした。

「あの、門限とかあるの?。」

「え、ああ。」

そう言ったきり蓮子は黙った。

あ、この会話、彼氏と彼女みたいになっちゃったよと蓮子は思った。

「あの、家にいないと、電話がかかってくるんです。」

「え?誰から?」

「彼から。」

付き合っている人が居る事に軽い衝撃を感じたが、それよりも

この時代に家に電話がかかって来る事に驚いた。

「瑠子ちゃんは、付き合っている人いる?」

蓮花はおずおずと聞いた。

「いないの。」

「あ、ごめん。」

「謝らなくていいよ、あたし、そういうの興味ないの。

あたし、男の人が信じられないのかもしれない。」

「えっ。」

驚いた様に蓮花は黙った。

「親を見ているから、愛とか信じられないの。」

そう言うと瑠子はため息をついた。      

つづく

いつも読んでいただいてありがとうございます

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