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第20話(5)
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ニコライは話さなかったが、某国とは隣国ザーレライであって、既にニコライの叔母、父国王の妹姫が大公妃として嫁いでいる友好国であった。
今回の相手は第1王子と、一段階上がり、将来は皇太子妃にということにはなるだろうが、政治的に緊急でもなく、年齢は同じとは言ってもタチアナの方が数か月年上で、釣り合いが取れていないとは言えないが最適とは言い難い。
将来を見据えるなら、他の国を選ぶべきではないかと首を傾げる縁談の卵は、とにかくタチアナには青天の霹靂(へきれき)で、聞いたところによると皇太子アレクセイも消極的のようであった。
父国王が母皇后に指示して進めさせているのか、母皇后が父国王に打診しているのか、その辺は不明瞭だが、話が立ち消えにならないということは、どの程度かはともかく、父国王の意向は存在しているということを示していた。
内情を知らないアレクサンドラは、婚約に向けて今動きがあるということは、臣民が知らない国家間の連携を強化すべき事情があるのだろうと納得はしながら
「とはいえおめでたいことではございますが……M公爵がお気の毒でございますね」
と自分達に要所で助力をしてくれている彼を思い出して言った。
ニコライが懸念を覚える半分は、M公爵にあった。
耳が早い彼は、婚約話が持ち上がりつつあることを確実に知っていると思われるが、今のところニコライには何も言ってきていない、それが逆に不気味であった。
切れ者で、何事も卒なく成果を得て来た彼が、初めて夢が破れそうになった今、どう振る舞うのか。
巧みな損得勘定を働かせてすっぱり諦めるのか、それとも知略を尽くして粘るのか。
「M公爵からは、ご相談はないのでございますか」
「今のところは。彼は人に頼らない性格ですから……でも、ちょっと様子を窺ってみようかと思います。心配されるのは、彼のプライドが許さないでしょうが」
ニコライの頭の片隅には、同じく耳の早い母皇后が、ひた隠しにされていたはずのM公爵の野望をどこかで聞き付けて、"自分に従わない者達"への意趣返しとして今回の縁談を思い立ったのではないかという疑いが兆しており、ゆえに彼がニコライに対して沈黙しているのではないかという疑いと、後ろめたさがあった。
アレクサンドラは頷きながら、
「どなたも、願うこと全てが、心の行く方向に進めばよろしいのですが」
と言った。
彼女の表情は大分緩んではいたが、ニコライは難しいことだと思いながら、「本当にその通りですね」と答えるに留めた。
今回の相手は第1王子と、一段階上がり、将来は皇太子妃にということにはなるだろうが、政治的に緊急でもなく、年齢は同じとは言ってもタチアナの方が数か月年上で、釣り合いが取れていないとは言えないが最適とは言い難い。
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「とはいえおめでたいことではございますが……M公爵がお気の毒でございますね」
と自分達に要所で助力をしてくれている彼を思い出して言った。
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耳が早い彼は、婚約話が持ち上がりつつあることを確実に知っていると思われるが、今のところニコライには何も言ってきていない、それが逆に不気味であった。
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アレクサンドラは頷きながら、
「どなたも、願うこと全てが、心の行く方向に進めばよろしいのですが」
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