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第2章
呼んでいる声がする(第2章)その19カプセル
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呼んでいる声がする 第2章 その19(カプセル)
マーマレードの仕事が終わりになり白く輝く月光の下を瑠子は
家路を目指して海沿いの道を歩いていた。
雑貨屋まりもで、メロンパンを買った。猫の秀子ちゃんは、レジの隣で
いつもの様に瑠子をじっと見つめている。
あたしの事秀子ちゃんは覚えてくれているのかなと嬉しい気持ちに瑠子は
なった。
まりもの裏の海岸に細い路地を通って歩いて行った。
誰もいない海岸をイメージしていたが
そこには留萌さんがいた。
「こんばんは。」
嬉しくなって声を掛けた。
「ああ、こんばんは。また、会ったね。」
それからぼそっと留萌さんは言った。
「北海道に行くらしいね。紫苑君。」
「逃げ出すんですよ。彼は。」
「逃げ出す?」
瑠子は、頷いた。
「……しがらみから。」
「しがらみか。」
「まあ、誰にでも有るよね、そういうことって。」
「そうなんですよ。誰でも有るんです。けれど彼は、立ち向かわず逃げ出すんです。そうですけど、短絡的過ぎます」
それを聞くと可笑しそうに留萌さんは笑った。
「手厳しいな。」
留萌さんは、ぼそっと言った。
「瑠子ちゃんは、知っているんだね。彼の事を。」
「知りませんけれどね。けれど。知ってます
ナイーブなんですよ。彼は。」
「それは、そうかもしれないな。彼は、繊細そうだもんね
留萌さんがその時ひときわ高く鳥が鳴いて二人の横を横切った
「あ、カモメが鳴いたね」
「夜でも?」
不思議に思って瑠子は聞いた。
「ああ、この前も鳴いて僕の上を飛んでましたよ。」
「そうなんですね。」
夜も鳴くカモメ、それはあたしの様ではないか。この暗い海があたし達には似合う。
それはまるで、この海、カモメ、ね留萌さん、猫男、アタシ達でだけでカプセルに入っているみたいだと瑠子は思った。カプセルの中から猫男だけが出て行くんだ。
この海辺の街のイエローハウスから。猫男はカプセルにいるなんてないんだけれど、と瑠子は思った。
そのとき風がふいたかと思うと波間が光った気がした。瑠子は強い衝動にかられた
「留萌さん、あたし言ってやります。紫苑君に。」
「えっ?」
じっと、留萌さんは、瑠子を見つめた。
「今から?」
腕時計を見ると、9時だった。
「ええ。鉄は熱いうちに打てといいますし。」
「うーん、こういう時にも使うのかな?それは。」
「使うと思います。」
「そうかな?」
「それじゃあ。留萌さんあたし紫苑君に言ってきます。」
「ああ、気を付けて。」
グレーのコートを着た彼は、軽く手を上にあげた。
瑠子は、歩き馴れた場所を急ぎ足で歩いて行った。猫男は、イエローハウスに帰っているのだろうか。だんだん、風が強くなって来た。夜の道は心をおかしくさせると瑠子は思った
そんな事を言うべきか迷いが生じて来た
いなくなるのに、関係ないのに、けれど、やはり言うべきではないかと決意した。
隣人では無いか、猫の世話をしている者
親の事で苦しむ同志ではないか。
だから助言するべきなのだ。逃げても良いのかと。
第一猫達をどうする気よ。
そんな事を考えで頭がぐるぐるしながら進んで行った。
走れば白い月が瑠子の後を追って来た。
真っ暗な坂道を抜けると曲がった所に猫達の餌をあげている側の街灯が
建っていた。そこに猫達に囲まれて猫男がいた。瑠子は息をのんだ。
「やあ。」
街灯に浮かび上がった彼は表情が感じられなかった。なんだか前にも
こんな光景見た事ある。そんな事を思いながら彼に近づいて行った。
彼を目にすると瑠子は言い出す勇気が消えかかった
が、暗闇に力を借りて声を発した
「逃げるんだわ。紫苑君は。」
「えっ。」
驚いた様に猫男は目を見開いた
「それ、どういうこと?」
「そういうこと、です。」
「もしかして、北海道の事?」
瑠子は頷いた。
その瑠子の言葉を聞いて彼は少し笑った猫男は、真面目な表情で言った。
「そうかもね。」
