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第2章
呼んでいる声がする(その20)小惑星が消える
しおりを挟む「きっと遠くにいけば、俺のことわかって
くれる人達がいるよ。」
「ここにもいるでしょ?大学の人とか。」
猫男は、黙っていたが、反抗的な瞳で呟く様に言った。
「そうかな。」
二人は黙って猫達を見つめた。瑠子は、はっとした。言うべき事を思いだしたのだ。
「この子達ははどうするの?」
猫達を指して瑠子は猫男に問いただした。
猫男はあっさりと言った。
「瑠子ちゃんに頼むよ。」
「えっ。」
呆然と瑠子はした。
「しかたないよね。お願いします。」
猫男は頭を下げた。
「そんな、猫達の事ををどう思っているんですか?」
「うーん、そう言われてもね、申し訳無い。じゃあ、俺帰るよ。猫達にはご飯はあげたから。」
そう言った背を向けた。その後ろ姿を見て瑠子は思った。
「猫達は、この軽薄な猫男に捨てられるんだ。」
クロが瑠子の足に頭を擦り付けて来た。
そう思うと、自分も猫達と一緒に捨てられる気がしてきた。クロの頭を撫でながら悲しい気持ちになった。
立ち上がると猫男は、もうイエローハウスに向かって歩いていて後ろ姿が小さくなっていた。
このカプセルから一人、人が消えていく
星が爆発し消える様にそれは、しかたのない事
そう思ったらよけい寂しくなった。
猫達がかわいそう、
ずっと黒や、茶トラ達を撫でていた。ふいに後ろから声がした
「どう?思う存分言ってやった?」
留萌さんは、薄ぼんやりした暗闇に優しそうな笑みを浮かべていた。
「駄目でした。開き直られました。その上、無責任な態度をとられました。」
「無責任?」
興味深げな瞳をしてこちらを見た。
「猫達の世話を放棄したんです。」
「うん、まあ、引っ越してしまうのでは、そうだよね。」
「そうですけど、なんか悩むとかないですか?あたしに頼むとか簡単に言っちゃって。」
「微力ながらお世話しますよ。わたしも。」
そう言った留萌さんが薄暗い中で輝いて見えた。
「ありがとうございます。」
「いや、わたしも猫は好きなんですよ。実は時々、猫にご飯あげてたんですよ。」
「本当ですか?」
照れながら留萌さんは頷いた。
留萌さんの優しさを感じてじんとした。その時イエローハウスが目に入った。
階段を登る猫男の姿が遠く見えた。胸がもやもやした。
見損なったわ、猫男。いいえ、本性をあらわしただけね、グレーを撫でだした留萌さんに気づかれない様に意地悪く微笑んだ。
けれど、そんな悪態をついてみても晴れたりはしなかった。
留萌さんとイエローハウスに一緒に帰ったが二人共に口をきく事は無かった。
彼だって、気づいたのだ、猫男の本性を。瑠子は思った。
庇いきれなくなったのだわ。
その夜は
部屋に戻ってしんとした外を窓から見下ろすと月が遠く白く輝いていた、
いつも見ているのに、ずっと前に眺めていた気がする。
その夜、疲れたいたのか、思ったより早く眠る事が出来た。
また、その日の明け方夢を見た、真っ暗な道で自分が男に必死でお願いしていた。
どうやら、戦争に行く相手に向かって必死で嘆願している。
「一緒に逃げましょう。戦争なんか行く事無いわ。」
男は呻く様に言った。
「ごめん、それは出来ない。」
「できるよ、人間やって出来ないことは無いわよ。」
自分らしき者は、粘った。
男は笑った。
「君って人は。こんな時まで君だね。」
「こんな時まで、君って?」
それを瑠子は二人の様子を俯瞰して見ていた。
明け方、はっとして目を覚ました
何を話したかもはっきり覚えていたのが今までと違った。
つづく
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