続・公証長サーシャの通過点―巻き戻れなくとも自分に負けずに生きる

蜂須賀漆

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第12話(2)

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新しい認証を開始することについては、事前の周知が必要になる。
開始時期については、元老院の対応がどうなるか次第だが、周知の準備と内容、段取りについて検討するよう、フョードル・クロチコフには指示を出しておいた。
庁舎内での掲示はもとより、新聞への掲載は必須、元々が王の権能であるため、王名で何かしら発布する必要があるかはアレクサンドラの責任で探ることにして、さて、と公証長はふう、と息を吐いた。
先般、父伯爵に案を持参した時、父は困惑顔ではあったが今回は特に指摘などはせず、「で、どうするか。後は元老院だけれども」と顔を上げた。

「では、このまま進めてもよろしゅうございますか」
「そうだね。私の段階では……異議はないかな。この前の、窓口の件は降ろすのかい」

アレクサンドラは、いいえとそれを否定し目論見、先に遺言状の認証を始め、その成功を土台に窓口設置に漕ぎ付けたい旨を打ち明ける。
父伯爵は、「そうか」と頷きながら娘の執念に呆れたが、幼い頃に、上手にできないことがあると癇癪を起こし、できるようになるまで反復し夜になろうと頑として止めなかった姿があったと思い出した。
癇癪はいつの日か脱ぎ捨て、代わりに過度の臆病を身に着けたようだったが、補佐に就任してから徐々に、頑固さが再び垣間見られるようになって来ており、家庭に入るのであればあまり好ましくはないが、公証長としては悪くない気質だとオルロフ伯爵は考えた。
あまり前のめりだと元老院の不興を買う逆効果になりかねず、その辺の強弱を果たして娘は弁えているだろうかと危惧していると、アレクサンドラが

「お父様は、特に親しくしておられる方はいらっしゃらないのですか」

と問いを発した。
父伯爵は戸惑いながら「そうだね、もちろん皆存じ上げてはいるのだが」と眉を下げ、「書簡を送って面会を求めてみるかい」と申し出てみた。

「通常の面会方法でございますね」
「通常、まあ正式なやり方だね。断られることを覚悟の上でだが。断りの返事さえ来ないこともあるようだから。まあ多忙だから仕方がないけれども」
「どうしてもご用がある場合は、皆様はどうなさるのでしょう」
「そうだね、よくあるのは控室に詰めて延々と待つ、というやり方かな……要望者がその手段を取っているのは時々見る。もちろん面会してもらえず追い出されることも多々あるようだが」

アレクサンドラは父伯爵の話を飲み込むと、「正攻法が良さそうではありますが、今すぐにはございませんね。状況を教えていただき、有意義でございました」と椅子の上で淑やかに頭を下げた。

「どうするね」

戸惑いを交えて問う父伯爵に、アレクサンドラは少し緊張気味に微笑んで、

「"正攻法"を試してみようかと思います。伯母様にお願いをする場合は、私から直接申し上げても構いませんでしょうか」

と胸の内に用意していた思惑を伝えた。
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