瑠子は、調子が狂った。反論の言葉が出て来るかと身構えていたからだ。
つづく
大変遅くなりました。すみませんです。
マーマレードの仕事が終わりになり白く輝く月光の下を瑠子は
家路を目指して海沿いの道を歩いていた。
雑貨屋まりもで、メロンパンを買った。猫の秀子ちゃんは、レジの隣で
いつもの様に瑠子をじっと見つめている。
あたしの事秀子ちゃんは覚えてくれているのかなと嬉しい気持ちに瑠子は
なった。
まりもの裏の海岸に細い路地を通って歩いて行った。
誰もいない海岸をイメージしていたが
そこには留萌さんがいた。
「こんばんは。」
嬉しくなって声を掛けた。
「ああ、こんばんは。また、会ったね。」
それからぼそっと留萌さんは言った。
「北海道に行くらしいね。紫苑君。」
「逃げ出すんですよ。彼は。」
「逃げ出す?」
瑠子は、頷いた。
「……しがらみから。」
「しがらみか。」
「まあ、誰にでも有るよね、そういうことって。」
「そうなんですよ。誰でも有るんです。けれど彼は、立ち向かわず逃げ出すんです。そうですけど、短絡的過ぎます」
それを聞くと可笑しそうに留萌さんは笑った。
「手厳しいな。」
留萌さんは、ぼそっと言った。
「瑠子ちゃんは、知っているんだね。彼の事を。」
「知りませんけれどね。けれど。知ってます
ナイーブなんですよ。彼は。」
「それは、そうかもしれないな。彼は、繊細そうだもんね
留萌さんがその時ひときわ高く鳥が鳴いて二人の横を横切った
「あ、カモメが鳴いたね」
「夜でも?」
不思議に思って瑠子は聞いた。
「ああ、この前も鳴いて僕の上を飛んでましたよ。」
「そうなんですね。」
夜も鳴くカモメ、それはあたしの様ではないか。この暗い海があたし達には似合う。
それはまるで、この海、カモメ、ね留萌さん、猫男、アタシ達でだけでカプセルに入っているみたいだと瑠子は思った。カプセルの中から猫男だけが出て行くんだ。
この海辺の街のイエローハウスから。猫男はカプセルにいるなんてないんだけれど、と瑠子は思った。
そのとき風がふいたかと思うと波間が光った気がした。瑠子は強い衝動にかられた
「留萌さん、あたし言ってやります。紫苑君に。」
「えっ?」
じっと、留萌さんは、瑠子を見つめた。
「今から?」
腕時計を見ると、9時だった。
「ええ。鉄は熱いうちに打てといいますし。」
「うーん、こういう時にも使うのかな?それは。」
「使うと思います。」
「そうかな?」
「それじゃあ。留萌さんあたし紫苑君に言ってきます。」
「ああ、気を付けて。」
グレーのコートを着た彼は、軽く手を上にあげた。
瑠子は、歩き馴れた場所を急ぎ足で歩いて行った。猫男は、イエローハウスに帰っているのだろうか。だんだん、風が強くなって来た。夜の道は心をおかしくさせると瑠子は思った
そんな事を言うべきか迷いが生じて来た
いなくなるのに、関係ないのに、けれど、やはり言うべきではないかと決意した。
隣人では無いか、猫の世話をしている者
親の事で苦しむ同志ではないか。
だから助言するべきなのだ。逃げても良いのかと。
第一猫達をどうする気よ。
そんな事を考えで頭がぐるぐるしながら進んで行った。
走れば白い月が瑠子の後を追って来た。
真っ暗な坂道を抜けると曲がった所に猫達の餌をあげている側の街灯が
建っていた。そこに猫達に囲まれて猫男がいた。瑠子は息をのんだ。
「やあ。」
街灯に浮かび上がった彼は表情が感じられなかった。なんだか前にも
こんな光景見た事ある。そんな事を思いながら彼に近づいて行った。
彼を目にすると瑠子は言い出す勇気が消えかかった
が、暗闇に力を借りて声を発した
「逃げるんだわ。紫苑君は。」
「えっ。」
驚いた様に猫男は目を見開いた
「それ、どういうこと?」
「そういうこと、です。」
「もしかして、北海道の事?」
瑠子は頷いた。
その瑠子の言葉を聞いて彼は少し笑った猫男は、真面目な表情で言った。
「そうかもね。」
瑠子は、調子が狂った。反論の言葉が出て来るかと身構えていたからだ。
つづく
大変遅くなりました。すみませんです。
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