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第22話(3)
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デミトフ公爵の執務室は、元老院議長のものにふさわしい広さを備えていたが、机周りを中心に非常に雑然としていた。
部屋の隅に置かれている中テーブルと言うべき大きさの猫足の四角机と、その椅子の双方に書類が山盛りに、家具という家具の上に紙束や本が載っている状態であった。
床には、破り取られたような紙片がところどころに落ちている。
執務机だけは、端にある数冊の本を除いて片付いており、書類一組だけが主の手元にあった。
アレクサンドラは、目が合う前に、カーテシーにて
「アレクサンドラ・イワーノヴナ・ザハーリナでございます。貴重なお時間を頂戴できましたこと、光栄でございます」
と普段よりも低姿勢で挨拶をした。
「挨拶などよろしい。疾く用件に入りたまえ」
既に不快が滲んでいる声にさっと礼を解くと、声の印象に寸分違わない表情を浮かべたデミトフ公爵を目の当たりにすることになった。
議長公爵とは、ザハーリン公爵位の挨拶時に対面しているが、その際は多忙とのことで非常に短時間であり、対面自体もほぼ一往復の挨拶だけという儀礼的なものに留まった。
ニコライは、まあ無理に時間を空けてもらったのでね、と笑いながら肩を竦めていたが、アレクサンドラは、現陛下のご長男相手に非礼すれすれではと憂慮を感じたところであった。
室内には来客用のソファがあるが、用件を所望した議長公爵は執務机から動かない。
なるほど、起立のまま話せということか、とアレクサンドラは肝を据える。
アレクサンドラが、公証で部下を立たせたまま対応するのは、決裁のためのサインや押印をするなどの場合だけであって、相談や説明を受ける時は必ず座らせて対応をした。
着座したいわけではないが、客としての立場において、ぞんざいな扱いを受けたことがないアレクサンドラの胸の内には、明確な反抗心が兆した。
短時間で済ませよというのが、議長公爵の意図なのかもしれないが、慮(おもんぱか)ることではない、とさっそく説明を始めた。
利便性向上のため、帝都以外に窓口を設置したい、まずはオルトを皮切りに、軌道に乗れば他地域への拡大も検討するという説明の仕方は、他の公侯爵に対して行ったものとほぼ違わなかった。
ただ、メルジューンを志したが領主の承諾を得られず、まずオルトにて成功の先例を作り、他地域へ波及の足掛かりとすることを付け加えた。
議長公爵は、アレクサンドラが話している間、彼女ではなく手元、恐らく事前に送付した面会依頼の手紙を弄(いじ)っていたが、
「話にならんな」
と側面の床に投げ捨てた。
そして、アレクサンドラが動揺する間もなく、叱責が始められた。
「何故、私のところに持って来る時点で計画が完璧に仕上がっていないのだ!何故穴が開いたものを持って来る!
メルジューンは第2の都市だ、利便性向上とお題目にするなら、メルジューンを後回しにすることなどあり得ないだろう!」
「私もそのように考えまして、領主閣下へご相談に参ったのですが」
「承諾が得られなかった?相手がイエスと言わなかったからと責任転嫁か!どうせ説明不足だろう、説得ができないのは自分の力不足だという発想を何故持たないのかね」
そう来たか、とアレクサンドラは項垂れそうになるのを辛うじて耐えた。
領主の承諾を得られなかったのは、アレクサンドラの力量不足がゆえである、結果だけを見れば否定ができない指摘は、身に覚えがあることでもあって心が軋んだ。
部屋の隅に置かれている中テーブルと言うべき大きさの猫足の四角机と、その椅子の双方に書類が山盛りに、家具という家具の上に紙束や本が載っている状態であった。
床には、破り取られたような紙片がところどころに落ちている。
執務机だけは、端にある数冊の本を除いて片付いており、書類一組だけが主の手元にあった。
アレクサンドラは、目が合う前に、カーテシーにて
「アレクサンドラ・イワーノヴナ・ザハーリナでございます。貴重なお時間を頂戴できましたこと、光栄でございます」
と普段よりも低姿勢で挨拶をした。
「挨拶などよろしい。疾く用件に入りたまえ」
既に不快が滲んでいる声にさっと礼を解くと、声の印象に寸分違わない表情を浮かべたデミトフ公爵を目の当たりにすることになった。
議長公爵とは、ザハーリン公爵位の挨拶時に対面しているが、その際は多忙とのことで非常に短時間であり、対面自体もほぼ一往復の挨拶だけという儀礼的なものに留まった。
ニコライは、まあ無理に時間を空けてもらったのでね、と笑いながら肩を竦めていたが、アレクサンドラは、現陛下のご長男相手に非礼すれすれではと憂慮を感じたところであった。
室内には来客用のソファがあるが、用件を所望した議長公爵は執務机から動かない。
なるほど、起立のまま話せということか、とアレクサンドラは肝を据える。
アレクサンドラが、公証で部下を立たせたまま対応するのは、決裁のためのサインや押印をするなどの場合だけであって、相談や説明を受ける時は必ず座らせて対応をした。
着座したいわけではないが、客としての立場において、ぞんざいな扱いを受けたことがないアレクサンドラの胸の内には、明確な反抗心が兆した。
短時間で済ませよというのが、議長公爵の意図なのかもしれないが、慮(おもんぱか)ることではない、とさっそく説明を始めた。
利便性向上のため、帝都以外に窓口を設置したい、まずはオルトを皮切りに、軌道に乗れば他地域への拡大も検討するという説明の仕方は、他の公侯爵に対して行ったものとほぼ違わなかった。
ただ、メルジューンを志したが領主の承諾を得られず、まずオルトにて成功の先例を作り、他地域へ波及の足掛かりとすることを付け加えた。
議長公爵は、アレクサンドラが話している間、彼女ではなく手元、恐らく事前に送付した面会依頼の手紙を弄(いじ)っていたが、
「話にならんな」
と側面の床に投げ捨てた。
そして、アレクサンドラが動揺する間もなく、叱責が始められた。
「何故、私のところに持って来る時点で計画が完璧に仕上がっていないのだ!何故穴が開いたものを持って来る!
メルジューンは第2の都市だ、利便性向上とお題目にするなら、メルジューンを後回しにすることなどあり得ないだろう!」
「私もそのように考えまして、領主閣下へご相談に参ったのですが」
「承諾が得られなかった?相手がイエスと言わなかったからと責任転嫁か!どうせ説明不足だろう、説得ができないのは自分の力不足だという発想を何故持たないのかね」
そう来たか、とアレクサンドラは項垂れそうになるのを辛うじて耐えた。
領主の承諾を得られなかったのは、アレクサンドラの力量不足がゆえである、結果だけを見れば否定ができない指摘は、身に覚えがあることでもあって心が軋んだ。
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